こんにちは、エンジニアの飯塚です。
開発、調査、メッセージの添削まで、最近はひと通りAIにお願いしていますが、他の人がAIをどう使っているかは意外と知りません。そこで社内のエンジニア3人に、日頃の使い方と、使ってみて何が変わったのかを聞いてみました。
使い方は3人ともバラバラで、しかも一番AIに任せている人が、一番忙しそうでした。先に結論を書くと、AIで変わったのは仕事の量ではなく速さです。そしてその速さは、社内だけの話ではありませんでした。
前提:使えるAIツールは決まっている
3人の話に入る前に、社内のルールに簡単に触れておきます。
弊社では業務でのAI利用について「生成AIガイドライン」が定められており、入力した情報がAIの学習に使われない設定・プランで利用することが前提になっています。AI機能を備えたツールに会員登録したりアプリをインストールする際は、実際に業務で使うかどうかに関わらず事前に社内申請が必要で、担当者が安全性を確認できたものだけを使う仕組みです。
加えて、この規模の会社では珍しいかもしれませんが、弊社はISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証を取得しています。よく耳にするPマークが氏名や住所などの個人情報を対象とした国内規格である一方、ISMSはお客様のデータや技術ノウハウを含む情報資産全体を対象とした国際規格です。
エンジニアの立場から言うと、この手のルールは窮屈になりがちですが、線が明確に引かれているので「この情報はAIに投げていいのか」で迷う時間がありません。
つまり、使えるもの、範囲は決まっている。その枠の中で、3人は何をしているのか。
エンジニアOさん:まず「探す時間」が消えた
使っているツール:Gemini
Oさんの用途は主に2つ。プログラムを動かしたときのエラー原因の調査と、契約書などのドキュメント作成補助です。
ドキュメント作成では、たとえば「提案書のひな形を作ってほしい」という依頼に、必要な条件を添えて投げるという使い方をしています。
効果が大きいのはエラー調査のほうだそうです。
「ハマると2〜3時間かかるようなエラーでも、原因はこの中のどれかではないかとAIが当たりをつけて提示してくれます。探す手間がかからなくなったので、大幅に時間短縮できています」
原因の候補を絞ってもらってから自分で確かめにいく、という順番になるので、調査の入り口が一気に短くなる。まずはここが、一番分かりやすい変化だと思います。
では、開発のほとんどをAIと進めている人は、どれくらい楽になっているのでしょうか。
エンジニアMさん:開発のほとんどを任せた結果…
使っているツール:Claude Code / Claude
自社開発のスマートディプレイ「GUIDE01」について、アプリのコードを書くところから、開発に関してはほとんどの場面で使っているというMさん。
「バグで行き詰まったときに、参考になる情報がないか探すのにも使っています。日常のちょっとした疑問を投げることもありますし、雑談することもありますね」
精度についても手応えはあるようです。
「だいたい思ったように仕上がってきます。Googleで調べるよりも早いので、その点はかなり助かっています」
3人の中で一番、多くの仕事をAIに任せている人です。当然、一番余裕があるはずだと思って聞いてみたのですが、返ってきたのはこんな言葉でした。
「作業の数で言えば確かに減っているんですが、仕事が早く終わる分どんどん次の作業にいくので、体感としては忙しい感じもします」
これは私もよく分かります。浮いた時間はそのまま余裕にはならず、次の着手に消えていく。AIは仕事を減らしてくれるのではなく、進む速度を上げる道具なのだと思います。
そしてスピードが上がるほど、判断する回数も増えます。AIの成果物は完璧ではないので、出来上がってきたものをレビューして仕上げ、最終的に責任を持つのはエンジニア自身の仕事です。
ここまでは、自分の手元が早くなったという話です。ただ、次のHさんの話を聞いて、変化はそこで収まらないことが分かりました。
エンジニアHさん:AIに役割分担をさせる
使っているツール:Claude Code / ChatGPT
Hさんは、用途によってツールを明確に使い分けています。
まずChatGPTは、お客様とのコミュニケーションのサポート役。
「専用のセッションを作っていて、社名や氏名をマスキングした上で文章をまるっと投げると、自分の文章を添削してくれます。『「OKです」という主旨の文章を、長い文章で』のように依頼して、メールの文面を考えてもらうこともあります」
私もお客様向けの資料を作るときやメッセージのやり取りでAIを使っているので、ここは近い使い方です。ただ、マスキング用の専用セッションを用意しておくところまでは徹底できていませんでした。
そしてClaude Codeでは、AIに役割分担をさせています。
「同じClaude Codeの中でも、上位のモデル(メインエージェント)と、その下のモデル(サブエージェント)で仕事を分けています。メインには問題の分解とサブへの実装依頼をさせて、実装が終わったらメインがそれをレビューする、という仕組みです」
モデルごとの特性についても、記事などで得た情報をもとに頼む内容を変えているそうです。AIを一つの道具として使うのではなく、AIのチームを組んでいる感覚に近いかもしれません。
HさんがAIの活用で意識しているポイント
Hさんが特に意識しているのは、次の3点だといいます。
- 嘘をつかせないこと
- 出てきた文章が長くなりがちなので、何を言いたいのかを明確に伝えさせること
- トークンの無駄遣いを減らすこと
そのための工夫として、サブエージェントがさらに別のサブエージェントに質問したり仕事を依頼することは明確に禁止しているとのこと。役割の階層が崩れると、何を根拠に出てきた実装なのかを追えなくなるので、これは納得の線引きです。
「社内でClaude Codeがエンジニアに解禁された早い段階で、何気ない日常会話から自分の性格を分析させて、それをプロフィール情報として覚えさせました。おかげで、虚偽や不確定な情報が混ざりにくい対話ができている感覚があります」
普段から自分のことを分析させるなど、自分という人間を理解してもらうことで精度が上がるんですね。
変化は、社内だけで止まっていなかった
ここまで組み立てた結果はどうか。Hさんの答えは、前半と後半でレイヤーが違っていました。
「実装の部分は格段に早くなりました」
これは想像がつきます。ただ、続きがこうでした。
「お客様側も企業としてAIツールを導入されているケースが多いので、提案や資料のやり取りで話が通じやすく、物事が早く進むことがあります」
まとめ:速くなったのは、社内だけに収まらなかった
3人に共通していたのは「楽になった」ではなく「早くなった」でした。空いた時間は休憩にはならず、次の仕事に回っていく。使っているツールも使い方も三者三様でしたが、そこだけは全員同じでした。
ただ、手元が速くなっても、提案の前提から説明し、資料の確認に何往復もかかれば、プロジェクト全体の速さとしてはあまり変わらない可能性もあります。そして、Hさんの最後の一言が印象に残っています。
お客様もAIを活用されていると、何ができて何ができないのか、どこを人が見るのかを一から説明しなくても話が通じる。いわゆる「話が早い」というやつですね。前提が同じなのでスムーズに議論が進みます。私も提案資料やメッセージで毎日AIを使っていますが、同じことが相手側でも起きているとは結びつけていませんでした。
そしてこれが成り立つのは、AIツールの活用について「会社名や個人情報はマスキングする」などのルールが決まっているからです。承認されたツールだけを使い、入力した情報が学習に使われない(オプトアウト設定)前提が揃っているので、案件ごとに「今回はどのAIを使っていいですか?」「この情報は入力してもいいですか?」と確認から始めずに済みます。
冒頭に書いたルールやISMSは、慎重に進めるためだけのものではなく、こうした細かい部分の効率化にも影響しています。
もしこれから社内でAIを広げていきたいなら、どのツールを許可するかと同時に、AIにどの範囲の情報まで渡していいのか、そのあたりを先に取り決めておくと動きやすいと思います。弊社の場合は、そこが速さにも繋がっています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。社内でのAIの使い方は外からは見えにくい部分だと思うので、少しでも参考になれば嬉しいです。