連載「未来に渡す、仕事をしよう」
第3回:古作麻友子(都政DXグループ)
「自分のスキルや専門性を、社会と未来のために役立てたい」。本連載では、そんな思いでGovTech東京にやってきた職員が、仕事への思いを語ります。3回目の今回は、都政DXグループの古作麻友子さんです。新卒で介護の現場に飛び込んだ古作さんが、なぜ今GovTech東京で都庁各局のDX支援に携わることになったのか?「光が当たるべき人にしっかりと光を当てたい」という思いが仕事の原動力と語る彼女は、どんな未来を目指しているのか。その思いを聞きました。
古作麻友子(こさく まゆこ)
新卒で生活支援総合サービスを展開する会社に入社。その企業が運営する介護施設に配属。現場で3年経験を積み、介護現場の課題解決に熱意を持つ。その熱意が伝わり、デジタル業界は未経験ながらも介護現場のDXを推進する専門部署へ異動。その後5年にわたって、数々の介護施設で導入するデジタルツールの選定や導入支援、検証などを担当する。2025年1月にGovTech東京入職。都政DXグループにおいて、東京都庁各局のDX支援を担当。都民・都職員向けサービスや、各局が導入を検討するプロダクトの技術レビューなどを担当している。
目次
連載「未来に渡す、仕事をしよう」
第3回:古作麻友子(都政DXグループ)
「誰かの人生にお邪魔する」仕事がしてみたい
介護=大変!という通念に、デジタルで立ち向かった5年間
感じていた「行政の方針」の影響力。その中心に行ってみたい
去年までの私ができなかったこと、今ならできるのが喜び
「誰かの人生にお邪魔する」仕事がしてみたい
幼い頃から、共働きで忙しい両親の様子を見ていて、「人の役に立ちたい!」といつも思っているこどもでした。学生時代に選んだアルバイトも接客業で、就職するなら絶対に直接人と接する仕事がしたいと確信していました。
新卒で生活支援サービスを軸とするホールディングス形態の会社に入社したんですが、配属は介護の現場だったんです。ちょっとびっくりはしましたが、商品を介して人と関わるのとも、限られた時間で関わるのとも違う、「誰かの人生にお邪魔する」くらいの濃度で人と関われるという意味では、究極の接客業かもしれないと気づいて、介護の魅力にはまっていきました。そこで「与えられた仕事だから」と捉えていたら、きっとつまらなくなっていたなあと思いますね。
職業は介護士と言うと、だいたい「大変でしょ?」と言われるのが定番なのですが、実際は「こんなにありがとうを言われる仕事はない!」というのが私の素直な感想です。私は施設の中でも珍しい、若いスタッフだったので、「あなたの存在自体がありがたい」と言ってくださる方までいて(笑)。さらに人の生活に寄り添っているので、毎日が変化の連続。お一人お一人の様子や体調から感じたことを、自分なりに考えて対応するという日々の積み重ねは、本当に自分自身を成長させてくれたと感じます。
一方で、介護の現場が抱える課題には悩まされることが多かったです。慢性的な人手不足によって介護の質は上がらない。現場の窮状が改善しないからまた人が辞めてしまう……。そんな負のループが多くの施設ではびこっていました。これは、介護が「評価されづらいこと」も原因のひとつだと感じていました。介護職の評価は定量化しづらいんです。利用者に寄り添いすぎれば現場のスピードが落ちてしまうし、業務効率化に走れば利用者は置き去りになってしまう。医師なら病気を治すことがゴールですが、介護は利用者一人一人のゴールがあるので、ひとつの基準だけで介護職としての良し悪しを判断できないということもあります。
介護=大変!という通念に、デジタルで立ち向かった5年間
現場を3年ほど務めたころ、会社全体の方針として、介護現場の業務効率化のためにDXを本格的に進めるという決定がありました。普段から課題解決に声を上げていたこともあって、DX推進を専門に行う部署の立ち上げメンバーとして声をかけてもらいました。
とはいえ、私はデジタル専門人材ではなかったので、手探りからのスタートでした。現場の効率化ができるツールをさまざま検証しながら、現場でトライ&エラーを繰り返しました。とりわけ見守りシステム導入は効果が見えやすい例でした。施設では限られた人数のスタッフで夜間、全部屋の見回りをするのにかなりの時間がかかっていました。そこでお部屋に行かずに、センサーがとるバイタルのデータを定期的に確認することで、見回り時間を削減。その削減した時間を使って介護士にしかできない業務に時間を割けるようになりました。デジタルの力でサービスの質も高めることができると感じた瞬間でした。
ただこの部署で仕事をすればするほど、自分にはデジタルの知識が不足していることも痛感していました。会社側から「本当にこのシステムを導入していいのか?」と問われたときに、自信を持って回答しきれない、もっと説得力を持たせた提案をしたい。そんな思いが強くなっていきました。
感じていた「行政の方針」の影響力。その中心に行ってみたい
さらにDX専門部署で強く感じたのが、行政の影響力です。介護現場のルールは当然、行政の方針のもとに成り立っています。現場としては進めたい企画でも、行政の方針とは逆行するから進められないということは多々ありました。でもその行政の方針にも必ず理由があって、それが知りたいならルールが生まれる場所に行くしかないということもわかっていました。
デジタルの知識が欲しい、行政のしくみについても知りたい。「行政」「テック」などのキーワードでどんな仕事があるかを探していたところ、GovTech東京に出会いました。正直「ここまで私にぴったりなところある⁉」って声が出たくらいでした(笑)。
配属された都政DXグループでは、都庁のデジタルサービス局とバディとなって、都庁各局、政策連携団体のDX支援をしています。ホームページの改修のようなスポットでの支援から、数年に及ぶ新しいシステムの企画・開発の支援、あとは各局が委託しているベンダーの調整とさまざまです。前職ではデジタルについて何をどう学べばいいのか、暗中模索でしたが、今は同じクループの中でも特にデジタル専門知識を持つ「エキスパート職」の職員から、毎日たくさんの生きた知識を吸収させてもらっています。これまで介護というひとつの領域しか知らずにきたので、広い領域の新しいことが学べるって、なんて楽しいんだろう!というのが今の本音です。
去年までの私ができなかったこと、今ならできるのが喜び
たくさんのエキスパートに囲まれて仕事を進めていると、これまで暗中模索だったデジタルの知識にも少しずつ道筋がついてきました。ここは設計と運用が分かれているんだとか、この工程を踏まないと次には進めないんだとか、いくら優れたプロダクトであっても、使いたい業務との親和性に注目すべきで、こういう指標で判断するんだ、とか。小さな気づきを通じて知識量が毎日上がっていることを実感しています。正式な要件定義もここへきてできるようになりましたが、もし前職でこれができていたら、もっと様々な角度からの提案ができていたはずだなと感じています。
だから前職で「もっと説得力を持たせた提案をしたい」と感じていた悔しさは、今はもう感じません。今の知識量ならあの頃の課題は解決できると思えるのは、大きな喜びです。今後はGovTech東京で私もしっかりとエキスパートになって、いずれ介護だけではなく、福祉全体がデジタルでよりよくなる未来に貢献していきたいというのが目標です。例えば福祉の現場によりマッチしたシステムを自分で開発したり、DXを推進したくてもどうやったらいいかわからないといったような企業を支援したりと、デジタル専門人材として、困っている人の助けになれたらいいなと、構想は尽きません。
その根源にはやっぱり、現場で汗をかいている人たちへの思いがあります。決して目立たないけれど、かけがえのない仕事をしている人に、もっと光を当てるような仕事がしたいし、私自身がそんなしくみをつくれるようになったら最高だなと。夢は大きく日々はコツコツと、確実な成長を目指してがんばります。
※このストーリー記事は2025年11月17日 13:20公開の一般財団法人GovTech東京の公式noteからの転載です。