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「尖った企画よりもブランドの本質に立つ」。Gravityのプランナーの頭の中

2022年に誕生した博報堂Gravityは、ファッション・ラグジュアリー・ライフスタイル領域のブランディングを得意とする広告会社です。博報堂グループ内にあった博報堂マグネットとコスモ・コミュニケーションズの2社が統合し、ノウハウ、スキルを融合することで、ブランド起点の統合マーケティングをワンストップかつ、高いクオリティで提供しています。

そんな博報堂Gravityを支える社員へインタビューを実施。今回話を聞いたのは、コミュニケーションプランナー兼クリエイティブディレクターを務める宝蔵寺亮。ビジネスプロデューサーからプランナーへ転身した彼に、Gravityでのキャリアアップについて聞きました。宝蔵寺は、「クライアントが抱えている、まだ見えてない課題を見つけるのが、広告作りの第一歩」だと話します。どのように課題を見つけ、企画を考えているのでしょうか。彼の考える広告の本質とは。

▼プロフィール

宝蔵寺 亮 (ほうぞうじ・りょう) / 職種:コミュニケーションプランナー、クリエイティブディレクター / 2011年3月 入社

ファッション系の広告会社に新卒入社し、3年ほど勤めたのちに博報堂マグネットへ転職。ビジネスプロデューサーとして活躍後、プランナーへ転身。現職は、すべての企画を統合するコミュニケーションプランナー兼クリエイティブディレクター。

営業職からプランナーへ“なりゆきで”転身

───まずは宝蔵寺さんの経歴を教えてください。

宝蔵寺亮(以下、宝蔵寺):新卒でファッション系の広告会社に入社したのですが、クライアントのほとんどは20代から30代前半くらいの若い女性をターゲットにしたブランドでした。2年半ほど働くなかで、もっと領域を広げ、スケールのある仕事をしたいと考えて転職を検討しはじめたときに、前の会社の先輩がGravityの前身企業である博報堂マグネットに入社していたので、紹介を受けて転職しました。

───転職後は営業職として働いていたんですよね。プランナーになったのは何年目くらいですか?

宝蔵寺:入社当時、マグネットには社員がまだ20名程度しかいなくて、営業職のみだったんです。その後、6年目くらいでプランナーになったのですが、最初はお試しのような感じで、営業も兼務していました。そこから1年くらいで営業を外れてプランナーに専念するようになっていきましたね。その後、クリエイティブディレクターも担うようになりました。

───プランナーになったのは、希望してのことだったのでしょうか。

宝蔵寺:どちらかというとなりゆきですね(笑)。営業だった頃からメディアのスペースを単純にクライアントへ提案するのではなく、自主的に、クライアントの課題に合わせたオリジナルの企画を考えて一緒に提案していたんです。それを認めてくれたクライアントから、だんだんとプランニングを求められるようになりました。企画を考えることは好きだったので続けていくと、社内からもプランニングの相談を持ち掛けられるようになり、プランニングの仕事が中心になっていって。結果的にプランナーになっていましたね(笑)。

 クライアントの「まだ、見えていない課題」を探り当てる

───コミュニケーションプランナー兼クリエイティブディレクターは、宝蔵寺さんの言葉でいうとどんなお仕事ですか?

宝蔵寺:ひとことで言うと「広告を作る」ということなのですが、「見えていない課題を見つける」のも、僕らプランナーの仕事です。どんなクライアントもブランドも、それぞれ課題を抱えていて、「これが課題です」と言っているけれど、実はまだ認識されていない別の課題があって、そちらの方が案外大きなボトルネックだった、というケースもよくあります。まずはその課題を自分なりに考えて、整理して、優先順位をつけた上で、それを解決していくための企画を提案していくのが最初のフェーズです。

テレビや新聞、雑誌などのいわゆる「広告」はもちろん、映像、イベント、ウェブコンテンツなど、企画によって手法はさまざまですが、コミュニケーションプランナーとして大きな全体戦略を描き、そこで求められるすべてのクリエイティブについて、今度はクリエイティブディレクターとして、スタッフ体制の構築やクリエイティブに対してのディレクションを行います。最終的に世の中に出すときのクオリティをコントロールする仕事ですね。

───クライアントが抱えている「見えていない課題」まで掘り下げて見つけるんですね。例えばどんな事例がありますか?

宝蔵寺:例えば、アメリカで生まれたスポーツウェアブランドを担当したときのことです。クライアントからは「ブランドがグローバルに掲げるメッセージを日本でも浸透させる」というお題があったのですが、そのメッセージに共感するであろう、感度の高い生活者へのコミュニケーションが不足していると感じました。

スウェットがブランドの定番でかっこよく、一部のファッション感度がある人に着られているのですが、これまでビジネスの中心である量販店に向けた販促プロモーションに注力してきたため、他のメジャーなスポーツウェアブランドと比べて、ブランドの持っている本来の「かっこよさ」の訴求が追いついていない印象だったんです。

そこで、量販店で売っているラインを使ってプロダクトをしっかり訴求しつつも、ファッション的に受け入れられるブランドコミュニケーションを提案しました。

───そういった踏み込んだ提案ができるのは、やはりクライアントとの信頼関係があるからこそなのでしょうか。

宝蔵寺:新しいクライアントに提案することもあるので、信頼関係以上にこれまで培ってきた経験が大きいかもしれないですね。この領域での実績を積み重ねたからこそ、自信を持って提案できるようになったと思います。

───実績を積み上げる過程で、失敗談もありますか?

宝蔵寺:もちろん。今でこそなくなりましたが、クライアントに怒られた経験もありますからね……。課題の見つけ方も、企画も悪かったんですが、「いや、そんなところに課題はないから」と言われるようなこともちょこちょこありました(苦笑)。

入社からしばらくは営業しつつプランも考えて、企画書に落とし込んでいたんですが、今より考えるのも作業のスピードも圧倒的に遅かったから、徹夜になってしまうこともしばしば。

でも安心してほしいのは、今はまったくそんなことない、ということです(笑)。

───成長する過程でさまざまな経験を積まれてきたと思うのですが、どうすればその領域までいきつけるのでしょうか。

宝蔵寺:すごく単純ですけど、常に諦めなかったことでしょうか。広告っていう仕事がすごく好きになったことが、諦めない原動力になりました。

尖った企画よりもブランドの本質に立ってシンプルに伝えることが大事

───若手の頃に怒られたりするなかで、手応えをつかんだお仕事はありますか?

宝蔵寺:営業職時代に印象的だったのが、ローンチ前のシューズブランドの企画提案です。そのときに出した企画が、クライアントはもちろん、当時まだ営業部長だった現社長の黒原も「すごくいい企画だね」と喜んでくれて。僕のプランナーとしての資質を見出してくれたんです。

結局、その企画が世に出ることはなかったんですが、今のキャリアに繋がるきっかけになりました。

───今となっては宝蔵寺さんのようなプランナーを目指す若手もいると思うのですが、どうやって企画を考えているのか教えていただけますか。

宝蔵寺:若い頃は尖った企画ばかり考えていて、「まったく新しいことをやりましょう」という提案ばかりしていました。でも経験を積んでいくうちに、ブランドの本質に立って、それをシンプルに伝えることのほうが大事だと考えるようになってきました。実はそのほうが、ブランドにとってプラスになるんじゃないかなと。

例えば、アメリカのあるバッグブランドを担当したときには、ブランドの成り立ちに原点回帰しました。このブランドはもともと、アフリカの大自然や動物たちに魅了された創業者が、過酷な旅を乗り切るために自らデザインしたバッグを、同じようにアフリカの動物たちをこの目で確かめようと海を渡ってくる旅行者たちに提供したのがはじまりだったんです​​​。つまり、旅を啓蒙するブランドなんです。そこで僕らが定義したのは、「人こそ旅する動物である」ということでした。旅にでることは人間の本能なんだ。さあ、旅にでよう。そんな思いを込めました。 ブランドの本質をつかめると、コピーも表現もおのずと導き出せると考えています。

───ブランドの本質を伝えると、シンプルで強いメッセージになるのかもしれませんね。他に、企画を考えるうえで参考にしていることはありますか?

宝蔵寺:マス向けの広告は多くの人に受け入れられる必要があるので、企画のヒントって意外と世の中に溢れていたりするんですよ。

生活者の視点を持つために、日常生活を大切にすべきだと思うんです。例えば僕の場合は、自分の子どもが小学生になって入学式に出たときや、自転車に乗れるようになった子どもと2人で公園に行ったとき、自分の子どもの頃の記憶を追体験するような感覚があったんです。それがすごくエモーショナルだったので、企画に活かしました。どちらかというと高価格帯を扱うセレクトショップへの提案だったのですが、あえて大人のモデルではなく子どもを起用しようという企画に繋がりました

「その企画を世の中にインストールしたときに、みんなが共感してくれる」というのが広告の最終目標なのではないかなと思っています。

───それでは、アウトプットの質を上げるために普段からしていることはありますか?

宝蔵寺:広告のアワードをまとめた書籍や、海外のクリエイティブなどを見て、流行を捉えられるように心がけています。また、第一線にいるアートディレクターやコピーライターと組んで仕事することで、企画を考える視点などの勉強になっていますね。

とはいえ、やっぱり実践こそが1番の成長への近道ではないでしょうか。Gravityは大きな広告会社と違って分業化されていないので、個人が手がけられる領域が広く、川上から川下まで携わることができる。どういう流れで広告が作られるのか、実践しながら経験を積み重ねられるんです。

大会社になると有名なクリエイターでも、担当する領域が限定されることがあると聞きます。​​業務内容ごとに縦割りになっていて、実際に一緒に仕事をしているなかでも、例えばアートディレクターであれば、​グラフィックと映像の担当が別々だったりすることもありました。Gravityではひとつの案件に対して、ポスターから映像、イベント、ウェブサイトの演出といったところまで、多岐にわたって自分でディレクションできるからやりがいがあるんです。​​

感覚を重視するファッション業界だからこそ、広告の自由度が高い

───Gravityで働くことの魅力って何でしょうか。

宝蔵寺:ファッション系のクライアントが多いからかもしれないんですが、表現の自由度が高いんですよね。

他社のアートディレクターと話したときに、「(自分の会社で任される仕事のうちで)楽しいと思える仕事は1割、2割だ」と話していたんです。表現の自由度がない企画が実は多いと。

ファッションって、言語化よりも感覚的なところを重視する業界だと思うんです。「これかっこいいよね」とか「これ抜け感があるよね」といった、曖昧な言葉でも通じる感覚。だからそれぞれのブランドの本質に基づいたコンセプトを体現しているものであれば、表現の自由度は高くて、チャレンジングな表現でも許されるんだと思います。

───それでは逆に、クライアントはGravityに何を求めていると感じますか?

宝蔵寺:先ほどの話でいうと、ファッション的なかっこよさとか、抜け感、センスの良さなどを感覚的に理解しながら、広告とマーケティングをしっかり実践できる人というのは、広告業界広しといえども意外と少ないんだと思います。そういう感覚を持ちつつ、ブランドを広告の文脈でしっかりと表現できるのが私たちの強みじゃないでしょうか。

博報堂っていう大きな母体があって、クリエイティブに特化したグループ会社もある。膨大なデータもあれば能力の驚くほど高いアートディレクターやコピーライターも仲間にいる。あらゆる面でクオリティを追求できることも、要素のひとつかもしれません。

───Gravityは、社員のキャリアを応援してくれる会社ですか?

宝蔵寺:そうですね、会社が成長過程ということもあり、仕事が溢れていて、プランナーやクリエイティブディレクターの人数がまだまだ足りない。だから、チャンスさえあればやらせてもらえる環境にありますね。

僕は入社して13年ほど経ちますが、自分のキャリアや成長過程に見合った仕事がある会社だと感じています。自分の能力に応じて仕事の規模が変わってくるし、クライアントの課題感も変わってくる。だから、どんな年齢でも常にモチベーションを保ちつつ働ける環境なんじゃないかな。逆に言ってしまえば、常に新しいチャレンジをしているので、仕事のモチベーションが低い人にとっては厳しい会社ではあるかもしれません。

───キャリアを重ねても、それに見合った仕事が常にあるんですね。宝蔵寺さんがこれから挑戦したいことや、ビジョンなどはありますか?

宝蔵寺:今の広告は映像がコミュニケーションの中心になることが多いので、映像の勉強をして、映像の専門的な能力を上げていきたいです。最近では監督兼カメラマンをしつつ、編集も自分でやるようなハイブリッドな人が増えてきているので刺激を受けますね。カタチから入るタイプなので、まずは自分でもカメラを買ってみました。

一方で、これからは仕事をしない時間を増やしたいとも思っているんですよね。子どもとどこかへ遊びに行く時間を増やしたほうが、もしかしたらアウトプットの質の向上にもつながるんじゃないかって。子どもと遊びながらカメラで映像を撮れば、プライベートを楽しみつつ、今後の仕事にも生かせるかもしれないですね。

とにかく広告が好きなので、表現と言葉をもっと磨いて、ファッションとクリエイティブにあふれた誰かの心に残る仕事をしていきたいと思っています。

 

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