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クライアントと共に情報を編む。コンテンツディレクターの存在意義

インターネットの世界では、ジャンルもアウトプットもさまざまなコンテンツが求められています。そんななかどんなスキルや考え方がコンテンツやその制作者に求められるのか? インフォバーンで柔軟にコンテンツ制作に向き合い、その高いクオリティでコンテンツディレクターの中核を担っている大里耕平さんに話を聞いてみました。


専門性が高いコンテンツを多く手掛ける大里さん。インタビューでもそのこだわりを聞けるものと思っていましたが、話を聞いて見えてきたのは、コンテンツ制作に止まらない「編集」への解釈と、お客様とパートナー関係を築く「クライアントワーク」への想いでした。


想定外のジャンルや状況下でのものづくりは、貴重な経験


ーーインフォバーンではデジタル上で展開するコンテンツを多く手掛けていますが、出版社での編集経験がある方を積極的に採用しています。大里さんもそのうちのおひとりですが、いまはどんな仕事に関わっているんでしょうか?


最近は主にBtoB(企業間取引)でビジネスをしているクライアントを担当しています。「社会課題」と呼ばれるような大きなテーマに関係する、いわゆる堅めのコンテンツを作ることが多いですね。具体的に例をあげて言うと、ものを作って運んで売るまでの「サプライチェーン」に特化したオウンドメディアを長く担当しています。このメディアにはサプライチェーンの現場の情報を発信し、大きな社会課題を解決するための糸口を探るという目的があります。


それと独立行政法人が公開する調査報告書っていう、インフォバーンのなかでは珍しい仕事もやりました。このアウトプットはPDFです。国際的な調査機関が発表しているデータを元に、2050年には社会がどうなるかというビジョンや、現在進んでいる研究の事例などを編集しました。


他にも企業活動をサステナビリティの側面からレポートする報告書を編集するなど、ESG経営やSDGsなどを前提に長期的な視点を持って制作に取り組む仕事が増えています。さまざまなクライアントの担当をしているのですが、この領域における課題感は、どんな企業にも共通してると感じますね。


ーー大里さんは今お話しいただいたESG経営やSDGsなどに関連したプロジェクトに多く携わっていますよね。そこで自身の編集経験をどのように生かしているのでしょうか?


僕はこれまで人の才能や意見を広めるための編集を多くやってきました。編集とは「集め」て「編む」ことです。情報を集めて一つのコンテンツへと編んでいく。出版物をつくっているときは個人が生み出す情報を編集してきましたが、その対象が個人から会社へと移行したのが今の僕の仕事だと捉えています。対象が変わっただけなので、これまでやってきた編集の経験がそのまま生きているのではないでしょうか。


ESG経営やSDGs文脈の仕事で難しさを感じるのは、編集の「集める」仕事です。これまでは調査をしたり、適切な対象者に取材をしたりといった手段で「編む」ための情報を集めることができました。しかし、今の仕事は取材をするだけでは情報を集めることができません。なぜなら、情報そのものが取材対象者の中で意識化されていない場合が多いからです。会社の良いところも悪いところも、働いている人が「当たり前だ」と思ってる領域に存在しています。それに当事者が自ら気づくのは難しい。


ではどうすればいいのか。答えは「クライアントと一緒に集める」です。「何を発信しようか」という時点では材料がないので、それを集めたり作ったりするところから一緒にやっていく。というよりも、一緒にやらないと成立しないのが今の仕事の特徴だと思います。クライアントの会社に入り込んで、どういう組織文化なのかっていうところも含め、対話しながら知る必要があります。

フィールドワークする編集者




ーーなるほど。クライアント企業の中に入っていかないと編集の「集める」ができなくなってきているんですね。


そうですね。いろんな企業でフィールドワークしてるようなもので、一定期間ごとに軽く転職してるような気持ちです。ただ、完全にクライアントと同じ視点になってはいけません。クライアントに寄り添い共感もしますが、第三者としての視点を持って臨むようにしています。


なぜなら、そうしないと本当の意味でクライアントをサポートできないからです。クライアントは、僕らが提案することを事前に理解している場合も多くあります。しかし、クライアントがそれをそのまま会社の中で言っても「アイツが言ってるだけ」や「アイツってそういう奴だから」と思われたりして、角が立ってしまうから言えないことも多々ある。それを編集者という第三者の立場で「世の中って今こうなってますよ」と説明し、クライアントの担当者が果たそうとしている役割をサポートする姿勢が大切です。


また、ESG経営やSDGsなどに関連したプロジェクトでは、会社の非財務情報──CO2をどれだけ出してる、人権にどれだけ配慮してる、ダイバーシティ&インクルージョンはどうだ、といったような情報を発信するのですが、企業そのものが主体の発信になるのでクライアントの担当者には大きなプレッシャーがかかります。そんな仕事を「失敗したら会社に大きな影響を与えてしまう」と一人で抱え込むのは辛いと思うんです。


そこで僕らが同じ視点で一緒に悩むのではなく、第三者的な立場で介入することが大切だと考えています。もちろん、相互理解がある前提ですが、クライアントには僕らをうまく使ってほしい。今のクライアントとはお互いの良いところも悪いところも分かった上で「じゃあこういう組み方をしましょう」と役割分担ができていて、うまくいっている実感があります。


「対話」でクライアントとパートナーに


▲大里さんはインフォバーンの「ボードゲーム部」の部長でもあります。これは会社で保有しているボードゲームのほんの一部


ーーいわゆる発注元と発注先といった上下の関係ではなく、信頼で繋がった横の関係というイメージでしょうか?


パートナーっていう表現が一番しっくりきますね。例えば、3年ぐらいお仕事させてもらっているクライアントがいるのですが、仕事をはじめた当初はそこまで信頼されてなかったはずです。そこから仕事を一緒に取り組んでいく過程で、信頼関係が育まれました。「この人達ならちゃんとインプットさえすれば、自分達にはできない何かを形にして返してくれるだろう」と期待してもらえるようになったと感じます。3年前にはもらえなかった大切な情報も共有してもらえるようになり、チームワークも向上してきました。それもあってさらに頑張ろうと思えています。


最近も、あるプロジェクトが完了したのですが、クライアントから「お疲れ様でした。課題はあるけど当初の構想を実行できたし、手ごたえも得られてよかったです。ありがとうございました!」みたいな締めをいただいたんですよね。その仕事が終わっても、関わりは続くはずです。そういうのはすごくいいなって思いました。


ーー素敵な関係性ですね。そういった関係になるにはどういった働きかけが必要なのでしょうか?


インナーのコミュニケーション施策をお手伝いする際には、クライアント企業の社員の方々にたくさんインタビューするので、対話的な質問を心がけています。インタビューの質問は時に「僕はこう思ってるんですけどどうですかね」といった自説を強化するようなものになりがちです。その質問を投げて「確かに近いかもしれませんね」という回答を期待している。それでは、質問者が元々持ってた考えが強化されるだけで、本当に必要な情報は集まりません。


その人しか知らないことを聞きたいので、「僕にはこう聞こえたんですけど、こういう意味ですか? それともこっちですか?」と質問するようにしています。そうすると「どっちでもなくてこうです」といった回答が返ってきて、ちゃんとその人しか知らない情報を得ることができます。こういった対話的な質問が、情報を得るためにも、信頼関係を築く上でも大事だと痛感しています。


また、「言われてないことをやる力」も大事だと思います。最近は、そもそも手段が決まってない状態で仕事がはじまることが多いので、能動的に施策を提案しています。今のクライアントも「こうきたか~!」と提案を楽しんでくれる懐の広い方が多くてありがたいですね。


僕とは違うタイプの人と一緒に働きたい



ーー現在はコンテンツ制作だけでなく様々な仕事に取り組んでいますが、入社当初はどんな仕事をしたいと思っていましたか? 大里さんのモチベーションはどんなところにあるのでしょうか。


自分は「こういうことがしたい!」という野望を持ってインフォバーンに来たというよりは、これまでの経歴が活かせる場所を探していたというほうがしっくりきます。


新卒で就職したWeb制作会社で「MOOC」と呼ばれるeラーニング動画の撮影・編集をしているうちに欲が出てきて、これの原液をつくるところをやりたいという動機で出版社に合流しました。学生時代は、電子書籍に興味があってアルバイトで作ったりしていたので「理系の出身でWebにも詳しくなった俺が、出版とテクノロジーの両方分かる人間として一旗あげてやるぜ」みたいに思っていたんです(笑)。


ただ、前職の出版社では自分の力不足で挫折した経験が大きかったな、といま振り返ると思いますね。著者の名前で本が出るので、自分が何かミスをしたらその人の名前に傷がつくというプレッシャーが大きかったし、当時の自分の知識や経験など能力不足も手伝って、自分が担当した書籍を月一冊、世に問うというのが体力的にもメンタル的にもかなりキツかった。


それでもその出版社で、企画した書籍に「どんな仕事でも、プロフェッショナルになると宣言をして、10年以内にプロになろう」という趣旨のものがあったんですが、それに倣って自分も10年は編集者としてプロフェッショナルを目指すと宣言したんです。


その後、これまでの知識と編集スキルが活かせる場所としてインフォバーンに入社したのが経緯です。いま思えば、その経験があったからこそ、企業が情報を発信する大変さにも共感できます。


ーーそうだったんですね。前職での仕事と今やってる仕事では、求められるスキルが異なると思うのですが、それにどう対応してきたのでしょうか?


新しく覚えたことを活かしながら「次はこの仕事ができそうだ」と思えるものに手を挙げ続けたら仕事がどんどん面白く転がっていったという感じです。


何かひとつのことに執着するのではなく、とにかく手を動かしてみて、やるからにはたくさん情報を集めることを心がけています。自分なりの軸で仕事をつなげていって、ある程度の数を経験したあとで振り返ると「結果的にこの特定ジャンルに関しては他の人よりできるようになったかも」という。


『HUNTER×HUNTER』にキメラアントっているじゃないですか、ほかの生物を捕食することで能力を吸収していく、それを仕事でやって、できることを増やしていくイメージです(笑)。


そのおかげか、今めっちゃ面白いんですよ、仕事。社内のメンバーに対しても「マジでみんな仕事をつなげていった方がいいぜ」って思っています。


ーー面白いと思う瞬間はどんな時ですか?


「あ、わかったかも!」と思う時です。「よくこの条件から目的地につながる道をみつけたな」みたいな時はテンションが上がります。あと、それを実際に試して成果が出たときも嬉しいですね。最初は「本当にこの方向で正しいの?」と半信半疑だった人たちが、仕事が進んでいく中で僕の説明と同じことを言いはじめたりするんです。そんな時に手ごたえを感じますね。


あとはクライアントを巻き込んで一体感を感じた時でしょうか。クライアントとパートナー関係になり、試行錯誤を繰り返しながら一緒に仕事を進めていくと、文化祭の準備を一緒にやったような一体感や達成感を感じます。価値観や考え方が違うと感じていたクライアントとわかりあえる。「仲間が世の中に増えたな」って思えるところがいいところですね。


ーー最後に、インフォバーンのコンテンツディレクター職に興味がある人にぜひ、メッセージをお願いします。


僕、「自分に似た人とはあまり一緒に働きたくないな」って思うんですよ。自分はできないことがいっぱいあるし、異なる能力を持った人と組んだ方がチームとして強いし面白いはず。だから、違う考え方や能力を持った人と働きたいですね。会社も、似たような人ばっかりじゃ、組織が脆弱になると思います。


ただ、よく「ダイバーシティが大事だ」と言いますが、考え方の違う人と一緒に働くのは普通に不快な部分もあって、そうなるとケンカとか対立も絶対起こるはずなんです。でも、それは必要なことというか、衝突を楽しみながら仕事していけたらいいなと思っています。対立する物事から新しいものの見方を見つけ出す「弁証法的」なスタンスでいたいなと。なので自分は大里とは違うなと思った人、ぜひインフォバーンに応募してみてください。


▼その他、インフォバーンのコアな情報(!?)はポッドキャストにて配信中。大里さんゲスト回も更新されましたので、ぜひチェックしてみてください! #22〜#24が大里さん出演回です。マジック:ザ・ギャザリングなどについて熱く語ってます。

https://anchor.fm/radiocc

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