株式会社はまか|共同代表インタビュー【全2回 第2回】
前回(第1回)では、エンジニアとしての10年間、2年間の沖縄生活、カウチサーフィンで育まれたおもてなしの原点、そして株式会社はまかの共同創業に至るまでの軌跡をお届けした。
今回は、はまかが手がけた宿泊施設「森の巣箱」とサウナプロジェクトの誕生秘話から、地域共存への取り組み、そして「一緒に働きたい人」へのメッセージをお届けする。
沖縄の絶景を独り占めできる本格サウナ。それは、周囲の反対を押し切り、「好き」を信じて突き詰めた先に生まれたものだった。
誰も知らない森の中に、おじいが10年かけて作った秘密基地があった
——「森の巣箱」は、もともとどんな場所だったんですか?
沖縄のおじいが、10年くらいかけて少しずつ、一人で山を切り開いてDIYで作った場所なんです。幼少時代を沖縄で過ごし、広い世界を求めて沖縄、そして日本を飛び出し世界でのビジネスを終えたおじいが沖縄に戻り、子どものころ遊んでいた秘密基地を切り開いていった。
雨が降ったら屋根が必要、風が吹いたら壁が必要、夜泊まるならシャワーが必要——そうやって1つずつ必要なものを作り足していった場所が、気がつけばそこにしかない世界観を持つ空間になっていた。。
そのおじいが友人に、「この絶景を一人占めするのは贅沢すぎる。カフェにして色んなひとに楽しんでもらいなさい」とアドバイスを受け、カフェとしてオープンしたタイミングでちょうど私たちがそのおじいと出会い場所に招いてもらって。紆余曲折ありつつも、そこからはまかがその場所を引き継ぎ、宿泊施設に生まれ変わらせていきました。
——事業化するにあたって、「変えてはいけない」と思った部分は?
雰囲気、ですね。世界観というか。おじいが見てきたもの、経験してきたことの積み重ねから産み出されたであろう、我々だけではぜったいに出せない雰囲気。自分がどこの国にいるのかさえ分からなくなってしまうような、他にはない世界観。そこだけは残したかった。
10年間沖縄の過酷な天候にさらされた建物は宿泊施設として運営できる状態ではなかったため、一度取り壊し、一から作り直しました。でもカフェとして運営している建物は比較的新しく作られたものだったので、外観や雰囲気の核心部分は極力活かしつつ自分たちでリフォームを行いました。
「沖縄でサウナに入る人なんていない」——それでも諦めなかったロビー活動
——サウナのプロジェクトは、どのように生まれたんですか?
もともと森の巣箱の敷地内に、もう1棟建てられるスペースがあったんです。最初はそこに別の宿泊棟を作る計画で進めていました。1グループ2家族や2カップルが別々の寝室で寝ることができるように。工事も60%ほど進んでいました。しかしそのタイミングでコロナの流行が始まりました。
大人数での旅行の需要がなくなってしまいました。
ちょっと話を戻して会社設立当初、僕は数ヶ月東京の事務所に泊まり込みシステム開発などを含む様々な業務を行い、数日沖縄の自宅に帰るという生活をしていました。
東京で過ごしている日は、業務後、もしくは途中で気分転換に銭湯に通っていました。そこでサウナの良さに気が付きました。その後、森の巣箱に行くたびに絶景の中で森の音を聞き、ここで外気浴ができたら最高だろうなぁ~、と思うようになっていました。
ある時、別の宿泊棟の開発着手前に、現地に集まり現場を見ながら「空いているスペースをどう宿泊棟として設計しよう」と話し合う機会がありました。そこで、そもそも宿泊じゃなくてサウナはどう?と提案をしたのですが、「サウナはだめでしょ、沖縄では」とその場にいる全員に一蹴され「そっか」となったことがありました。
けど、また東京に戻り銭湯のサウナに入るたびに、森の巣箱でサウナを作ったらどんなに良いか、という思いが強くなっていきました。
当時、共同代表の西村はサウナにあまり入ったことがなくて。だから「サウナを作ろう」と言っても全然ピンとこない。それでも私は東京に行くたびに銭湯のサウナに入り、腕にサウナの入場証のテープを切らずに増やし続けて、それを西村に見せては「また行ってきた」ってアピールしていました(笑)。
「一時期、腕にそのテープがたくさんついてた。西村が『また行ったの?』って呆れるくらい(笑)」
転機は、事務所の近くの銭湯がクラウドファンディングでサウナをリニューアルしたことでした。会社で支援して、できあがったサウナに西村が行ってみたら、「これはいい」と。そこから西村の方から「良いことを思いついた。あそこにサウナを作るのはどう?」と提案してきた。
ただ、その時点でもう宿泊棟の工事が60%ほど進んでいました。そこで計画変更を相談して、サウナ棟に切り替えたんです。コロナ禍で大人数の旅行自体がなくなっていたタイミングでもあったので、複数棟よりも「ここにしかない体験」を作る方向に舵を切りました。
——周囲からは反対もありましたか?
結構言われましたね。「沖縄でサウナなんて入る人いないでしょ」「宿泊事業がコロナで大変な時に何やってるんだ」って。水を冷やす機械、サウナストーブ——ちゃんとしたものを作ろうとするとお金もかかる。だからこそ反対意見も出やすかった。
「でも、そこで折れていたら、がっかりするサウナができていたと思う。人の言うことを聞かずにやったから、こうなったんです」
好きだから突き詰められる。そして、突き詰めたからこそ本物になる。2022年12月、「サウナ 森の巣箱」はグランドオープンを迎えた。構想から約2年の歳月をかけた挑戦だった。
「サウナってどうやって作るんだ?」——ゼロからの試行錯誤が、設計眼を育てた
——サウナを作る上で、一番難しかった部分は?
そもそもサウナを作ったことなんてないので、全部ゼロから調べるところから始まりました。水風呂の温度を下げるにはどうすればいいか、サウナ室内の木の素材は何を使えばよいのか、熱、新鮮な空気を効率よく回すには吸気、排気はどうするべきか。本を探して読んだり、銭湯の方に聞いたり、業者の方に聞いたり。
設計の部分でも学びが大きかったですね。サウナ室・水風呂・外気浴スペースの位置関係がすごく重要で。今度もう一度ゼロから作るなら、こうしたいという改善点はたくさんあります。他の施設に行っても、この設計を分かっている人が作ったんだなとか、ここはもう少しこうした方がいいのにということが見えるようになってきました。
——設計でこだわったポイントは?
絶景です。森の中から鳥や虫の声を聞きながら、海が見える。その景色を外気浴スペースで独り占めできる——東京にはこんな場所はない、「ここでしかできない体験」をデザインしたかった。それが私たちが作れる、最大の価値だと思っていたので。
「ここでサウナ入れるのか!」——ゲストの叫び声が聞こえた瞬間
——オープン後、ゲストの反応はいかがでしたか?
初めて予約したゲストが来た時、遠くから「これか!」「ここでサウナ入れるのか!」という叫び声みたいなのが聞こえてくるんです。「狙い通りだ」と思いましたね(笑)。わざわざここまで来てくれた人が、見た瞬間にそういう反応をしてくれる。それがすごく嬉しかった。
自分自身も品質確認のために入ることがあります。もちろん「整う」楽しさもありますが、ゲストにとって問題なく機能しているか、改善点はないかを確かめる場でもある。作り手として入ると、見えてくるものが全然違うんです。
地域に根付くとはどういうことか——向こう島営業所、相談窓口、そして町内会へ
——向島に営業所を開設したことで、現場の対応は変わりましたか?
開設する前までは事務所にいるメンバーは多くて5〜6名でしたが、今はピークの時間帯で25名ほどいます。できることの幅が全然違う。たとえば、ゲストのレビューを週1回全件チェックして、マイナスポイントを現場で修正できる体制が作れるようになった。以前はそこまで手が回らなかった。
常にゆとりある人数が事務所にいるので、1名が緊急対応で現地に向かっても、別のスタッフがゲストへのメッセージ対応を継続できる。有給も取れる。以前は本当に大変でしたね。
——地域の方々との関係づくりについては、どのようにお考えですか?
民泊は、どうしても近隣との摩擦が起きやすい業種です。以前は深夜の騒音でクレームをいただくこともありましたが今は窓を2重窓にするなど、週次レビューチェックによる現場改善で、大きなトラブルはほぼなくなりました。
それよりも今取り組んでいるのが、町内会への参加です。これまで一部のエリアでは町内会費を払っていましたが、今は拠点があるすべてのエリアで支払い、「何か困っていることはありますか?」と直接聞ける関係づくりを進めています。地域の困りごとに、はまかとして何かできないか模索しているところです。
「お祭りで神輿を担ぐ若者がいないと聞けば、スタッフが参加したり、ゲストを連れて行ったりしたい」
地域の中に入っていくこと——それが本当の意味で根付くということだと、共同代表は考えている。地域に受け入れてもらえる民泊を作ること——それは目標であり、現在進行形の取り組みでもある。近隣説明に行けるような、地域の方の懐に入れるような人材を意識して配置しているのも、そのためだ。
はまかで活躍する人の共通点——「楽しそうに働いている」ただそれだけ
——はまかで成果を出している人に共通する特徴はありますか?
「楽しそうに働いている」こと、それだけですね。好きなことを突き詰めているから楽しい、楽しいからもっとやりたくなる。はまかの仕事も、それと同じだと思っています。
——面接では、どのような点を見ていますか?
雰囲気、話し方、信頼できるかどうか。あとは「この人は、はまかの業務と合いそうか」という点ですね。表情とか、質問に対するレスポンスの速さも見ています。明確なチェックリストがあるわけではないですが、「雰囲気がいい人」という感覚は大事にしています。
私が採用に関わった印象的なケースをお話しすると——ある方は、30代後半まで業務委託やフリーランスとして生計を立ててきた方でした。初めて会社員の面接を受けるということで、最初の面接では緊張のあまりうまく自分を表現できなかったという。20代はゲームに費やしてしまったという後悔もあって、自信もなかった。でも2次面接で話してみたら、内側に熱い思いがある。「1〜2年以内に、この会社でなにかすごいことをやってみせます」という言葉が出てきた。今、着実に信頼を積み重ねています。
別のケースでは、歌舞伎町で夜のお仕事をしていた方が清掃スタッフとして入社し、ある時「プログラミングに興味がある」という話になった。子どもの頃からLinuxを触っていたというバックグラウンドがあって。今はシステムチームの一員として自社システムの開発を行いつつ自分の仕事を超えて、困っている人を手伝いに行くような働き方をしています。たまに自分の仕事が増えすぎて大変そうにしているけど(笑)。
履歴書の肩書きより、その人の内側にあるものを見たい——そんな眼差しが、はまかのユニークな人材採用を支えている。
「まだ正解がない業界だからこそ、自分の頭で考えることが面白い」——はまかで働くということ
——最後に、はまかで一緒に働きたい人へメッセージをお願いします。
「やりたいことがある人」に来てほしいですね。好きなことを突き詰める姿勢を持っている人。民泊業界ってまだまだ新しい業界で、システム化できていない部分がたくさんある。だから既存の仕組みの中で動くだけじゃなくて、「こうしたらもっとよくなるんじゃないか」と自分の頭で考えて、新しい仕組みを作っていける人には、すごく面白い場所だと思います。
毎日同じ作業をしていればいいわけじゃない。頭を使って、今まで存在しなかったものを作っていく面白さがある。そういう「考えることが楽しい」人には、はまかはきっと合うと思います。
「面白い人がたくさんいますよ」
言葉は短い。だが、周囲の反対を押し切りながら本格サウナを作り上げた人の言葉には、はまかという会社の「文化」が凝縮されている。
プロフィール欄は空白のままカウチサーフィンで那覇のトップホストになり、周囲の反対を押し切って絶景サウナを作り上げたこの共同代表の言葉には、何より「好き」を貫いた人間だけが持てる説得力がある。
民泊という「まだ正解がない業界」で、自分の頭で考え、形にしていく。はまかはそういう仕事を、楽しみながらできる場所だ。
株式会社はまか|共同代表インタビュー【全2回 第2回・完】