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一流と超一流を分けるもの

今から6年くらい前、前職の銀行員をしていた時のこと。僕は個人・法人相手の営業担当として、保険や投資信託などの金融商品の販売、法人や不動産への融資を提案をしていた。

将来的には独立したいという想いがあったので、営業をしっかりと身につけようと、たくさん本を読んだり、40万円払ってある営業の塾に入り、毎週日曜の朝に勉強会に参加する日々を送っていた。

参加者は、フリーランスの人からサラリーマンまで、意識の高い人がたくさんいた。その中でも多かったのが、、外資系の保険会社のセールスマン。知っている方もいるかもしれないが、彼らの多くはフルコミッション(完全歩合制)で働く営業のプロフェッショナル。

有名なのがプルデンシャル生命とか、ジブラルタ生命とか、ソニー生命などなど、、彼らの多くは引き抜かれて入社した、あらゆる業種の元トップセールスマンたち。トップ層は数千万円の年収を稼ぐ一方で、底辺では月収5万円の人もいるなど、、成果を出せずに辞めていく人が後を絶たない、かなり厳しい世界だ。

そんな中、僕はこの塾でプルデンシャル生命のTさんというセールスマンの方と知り合った。Tさんは僕より10歳ほど年上の35歳。もともと福岡県でレスキュー隊の隊員をやっていたが、一念発起して上京し、プルデンシャル生命へ入社。

人脈ゼロの状態から、すぐに年収5,000万円以上を稼ぎ出し、それから5年以上「MDRT」という日本の保険のセールスマンの中でもTop1%しか加入できない最高峰の資格をとり続けている、まさにトップ中のトップセールスマン。

僕もTさんから保険に加入したのだが、、元々は契約する気は全くなかった。でも、、Tさんと話して30分ほどすると、どうしてもこの人から保険に入りたい!むしろ契約させてください!笑 ・・と、なぜか思ってしまうほど。なんて表現したらいいかわからないが、、話していると吸い込まれてしまうような…とてつもない魅力、人間力を持つ人だった。

これだけバリバリ仕事をしていながら、奥さんや子供を大切にし、プライベートも充実させていて、今でも毎月1回は子供を預けて奥さんと2人でデートをしているという。こういうところもカッコイイ。

(ちなみに、今Tさんは独立して保険の代理店を開き、ほんの3年ほどで全国に17拠点を構えるまで成長させている。確かゆくゆくは日本を変えるために政界に入り、総理大臣を目指していると言っていた。本当にとんでもない人だ…)

保険の契約は”獲る”ものじゃない


そのTさんだが、実は何度か塾の講師として、営業についての講義をしてくれたことがあった。そして、休み時間にTさんはある塾生の保険のセールスマンと喋っていたのだが、、いきなりTさんが声を荒げて怒り出したのだ。

その会話の内容は、、こんな感じだった…

塾生:「Tさん、聞いてくださいよ。僕この前ずっと狙っていた大口の法人先のA社の契約が獲れたんですよー! 粘った甲斐がありました。」
Tさん:「お前、今なんて言った? 保険の契約は”獲る”もんじゃない。”お預かりする”ものだろう。保険というのは、ご契約者の方に万が一のことがあった時、残されたご家族が生活していく糧になる大切なものだ。
だから、無理やり契約をさせるようなものでも、獲得するようなものでもない。万が一の時に保険金を届ける責任まで含めて、お預かりするものなんだ。だから、今後その言葉は絶対に使うな。」

僕自身、当時は保険という商品を扱っていたので、、かなり衝撃を受けるとともに、この言葉は僕の脳裏に刻み込まれた。そして、Tさんの言葉への意識、細部への意識の高さから、一流と超一流を分ける違いを垣間見た気がした。

(*ちなみにTさんの考える”保険”の契約というのは、まさにこんなイメージかと。)

プルデンシャル韓国の震えるほど素晴らしいCM

とてつもない実力を持つセールスマンばかりが集まる世界で、さらに頭一つ抜け出る超一流のセールスマン。このレベルになったら、スキルとか、知識にそんなに大きな違いはないはず。となると、、やはりその違いはこういう細かい部分への意識・こだわりに現れるじゃないかなと思うようになった。まさに、、ミース・ファンデルローエの「神は細部に宿る」….だ。

思考が言葉に現れ、発する言葉が行動を決める


これを聞いてから、僕は会社で保険・金融商品のご契約をした際には、”お預かりする”という言葉を使うようになった。ちなみに銀行という組織はかなりひどくて、、僕が知っている限りでは、お客様をお客様と思っていないような言葉を使う人ばかりだった。ここに関しては、僕は前から疑問を持っていたのだが、Tさんの話でそれは確信に変わった。

もちろんまともな人もいるはずだが、、僕の知っている限りでは、彼らはお客様を”お金”としか見ていないような気がする。セールスマンたちが使う言葉で、僕が一番嫌いだったのは・・”刈り取る”という言葉。組織のトップである支店長が、普通に「今日あの客の契約、ちゃんと刈り取ってくるんだろうな?」と部下に言ったりする。

果たしてこんな言葉を、お客様に面と向かって言えるだろうか? どう考えても、相手を人として見ていないとしか思えない発言じゃないだろうか。少なくともリスペクトする気持ちはゼロだろう。「契約を獲る」も、まるで狩りのような感じがするし、Tさんが言っている通りで営業マンが上で、お客様は下に見ているような印象を受ける。

やはり営業マンとお客様はどちらが上でもなく、下でもなく、互いに対等であるべきだ。だから、それにふさわしい言葉を使うべきだろう。

ちなみに僕たちはインターネットを使ったビジネスをしているが、、個人的にはお客様のことを「リスト」と言うのは実は少し抵抗がある… なんか1人の人間としてではなく、ただの数字として見ているような気がする。少なくとも「顧客リスト」という言葉の方が適切じゃないだろうか。

言葉はまさしく言霊である


この細部へのこだわり、言葉へのこだわりについては、、、ボディショップ、スターバックスコーヒーの社長を歴任し、大きく業績を回復させた岩田さんもこんな風に言っている。(*以前、社内向けのレターで福田さんが引用していたのを拝借させていただきます。)

”「普段から言葉遣いには気をつけるようにしていました。例えば「現場」という言葉はできるだけ使わないようにしていました。できるだけ「お店」「お店の皆さん」というふうに呼んでいました。だいたいどの社長さんも「お店が一番大切だ」とおっしゃるのですが、ある社長さんが「店のやつら」と言っていたのを聞いたことがあります。
(中略)かつて所属していた企業で管理職研修に呼ばれて講演したときに、人事の担当者が販売店や工場のことを「末端」と言っていたので、思わず声を荒げて注意してしまいました。
(中略)言葉はまさしく言霊です。経営者は、普段から発する言葉遣いやメッセージにまで気を使うべきだと思います。まさに「神は細部に宿る(God is in the details)」のです。」

「スターバックスCEOだった私が伝えたいこれからの経営に必要な41のこと」岩田 松雄 著 より引用:

思考が言葉に現れて、その人が発する言葉によって、、その人の行動が決まる。本当に細かいところだが、何人かの一流の経営者・セールスマンを見てきて、ここは大きな違いをもたらす部分だと感じた。

僕らは特に、セールスライターとして日々「言葉」を扱い、お客様に「言葉」を届ける仕事をしている。だからこそ、その「言葉」の使い方をより強く意識するべきじゃないだろうか?

萩原 敬大

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