ソフトウェア開発やヘルプデスクの領域で、多彩なプロジェクトに携わっているアイ・ティ・サービス(ITS)株式会社。今回のインタビューでは、代表取締役の関篤人社長にお話を伺いました。ITS設立前の会社員時代の話から、ITSを立ち上げたときの思い、さらには退職者が少ない理由や、今後のビジョンについて、ご自身の考えを率直に語っていただきました。
プロフィール
アイ・ティ・サービス株式会社 代表取締役社長 関篤人
1958年生まれ。少年時代はラジコンやプラモデルに熱中し、中学・高校・大学では音楽に入れ込み、バンド活動に励む。大学卒業後は、洋服好きが高じてアパレルメーカーへ就職。その後、27歳で大手コンピューターメーカーのディーラーに転職。以来、IT関連機器の法人営業として20年にわたるキャリアを築く。2005年、アイ・ティ・サービス株式会社を設立。現在の趣味は健康管理でゴルフとスポーツジムでのトレーニングと、マッサージ。健康への関心が高く、断食道場に参加した経験も持つ。
「自由にやりたい」という思いで独立。営業として築いてきた顧客基盤があったので、独立してもやっていける自信はあった
- ITSが設立されたのは2005年です。関社長は、どういう思いでITSを立ち上げたのでしょうか?
会社員として勤めている頃から、ずっと「どこかで独立しよう」という思いがありました。会議に出たり、上司に売上を報告したり、そういうことがあまり好きじゃなかったんです。自分の仕事だったら、どんなに時間がかかっても頑張ろうと思えますし、お客様とのお付き合いで遅い時間になるのはまったく気にならないんですが、それ以外のことに時間を取られるのが苦手でした。「自由にやりたい」という思いが強かったので、会社員は性に合わなかったんですね(笑)
- 会社員としては、どんな仕事をされていたんですか?
大学を卒業して最初に入社したのは、渋谷のアパレルメーカーでした。 そこで3年くらい営業として働きました。
ITの世界に入ったのは27歳のとき、1985年だったと思います。「かっこいい仕事をしたい」という理由で大手コンピューターメーカーのディーラーに転職し、法人向けにコンピューターを提案する仕事に就きました。コンピューターと言っても今のようなパソコンではなく、メインフレームやオフィスコンピューターと呼ばれる大型のマシンを扱っていました。
それからいくつかの会社を経験しましたが、仕事内容としてはほとんど変わっていません。IT関連のソフトやハードウェア、ストレージなどを法人向けに提案する仕事をずっとやってきました。アパレルのときから、営業しかやったことがないんです。
- 会社員として20年以上のキャリアがあったわけですよね。会社を立ち上げるとき、不安などはなかったんですか?
長く営業として働いてきて、たくさんのお客様とお取引があったので「独立しても付き合っていただける」という自信はありました。営業とお客様の関係は、結局は個人同士の付き合いですから、仲良くなればずっとお付き合いを続けてくれるものなんです。実際に、会社を辞めるときにお客様にメールを出したら、「応援します」という返信をたくさんいただきました。そのときに、「これはいけるな」と思いましたね(笑)
2でスタートした会社が、今では30人の規模へ。設立から13年で、退職者は5人しかいない
- 最初は何人でスタートしたんですか?
一番最初は、私と副社長の若木の2人でした。私は営業の経験しかなかったので、技術に強い人間が必要だと考え、もともと知り合いだった若木に声をかけて参加してもらったんです。2人で話し合って、事業としては「IT関連機器の販売」「ヘルプデスク」「ソフトウェア開発」の3本柱でやっていくことは決めていました。その後、すぐに若木と付き合いのあるエンジニアが参加してくれて、ソフトウェア開発の事業がスタートしました。立ち上げ当初は、私も含めて7〜8人のメンバーで始まった感じですね。
- 現在は社員が30名以上います。組織が大きくなってきた経緯を教えてください。
ソフトウェア開発は、もともとメインフレーム・汎用機系の開発を行っていましたが、2007年に私の友人が経営する会社から4人のエンジニアを引き受けたことをきっかけに、オープン系の開発にシフトしました。今、システム部には10人のメンバーがいます。ヘルプデスクに関しては、2011年に比較的大きなプロジェクトを請け負うことになり、規模を拡大しました。そこから徐々に人数を増やし、現在は約20人が活躍しています。
- 会社設立から今まで、ITSでは退職者がほとんどいないと聞いています。
もちろん、退職者がまったくいないわけではありません。これまでソフトウェア開発で3人、ヘルプデスクで2人の社員が退職しました。ソフトウェア開発は、途中で事業の方向性を転換したので仕方がない面もあると思います。また、長く同じプロジェクトを担当していると、お客様から高く評価されて「ウチの社員にしたい」というご要望を受けることがあります。本人の意思を確認したうえで、これまで2名の社員が取引先に転職しました。私は、この2人の社員を「嫁がせた」と思っています(笑)
- なぜ、ITSでは退職者が少ないのでしょうか?
あまりルールで縛らないからだと思います。私自身、会社員のときに「自由にやりたい」と思っていたので、社員に規則を押し付けるのが好きではないんです。たとえば、当社の場合、社員がそれぞれお客様先のプロジェクトに参加しているため、職場はバラバラです。ソフト開発部では月に1回帰社日を設けて、社員が会社に集まる機会をつくっていますが、参加するかどうかは本人の意思に任せています。他に用事があればそちらを優先してもらって構いませんし、仕事が忙しいときに「帰ってこい」とは絶対に言いません。
帰社日に会えなかったとしても、こちらから現場に出向いてコミュニケーションをとれば良いだけですからね。私は、もともと営業なので外に出ることは苦ではないんです。何かあればすぐに現場に駆けつけるフットワークの軽さには自信があります。それに、「帰社日に帰ってこない」というのは仕事が順調にいっている証拠だと思っています。逆に、悩みや不安があれば、自然と会社に立ち寄ることが増えるものです。そういうサインは見逃さずに、声をかけるようにしています。
当面の目標は、ソフト開発の増員。社員には自分の「やりたい」ことを見つけてチャレンジしてほしい
- 社員の働く環境については、どのようにお考えですか?なにか配慮していることはありますか?
お客様から新規の仕事を請けるときは、勤務時間や休日などの条件を精査しています。設立当初は、とにかく仕事を請けることを優先していましたが、今はそうではありません。働く環境はもちろん、安定して長く続けられる仕事なのか、社員の成長や価値向上につながる仕事なのか、そういう観点も大切にしています。
- 関社長自身が、お客様と直接交渉されることもあるんでしょうか?
ヘルプデスクに関しては副社長の若木に任せていますが、ソフト開発関連の仕事では私がお客様と直接やり取りすることもあります。中には古くからお付き合いのあるお客様もいますから、仕事だけの関係ではなく、普段から食事に行ったり、ゴルフに行ったり、未だに「昭和のスタイル」で営業しています(笑)
- 今後の事業的なビジョンを教えてください。
ITSでは、設立当初から3つの事業を柱にしてきました。現在は、「ヘルプデスク」と「ソフトウェア開発」がメインになっていますが、今後もこの2つを中心にユーザー数を増やし、リスクを分散していきたいと思っています。現状では、ソフトウェア開発を担うエンジニアの数が少ないので、もっと人数を増やし、ヘルプデスク部門と同様の規模にまで強化していきたいですね。すでにお客様からは声がかかっており、金融系やロボット系など、さまざまな開発プロジェクトの引き合いがきています。こうしたニーズに応えるために、エンジニア経験者だけに限らず、未経験者も含めて幅広く募集し、育てていきたいと考えています。
- 社員にはどのようなことを期待したいですか?
とにかく「やりたい」ことを見つけてほしいですね。社員にはいつも言っているんですが、極端な話、ラーメン屋さんでも良いんです。新しい分野の仕事がやりたいという社員がいれば、お金を出す用意もあります。もちろん、ラーメン屋さんが簡単にできるとは思っていません。ただの思いつきではなく、その分野の仕事の将来性を掴んだうえで、続ける覚悟があるのなら、会社として積極的に支援していきます。まったく違う分野の仕事でもOKです。「やりたい」と思うことがあれば、どんどん自分から手を挙げてほしいと思います。