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あの経営者から学んだ、長く愛されるためのブランディング #2

前回の記事に引続き、テーマは「あの経営者から学んだ、長く愛されるブランドの育て方」。株式会社ウェルカムさんの横川社長にふと聞いた、ブランドづくりの秘密について。

前編はDEAN&DELUCAの話が主だったが、別のブランドについての話を。TODAY’S SPECIALをご存知だろうか。「今日を特別にする、食と暮らしのDIY」をテーマに、食品、雑貨、本、衣服、植物など生活にかかせないさまざまな道具が一同にあつまるマーケットのようなにぎやかな店内。自由が丘の第一号店にはじまり、日比谷、渋谷、新宿、京都、神戸と広がりを見せている。

個人的にもすごく好きなお店で、つい寄りたくなってしまう。時代を捉えた思想や商品・サービスがうまいなあと思っていたブランドだったので、話を聞けるのはありがたかった。そして、ここで聞けた話は僕自身のブランディング観にも大きな影響を与えてくれた。

世の中が何が欲しいかを調べると、半歩出遅れる。

TODAY’S SPECIALが生まれたのは、実は東日本大震災の直後。ウェルカム社も店舗の損壊や自粛ムード経営にも少なくない影響のある出来事だった。日本が大変なときに、自分たちにできることはなんだろう。空虚感につつまれながらも、被災地への支援活動やメッセージを送っていた。しかし、いつしかそのメッセージは全部自分たちに向けたものだったんだと気づいた。

はれの日のおしゃれな料理もいいけれど、ふだん家でお母さんがつくってくれた料理も大事。世の中が便利になりすぎた。美味しいケーキ屋もたくさんあるけれど、ホントはケーキはお母さんが焼いてくれるもの。じんわりと温かい、幸せな味。そんな感覚をもう一度大切にしたくて立ち上がったのが、TODAY’S SPECIALだったのだ。

ひらめきと勢い。そして、こうありたいという強い意志。想いに吸い寄せられるように協力者も集まり、ブランドはカタチになっていったのだ。その際に興味本位で聞いてみたこと。「市場は意識したんですか?」。すると返事はこうだった。

「感覚を大事に、優先して、とにかく急いでカタチにした。データをベースにしてやると、1サイクル遅れる。その時はレッドオーシャンになっている。感覚の根拠を調べる時間はない。僕たちがやりたいのは、お店を通してお客さんに感動してもらって、新しいスタイルに喜びを味わってもらうこと。目的は新しい『ふだん』。生活スタイルを生み出していくことだから。」

お客さんに好まれるお店をつくるのではない。お客さんを魅了するお店を創りだす。なぜなら、御用聞きになると、価値は対応の速さや値段、バリエーションなど、いつも比較競争の世界になる。

目的思考。揺るぎない軸に、独自の感性やこだわりが掛け合わされて生まれたTODAY’S SPECIAL。何がウケるかではない意志が起点から生まれた意志あるブランドには、強烈な引力が生まれる。巨大な資本を投じてマーケットを取りに行くのとはまた違う。中小企業におけるブランディングのお手本のような成功事例だ。

そして、生み出したブランドを今度は育てていく方法についても、大切にされている考え方をお聞かせいただいた。

電子レンジよりもオーブン。

一軒の力。

横川さんから聞くことが多い、僕自身も好きな考え方がある。素敵なお店があると、素敵な人が集まる。するとその周りにも素敵なお店ができて、さらに人が集まることで、だんだんと街の色さえも変えていく。言語化をお手伝いさせていただいた、ウェルカム社のミッション「感性の共鳴」の出発点にもなるこの思想は、「本物のブランドとはなにか」を示唆してくれていると思う。

その例えで「いい店と、いい風の店の違い」の話をしてくれた。表面的には似ていても、中身はやはり似て非なるもの。その違いは、ルーツをしっかりと学んで再編集することで生まれる持続力にあるという。前回の記事でも取り上げたDEAN&DELUCAも、ルーツを理解し、編集することで強いブランドとして生まれ変わった。

「流行っているからといって、それっぽくまとめて成果だけを刈り取り、流行りが終わればまた他のことに変わる七変化のようなお店や商品は、本質が違う。」

電子レンジよりオーブン。急に温めたものはすぐに冷めてしまうように、じっくり温めオーブンのようにその熱を長く美味しく持続させるようなお店づくりこそ、いいお店、いいブランドをつくるコツなのだという。これは店舗展開にも同じ事が言える。質を担保しながら量を増やす。この相反する条件を成立させることは極めて難しいが、その不可能の実現化こそがウェルカム社の挑戦であり、ぜひその実現に僕も微力ながら力添えがしたいと思える魅力の一つになっている。

人と人とのつながりを育みながら、
世界に誇る、新しい日本のくらしをつくる。

ともに言語化させてもらった、同社のVISIONである。その実現に向けて、成長をつづけるウェルカム社。どれだけ大きくなっても、最大のライバルは個人店だという。オーナーの情熱と工夫、飽くなき探究心、お客さんへの愛情。どこをとってもやはり一番なのは人の意志が色濃く注入された小さなお店。その魅力を、ブランドの力で超えていく。大きな視点で戦略も必要だし、お店を支える最前線の一人ひとりの意志も重要。

ウェルカム社がこれから歩んでいくストーリーの1ページに、自分たちもまた共創者として足あとを残すことができたならば。こんなに幸せな仕事はないと思う。

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