成長産業支援を手がけるfor Startupsには、エンジニアに特化したタレントエージェンシーサービスを行うエンジニアプロデュースチームがある。企業の成長の起爆剤となるエンジニア。企業とエンジニア、双方の価値を最大化できる出会いを創出し、いつか日本からユニコーンを生むことを目指す。これまで、CTO、VPoEなどのキーパーソンを中心に数々の支援を実現してきた。チームを引っ張る2人が、どのような思いを持って取り組んでいるのか、その熱い思いを語る。
中田 莉沙(Nakada Lisa) 写真右 スタートアップ企業でのインターン、証券会社を経て2018年2月に入社。シニアヒューマンキャピタリスト兼エンジニアプロデュースチームプロジェクトオーナーとして活躍。2020年、約3900名の中からビズリーチ社主催「ヘッドハンター・オブ・ザ・イヤー」のIT・インターネット部門MVPを獲得。
井上 香(Inoue Kaori) 写真左 求人情報サービス会社、IT系の人材サービス会社を経て2019年4月に入社。エンジニアの可能性を追求することに使命感を持ち、シニアヒューマンキャピタリストとして活動中。 企業の成長にダイレクトに貢献。モチベーション高く取り組む多彩なメンバー ーエンジニアプロデュースチームの概要を教えてください。 中田 for Startupsは成長産業支援を行っておりますが、それをエンジニアに特化して行っているチームです。この1年は、特にCTOやVPoEといった組織成長に欠かせないハイレイヤーの人材にフォーカスして、採用を支援してきました。
チームが発足したのは2018年5月。当時、for Startupsは30名~40名の規模でした。ビジネスサイドのバックグラウンドを持つメンバーが多く、支援実績もビジネスサイドが中心。それがfor Startupsの強みでもありましたが、その頃から、開発サイドのエンジニア採用のニーズが強まっていました。当然、for Startupsとしても注力すべきです。そこで、前職でエンジニアの転職支援に携わっていたメンバーが使命感を持ち、メンバーを募ってチームを立ち上げました。
私も、そのとき志願したうちの一人。私は、大学時代にインターンをしていたスタートアップが、ほぼエンジニアという環境でした。そこでエンジニアと一緒に事業を創る経験をしていたので、エンジニアがスタートアップにはなくてはならない、成長を描くには欠かせない人たちだと強く思っていました。エンジニアを支援することが、企業をダイレクトに成長させる。そこに貢献したいと思い、志願しました。ほかにも思いの強いメンバーが集まって、エンジニア支援チームがスタートしたのです。
井上 私は2019年4月に入社したので、すでにチームは立ち上がっていました。私も、前職でエンジニアの転職支援に取り組んでいました。元々、エンジニアへのリスペクトと、もっとエンジニアが持つ可能性を追求したいという思いがあり、for Startupsに来ました。なので、私にとっては、入社=「エンジニア支援チームに絶対入る」こと。入社してすぐにジョインしました。
チームは、今は10人。元大手精密機器メーカーの組込みエンジニアや、スタートアップで活躍していたメンバー、自分自身がエンジニアを目指していたメンバーなど、本当にバックグラウンドは様々ですが、みんなエンジニアを支援することで、企業の成長にダイレクトに貢献できることにモチベーションを持って活躍しています。
ミッションは「Rebuild the HERO」、ビジョンは「 Amplifier for Engineers」 ー 2019年11月にエンジニア支援チームからエンジニアプロデュースチームと名前を改めました。その経緯、狙いなどを教えてください。 中田 そのタイミングで、私がプロジェクトオーナーを引き継ぎました。そのときに、「そもそもエンジニア支援というチーム名が、目指すところと違うのではないか」と思ったのです。支援というと、支える、助けるというイメージがあります。私たちは、すでに活躍できるスキルを持ったエンジニアの方に対して、より活躍できる場が広がる提案をしているので、「助ける」よりは「拡げる」だろうと。
なので、当時、メンバーみんなで1カ月近くかけて今後の方向性を検討し、エンジニアプロデュースチームという名称に決定しました。同時にチームのミッション、ビジョンも決め、私たちが何を大事にし、どのような企業を勝たせたいと思っているのか、エンジニアの方々に対してどのような機会提供ができるのか、などを、共有したのです。
エンジニアという言葉は、古代ギリシャで「建物を造る人」を意味していました。誰にでもできることではなく、民衆のために働く人ということで、大変な尊敬を集めていたのです。私たちも、テクノロジーが後退していくことがない時代において、エンジニアリングを手段として世界をつくる人、誰かが喜ぶものをつくる人を支援したい―という結論に至りました。
かたや今の日本は、表舞台で脚光を浴びる起業家はビジネスサイドの人がメイン。Facebookのザッカーバーグ氏のような、エンジニア出身の起業家は多くありません。私たちは、今は裏側に隠れているかもしれないけれど、ものをつくっている人たちだってHEROだ、そのような人たちにフォーカスしたいと考えました。そして、そのHEROであるエンジニアが、for Startupsを介在することでより輝け、自分の市場価値を高められ、やりたいことにコミットできるといい。私たちは、そのような存在であることを目指して、チームのミッション、ビジョンを定めました。
ミッションは「Rebuild the HERO」、ビジョンは「Amplifire for Engineers」。HEROの定義を「Rebuild」、私たちが変えていく。そして「Amplifire」は、音響機器のアンプと同じで、「音を拡張する、チューニングする」という意味です。エンジニアを拡張する。ミッション、ビジョンには、私たちがそのような存在になるという決意を込めました。
ー ミッション、ビジョンを決めたことにより、行動や気持ちの変化はありましたか。 井上 気持ちが変わったというよりは、覚悟が生まれた、というほうが近いです。このミッション、ビジョンは、これまでもエンジニアプロデュースチームが思っていたこと。「エンジニアのキャリアや地位を確立したい」、「エンジニアの評価を変えなくてはならない」などと、みんなが思っていたのですが、言語化できていなかった。それまでも、どのような状態を目指すことが正しいのか、何を目標として私たちはやっていくのか、という思いは共通していましたが、それを改めて言語化したことで気持ちが引き締まりました。エンジニアの方、エンジニアを採用する企業との向き合い方が変わったと思います。
対企業でいうと、エンジニア組織は、1人のキーパーソンとなる人が入ることで、技術課題が解決されます。するとプロダクトも進化し、企業のセールスやマーケティングサイドも、お客様に対してより新しい価値提供ができるようになります。そんな、スピードが上がるようなキーパーソン採用の支援を、引き続きやっていきます。
投資家、経営者、CTOらと連携し、リアルタイムで課題を把握。市場の俯瞰と情報が強み ―実際に、キーパーソンの方が入り、会社が発展するということを実現できていますか。 井上 はい。実例はいくつもあり、ウェブサイトで、そのうちの3社のケースを紹介しています。例えばその1つは、建築・建設現場向けWebサービスの株式会社アンドパッド様。for Startupsが介在し、VPoEの方がご入社されました。その方の入社前は、開発組織は10名ほどの規模。採用をどうやっていくか、エンジニアの方にどのように会社のことを伝えるか、どのような組織運営で様々なプロジェクトを進めていくべきか、等々が定まっていない状態でした。VPoEの方が入ることで、プロジェクトの優先順位、そのためのアサイン、エンジニアの方へのメッセージングなどが整理でき、今では、開発組織は約50名の体制に成長しています。
もう一つ、クラウドファンディングサービスのREADYFOR株式会社様の事例も紹介しています。VPoEの方は、弊社からのご紹介です。VPoEの方がご入社されたことで、元からいたCTOの方がプロダクトに専念でき、開発のPDCAがかなり早まりました。
私たちは、このようなケースをどんどん増やしていこうとしています。一方で、CTO、VPoEといったポジションではなくとも、「この方が入って組織が変わった」「良くなった」という支援例もたくさんあります。
エンジニアプロデュースチーム支援実績インタビュー
ー そのような支援ができている理由、他社との違いはどのような点でしょうか。 中田 求人をもらうためだけの営業活動はしないことでしょうか。私たちは、成長産業支援の一環でタレントエージェンシー事業を行っているので、採用のニーズをいただくルートは、起業家やVC(ベンチャーキャピタル)からのご紹介がほとんどです。それは、これまでに私たちが、今ではユニコーン企業に成長している企業が数名の頃からご支援していた実績があり、挑戦する起業家を共に支えるパートナーとしてご期待いただいているからだと思います。加えてエンジニアの場合は、CTOやVPoEの方々と直接話して、どのような方が欲しいのか、企業のカルチャーを含めて解像度高く理解し、候補者の方にもお伝えすることができる点が、強みではないかと思います。
井上 人材紹介会社の多くは、恐らく人事担当者とやりとりすることが多いと思います。人事の方からは、どのような人を何人欲しい、という話は聞けるのですが、それはなぜなのかという背景は、経営層やCTOの頭の中にしかない場合が多いと感じています。私たちなら、その背景を直接聞けますし、私たちから「この企業には今、このような課題があるから、このような人が必要だと思います」というご提案もします。なので、その企業への理解や得られる情報が違ってくると思います。
実際、「今、何に困っているか」は、週単位で状況が変わってきます。コミュニケーション量が多ければ、流動的な課題も含めてキャッチアップでき、そのような情報をもとに、候補者の方にお話をすると、「解像度が上がりました」、「そこまでの話を聞けたのは初めてです」などと言われることもあります。もちろん情報開示可能な範囲でお話をしています。
中田 情報という点では、本当にその通りで、for Startupsは、俯瞰して市場を見たなかで、タイミングやトレンドも踏まえて、企業の向こう数年間のやりがいや経済合理性を見通し、候補者の方に提案できることが強みだと思います。
例えばレガシーな業界であれば、業界トップ3の会社の順位がいきなり変わるということはありません。規模、事業内容はあまり変わりませんが、スタートアップは数週間、1ヶ月単位で組織が変わり、順位が変わることもあります。しかも、公開されている情報も限られているなかで、どうしてもブラックボックス化してしまいます。その点、私たちは、投資家・起業家と連携しているので、全体を俯瞰した上で鮮度、確度の高い情報を得て、候補者の方に提供できる点は、他社との大きな違いの一つだと思います。
スタートアップは、世の中に直接価値提供できる夢のある世界。多くの人に挑戦してほしい ー どのような思いでエンジニアの方のキャリアに向き合っていますか? 中田 私たちは、日本からユニコーンや海外に出て外貨を獲得できる企業、日本で社会課題を解決できる企業を生み出すことを目指して、エンジニアの方々を、日々、成長産業にご支援しています。「人を紹介する」という活動は、人材エージェントと変わらないように見えるかもしれません。しかし、候補者の方へは「どのような企業に、この方をご支援すれば、この方の市場価値が出るか。やりたいことができるのか」と、企業に対しては「この方が入ることで、どれだけ事業にインパクトを出せるのか」と考えて、ご支援しています。
きれいごとを言うつもりはありませんが、「自分の売上のために」という発想は本当にないのです。もちろんfor Startupsは営利企業ですので、事業の売上目標はありますし、単純なスキルマッチで弊社が会っている方を紹介すれば、フィーを払ってくれる企業もあるでしょう。でも、その方の志向に合わなかったり、私たちが、伸びゆくフェーズにあると感じられない企業であったりする場合は、決してご紹介しません。あくまでも事業を創るという視点で、人と企業の出会いの機会をつくっているのです。
井上 本当にそうですね。募集案件があるから、ご支援するわけではない。切実に、日本からユニコーン企業を生み出したい、日本の競争力を高めたいという思いを持って、「どんな企業なのか」、「その企業に誰が入ればいいのか」と、日々考えながら、ご支援しています。エンジニアで言うならば、例えば、「この組織のプロダクトは、今、どうなっているか」、「どのようなキーマンが入れば、プロダクトの課題が解決できるのか」と、ブレークダウンして、企業、候補者の方と向き合っています。
中田 エンジニアの方にとっては、伸びるプロダクトなのか、志向性の合う組織か、といった点で、その方の将来が変わってきますからね。やはり、年数%成長の会社と年数百%成長の会社とでは、チャレンジできることが大きく違ってきます。for Startupsに相談することで、そのような違いを見極められると思います。
井上 私は、前職からずっと、エンジニアがスタートアップに入ることは、とても誇らしことだと思ってきました。自分たちのつくったもので世の中が大きく変わったり、今の時勢なら、市場規模が何十兆円とあるようなレガシーな産業が、一気にDX(デジタルトランスフォーメーション)に向かい、日本の経済力の底上げにつながるようなことに対して、ダイレクトに関わることができることもあります。それはスタートアップならではの経験だと思います。
大企業に入り、エンジニアとして仕事をするのも、もちろん素敵なことですが、関われることは、大きなプロジェクトのほんの一部になってしまうことも多いと思います。スタートアップなら、まだ小さな組織で、自分の書いたコードやつくったものが、世の中に出て価値貢献することにダイレクトに関われます。やりがいも夢もあります。
実際、アメリカなど海外では、スタートアップに行ってチャレンジすることはおもしろい、素敵なことだという風潮があります。エンジニアにとって、おもしろいキャリアになると。日本でもそのような、スタートアップに興味を持って、多くの人がチャレンジすることを推奨するような価値観が醸成されるといいなと思います。
中田 あとは純粋に、私たちが普段お会いしているCTO、VPoEの方々と一緒に新しい市場を開拓すること、一緒に戦う仲間になることは楽しいし、是非やるべきだと伝えたいですね。
テクノロジーが後退することはありません。前進するのみというなかで、必要なキャリアや経験値を高めるには、自社のサービスやプロダクトに関わることが重要だと思います。ただ、エンジニアでいればいいだけではありません。そして何より、強いビジョンや志を持っている人たちと一緒に働いたほうが楽しいし、得るものも多いと思います。
コロナ禍で真に強いサービスが鮮明に。エンジニアと企業の力を増幅する存在を目指す ー 今後の展望をお聞かせください。どんな支援、活動をしていきますか? 中田 エンジニアプロデュースチームとしては、企業の成長と個人のやりたいこと・かなえたいこと、この2軸を追求して、粛々と活動するのみです。ビジョンにある「Amplifire」というワードの通り、私たちを通じて、その力を増幅させられる人、企業を増やしていきます。
井上 エンジニアにとってスタートアップに行くことは素敵なキャリアで、みんなが歩みたくなる選択になれるように、その世界観を信じて、今後もヒューマンキャピタリストとして活動していきます。
そして、スタートアップで活躍する仲間を増やして終わりではありません。スタートアップでのキャリア形成や、エンジニアが事業を創る楽しみを広め、実際に起業する人が出てくるなど、さらに踏み込んだ支援ができれば、チーム名の通り、エンジニアの「プロデュース」になるのではないかと思います。
ー 新型コロナによって、世界は大きく変わりました。スタートアップ、エンジニアの環境に変化はありますか。 中田 ビジネスサイドの人材は、クライアントの事業が止まったことで、採用縮小や様子見も起こっていますが、開発ポジションの採用は、減っていません。むしろ増えている企業が多い。新しい生活様式に変わりゆくなか、伸びている企業が多いですから。
爆発的に普及しているWeb面談ツールは一例ですが、コロナ禍で、世の中が求めているサービス、スタンダードになりゆくサービスが鮮明になったと思います。そのようなサービスを提供している会社にジョインすることは、メリットがあると明らかになりました。景気がいいと、一過性の波に乗るだけの会社が混ざってしまうのですが、この状況下だから、むしろ本質を見極めやすいのではないでしょうか。
井上 この危機をチャンスと捉え、どう向き合って事業を伸ばすかと考えている企業が多いので、エンジニア採用はあまり止まっていませんね。
ーでは、ますます多くのエンジニアの方とお会いしたいですね。 井上 はい。スタートアップを知りたいと思っている人、少しでも興味がある人なら、話をしたいと思います。実際、当初は「転職は今ではない。まだ現職でやれることがある」というスタンスの方も多いです。日々、「こんなおもしろいスタートアップがありますよ」とコミュニケーションを取りながら、次第に興味を持ち、「ここなら受けてみたい」となって話を進め、ご支援に至る。そのような例も多いです。
中田 むしろ、みなさんそのような感じですよね。現職に残る選択肢も持っているし、情報収集目的で来る方。それも歓迎しています。あと、最近の傾向として、「リファラルだけではダメだよね」という意識が浸透してきたように思います。エンジニアはリファラル採用が多いですが、それだと結局、その会社の情報は友人からの視点でしかなく、市場全体からのものではありません。一歩、俯瞰したところから見る必要があるので、リファラルという選択肢を持ちながら、弊社に話を聞きに来る方も増えています。
ー 最後に、ご自身の仕事のやりがいも改めてお聞かせください。 井上 やりがい、楽しさは大きいです。私は元々、エンジニアの方がスタートアップで活躍することで世の中を良くしたいと思って、for Startupsに来ました。エンジニアプロデュースチームが大きくなればなるほど、私がやりたいことに近づけているということなので、やりがいは大きくなる一方です。
中田 私はやはり、ご支援したエンジニアの方が、その企業に入ってご活躍されている様子を聞くと嬉しいですね。ご本人から聞くこともありますし、人事や代表の方が、「この方が入って会社が変わった」と言ってくれることもあります。また、ご支援後も継続して親しくしている方が多いので、スタートアップ村の仲間が増えている感覚があります。スタートアップは、まだまだ小さな村社会でもあるので。
今後は、エンジニアの方が転職に迷ったときに、当たり前にfor Startupsと思い浮かべてもらえたら嬉しいです。まだ、そこまで存在にはなれていません。
井上 そうですね。転職やキャリアを考えたとき、「for Startupsのエンジニアプロデュースチームに相談しよう」となるぐらい、私たちの活動、結果が、世の中に対して影響を与えられるようにしていきたいと思います。そうなるためには、私たちももっと成長しなくてはいけません。頑張りましょう。
中田 そうですね!
本日はありがとうございました。