プロフィール
名前:鹿島彩
社歴:2023年入社
出身:埼玉県
趣味:刺繍、ピアノ
職種:通信系開発エンジニア(主にBLEスタック開発、通信系プロトコル実装など)
経歴:埼玉大学卒業後、大手メーカーを皮切りに、受託開発・自社製品を展開する企業などで、電気回路設計と組み込みソフトウェア開発の両軸で経験を重ねる。2023年からイー・フォースの副業案件でBLE通信に携わり、翌年に正社員としてジョイン。現在はBLEスタックの開発や認証業務、直近ではBluetooth対応チップに対するRTOSポーティングを行うなど、BLE関連の領域を担当。
「広く浅く」ではなく「狭く深く」。技術の本質に触れる働き方へ
大学では電気電子物理工学を専攻し、卒業研究では太陽電池の成膜プロセスに取り組みました。当時、「ソフトウェアとハードウェアの両領域にまたがって携わりたい」という志向が強く、いずれかに特化するのではなく、双方を橋渡しできる“横断型エンジニア”を目指していました。
新卒で入社した大手メーカーでは、設計部に配属されましたが、担当業務は主にメカ設計や改良対応など、既存製品の保守的な業務が中心でした。配属先によっては数年間にわたり仕様変更や設計の微調整が主な業務となることもあり、スキル向上の機会が限られていることに物足りなさを感じていました。
「ソフトウェアとハードウェアの両方に携わりたい」という思いを捨てきれず、より開発の現場に近い環境を求めて転職を決意。その後は、調理機器やリチウムイオンバッテリーを搭載したヘアアイロン、USB Type-CおよびPD(Power Delivery)規格に対応した製品の開発を担当しました。こうした業務を通じて、「コスト」「性能」「設計自由度」といった多軸のトレードオフのなかで、最適解を模索する設計的視点を獲得できたと感じています。
一方で、製品開発は常に納期とコストの制約と隣り合わせであり、「技術的には実現可能だが、納期や価格に見合わない」といった理由で構想を断念する場面も多く経験しました。また、回路設計とファームウェア開発が明確に分業されていたプロジェクトも多く、製品全体としての最適解に踏み込めないもどかしさもありました。
そうした経験を重ねるなかで、「製品としての完成を追うのではなく、技術や設計の本質に深く関わり、より本質的な課題解決に取り組みたい」と考えるようになりました。
RTOSという“根幹”に惹かれて。副業から始まった挑戦
転職を意識し始めた頃、ある技術記事で紹介されていた“RTOS(リアルタイムOS)”に興味を持ち、調べていく中で出会ったのがイー・フォースでした。
転職を考え始めた際、「まずは開発環境に触れてみたい」という思いから、副業という形で関わり始めました。取り組んだのは、展示会向けデモ機におけるBLE経由でファームウェアのOTA(Over-the-Air)アップデートを実現するため、フラッシュドライバの調査と実装です。
OTAでは、BLE通信で受信したデータをフラッシュメモリに安全かつ正確に書き込み、その後のリセット処理を経て、新たなファームウェアが正常に起動する必要があります。プロセスの途中で不具合があれば、デバイスが起動不能な状態に陥るリスクもあり、高い信頼性が求められる領域です。
この実装では、デバイスのハードウェア仕様を読み解きながら、実機を使って動作確認と検証を繰り返しました。「どうすれば安全にアップデートできるのか」といった設計的観点を持って試行錯誤を重ねることは、非常にチャレンジングであり、同時に純粋に“楽しい”と感じられる経験でした。
このプロジェクトを通じて、「ここなら、技術の根幹に本質的に向き合える」「システム全体を見通しながら、設計から実装まで一貫して携われる」と確信し、本格的に転職を決意しました。
BLEスタックの更新と認証。今やっていること
イー・フォースに入社してからは、BLEスタックの更新や認証、他の通信モジュールの修正を担当し、通信プロトコルの実装に携わっています。
BLEスタックでは、バージョン4.2から最新仕様へのアップグレードに取り組みつつ、Bluetooth認証の取得を進行中です。Bluetooth認証は、Bluetooth SIGが定める仕様に厳密に準拠しなければならず、パケット構造、トランザクションのタイミング、エラー処理に至るまで、仕様との整合性が求められます。認証に通過するためには、スタック全体のプロトコル処理を正確に実装し、検証用ツールを通じて物理的に期待される挙動を再現する必要があります。
BLEのプロトコルスタックはL2CAP、ATT、GATT、GAP、Security Managerなどの複数のレイヤから構成され、それぞれが独立しながらも連携しています。こうした階層構造を理解し、状態遷移やイベント駆動型の通信モデルを踏まえて、設計・デバッグを行うスキルが求められます。特にセキュリティ領域では、暗号鍵交換、ペアリングフローなど、複雑な実装が求められ、正確な仕様把握と綿密な検証が不可欠です。
一方、直近ではBluetoothチップに対するRTOSの移植作業にも携わっており、よりハードウェア領域に近い技術についても取り組んでいます。
技術を学びながら、働き方にも余裕が生まれた
イー・フォースに入社してから、自分の中で最も大きく変わったのは、技術への向き合い方と働き方の両面で“余裕”が生まれたことです。
前職では、ソフトウェアにおいては、簡易な割り込み処理のソフトウェアを担当しておりました。コードは“べた書き”が中心で、構造化や再利用性よりも「限られたリソース内で最低限動かすこと」が最優先。また、ソフトウェアだけでなくハードウェアや複数のプロジェクト進行管理もあるため、会議だけで1日を費やすことも多く、目の前のタスクをこなすことで精一杯な日々でした。
イー・フォースで関わるようになったのは、通信スタックやRTOSといったシステムの基盤となる部分です。そこで求められるのは、「可読性」「モジュール性」「保守性」などの基本的な設計原則で、ファイル構成、API設計、関数にも一貫した考え方が反映されています。その中で、技術的な視点や設計力が身につきました。
同時に、働き方にも大きな変化がありました。
前職では限られたテレワークや短時間勤務の中で、担当業務であるのにもかかわらず物理的に自分で出来ないことが多くあり、ストレスを感じることもありました。
一方、イー・フォースでは「やるべきことをやっていれば信頼されて任せてもらえる」というカルチャーがあり、自律と柔軟性を兼ね備えた働き方ができる環境です。現在は週3日テレワーク、週2日出社というハイブリッド勤務で、家庭とのバランスを取るのがとても楽になりました。保育園の送り迎えや家事と両立しつつ、業務中は集中して取り組むことができています。技術的にも生活的にも、無理なく、確実に成長していける環境だと感じています。サポートしてくれる周りの方々や、柔軟な働き方を実現できる環境のおかげで、心から感謝しています。
技術に真摯に向き合い、自分らしく成長できる場所
イー・フォースのエンジニアたちは、皆一様に誠実で、自立した姿勢を持っています。必要以上に会話が多いわけではありませんが、技術的に詰まったときには誰かが自然と隣に座り、一緒にコードを追い、レジスタの設定から処理の流れまで、現象の根本原因をともに探ってくれる──そんな信頼に支えられた文化があります。
ただし、「誰かに教えてもらう」のを待つのではなく、「まずは自分で調べて試す」姿勢は前提です。仕様書を読み込み、検証を重ね、自らの仮説を持って議論に臨むことで、初めて深く実りある対話が生まれる。そうした自律と協調のバランスこそが、イー・フォースのカルチャーだと感じています。
現在、私はこれまで経験してこなかった技術の深い部分に取り組んでいます。「なぜ動くのか」「どう動かすのか」という視点で技術を学び、エンジニアとしての理解が深まることに楽しさを感じています。
システムの基盤を支える部分にやりがいを感じ、黙々と手を動かしながら、技術と真摯に向き合いたい方。そんな方にとって、イー・フォースは間違いなくフィットする環境だと思います。そしてここには、自分らしい働き方や生活のリズムを大切にしながら、着実に成長していける柔軟さもあります。
エンジニアとして、そして一人の生活者として、地に足のついたキャリアを築きたい。そんな想いを持つ方に、イー・フォースという選択肢が届いてほしいと願っています。