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1万組のお客様との“再会の場”を創る フォトスタジオのマーケティングとは

ウェディングフォトを撮影されたお客さまが、出産や子どもの記念日にもう一度スタジオに訪れてくれる。そんな再会の場がクッポグラフィーではいくつも生まれています。

再会の機会を創り出し、その人の人生に寄り添っていけるように。そんな思いを抱きながら、現場を裏で支えるスタッフたちがいます。

クッポグラフィーの写真が生まれる背景にある、スタッフが大切にしていることをご紹介する本シリーズ。

今回は、マーケティングセクション プロジェクトマネジャーの山崎里紗。

26歳の若さで、マーケティングを元に企画の提案から実行までを手がける、山崎の仕事への思いをご紹介します。

山崎里紗(やまざき りさ)

マーケティングセクション プロジェクトマネジャー。専門学校でマーケティングを学び、その面白さを知る。卒業後に勤務した飲食会社で携わった結婚式の仕事に魅了され、その後ウェディングフォトグラファーとして活動。2021年クッポグラフィーに入社し、マーケティングセクションを立ち上げ。現在は、プロジェクトマネジャーとして、ゼロイチの企画を生み出している。

“写真は心の支えになる” 幼少期の経験と共感したクッポグラフィーのミッション

ーー入社してからもうすぐ3年。企画の提案から実行まで、幅広く担当されているのですね。

まだまだ勉強中の身ではありますが、思いついたことは色々やってみたいなと思って動いています。

ーーもともとマーケティングの経験はあったのですか?

未経験でしたが、とても興味がありました。語学が学びたくて入った専門学校でしたが、ビジネスに関する知識を幅広く学べるコースを専攻したのがきっかけでした。企画力や発想力を鍛えるような授業が多くて、今この世の中に何が求められているのかを様々な角度から分析したり。ビジネスコンテストに企画を提出したこともありました。

世の中にたくさんの商品やサービスがある中で、どんなにいいものを作っても人に知ってもらえないと埋もれてしまうこと。伝え方や見せ方次第で売り上げが大きく変わること。マーケティング次第でモノの価値が相対的に変わることがすごく面白くて。日常的に、会社の戦略や広告のコピーに関する本を読むことも好きでした。

ーークッポグラフィーには、マーケティングの仕事をやりたくて入社されたのですか?

まだ今のような形でマーケティングセクションは存在していませんでした。現場以外でクッポグラフィーの魅力を伝えるスタッフを募集していて。私自身も今後のキャリアを考えていた時期で、仕事において自分の特技といえるようなものがほしかったこともあって、すぐに応募しました。

ーーもともとクッポグラフィーのことは知っていたのですか?

結婚式がすごく好きで憧れもあったので、クッポグラフィーのインスタもフォローしてよく見ていました。新卒で飲食業界の会社に入社したのも結婚式に携わっている会社だったからなんです。その後、ウェディング専門のフォトグラファーとして勤務をしたこともあって、写真は撮るのも見るのも好きでした。

クッポグラフィーのウェディングフォトは素敵だなぁといつも見ていましたが、それ以上に目指しているものやミッションがすごく心に残っていて。

ーー「すべての人が心の支えになる写真を持っている世の中をつくる」というミッションですね。

はい。実は私も、写真が心の支えになった経験があって。

ーー山崎さんも心の支えになる写真を?

幼少期から母子家庭で育ったので、父親の記憶があまりなくて。写真を通してでしか、父親との思い出を振り返ることができないんです。父親がいないことで悩んだ時期もありましたが、そういったときに幼少期の家族写真を見返すことで、写真の記録が自分の記憶になっていって支えられることもありましたね。

クッポグラフィーのミッションを見たときに、自分が思っていたことと重なって、うわー!と感動して、もう絶対にここに入りたいと思ったことをよく覚えています。

現場の話と写真を通して追体験できる お客さまと再会する喜び

ーー入社して1年目はマーケティング関連の仕事を一人でやっていたと伺いました。

マーケティングをしていたというよりも、その準備をした1年でしたね。入社時は一人でスタートして、途中からは他のセクションから異動してきたスタッフ(現在は育休中)と二人で進めました。

まずは、お客さまの情報をデータにして蓄積するところからでした。これまでは、紙ベースでの情報とメールを遡ることでしかお客さまの情報を得ることができませんでしたが、kintoneというソフトを使ってデータにしていきました。社長の久保さんに相談しながら、パートタイムの方を募集して入力を手伝ってもらったり。もう本当に大変な作業でしたね(笑)

ーーデータになったことで、いつでもすぐに見られるようになったのですね。

そうなんです。今は、1万組のお客さまのデータを簡単に見られるようになりました。

ーー1万組!それは大きな財産。

クッポグラフィーでは、過去に撮影したお客さまが何度も来てくださることが多いので。誰が担当しても、情報をすぐに確認できるようになることで、現場スタッフがお客さまとのコミュニケーションを取りやすくなればと進めてきました。つい先日、常連のお客さまを初めて担当したフォトグラファーが、kintoneの前情報があったおかげで、その方と距離を感じずに撮影ができたという声も。沖縄や福岡、複数のスタジオを利用してくださっているお客さまに関しては、遠方のスタッフ同士が撮影のエピソードを共有できたり。現場スタッフにも喜んでもらっています。

ーー山崎さん自身は、お客さまと再会できる機会はあるのですか?

私たちマーケティング担当者は直接お客さまとお会いする機会はあまりないのですが、スタジオでフォトグラファーなどが再会している場をよく目にします。何よりスタッフが日常的に再会のエピソードを話してくれたりするので。その度に感動しています。

ーー日常的にですか?

そうなんです。ウェディングフォトグラファー時代は周りの人と撮影技術のことを話すことが多かったので、入社してびっくりしたことの一つでしたね。お客さまとの時間で楽しかったことや感動したことをスタッフ間で頻繁に話していて。しかも、クッポグラフィーでは、バリスタやヘアメイクアーティストなど職種が多岐に渡るので、色んな立場から見たお客さまの様子も知ることができます。

ーー再会の場に立ち会えなくても、エピソードから想像をしている。

そうですね。あと、出来上がった写真を見れば、お客さまがスタジオでどんな時間を過ごしたのか、満足してくれたのかが一目瞭然で。実際には会えなくても、写真を見て自分まで嬉しくなります。

結婚、マタニティ、1歳の誕生日など、それぞれの家族の変化を写真で見ることができますし、フォトグラファーが撮影時のエピソードの記録を残してくれているので、自分も一緒に人生に寄り添えているようで感動します。お子さまが大きくなったなぁとか過去の写真を見ながらしみじみしたりも…。

フォトウェディング、マタニティフォト、お子さまのバースデーフォトと撮影に来てくださっているご家族。

アンケートや口コミを通して知るお客さまの反響だけではなく、写真と撮影のエピソードを通しても知れることは、データ分析を主とするマーケティングの世界では珍しいのかも。フォトスタジオのマーケティングの魅力は、ここにあるのかもしれませんね。

マーケティングのプロと一緒に創り出す「写真をプレゼントする文化」

実は、この1年で一気に働き方が変わって。外資系のメーカーで10年以上マーケティングを担当していた方が加わったのが大きかったです。

ーーマーケティングマネジャーの石川諒子さんですね。どんな風に変わりましたか?

まずは、ちゃんとマーケティングをやってるなって、自分で実感できるようになりました(笑)

マーケティングの先輩がいなかったときは、どこを目標に向かっていけばいいのか、そのためにはどういった行動をしていけばいいのか全然分からずに悩んでいたので。諒子さんが入ってから、目標が明確に定まって、そこに向かって自分も提案や実行ができるようになりました。

ーーどんな目標を立てたんですか。

お客さまと再会できる場を創り出す、お客さまにもう一度来ていただく数を増やすという目標です。今までも同じ目標を掲げていましたが、漠然としていて。今は、この1年でどれくらいの数を目指すのか、数字で定めて前に進んでいくことができていて。目標達成から逆算して行動をしたり、考えたりすることもできています。

ーーそれは動き方も大きく変わりそうですね。

年間スケジュールも年度初めに立てたんですよね。これも大きくて。今までは、1か月後の予約を見て、やばい何かしなきゃ!と焦って考えてはいましたが、時すでに遅し…といった状況も多かったです。来月の予約がもう少し増えたらいいなと思った時点で動いても間に合わないですよね。

今は、閑散期でも何か興味を持っていただける企画をしようと前段階で考えられているので。計画的に準備をしたり、企画内容を深められたりできています。

敬老の日のイベントは山崎がずっとやってみたかった企画。今までとは違った年齢層のお客さまにも撮影を楽しんでいただき、フォトグラファーの間でも好評だった。

ーー仕事はどのように進めているのですか?

マーケティングセクションは、私、諒子さん、2022年新卒入社の奈央(なな)ちゃんの3人で動いていますが、全国のスタジオの店長とミーティングをしたり、各セクションのスタッフにも相談をしながら進めています。関わる事業部は多岐に渡りますね。

フェアの告知用撮影の立ち会いも行う。2022年は10本のイベントを実施した。普段は在宅勤務も取り入れながら、週2回の定例ミーティングや、Slackを活用して密にコミュニケーションをとっている。

企画段階では、諒子さんに提案をしてフィードバックをもらっていますが、毎回学びが多くて…。こういうやり方があったんだ!といった発見だったり、自分にはなかった引き出しがいくつも出てきて。諒子さんの言葉一つもそうですし、やり方も考え方も全てが勉強になって自分の成長にも繋がったり。こんな機会はこれまではなかったので、今はちょっとしたことでも相談をしたり、アドバイスをもらったりしていますね。

ーー奈央さんは、1年前に入社されたんですね。

そうです、仲間ができました。主に実働部分は奈央ちゃんと一緒にやっています。イベントページを立ち上げたり、広告を出したり、SNSでの告知を行ったり。自分が手が回らないときには奈央ちゃんができるように教えたり、奈央ちゃんがやってくれたことの確認もできるようにしています。

これまでは、一人で進めて相談する相手は社長だったので、まずこの内容を社長に相談すべきなのかというところから悩んでいました(笑) 今は、気軽に相談できて助け合える仲間がいるので、仕事の楽しみもできることも広がっています。

ーー企画を考えるときに大切にしていることはありますか?

今期の企画の共通テーマとして、「写真をプレゼントする文化を創る」ことを目指しています。このテーマを軸に、母の日や敬老の日、バレンタインなどイベントの日には、写真や撮影する機会をプレゼントできたらと思い企画をしていきました。

ーー日本で共通してあるイベントに着目して新しい文化を創り出す。面白い発想ですね。

結婚や子どもの行事で撮影に来てくださる方は多いのですが、そうでない日常でも撮影を楽しんでいただきたいという思いも込められています。マーケティングをやる上で、もちろん売り上げも大事なんですが、本当にその人自身のためになるものを提供したいと思っていて。

ーー実際に写真をプレゼントされたお客さまはいましたか?

現在実施中の「バレンタインフェア」のお客さまで、ご両親に撮影の機会をプレゼントされた方がいました。

ーーバレンタインフェアは山崎さんが企画されたイベントですね。

はい。自分の企画だったことも重なり、喜びもひとしおでしたね。

バレンタインだから、対象はカップルやご夫婦かな。じゃあどういった特典をつければ喜んでいただけるかな。どういった見せ方をすれば魅力的に見えるのかなと、自分で考えてフィードバックをもらう時間はとても楽しかったです。

3/15まで開催中のバレンタインフェアでの一コマ

ーーどんな部分にこだわりましたか?

一つは、直筆メッセージ入りの台紙を特典にしたことです。改めてお互いへの思いを手書きで伝える機会はあまりないと思いまして。日常的にメールやLINEでコミュニケーションを取ることが増えている時代だからこそ、手書きの文字は温かみがあって心に刺さるものになると提案をしました。

撮影後の余韻の中でメッセージを記入する。後日自宅に届くため、サプライズの楽しさも。

フェアの専用ページでは、おふたりの手書きメッセージを写真に重ねることで温度感を伝えられるよう工夫した

もう一つは、イベントを告知するランディングページ(LP)の見せ方ですね。ページには「7組のラブストーリー」と題して、事前にお願いしたご夫婦に撮影を体験していただきインタビューをしました。それぞれのご夫婦のなれそめからお互いへの思い、そして撮影のエピソードについて、7組分を記事にまとめたのですが。その内容に自分自身も感動してしまって思わず涙が出てしまって…。

ーーそんなに…。内容が気になりますね。

7組のご夫婦皆さま、最初はふたりで写真を撮ることを恥ずかしがっている方が多かったのですが、撮った後にはお互いの愛情が深まったり、相手のことを大事に思ったり。私が想像していた以上に、おふたりにとって良い時間になったことがお話からわかって。

ーー撮影そのものがご夫婦にとって大切な時間になったのですね。

そうなんです。インタビューにご協力いただいたあるご夫婦は、旦那さまが緊張しすぎて撮る前は憂鬱な気分にすらなっていたようですが、フォトグラファーとの会話や撮影、手書きでメッセージを書く時間の全てを楽しんでくださって。

撮影後は奥さまと手を繋いで帰られたそうです。

インタビューを読んだ時に、バレンタインフェアを企画してよかったと心から思うことができました。告知前に、良いと思ったものがお客さまにも伝わっていると確信もできたので、自信を持ってお勧めすることができました。

高校時代にお付き合いを始め、52年の年月を重ねたご夫婦。旦那さまが「写真を見て、彼女と笑う自分の表情を初めて知った」と嬉しそうに話していた。

ーー実際に、お客さまからの反響はいかがですか?

50組近くのご予約が入ってくれて。予約が開始した当日、私もドキドキして予約ページを何度も見てしまいました。

ーーよかった!それは一安心ですね。

はい。しかも、写真を大切な人にプレゼントされたお客さまもいらっしゃって、それがすごく嬉しくて。

福岡スタジオで撮影されたお客さまでした。娘さんが、ご両親の結婚50周年とお誕生日が近かったということもあり、撮影の機会をプレゼントされたそうです。

当日もおふたりが楽しみにしながら来てくださって。旦那さまが恥ずかしがる奥さまに「こっち見てよ」と言いながら、和気あいあいと楽しい撮影時間を過ごされたと伺いました。

さらにもう一つ素敵なエピソードが。娘さんが手づくりしたハート形のブローチを、撮影当時に旦那さまがつけていて。バレンタインだからハート形にされたようで。

ーー素敵…。

撮影をきっかけに手づくりのものをプレゼントしたり、撮影までの時間も楽しんでくださっていることも知ってすごく嬉しくて。

おふたりでの撮影の後に、2人の娘さんとそのご家族、お孫さんたちとも一緒に撮影をされたそうです。バレンタインのようなちょっとしたイベントに、ご家族で写真を残す機会を作ることができたり、撮影日前後の時間も楽しんでもらえたり。

ーー撮影そのものが家族の特別なイベントのようになっていますね。

そうなんですよ。家族の中で共通の楽しみを持ってもらえるような体験を生み出せたことは貴重で。クッポグラフィーの新しい価値の発見にも繋がりました。

クッポグラフィーの可能性をマーケティングで広げていきたい

ーー今後力を入れていきたいことはありますか?

1万組のお客さま情報のデータを元に、どんな企画が求められているのかを分析したり、一人一人のニーズにあわせてイベントのご案内をお送りしていきたいですね。

小学校入学を控えたお客さまには、桜と写真を撮れる「卒入学フェア」のご案内を。一人一人の人生に合わせたものをお知らせしていきたいと山崎は話す。

ただ、データ分析だけではなく、現場の声をすくい上げていくことこそがフォトスタジオでは重要かなと思っています。お客さまと接しているスタッフの声こそが、施策を考えるアイディアへと繋がるので。

ーー現場との連携も欠かせないんですね。

そうなんです。この1年でクッポグラフィーのメンバーが一気に増えましたし、コミュニケーションの取り方も試行錯誤しながらやっていて。企画をするときも、どういう思いでこの特典をつけたのかなど、一つ一つに意味があることを言葉にして伝えることを大事にしてきました。

今はまず、みんなと信頼関係を深められるように実績を積んで、数字で見せて行けるようにしています。企画は最後まで諦めずにやり遂げるなど、当たり前のことではありますけど、有言実行は自分の中で強くあって。

マーケティングで解決できることがあるかもしれないので、現場で困っていることがないか、直接聞いたりアンテナを張って気づけるようにしたり。少しずつではありますが、最近はちょっとしたことでも相談してくれることがあったりも。ちょっとずつ信頼してもらえているのかなと実感できていますね。

ーーマーケティングセクションがあることでクッポグラフィーの価値がより明確になってきている感じがしますね。

そうですね。この1年は大きく変化して、価値がはっきりしたと思っています。スタッフみんなが同じことを大切にしていて、同じ方向を向いていることは日々感じているので、私はみんなの思いを形にできるよう頑張っていきたいです。


取材・文:石垣藍子

撮影:クッポグラフィー

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