こんにちは。デザイナーの白木です。早いもので入社して1年が経ちました。前回は入社3ヶ月目の印象とデザイナーの役割について書いたのですが、そのときに今後やっていきたいこととしてUXリサーチ(ユーザー体験に関わる調査)をあげていました。
その後、UXリサーチを少しずつ進めていき、現在では定期的にユーザーインタビューを行い、改善に繋げられるようになってきました。
今回はUXリサーチの立ち上げから半年間について、インタビュー形式(自分で質問して自分で答えてます)でご紹介します。
なぜUXリサーチをはじめたのか
— まずは普段の仕事について聞かせください。
「北欧、暮らしの道具店」のシステム開発を行うテクノロジーグループでデザイナーをやっています。UXリサーチ専任ではなく、アプリのUIデザインや先日リニューアルしたコーポレートサイトのディレクションなども担当しています。
— どういう経緯でUXリサーチをはじめたのですか。
よりお客さまのことを知りたいという好奇心が最初の動機です。というのも、UIでもバナーでも届ける相手をイメージしながらデザインするのですが、自分の中でお客さまをうまくイメージできてないなと感じてたのです。
まずは当店に関連するSNSの投稿をみるところからはじめました。地味なことなのですが、これも立派なUXリサーチだと思ってます。インスタなら商品がどういう生活空間でどんな風に使用されているかをみれますし、Twitterなら商品や読みものへの感想からお客さまの感情を読み取れます。毎日続けていると、ぼんやりしていたお客さま像が少しずつはっきりしてくるのを感じられました。
SNSの投稿をみるのがモーニングルーティーンになってます
でもそれだけだとこちらから知りたいことを質問することはできないので、直接お客さまと話したいという気持ちが高まっていきました。
— これまでUXリサーチはしていなかった?
「UXリサーチ」という言葉こそ使ってないですが、年1~2回程度のアンケートを行ったり、以前はお客さまをオフィスに招いてグループインタビューもしていました。
普段から議論の土台となっているのはどうやってお客さまに喜んでいただくかということですし、Slackではお客さまからのいただいた要望や意見はたくさんシェアされているので、お客さまについて考える機会は多いです。
でも最近自分のお客さまイメージと実際のお客さまにギャップを感じているというスタッフの声もあったのです。お客さまとお会いする機会は減っていましたし、アプリやYouTubeの動画から当店を知った、新しいお客さまが増えてたことも原因になっているかもしれません。
自分だけじゃなくスタッフの学びにもなるなら、いまできる方法でUXリサーチをやってみようと思ったのです。
お客さま像のアップデート
— どんなことからはじめたのですか。
一部のスタッフがお客さまへの理解を深めても大きな動きにはならないので、会社全体の学びにしたいという思いがありました。
まず定期的にやっているお客さまアンケートの結果を全社員が集まる全体会議の場で共有しました。50代、60代以上女性のお客さまが予想以上に多くいらっしゃること、男性のお客さまが増えてきていることなど、感覚としては持っていたことですが、数値として示せたことでお客さまの変化に気づいてもらえたと思います。
認知度調査でも若年層の男性は認知度が高かった [プレスリリース]
アンケートに寄せられた要望もカテゴリごとにまとめて、関連する部署のスタッフに共有しました。当店オリジナル商品への要望は商品を開発しているチームに、商品ページの要望は商品ページを編集しているチームに伝えて、改善に役立ててもらいました。
あとユーザーインタビューもオンラインで再開しました。
— ユーザーインタビューはどのように全社の学びにしているのですか。
インタビューの様子を事前に了解を得て録画しているので、録画データをスタッフがみれるようにしています。1時間のインタビュー動画を見る時間はなかなか割けないので、興味をもってもらうために、そのインタビューの見どころをまとめたものを添えて共有しています。
見どころを添えてSlackで共有
録画でも学びになるのですが、お客さまと話す方が深い学びというか、心に残る学びになります。なので、チームのエンジニアだけではなく、他部署のスタッフにも同席してもらってお客さまと直接お話しする機会をつくっています。
参加したスタッフからは「お客さまを具体的にイメージできるようになった」「企画するときに役立つヒントをもらえた」といい反応をもらえてます。
オンラインのインタビューでしか知り得なかったこと
— インタビューをオンラインでやることの難しさはありましたか。
オンラインミーティングツールの接続マニュアルを用意するなど、事前準備は対面のインタビューより多かったですが、大きな問題はなかったです。
最も懸念してたのは対面のインタビューより学びが少なくなってしまうことでしたが、そんなことはなかったですね。知らないオフィスより自宅で話すほうがリラックスしてたくさんお話していただけてるように感じました。
あとオンラインで実施すると、背景などの雰囲気からお客さまの普段の暮らしを感じ取れるのはよかったです。当店で購入された商品をのように使っているかを実際にみせていただけることもあって特別な学びになりました。
— 具体的にはどんなことを聞くのですか?
いまインタビューをしているのは、定期アンケートに回答いただいた方、最近アプリを使い始めた方です。
聞く内容は、基本の質問と個別の質問に分けて用意してます。
基本の質問は当店を知ったきっかけや普段の利用方法などを全員に共通で聞いています。
個別の質問は、そのインタビューで知りたいことを決めて、それを知るための質問を同席スタッフと事前に相談して決めてます。インタビューの目的が「商品を購入するときの課題を知りたい」の場合だと、商品の閲覧・検討・購入の体験を流れで聞くことで課題のタネのようなものがみつかるので、そこを深堀りして聞いていきます。
個別の質問も用意してありますが、お話いただいた内容から広げていくほうが知りたいことを知れることが多いです。
— はじめましての状態で深い話しを聞くのは難しいですよね。
もし使いにくいところがあったとしても、面と向かって言うのは勇気がいることだと思いますので、言いにくいことも話していただけるような和やかな雰囲気になるようにしてます。
あと深堀りしたいことがあったら「そのお話し、すごく興味深いので詳しく聞かせてください!」みたいにお伝えしてますね。ご本人にとって何気ないことでも、私たちにとっては目からウロコのようなことってたくさんあるので、知りたいことを明確にするのは意識してやってます。
お客さまとお話しながら、出会いから現在までの当店との関係性の変化をジャーニーマップ形式でまとめてみたりもしました。
ジャーニーマップ形式でまとめるのは2つ良いことがあって、時系列で話していくと当店との関係性の変化がわかりやすいこと、お客さまがエピソードを思い出しやすいので深いお話が聞けることです。
ジャーニーマップを画面共有して一緒に見ながら話していきます
(上図は社内インタビューでつくったものです)
例えば4年前からご利用いただいているお客さまの場合、当店を知ったきっかけは思い出せても、いつどんなものを購入したか、当店に訪れる頻度が高まった理由などを詳しく思い出していただくのは難しいです。
そこでお客さまと当店の年表のようなものをつくって、それを一緒に見ながらお話してみたのです。
すると前後の出来事から、その年は仕事が忙しかったからお店には来てなかったけど、翌年に転職して引っ越しもしたので、家を充実させたくなってまた来るようになった。そんな風にお客さまのプライベートな出来事から当店との関わり方が変化したことを話していただけたのです。
これはオンラインだからこそ思いついた方法かもしれないです。
今後のこと、半年後にどういう状態をめざすか。
— UXリサーチをはじめてどんな変化がありましたか。
リサーチを本格的にはじめて半年くらいですが、まだまだ数は少ないもののインタビューを定期的に実施できるようになりました。
継続して実施していることで、社内から具体的にこういうタイプのお客さまにお話し聞きたいという要望ももらえるようになってきました。知りたいことがあったときに「お客さまに直接聞いてみる」という選択肢ができたことは大きな変化だと思っています。
自分の中の変化としては「北欧、暮らしの道具店」がより好きになりましたね。お客さまが大切な時間を使って当店に訪れ、商品やコンテンツに触れることで日々の暮らしが楽しくなったと言ってくださるのを聞くと、大袈裟ではなく、ちょっと泣きそうになるくらい嬉しいです。これからもそういう場所でありたいなと強く思っています。
—— 今後はUXリサーチをどのように活用していきたいですか。
継続的にインタビューができる仕組みはつくれたので、まずは全スタッフがお客さまと直接話したことがある状態にしたいですね。
UXリサーチをはじめた動機は「お客さま像のアップデート」でしたが、本来の目的はお客さまのことを知り、よいサービスづくりのヒントを得ることだと思っています。いまも少しずつ具体的なサービス改善に繋げられていますが、今後はお客さまが話してくださったことひとつひとつをサービスづくりに活かせるようにしていきたいです。
今回はここまでですが、UXリサーチは今後も継続的に取り組んでいきますので、また機会があればお話ししたいと思います。
現在UXリサーチャーやデザイナーの募集はしていないのですが、ユーザーへの理解を深めながらプロダクト開発したいエンジニアの方がいらっしゃれば、ぜひお声がけください!