現場でしか感じられない「生きた課題」
熱海の街を歩いた参加者たちは、15年前に宿泊客数が歴代最低となった現実と、今では若者が行列をなす再生された商店街の対比を目の当たりにしました。データや統計では決して伝わらない、街の息づかいを感じ取ったのです。
下田では、寿司屋『美松』3代目の植松氏が語る「地元のお寿司屋さんを残していきたい」という切実な思いに、参加者たちは胸を打たれました。副業寿司や寿司体験という新しい挑戦の背景にある、人間の情熱と危機感を直接感じることができたからです。
一杯のお茶が教えてくれた深い学び
THE CRAFT FARM視察で印象的だったのは、急須でお茶を入れながら行われた相互コーチングでした。山の斜面での茶畑の困難さを実際に見て、工場での繊細な蒸し作業を体験した後だからこそ、お茶産業の後継者不足という課題が自分事として感じられたのです。
参加者の一人は後に語りました。「普段何気なく飲んでいるお茶ですが、裏側を知るとしっかりと味わいを確かめたくなります」。これこそが現場体験の力です。
人との出会いが生む化学反応
ランサーズCEvO(2024年当時)の根岸氏が語った言葉は、参加者たちの心に深く刻まれました。「活性化する地域とそうでない地域の差は『人』だ」。下田で梅田氏をはじめとする魅力的な人たちと実際に交流したからこそ、この言葉の重みを理解できたのです。
夜を徹してメンターと語り合った参加者もいました。現場での出会いは一過性のものではなく、継続的な関係性を生み出し、長期的な支援や協力関係につながっていきます。
挫折から立ち上がる力
2025年2月15日の最終発表会では、9名の若手起業家が成果を発表しました。しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。中間発表では9チーム中6チームが挫折を味わい、平均10回以上の資料修正を経て、最終的に全チームが審査員を唸らせる完成度に到達したのです。
富士山麓での合宿で焚き火を囲みながら共有した「原体験」が、ITを駆使した観光プロダクトや製造業支援サービスへと昇華されました。幼少期の自然体験や地域行事での感動が、社会課題解決への情熱に変わった瞬間でした。
継続という挑戦の意味
TOMOLプロジェクトは2025年度も経済産業省AKATSUKIプロジェクトに2年連続で採択されました。これは単なる継続ではなく、若者の情熱と地域の未来を結ぶ「炎」をさらに大きくする覚悟の表れです。
参加者22人、最終発表者9人、スポンサー8社、メンター13名、コミュニティメンバー100名超。これらの数字が示すのは、現場での出会いと対話が生み出した人のつながりの力です。
あなたも現場に足を運んでみませんか
TOMOLプロジェクトの参加者たちが口々に語るのは、「自分の地元の課題に向き合ってみたくなった」という言葉です。現場に足を運び、直接人と話すことで、課題が他人事ではなく自分事になる。そこから本当の学びが始まるのです。
データや資料では決して得ることができない生の情報、当事者との直接対話、そして体験を通じた深い理解。これらは、真に社会課題解決につながる事業創出の基盤となります。
一杯のお茶を飲みながら、焚き火を囲みながら、街を歩きながら。そんな何気ない瞬間に、人生を変える出会いと気づきが待っているのかもしれません。