DONUTSの共同創業者 根岸心による、DONUTS ジョブカン事業部 副部長 CTO 兼 株式会社ジョブカン会計 取締役 藤原尚紀へのインタビューを全3回の特別編集版でお届けしています。
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最終回となる第3回では、藤原の幼少期のエピソードや、取締役を務める株式会社ジョブカン会計について、さらに今年8月にリリースされたクラウド型会計システム「ジョブカン会計」開発のこだわりについて、根岸がインタビューしました。
インタビュアー(写真:左)
株式会社DONUTS 共同創業者 根岸心
インタビュイー(写真:右)
株式会社DONUTS ジョブカン事業部 副部長 CTO
株式会社ジョブカン会計 取締役 藤原尚紀
ー昆虫採集にスキー、読書に夢中だった少年時代
根岸:藤原さんのエンジニアとしての経験はこれまでの話で分かりましたが、子供の頃の話も教えてください。
藤原:実家は自然豊かな兵庫県のハチ高原の麓にありましたので、小学生の頃は昆虫採集に夢中でした!200匹以上のクワガタムシを捕獲した夏もありました。昆虫を捕獲するときの緊張感や達成感は格別でしたし、レアなノコギリクワガタを捕獲した時は、その美しさに感動したことをよく覚えています。また、冬になるとハチ高原はスキー場になるので、ミニスキーとリフトで登下校していました。ジュニアスキーチームにも所属し、シーズン中は毎日トレーニングにも励んでいました。
中学生になると、夏は野球部で冬はスキー部。勉強よりも部活に精を出していましたね。ところが高校では、3年間応援団には所属していましたが、帰宅部で勉強も全くせず、成績も悪くて…。詳細は言えませんが(笑)、中高時代はそれなりにやんちゃもしていました。でも高校3年生目前の春休みに、「このままではこの環境から抜け出せない。自立できない!」と気付き、その日から本気で勉強に取り組むようになりました。すると自分なりの勉強のやり方がわかってきて成績も徐々に上向き始め、数学・英語・国語の3教科受験で辛うじて大学に合格できました。小6の頃から読書が好きで、国語だけは勉強せずとも点がとれていたことが功を奏しましたね。
大学では体育会系のスキー部に入部して、真面目に大学に通い、それなりに友達もできたのですが、次第にスキーインストラクターなどのバイトに明け暮れるようになりました。ただ、家ではサリンジャーやランボー、カフカやドストエフスキー、ニーチェや中上健二、柄谷行人などの文学や哲学の本を読み耽っていました。本の世界にも飽き、そろそろ現実を生きようと思い始めた頃、妻の実家で夕飯をお世話になった際に義母から日本マイコンの人材募集の新聞の切り抜きを手渡され、この業界に入ることになりました。
ー入社前まで、パソコン未経験!
根岸:では、特に子供の頃からパソコンが好きだったとか、エンジニアになりたいと考えていたということではなかったんですね。
藤原:そうですね。実は日本マイコンに入社するまで、パソコンに触れたことすらありませんでした。入社したのも、バイト先の知り合いからビル・ゲイツの名声を聞いたことと、たまたま手にした人材募集の新聞の切り抜きがきっかけで、偶然この世界に飛び込んだようなものです。そもそも当時エンジニアという職業は今ほど市民権を得ていませんでしたし、コンピュータと聞いて目に浮かぶのは、キーバンチャー的なプログラマでした。
ただ、パソコンを触るなら素早くキーボードを叩けなくては仕事にならないと思い、入社するまでにブラインドタッチだけは独学で身に付けました。当時1~2万円ほどの、1行ぐらいしか表示されない白黒液晶のワープロ専用機を買って「1週間で身につくタッチタイピング」といった教則本をひたすら打ち込んでいました。入社後にプログラムを組みだすと、面白くてすっかり夢中になりましたね。
ーベテランエンジニアが集結!
根岸:次に、株式会社ジョブカン会計のエンジニアについて教えてください。
藤原:これは当社のエンジニア28名のキャリア分布を示したものですが、およそ半数が20年以上のキャリアがあるベテランエンジニアです。
根岸:かっこいい40~50代のエンジニアがたくさんいるのはアツいですね!まさにEmacsやVimの世代ですよね。
藤原:でも、45歳過ぎても少年のような心を持った社員が多いですよ。ちょっと何かできただけで子供みたいにはしゃいでみたり、Enterキーを大げさに押してキメてみたり。社内では未だに、そんなことばかりしています。
根岸:仕事はプロフェッショナルだけど、少年の心を忘れないエンジニアが多い会社は、若いエンジニアもなじみやすい雰囲気でいいですよね。
ーデスクトップの使い勝手を、そのままWebで
根岸:今年8月にリリースされたクラウド型会計システム「ジョブカン会計」開発のこだわりや、ポイントを教えてください。
藤原:デスクトップの使い勝手をそのままWebで実現できるよう、7つのポイントにこだわって開発しました。
- 帳簿での直接入力
フォーム入力でエントリーした後に帳簿へ反映するのではなく、直接帳簿の取引行を入力可能 - ノーページネーション(No Pagination):Web標準の次頁などのページ送りではなく、一つながりのデータをキーボードでスクロールして閲覧が可能
- パフォーマンス(試算表の即時反映)
表示する月や条件を変更しても、即座に画面表示が可能 - 固定された行入力(背面スクロール)
帳簿に複数の取引を順に登録する際に、編集行の位置は変わらず固定され、背後のページが上にスクロールされる - アクティベーション(ブラウザのタブ間で同期)
試算表からドリルダウンを行うと、元となる帳簿が別タブに表示される。この別タブの帳簿で取引を変更し、再度試算表のタブをアクティブにすると自動的に集計値が更新される - アクティブメンバー(同時ログインユーザーの表示)
同時ログインしているユーザーを表示し、誰が今何をしているかが、Google Workspaceのように表示される。仕訳指導の際に有効活用できる - プレビュー画面(PDF出力なしで確認可能)
一般のWeb業務アプリの場合、印刷イメージはPDFで確認するが、PDF変換はサーバーコストが高い。このPDF変換のコスト無しで、印刷イメージを即座に確認することが可能
ー内部構造を重視した開発スタイル
根岸:社内の開発スタイルや、開発の際に重視していることなど、他社と違うところはありますか?
藤原:内部構造を含めた作りこみは大事にしていますね。やりすぎ感もあるかもしれないですが、コードを共通化して極度に抽象化することによって、ユーザーの文字インプットからアウトプットまで、気が付くと相当数のクラス階層を経ていることもザラでした。既製のフレームワークをそのまま使うなんてことは、まずありません。特に私たちが取り扱うのは業務アプリケーションなので、エンジニアリングだけでなく、その業務仕様を正しく理解する必要があります。それを知らない人にコーディングしてもらうためにも、内部構造をきれいに分けています。いわゆるビジネスロジックとUIという区分ではなく、UI上のEnable/Disable制御等の部分も、ビジネスサイドでコントロールできるような構造にしています。
根岸:パッケージ版でこれまで実現してきたような抽象化された部分を、Web版でうまく引き継いでいますよね。
藤原:そうですね。全てではないですがコンポーネント化するところまではうまくできていると思っています。
ー「ジョブカン」をより魅力的なプロダクトに
根岸:技術的側面でチャレンジしたいと考えていることは何かありますか?
藤原:実はすごく実現したいことがあって、これが出来たらエンジニアを引退してもいいかなと思っているぐらいなんですけど…ここでは絶対に言えないですね(笑)私の胸にとどめておきます。
でもこれまでの経験を活かして、ジョブカン会計をはじめ、ジョブカンシリーズ全体をより魅力的なプロダクトにできるよう、積極的に技術的な挑戦を続けていきたいです!
3回にわたってお届けしてきた根岸と藤原のインタビュー、いかがでしたでしょうか?
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