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人生を変える写真を届けたい 旅を続けてたどり着いたウェディングフォトグラファーの道(後編)

クッポグラフィーで写真が生まれる背景にある、数々の物語をご紹介する本シリーズ。今回は、ウェディング撮影チームリーダーの大村将也。エピソードの後編をご紹介します。

前編はこちら

元々は小学校の教師だった大村は、世界一周の旅に出かけたことによって写真の面白さを知りました。未経験からスタートしたウェディング撮影で感じた大変さと面白さ。そして、その人の人生を変えるかもしれない瞬間に出会った結婚式でのエピソードをお届けします。

結婚式撮影 未経験からの出発 3か月後のデビュー

ーー結婚式の撮影は未経験だったと伺いましたが、初めての現場はどうでしたか?

もう何もかもがびっくりするようなことばかりで。入社して3日目、初めて結婚式撮影のセカンドフォトグラファーとして研修で入らせてもらったのですが、メインのフォトグラファーはずっと走り回って撮影しているんですよね。8時間くらいずっと。

ーー8時間!それはすごい。

結婚式って一言で言うと、色んなシーンの集合体なので。新郎新婦の動きだけではなくて、指輪や参列者の動き、テーブルでみんなが集まっている集合写真であったり、本当に色んなものを撮らなくてはいけないんですね。その集合体を一人で撮るなんて無理だって思いました(笑)

ーーそんな中、入社3か月でウェディングフォトグラファーとして独り立ちできたと伺いました。早いですね。

デビューまで、久保さんや先輩たちが一つ一つ教えてくれました。結婚式で起こりうる撮影ポイントをスプレッドシートにまとめてくれて、こういうときはこういう写真を残さなきゃいけない、ラストカットはこういうものがあるなど起こりうるシーンを全部共有してくれて。

撮った写真も全て見てもらって、細かくフィードバックをもらいながら教えてもらいました。例えば、この部分が写っていると現実感が出てしまうから無いほうがいいとか、1枚の中で主役と脇役がいたとして、脇役がいたほうが主役が映えるから入れたほうがいいといったようなことを、僕が撮った写真を見ながら一つ一つ丁寧に。意味を持たせて撮ることが重要で自分のさじ加減一つで、伝わるメッセージが変わってくることも具体的に教えてもらいました。

ーー写真の良し悪しを言葉で説明するのは難しそうですね。

久保さんは、感覚的なものもちゃんと理由を明確にして言葉で伝えてくれるんですよね。これは良いカットでこれはダメなカットと何となく言われるのではなくて、どうしてダメなのかを具体的に教えてくれて。なので、自分の中で腹に落ちて力になっていく感覚がすごくあって、デビューまでスピード感を持って進めたんだと思います。

ーー今はウェディング撮影チームのリーダーとしてチームを引っ張るまでに。

フォトグラファーって、式場では基本的には一人で撮影をするので孤独な仕事なんですよね。チームを引っ張るというよりも、お互いを勇気付けられるような場を作っていきたいと思っています。例えば、メンバーそれぞれが写真を見せあうレビュー会というものを毎週火曜日にやっていますが、みんなの意見を聞いてブラッシュアップしていける時間なんです。僕自身も写真を見せたりすることで、その後の写真が変わっていくような感覚があって。

ーー普段バラバラの現場にいるみんなと話す機会にもなりますね。

みんな写真が好きっていうのもすごく伝わってくるし、とても貴重な時間です。デビューした後にさらに感覚を磨いていく上でも、チームメンバーと刺激しあうのは重要で。毎週結婚式でそれぞれが現場に行って離れていますが、集まったときにはお互いに励ましあって、また次の現場に行けるようにしていきたいと思っています。

その人の人生を変えるかもしれない瞬間を 写真に収めていきたい

そういえば先日、ある結婚式で忘れられない出来事がありました。

ーーどんな出来事だったんですか?

新郎のお父さんが体調不良で入院されているご家族の結婚式でした。お父さんは直前まで参列できるかわからない状態でしたが、当日参列できることを聞いて。体調が悪くて車椅子とかでいらっしゃるのかなと思っていたら、めちゃくちゃ元気だったんですよ。明るくてみんなに冗談を言ったりもしていて。式が始まる前に、新郎から両親に向けて書いた手紙を別の部屋で読む時間があるのですが、そのときも泣いたりしないんですよ。ほんと明るいお父さんだなぁと思って撮影していたんですね。

そのとき、一瞬の出来事でした。新郎と両親が対面してしばらく会話をした後、お父さんがハンカチで目を押さえる瞬間があって。泣いていたんですよね。気が付いて、即座にその姿を撮りました。

新郎もお母さんも、お父さんが泣いたことに気づいていなかったみたいで。後日新郎から感謝のメッセージをいただきました。本当に撮れてよかったなって思いました。

ーー写真ってすごいですね。

病気のつらさの中で参列できたことが嬉しくて泣いたのか、これまでの新郎の成長を振り返って泣いたのか。どうして泣いたのかは全然わかりませんが。この瞬間を見た後は、お父さんの中に色んな思いがあるんだろうなと思いながら撮影をして、1日の中で写真の撮り方も変わっていったような気がします。

ーー家族にとって貴重な1枚になったでしょうね。

そうですね。大袈裟かもしれませんが、その人のその後の人生が変わる1枚になったのかもしれないなと思います。結婚式って一人一人の人生が詰まった一つの場であって、新郎新婦や参列者、それぞれの人生が垣間見える瞬間がたくさん起こる場だと思っていて。僕は、その人の人生が変わるような1枚を撮れるように、一つ一つの瞬間を撮り逃さないようにしていきたいです。

クッポグラフィーのフォトグラファーとして続く出会いの旅

ーー今後はどういう道を歩んでいきたいですか?

世界を旅する中で色んな人と出会って、写真の面白さを知りました。クッポグラフィーに入ってからも、色んな人の人生に巡り合って感動したり、心に残る瞬間を写真に収めたりしながら、旅が続いているような感覚で。もう一度世界一周をして、フォトグラファーになった自分はどんな写真を撮れるのかを見てみたいなと思っています。

ーーそれは楽しみですね。

久保さんやクッポグラフィーのみんなに、もう一度旅をしたいって話をしたらすごく応援してくれて。旅に出ることは、クッポグラフィーに所属しながらできることだって言ってくれているんです。僕自身もみんなの夢や挑戦したいことを聞いたりすると、普段の関わり方も変わってきたりして。こういう目標があって今ここで頑張っているんだなってわかると、色んな場面で応援できるようになりますね。

ーー教師のときも、旅していたときも、クッポグラフィーに入ってからも。お話を聞きながら、人との出会いが大村さんの力になっているように感じました。

色んな人と出会う度に、ハッとなることばかりで。学校の子どもたちからはやりたいことに向き合う姿勢を教えてもらって。旅先で出会った人たちには、それぞれの場所で自分らしく生きる姿を見せてもらって。僕自身も、そんな出会った人たちのようにあり続けたいと思っています。


取材・文:石垣藍子

撮影:クッポグラフィー

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