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「AIが最高の顧客体験を創出する鍵となる」千葉銀行×エッジテクノロジーが見据える、新時代の銀行像と地域社会の未来
2024年12月10日以降、株式会社千葉銀行の傘下企業として、同行と協業を進めているエッジテクノロジー。銀行がAI企業を子会社化するのは非常に珍しく、両社のシナジーがどのような価値を生み出すのか、業界外からも大きな注目を集めています。
今回、千葉銀行常務執行役員(グループCDTO)*の柴田秀樹氏(以下、柴田)と、エッジテクノロジー 取締役兼AIイノベーション推進室室長の坂西茂氏(以下、坂西)に、千葉銀行がエッジテクノロジーを子会社化した背景や今後の戦略、そして目指す銀行のあり方についてお話を伺いました。
※グループCDTO…Chief Digital Transformation Officer
ちばぎんDX『3.0』の要としてエッジテクノロジーを子会社化
――千葉銀行がエッジテクノロジーの子会社化を決定した経緯についてお聞かせください。
柴田:当行は「一人ひとりの思いを、もっと実現できる地域社会にする」というパーパスを掲げており、2023年4月からの中期経営計画において、DX戦略「ちばぎんDX『3.0』」をスタートさせました。ここで目指しているのは、お客さま中心のビジネスモデルへの進化であり、その中核となるのがAI技術です。AIの活用を通じて、顧客向けソリューションの高度化と銀行業務の効率化を図るとともに、職員のAI・DXスキルおよび当行のブランド力向上に取り組んで参りました。
こうした取り組みを加速させるうえで、国内最大級のAI人材データベースを保有するエッジテクノロジーとのシナジーは非常に魅力的でした。行内でのAI技術者の育成やシステムのプロトタイプ作成・運用も並行して進めておりましたが、当行の経営資源とエッジテクノロジーの強みを組み合わせれば、これらの目的をより効率的に達成できると確信しました。また企業文化の面でも、ちばぎんグループの顧客中心の文化、エッジテクノロジーの技術革新を重視する文化、それぞれの文化の良い点を組み合わせることで、より多様で柔軟な組織文化を構築できるでしょう。「ちばぎんDX『3.0』」を推進するうえで、まさに“要”となる存在だと考えています。
――千葉銀行×エッジテクノロジーの連携によって、どのような価値が生み出されるのでしょうか。
柴田:まずはOne to Oneマーケティングの高度化が挙げられます。当行が保有する顧客情報を解析し、お客さま一人ひとりのニーズに応じてパーソナライズな提案を行うことで、必要な情報をより的確にお届けできます。たとえば、就職された方には口座開設のご案内を、結婚や出産といったライフイベントを迎えられた方には保険や資産運用のご案内ができれば、お客さまが「私のことをわかってくれている」と実感しやすくなります。
さらに、AI人材の活用は銀行業務の効率化やソリューションの高度化にも寄与します。最終的に目指しているのは「地域まるごとDX」であり、当行アプリの利用者数はまもなく千葉県人口のおよそ4分の1に到達します。そこから得られるデータをもとに地域事業者の経営課題を解決へ導くことで、地域の生産性向上、そして地域住民・地域事業者・ちばぎんグループが連携する「地域エコシステム」を生み出していきたいと考えています。
坂西:千葉銀行は、地銀広域連携の枠組み「TSUBASAアライアンス」に参加しています。これから千葉銀行と取り組んでいくAI活用におけるナレッジをアセットとして蓄積し、アライアンス内で共有すれば、その効果は千葉銀行だけにとどまりません。TSUBASAアライアンス全体でおよそ2,000万人近い顧客基盤があり、そうした幅広い顧客層に対して我々の取り組みを展開していくことが可能になります。社会的なインパクトは大きく、千葉銀行との協業には非常に大きな意義があると感じています。
また、ちばぎんグループの一員になったことにより、エッジテクノロジーの社会的信用度や知名度が向上するほか、安定した経営基盤の下でAI事業に集中できるといった効果もあります。
知見・スキル・人材ネットワークで「新しい銀行の姿の創造」へ
――具体的には、どのような形で協業を進めているのでしょうか。
坂西:最初に千葉銀行の各部署が抱える課題を集約し、AI活用対象が明確な課題について、LLM(Large Language Model)や分類・回帰、画像解析などの技術領域に仕分けして検討します。そして、費用対効果や実現可能性を踏まえて優先順位を付け、上位のものから開発に着手する流れです。
開発フェーズでは、千葉銀行のデジタル戦略部に当社の社員やフリーランスエンジニアがジョインしてチームを組み、課題分析にあたります。外部ベンダーという立ち位置ではなく、業務部門の方々から直接生の声を聞き、ユーザー目線で案件を進められる点が大きな特徴です。これは、他のAIベンダーではなかなか得難い経験であり、当社の社員にとっても大きなやりがいにつながっています。
さらに、当社のデータベースは国内トップクラスの技術者を擁し、そうした優秀なエンジニアと協働できるのもメリットの一つだと思います。
柴田:坂西さんがおっしゃるように、ちばぎんグループ×エッジテクノロジーのチームはプロジェクトの上流工程から参画します。そのため、「自分たちの手でやり遂げた」という実感を得られるのも大きな魅力です。
エッジテクノロジーが有する高度な知見・スキル、そして人材ネットワークの力をお借りしながら、当行は「新しい銀行の姿の創造」を目指していきます。企業が利益を得られるのは、私どもが付加価値を提供できたときだけ。では、付加価値とは何かといえば、お客さまが「これはいい」と思える顧客体験にほかなりません。すべてのビジネスの起点を顧客体験に置くことこそが、新しい銀行のあり方です。その実現にはデジタル、中でもAI技術が欠かせないのです。
イノベーションを推進し、お客さまに寄り添いたい
――将来的には「ちばぎんDX『4.0』」も構想されているとのことですが、具体的にどのような展望をお持ちでしょうか。
柴田:ちばぎんグループが掲げる「最高の顧客体験を創造する」という基本理念は変わりません。ただ、当時「ちばぎんDX『3.0』」を策定していた頃と現在では、AIを含む技術水準が大きく進歩しています。そうした技術の進化を背景に、One to Oneマーケティングの発想をさらに広げ、面として展開していくのが「ちばぎんDX『4.0』」の主要なテーマです。
たとえば、当行では業務効率化の一環としてRPA(Robotic Process Automation)を導入し、120以上のロボットが実務を手がけ、人間の担当者がモニタリングを行う体制を敷いています。しかし、AIが発展すれば、このモニタリング自体もAIに肩代わりさせることができます。その分、お客さま対応やニーズに迅速に応える業務へ、より多くの人的リソースを割り振ることができるようになります。
――最後に、エッジテクノロジーに興味を持っている方へメッセージをお願いします。
坂西:AI技術は今後さらにコモディティ化していくでしょう。そうした中で重要なのは、単に高度な数式やアルゴリズムを知っている以上に、進化する技術を絶えずキャッチアップしつつお客さまの真の課題に向き合う姿勢だと考えています。当社では、その課題解決に向けた姿勢を実際に体験し、身に付けられる環境があります。
また弊社にはちばぎんグループの案件以外にも多種多様な業界・業種のプロジェクトに参画していただく機会もあります。一人のAIコンサルタント・エンジニアとして、多彩なフィールドで経験を積むことができる点も魅力ではないでしょうか。
柴田:冒頭で述べたパーパス「一人ひとりの思いを、もっと実現できる地域社会にする」は、まさに皆さまが持つ知見やAIスキルを最も活かせる領域だと思います。自分なりのビジョンを持ち、「AIの分野で長期的にキャリアを築きたい」という強い思いをお持ちの方には、ぜひ挑戦していただきたいです。