ハフポスト日本版に弊社社員の働き方について記事が掲載されました
ネットニュースメディア「ハフポスト日本版」に弊社 マーケティングテクノロジーグループ 社員(中島)の働き方について記事が掲載されました。
中島はディレクタスとしては男性初の時短正社員です。高いスキルを持ち、仕事と家庭のバランスを最適な状態へと実現する様子に他の社員も大きな刺激を受けています。
子育て中、時短勤務をするのは女性だけ?
ある40代男性の選択は「家族の幸福を最大化した結果」
「妻ではなく、夫が時短で働く」という選択についてはどう受け止められるだろうか。対等にキャリアを築く共働き夫婦が増えたのに、子育てなどの局面で、働く時間の制限を強いられるのは常に妻――。そんな家庭がほとんどなのではないか。
そんなムードの中で、夫側が「時短正社員として転職する」という選択をしたのは、都内のIT企業ディレクタスに勤める中島琢也さん(44歳)だ。
週40時間程度働くフルタイムの正社員に対して、それより短い労働時間で働くのが「時短正社員」だ。
契約社員や派遣社員と違って期間の定めのない労働契約を結び、基本給や退職金の算定方法、福利厚生面などの保障はフルタイム正社員と同じ扱いになる。必ずしも育児や介護を抱えていることが前提になってはおらず、国が育児・介護休業法で定める一時的な時短勤務とは、厳密にいえば別の枠組みだ。
中島さんが転職時に活用したのは、人材会社ビースタイル(東京都新宿区)が提供する「スマートキャリア」というサービス。専門知識やスキルはあるが、さまざまな事情で働く時間に制約がある人材を対象に、時短正社員や高時給での派遣、スポットコンサルといった形で企業へとつなぐ。
時短正社員の紹介は2018年から本格スタートし、中島さんは男性としては初の事例だ。
「長時間労働」から、一転
そもそも、なぜ時短正社員で働きたいと考えるようになったのか。
中島さんは1998年、前職のIT企業に新卒で入社。システムエンジニア(SE)として約20年、顧客企業がビジネスをしていく上で必要なシステムの開発や運用にたずさわった。担当プロジェクトが本格化すると残業は増え、休日出勤を余儀なくされることも。緊急のトラブルが発生すれば、終電直前まで対応に追われた。
「周囲は全員、男性社員。『家庭の事情で帰ります』なんて概念自体なかったので、大変ではありましたが、当時はそれが当たり前だと思っていました」
そんな中島さんの意識が変わったきっかけは、2015年。長女が生まれたことだった。
大手企業で管理職として働く妻から、無理な働き方を心配されることはかねてからあったが、育休を取った妻の職場復帰を目前にして「これまでのあり方を変えなければ家庭を回していけない」という状況に。
長時間労働から、一気に時短勤務へと舵を切る決心に至った経緯を、中島さんは次のように語る。
「妻の育休期間中はちょうど私が繁忙期で、帰宅は連日22時を回っていました。それでも週末は子どもと触れ合っていたから『自分は今まで通り一生懸命仕事をして、その上に子育てもしている』という感覚があった。でも、夫婦で話し合う中で、妻から『育児の大変さを全く理解していない』と指摘され、思い直しましたね。何のために働きたいか、どう生きたいか。初めてそんな問いと真剣に向き合った気がします」
「妻だって楽しくなきゃいけない」
問いに対し、中島さんの中から湧き上がってきた答えは「家族が楽しく生きるために、働きたい」ということだった。これが、その後のワークスタイルを決める上での拠りどころになったという。
「仕事に関して『今は大事なときだから』なんてよく言いがちですが、子どもの『今』こそ、二度と返ってこないかけがえのない瞬間です。私はそれにもっと向き合いたいと思いました」
「同時に考えたのは、妻だって楽しくなきゃいけないということ。彼女はキャリアアップへの意識が高く、家事や育児を理由に仕事をセーブしたとして、いきいきしている姿を想像できなかったんです。『女性だから』『男性だから』という固定観念に縛られず、フラットに家族の幸福を最大化できる形を考えた結果として『私が時短』という結論に至りました」
当時の上司へ時短勤務を申し出ると、否定されることはなかった。だが「社内手続きの流れさえ心許ないといった感じで、かなり戸惑われました」と苦笑する。前例がないせいか、表立ってネガティブな反応もない。思い切って、第2子の長男が生まれた2018年には1カ月半の育休も取得した。
誰に、何を言われたわけでもないのに感じる「恐れ」
通勤が不便だったことなどから転職を考えるに至るが、当時の職場でも果敢に自分なりの働き方を実践していた中島さん。しかしこの間、ひそかに「漠然とした恐れ」に苛まれることもあった。
「私の両親は共働きだったこともあり、性別によって役割を決める発想は自分の中にはありません。仕事は好きでしたが、組織内での出世願望も強くなかったので、そういった意味での不安は感じませんでした。ただ、同じ働き方をしている人が周囲に一人もいないんです。すると、ふと後ろ指をさされているのではないかと怖くなる。『やる気がない』とか、『キャリアを諦めた』とか……。誰にそう言われたというわけでもないのに、です」
これは、マイノリティーの側に立たされた人が抱く典型的な感情だ。
近年は米グーグルの研究などから、誰でも気兼ねすることなく意見や思いを伝えられ、所属している環境に受け入れられていると感じられる「心理的安全性」の大切さが注目されている。多様な選択を可能にする制度的な前提はあっても、それがチームのメンバーに肯定され、尊重されていると確信できる「安心感」がなければ、どうなるか。後ろめたい気持ちやストレスを抱えた状態では能力を十分に発揮できず、働きがいや生産性も向上しない。
中島さんは転職活動を通じても、自身の選択がマイノリティーであることを突きつけられた。時短勤務は国が法律で義務付けているものなので、制度としてはどの企業にも備わっているはず。だが、正社員男性の転職市場で「時短歓迎」の求人はゼロに等しかった。
「大手転職サイトには募集自体がなかったですし、エージェントへ率直に希望を話したら、『正社員なら基本はフルタイムを想定しているので……』と怪訝な反応をされたこともあります。子どもが生まれてからずっと、転職については検討していたのですが、手詰まりな感覚がありました」
紹介を通じて、現在の勤め先(㈱ディレクタス)に出合うことができた中島さん。社員数は50人ほどで、非正規社員やフリーランスの活用にも積極的だが、継続的な事業の改善に取り組んだり、新しいビジネスを育てていったりするためには、正社員の確保も重要なミッションだ。一方で、IT業界は売り手市場。「中島さんのような高スキル人材を、フルタイムを想定した従来の採用市場で獲得するのは困難だったと思います」と人事担当者は話す。
中島さんは、「時短正社員」という形を当初から受け入れてもらった上で入社に至ったことで、安心して働ける実感があるという。
「もちろん、担当している仕事については前倒しでスケジュールを組んで、先を見通しながら効率よくこなしていかなければならない厳しさもあります。ただ、仕事と家庭のバランスは今の自分にとって最適な状態を実現できました。男性正社員の時短勤務は今の職場でも一人なのですが、こうした選択もあるということが社会全体に周知されていけば、状況も変わるように思います」