「『本当にこのサービスが健康に寄与するのか』を常に大事にしたい」
株式会社Kids Publicで産婦人科オンライン代表・医療統括部代表を務める重見大介が、この会社で大事にしていることです。
私は産婦人科医でありながら、社会と医療をつなぐ学問である公衆衛生学も専門とし、Kids Publicの代表で小児科医の橋本直也さんと、女性の健康の向上に取り組んでいます。そのためには、妊娠・出産・子育て領域の課題の解決はもちろん、性教育や婦人科関連の問題の改善・向上も重要であると考えています。
今回は、私がこの会社に参画した想いと、求める人物像について紹介します。
<自ら起業ではなく、参画という手段を選んだ理由は?>
一般的に、医師というと病院で働く姿をイメージされがちです。このような業務のことを「臨床」といい、その中で内科や外科、産婦人科など専門分野が分かれています。私も産婦人科を専門とし、病院でお産に携わったり、婦人科がんの手術などをしたりしていました。
臨床現場で勤務するだけでなく、産婦人科専門医取得後に「公衆衛生学」の大学院へ進みました。医療は病院だけで行われているものではなく、医学だけで全ての健康の課題は解決できない、そう考えたからです。このような「社会と医療の関わり」を専門にする分野が「公衆衛生学」です。
大学院で学ぶ中で、社会的課題の多さを感じました。産科領域でいえば、妊娠・出産・子育てに多くの課題があります。しかし女性の月経や更年期、若くしてなるがんなどの婦人科領域の問題も社会的課題として存在します。もっと広くとらえれば、女性のキャリア形成の困難さや女性役員が少ないことも、産婦人科的課題と無関係ではありません。
このような課題に触れる中で、「社会的課題と医療の橋渡し」をしたいと、特に「病院の外に医者がいることで解決できる問題」を解決したいと思うようになりました。例えば産婦人科でいえば、中絶や性教育は病院の手前でのアプローチが重要です。しかしこのような問題は、病院で待つだけではなく、スマホやSNSを用いたこちらから働きかけるアプローチをしないと、問題を抱えている層に届きません。まさにここを「橋渡し」したいと思ったのです。
そんな折、同じ大学院の先輩であり、既に小児科目線で課題に取り組んでいたのが、代表取締役の橋本さんでした。産婦人科と小児科は「お産の前後」を扱うという意味で、共通する課題も多くあります。もちろん子宮頸がん検診など、小児科とは異なる課題もありますが、オンライン健康医療相談の下地があり、シナジーがある中で始めることが良いと考え、すでに「小児科オンライン」のサービスを展開していたKids Publicに参画しました。
<重見さんが入って変わったことは、何だと感じていますか?>
私が参画した当時、既に今のサービスの中心となる「自治体を中心としたオンライン健康医療相談」の形はできていたものの、「小児科オンライン」を中心とした展開になっていました。まず産婦人科部門の立ち上げを行い、これまでできていなかった妊娠中、さらには妊娠前からのサポートを産婦人科医・助産師で行う体制を作りました。
またもう1つの大きな変化として、学術的な活動・論文執筆を強化したことがあります。当時、私は大学院生として、博士課程で研究の手法を深く学んでいました。この知見を活かし、分析・評価などについてより専門的な取り組みを進め、学会発表や論文執筆などもより推し進めていきました。(https://kids-public.co.jp/research/)
このような活動は医療者からの評価にもつながり、専門性高くサービスを提供しているベンチャー、という認知につながっていると感じています。
学術面も含め、Kids Publicで重視しているのが「本当にこのサービスが健康に寄与するのか」ということです。スマホから医師や助産師に相談ができたら、利用者にとっては便利で、既存の対面でのサポートよりも使い勝手が良いかもしれません。しかし「良いかもしれない」ではヘルスケア関連のサービスは進んではならないと考えています。もし利用者が「相談したから受診しなくてもよい」となって受診を控えたことで、重大な病気が見逃されてしまったら、それは「健康に寄与している」と言えるのでしょうか?
このような点を担保する二つの手段があると考えています。まずひとつ目の手段が研究です。利用者からアンケートを取るだけではなく、実際に得られたデータを用いて研究することで、その効果が正しい方法で測定できます。そしてもうひとつの手段であり、現在、私が社内で医療統括部門として担っているのが、「医療面での質の担保・向上」です。
社内では全ての相談事例を医療統括部門が確認し、「産婦人科・小児科オンライン」に相談してくれた方への回答で、問題のあるものがないかをチェックします。医学的側面からだけではなく、回答の言葉遣いまで含めて確認を行います。さらに、問題のある回答に指摘・改善のアドバイスするだけではなく、相談に従事した医師・助産師がストレスなく回答できる環境や、医師や助産師同士がコミュニケーションできる環境を整備することも大事にしています。いずれも短期的には成果が見えにくいですが、長期的にサービスの信頼性を保つ上では、不可欠な業務と思い取り組んでいます。
相談を寄せてくださる方への回答が、99%正しかったとしても1%間違っているというサービスを、健康医療相談としては提供できません。これを踏まえて実現できたサービスにこそ、価値があると考えます。
<Kids Publicの先に、重見さんが目指すものは?>
ここは橋本さんと同じで、「社会のインフラにしたい」と思っています。使いこなせる人だけが使いこなせるサービスではなく、誰もが使えて、安心・安全を得られる「インフラ」になりたいと日々励んでいます。
病院で待っているだけでは届かない不安・孤立は、未だにたくさんあります。その中でも大きなものが妊娠・出産・育児であり、ここをきっかけに女性自身の健康に寄り添い、解決する。それがKids Public内で抱いている目標です。
今は主に妊娠・出産を対象としていますが、広く「産婦人科」という観点でいえば、その前の思春期から多くの課題が存在します。例えば学校で困った時に専門家にすぐ相談できる仕組みであったり、妊娠を考えた時に最初に相談できる先であったりすれば、より多くの女性の健康を支えるインフラとなることができます。
その先で実現できるかもしれない、「女性の誰しもが、活き活きと明るく生きていける社会」って、活力があって前向きだと、私は思うのです。女性の健康を包括的にサポートし、誰もが使えるインフラとなることが、Kids Publicだけでなく、個人としても達成したい目標です。
<最後に「興味を持ってくれた、新たにKids Publicに来ようとしてくれる方へのメッセージ」を教えてください>
日本の女性・子どもをサポートできる「インフラ作り」をお手伝いしてもらえたら、きっとおもしろい体験になると思います。
Kids Publicは小児科・産婦人科に限っているのが、短所でありつつ大きな長所でもあります。育児は誰しもが当事者になる可能性があります。人口の半分を女性が占めるからこそ、誰もが主体性を持って取り組みやすいテーマです。
だからこそ、医療者も、営業も、エンジニアもフラットにディスカッションしているのが当社の特徴であり、価値です。医者だから偉いとか、専門性が高いから素晴らしいとかいうのではなく、「日本の女性・子どもをサポートする仕組み」に対して、どれだけ寄与できるか。それがKids Publicの大切な文化なのです。
「女性・子ども・家族をサポートできる魅力的な場」をより良くしてくれる仲間を、Kids Publicでは求めています。ぜひ一緒にインフラを作りましょう!