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Q_0006:人機一体社の考える近接操作型マスタスレーブシステムとは?

先の Q_0004 では搭乗型と装着型の比較を、Q_0005 では搭乗型と遠隔操作型の比較を行ない、株式会社人機一体が目標とする人型重機の社会実装においては、最終的な完成形として搭乗型を目指すことを明らかにしました。

そうはいっても、やはり危険箇所においてはマスタスレーブシステムの「操作者(マスタ)と作業機(スレーブ)の距離を物理的に離して安全を確保できる」という利点を活かさない手はありません。また、我々の開発においても、開発中の未完成なシステムにおける実験を全て搭乗型で行なうのは、リスクが大き過ぎます。そこで、我々は搭乗型と遠隔操作型の間に「近接操作型」という概念を考えました(この概念および用語の最初のオリジナルは、広島大学の菊植亮教授です)。これは「操作者がその場に居る」利点を失わない程度にマスタとスレーブの距離を離して操作する、ということです。

マスタスレーブシステムを整理する

先の近接操作型の概念を含めて、マスタとスレーブの距離における分類を整理したいと思います。人機一体社が着目するのは、マスタスレーブ間の機械的連動の有無、そしてマスタスレーブ間の通信時間遅れです。この観点で、人機一体社は以下のような分類を独自に行なっています。

装着型:いわゆるパワードスーツ。マスタとスレーブが一体化しており、通信時間遅れは無視できる。しかし、機械的な連動を強いられる。
搭乗型:いわゆるコックピットに乗る巨大ロボット。マスタとスレーブは分離しており、機械的な連動を必ずしも強いられない。一方で、マスタとスレーブは同一躯体上に設置されており、マスタスレーブ間の通信の信頼性は非常に高く、通信時間遅れは無視できる。
近接操作型:人機一体社の独自概念。マスタとスレーブは分離しており、機械的な連動を必ずしも強いられない。マスタとスレーブは異なる躯体上に設置されているが、マスタスレーブ間の通信の信頼性は非常に高く、通信時間遅れは無視できる。
遠隔操作型:いわゆるテレオペレーション。マスタとスレーブは分離しており、機械的な連動を必ずしも強いられない。マスタとスレーブは異なる躯体上に設置されており、マスタスレーブ間の通信の信頼性は低く、通信時間遅れが無視できない。

上記の分類において、操作者の安全性を損ねるマスタスレーブ間の機械的連動がなく、さらに操作性を損ねるマスタスレーブ間の通信時間遅れを無視できるのは、搭乗型と近接操作型のみであることが分かります。このように整理すると、株式会社人機一体が目指す領域が明確になります。

人機一体社の開発シナリオ

本プロジェクトの基本は搭乗型です。株式会社人機一体は、最終的な完成形として、搭乗型の人型重機の実用機を開発し、社会実装を行ないます。

しかし一方で、開発を搭乗型に限定すると、越えるべきハードルが高くなり過ぎます。技術的には、単に人を乗せて動かすだけなら(むしろ遠隔操作型より)簡単ですが、人の安全性を十分に確保するには、閃き的アイデアだけでどうこうなるものではなく、地道な開発に、膨大な時間とマンパワーをかける必要があります。それは、搭乗型システムとしての「自動車」が、安全性を確保するためにどれだけのリソースを費やしているかを考えても明らかです。

さらに技術だけではなく、法律的問題もあります。人型重機という、既存の法制度の枠外にある新たなシステムを社会実装するには、包括的な法制度検討が必要になると考えます。他方、我々はベンチャーですから、当面の小規模な実証試験を、法的な問題をクリアしながら、如何に迅速かつ効果的に行なうかも課題です(これが人機社で、法務戦略担当者を募集している大きな理由です)。

これらの問題を、難しくしすぎることなく我々が取り扱うには、搭乗型を目指すという本流を守りつつ、我々の独自ロボット技術の優位性を示すことのできる当面の開発目標が必要です。それが、我々にとっては「近接操作型」マスタスレーブシステムに相当します。近接操作型であれば、遠隔操作型に迫るレベルの操作者の安全性確保が可能であり、搭乗型に迫るレベルの操作性確保が可能です。

したがって、当面(おそらく 2020 年頃まで)、株式会社人機一体では、近接操作型のパワー増幅マスタスレーブシステムとしての人型重機を開発します。

ただし、近接操作型は、システムは大掛かりとなり運用性では搭乗型に劣るはずです。また、操作性においても、操作者が搭乗していることによって生じる操作者(マスタ)と作業機(スレーブ)の物理的相互作用(マンマシンシナジー)によって、搭乗型の方が優れているはずです。

もっと分かりやすく言えば、本当に「人機一体」を実現したいならば、搭乗型です。だからこそ、我々の目指す最終的な完成形は搭乗型なのです。

株式会社人機一体では、近接操作型の人型重機開発によって十分に技術とノウハウを蓄積した後、資金とマンパワーを集め、満を持して全てのリソースを投入し、搭乗型の人型重機開発を行ないます。

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▶︎ 2018/01/08(月)13:31:09 = uploaded
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