入社して1カ月で取り組んだ一大プロジェクト
2013年10月、営業として入社して1カ月の石川は、チームの先輩である安井と、ある一大プロジェクトに取り組むことになった。
「石川さん、今期から武田薬品工業株式会社(タケダ)と一緒にミドリムシ入りサプリメントを開発します。そして、当社のメイン担当者は石川さんです。僕もサポートを精一杯するので、一緒に頑張りましょう」
この約半年前、日本のトップ医薬品メーカーであるタケダから「ミドリムシを使った商品の共同開発ができないか」と提案いただき、ミドリムシ入りのサプリメントをつくることになったのだ。
まだミドリムシという素材が世の中の人たちに知られつつある時期だった当時、ミドリムシをタケダの製品として扱っていただけるのはありがたいことであり、またバイオテクノロジー企業としてさらなる成長を目指す当社にとってまたとない機会だった。
だが、石川が入社したのはわずか一カ月前。
石川にとっても、当社にとっても初めてのこの一大案件をどう手掛けていくべきか、すべてが手探りの状態だった。それでも、担当者として一人前に成長するため、全国にまたがる流通店舗や食品メーカーと取引をしながら準備を進めていった。
ユーグレナを信頼してくれたタケダと苦戦した商品開発
創業から230年以上の歴史があるタケダと、2005年に創業したばかりのユーグレナ社で商品開発を進めると、会社の歴史の差や、医薬品メーカーと健康食品メーカーの違いが明らかになった。
なかでも、タケダへの研究資料の提出については研究部門の総力をあげた協力が必要だった。
2005年に世界で初めて屋外大量培養に成功し、2006年から食品として発売をスタートしたユーグレナ社では、まだ資料としてまとまりきれてない研究データも多くあり、石川は研究部門との協議を何度も行いながら、急ピッチで資料を作り上げていった。
また、タケダとしても健康補助食品に大々的に取り組むのは今回が初めてであり、健康補助食品における社内の新たな基準や制度の設計など擦り合わせに想定以上に時間を要した。
石川は話し合いが進むにつれ、
「このままだと、いつまでも商品ができないんじゃないだろうか…」
と不安になることが幾度もあった。しかし、そのたびにタケダの担当者が、
「ミドリムシは素晴らしい素材です。一緒に頑張りましょう!」
と石川を勇気づけてくれたのだった。
両社がサプリメントの製造・加工で、両社の基準を満たすにはどうすべきかを試行錯誤するなか、かねてよりユーグレナ社のサプリメントなどの製造・加工をお願いしていた健康食品・医薬品の受託製造加工会社のアピが健康食品・医薬品両方の製造経験を持っていることが判明。
そしてアピに今回のサプリメント製造をお願いすることで、両社の条件が満たせる商品が完成することになったのだ。
―2014年10月。
ついに、タケダのミドリムシ入りサプリメント『緑の習慣』が発売。
発売にあたっては両社で合同記者会見を開催した。
なお、新商品の発表だけではなく、ユーグレナ社とタケダで、ミドリムシを配合する新たな製品の開発可能性を模索する包括的提携契約を結んだことも発表することになった。
そして発売から約2年半後となった2017年4月、タケダはコンシューマーヘルスケア事業を分社化し、武田コンシューマーヘルスケア株式会社を設立。その記者発表会において、同社から「『緑の習慣』を主力商品の一つに育てたい」との心強いお言葉をいただいた。
ユーグレナ社は今後も、日本、そして世界の人々の健康をサポートすべく、ヘルスケア事業に力を入れていく。