皆さんこんにちは、ゲーム事業部の塚本です。
先日の2026年7月、SUNOから流出したとされるコードに、YouTube Music、Deezer、Geniusなどから学習用の音源や歌詞を収集する処理があったと報じられました。YouTube Musicだけで約201万件という記録や、アカペラ音源を探す処理も確認されたとされています。SUNOは古いコードが中心だと説明し、公開音源のAI学習はフェアユースに当たると主張しています。
ただし、コードから特定のアーティストをどう学習したかまでは分かりません。そこで、実際の生成結果にアーティストの“カラー”がどこまで現れるかを試しました。
流出コードから見えてきたこと
404 Mediaによると、流出した2023~2024年ごろのソースコードには、YouTube Music、Deezer、Geniusなどから音源や歌詞を収集する処理が記されていました。YouTube Musicから約201万件を取得した記録に加え、アカペラ音源やポッドキャストを集めようとした形跡もあり、歌声や発音まで学習対象としていた可能性があります。
SUNOは、流出したのは現在使われていない古いコードが中心だと説明し、公開された音楽をAI学習に利用することはフェアユースに当たると主張しています。
今回重要なのは、著作物の学習利用そのものではなく、これまで不透明だった収集元、規模、方法の一部が、具体的なコードや数値として明らかになった点です。
では、アーティストの個性は生成結果に現れるのか
流出コードから分かるのは、あくまで学習用データの収集方法の一部です。特定のアーティストがどのように学習され、生成時にどの曲が参照されているのかまで分かったわけではありません。生成曲が誰かに似て聞こえたとしても、そのアーティストの楽曲を直接参照した証拠にはなりません。
そこで今回は、学習データの中身を推定するのではなく、実際の生成結果にアーティストを思わせる“カラー”がどこまで現れるのかを、聴感によって検証することにしました。
検証方法
比較のため、約61.5秒の完全オリジナル曲を新たに作成しました。112 BPM、4分の4拍子で、構成は「イントロ4小節→ヴァース8小節→プリコーラス4小節→コーラス8小節→アウトロ4小節」。ピアノ、ガイドメロディー、小さな拍ガイドだけを入れ、特徴的なリフやドラム、ベースライン、音響処理は避けました。
検証対象は、年代と音楽性に幅を持たせた4組です。
・ビートルズ(1966~1969年ごろの中後期)
・マイケル・ジャクソン(『Off the Wall』~『Bad』期)
・YOASOBI
・米津玄師
検証結果
1. ビートルズ――最も安定するが、最も固定化される
条件Aだけで4曲とも明確にビートルズを連想させ、最も安定した一方、生成曲は似通い、多様性は低めでした。SUNOが指定語から強い典型パターンを呼び出したように感じます。
条件Bでも大きな変化はありませんでしたが、バラードを日本語で歌わせると70年代日本フォークに聞こえ、当時の英米音楽からの影響を連想させる結果となりました。
2. マイケル・ジャクソン――編曲だけでは届かなかった
条件A、Bともに80年代シティポップや一般的なファンクに聞こえ、固有のカラーには届きませんでした。英語歌詞では「アッ!」という掛け声が加わったものの、大きな変化はありません。
本人らしさは高音域、ファルセット、鋭い発声、細かなシンコペーションなど歌唱に強く宿るため、中音域の固定メロディーでは引き出しにくかったと考えられます。
3. YOASOBI――歌唱から曲の展開へ
条件Aでは、全体として即座にYOASOBIと感じるほどではないものの、実際の歌声をサンプリングしたかと思うほど近い瞬間がありました。ただし、これはあくまで聴感上の印象です。
条件Bでは歌唱だけでなく、ブレイクから疾走感のあるフレーズへ入り、再びブレイクする構成まで近づきました。高い女性歌唱やピアノ主体の進行、密度の高い編曲など、詳細指定が有効に働いた例です。
4. 米津玄師――複数の特徴が重なって現れる
条件Aでは、気だるさと力強さを併せ持つメロディーが、かなり米津玄師に近く感じられました。条件Bはジャジーに寄りましたが、本人らしさは強く残りました。
そのカラーは歌唱、拍を外すフレーズ、明暗が同居する和声など、複数の要素から生まれているようです。一方で、詳細指定は解像度を高めても、必ずしも類似度を高めるとは限りません。
同じ曲を使うことは、本当に公平なのか
同じメロディー、同じコード、同じ構成を使えば、比較条件は揃います。しかし、それがすべてのアーティストにとって公平とは限りません。
ビートルズのようにコード、コーラス、時代的編曲にカラーが現れやすい対象では、Cover方式が機能しました。YOASOBIも歌唱と曲の展開に特徴が現れました。一方、マイケル・ジャクソンのように、声域や身体的なグルーヴ、歌唱リズムそのものが個性の中心にある対象では、固定メロディーがその特徴を抑えてしまいます。
実験条件を統一することと、各対象の個性を等しく測ることは同じではない。この点も、今回の検証で得られた重要な気づきでした。
結論:アーティストのカラーは、それぞれ違う場所に宿っていた
今回の結果だけから、SUNOが特定のアーティストをどのように学習したかを断定することはできません。
また、似て聞こえる生成結果が、そのアーティストの楽曲を直接参照した証拠になるわけでもありません。
それでも、同じオリジナル曲を使って比較すると、アーティストごとに異なる形でカラーが現れました。
ビートルズは、コード、コーラス、時代的な編曲に現れた。
マイケル・ジャクソンは、共通曲では捉えきれない歌唱と身体的グルーヴにあると考えられた。
YOASOBIは、歌声に加えてブレイクと疾走を組み合わせた展開に現れた。
米津玄師は、旋律、歌唱、和声、音の陰影の複合として現れた。
SUNOは、アーティストの名前を知らなくても、その人を形づくる音楽的特徴の組み合わせから、ある程度の“カラー”を生成できます。しかし、その再現は一様ではありません。ある人はジャンル名だけで強く現れ、ある人は歌声に、ある人は曲の展開に、そしてある人は複数の曖昧な要素の重なりとして現れる。アーティストの個性は、一つの「スタイル」という言葉には収まりきらないようです。
最後に今回作った曲の中で一番似ていると思った曲を公開します。
この記事が気になった方はぜひ聞いて見て下さい。
それは、また次の記事で!
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