【30th特別連載企画 Episode 1】クリプトンのこれまで | 事業を知る
クリプトン・フューチャー・メディアは、本日2025年7月21日をもって、設立30周年を迎えました!これを記念して、当社の代表取締役である伊藤の著書『創作のミライ 「初音ミク」が北海道から生まれた...
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本日は、当社の代表取締役である伊藤が、クリプトン・フューチャー・メディアが歩んできた30年の軌跡を社員と共に振り返る特別連載企画の“Episode 5”をお届けいたします。
この連載企画は、クリプトンの設立30周年を記念して発売した伊藤の著書『創作のミライ 「初音ミク」が北海道から生まれたわけ』(発行所:中央公論新社)に詰め込み切れなかったお話を中心に、あらためて当社についてご紹介できれば・・・という想いから生まれました。
過去記事をまだご覧になっていない方は、ぜひこちらもお楽しみください。
Episode 5 のテーマは「ツクルを創る」です。今回は、当社の地域振興事業を担うローカルチームを取りまとめている服部と、当社の事業を技術の力で支えているシステムチームを率いている林に参加してもらい、伊藤と共に当社の地域振興事業について紹介いたします。
写真は左から順に、林・伊藤・服部
伊藤博之:クリプトン・フューチャー・メディア株式会社代表取締役。北海道大学に勤務の後、1995年7月札幌市内にてクリプトン・フューチャー・メディア株式会社を設立。DTMソフトウェア、音楽配信アグリゲーター、3DCG技術など、音を発想源としたサービス構築・技術開発を日々進めている。2013年に藍綬褒章を受章。
林禎康:2002年入社。システムチームのマネージャー。サーバサイドプログラマを経て、ECサイト、コンテンツ配信サービス、高負荷分散WEBシステムの開発・運用などを担当。現在は新規事業プロジェクトなどのシステムマネジメントに従事している。
服部亮太:2014年入社。ローカルチームのマネージャー。北海道全179市町村と連携した北海道の情報メディア「Domingo(ドミンゴ)」の運営や、「ジュニア・プログラミング・ワールド」「NoMaps」といった北海道・札幌発の企画・イベント等に携わっている。
―当社は札幌の民間企業ですが、国内外の様々なところで初音ミクの企画やイベントを展開しているからか、札幌の会社であることが意外と知られていなかったり、支社がないという事実に驚かれたりしますよね。
伊藤:そういうこともありますね(笑)Episode 1の時にもお話した通り、私は北海道の田舎町の出身で、ずっと北海道で暮らしています。昔は何事も東京にいかねば・・・みたいな風潮があって、私はそれが嫌でした。生まれた場所や住んでいる地域で可能性が狭められているような感じが癪に障るというか。北海道から世界に打って出ることだってできるはずだ、という思いがあった。
コロナ禍をきっかけに道外からリモートワークしている社員は増えていますが、支社を作る予定は今もありません。ずっと「北海道にいながらどこまでできるのか」というゲームをしているような感覚があります。
―伊藤社長のそういう思いを聞くたびに、当社が地域振興事業を手がけることになったのは必然だったのだなぁと感じるのですが、実際に地域振興に繋がる事業を始めたきっかけは『雪ミク』ということになりますでしょうか?
伊藤:地域振興といえば、地元北海道のクリエイターが制作したクラブ系着メロの配信サービス「North Sound」は2002年に手がけました。『雪ミク』は、2010年の「さっぽろ雪まつり」で初音ミクの雪像を作るお話をいただいたことがきっかけです。
2010年に制作した初音ミクの雪像(撮影:伊藤博之)
その際の“真っ白い初音ミク”のイメージから『雪ミク』のデザインが生まれ、初音ミクとはまた別の“北海道を応援するキャラクター”として展開していくことを決めました。その見た目から単純に“初音ミクの冬バージョン”と勘違いされてしまうこともありますが、このキャラクターの肝は“北海道を応援するキャラクター”であるという存在意義にあります。
北海道を応援するキャラクター『雪ミク』公式ビジュアル(Art by KEI © CFM)
また、雪像を作るにあたり、せっかくならば『雪ミク』のイベントを開催して北海道をさらに盛り上げられないかと考えました。それが、『雪ミク』が北海道を応援するフェスティバル「SNOW MIKU」の始まりです。北海道外の初音ミクのファンが北海道に遊びにきてくれるきっかけとなるようなイベントを開催することが、北海道の魅力を道外の方に知っていただくきっかけの創出と、地元の観光事業の盛り上げへの貢献に繋がると思いました。
―それは「北海道の関係人口を増やそう!」という考えにも繋がりますね。
伊藤:当時はまだ「関係人口」という言葉自体がありませんでしたが、確かにそうですね。北海道は人口減少が続いているという問題を抱えているので、何とか地元の力になりたいという気持ちは昔から持っていました。だから、完全な移住で人口を増やすことが難しいとしても、北海道外に拠点を持ちながらも北海道に頻繁に来てくれたり、深い関わりを持ってくれたりする人が少しでも増えてくれればよいなと。
2010年から始まった『雪ミク』関連の取り組みを通して、札幌の民間企業として地元に貢献できることがあると実感できたので、音楽事業、モバイルコンテンツ事業、キャラクター事業等を通して培った様々なノウハウを本格的に地元に還元していきたいと考えるようになりました。それを本格的に形にし始めたのは2014年あたりですね。
―そういえば当社が北海道内でカフェ(ミライスト)やショップ&ミュージアム(雪ミク スカイタウン)の運営を始めたのは2014年ですね。
林:そうですね。私は2002年入社なので当社が『初音ミク』を手がける前後の変化や、『雪ミク』の展開をスタートさせた時の変化も実際に見てきていますが、2014年の変化はキャラクター関連の時とはまた違った面白さがありました。だって“音の商社”で働いているのに、突然カフェの運営が始まるんですよ(笑)
でも、この一見唐突に見える展開にも、当社なりの筋がきちんとあって。あのカフェも伊藤社長が北海道のクリエイターシーンを盛り上げたいと考えて始めたものでしたよね。
伊藤:そうそう。確かEpisode1の対談でも話したと思うのですが、クリエイターというのは何も音楽をつくる人だけを指しているわけではなくて。野菜をつくる人も、まちを魅力的な観光地にしようと頑張っている人も「クリエイター」だなと考えれば、北海道にいるクリエイターのためにできることがまだまだたくさんあると気付いたんです。
そこで、最初に手がけたのが「ミライスト」というカフェの運営でした。“人と人が繋がり合うことができる場所”を用意することがクリエイターの支援に繋がると考えて、思いついたのがそれだったんです。人々が一緒にクリエイションできるハブのような空間を作りたかったんですよね。飲食店のノウハウは何もなかったので、試行錯誤の連続でした。ちなみにこの「ミライスト」の実現に向けて当社に新しく入ってきてくれたのが、ここにいる服部くんだったりします。
服部:懐かしいですね。私はもともと東京のレコード会社に務めていた時に『初音ミク』が歌う音楽と出会って衝撃を受けまして、札幌に戻った後、2010年に札幌で行われた「初音ミクとコンピューター音楽の集い」のインターネット生配信を担当したんです。その後も「SNOW MIKU」で生配信を担当させていただきつつ、普段は北海道中を巡って地域活性の仕事を行っていたのですが、そんな最中に伊藤社長から「地元にクリエイターが集う場所をつくりたい」と相談をいただきまして・・・それが「ミライスト」のことだったんですよね。「これをちゃんとやるには外部ではなくて中に入ってやらないと」と感じ、この会社の一員となることを決めました。
―その試行錯誤の一つがシメパフェ文化ですね!
伊藤:そうですね。もともと飲食店が多いエリアでの出店ということもあり、せっかく美味しいパフェを出しても無名の店ではなかなか売れなくて。孤軍奮闘しても仕方ないので、周囲で同じくパフェを出していた店舗を巻き込んで「札幌シメパフェMAP」なるものを作成し、近隣のホテルに置いていただきました。これによりメディアさんにも注目していただき、今では札幌の新しい食文化となりました。「ミライスト」はコロナ禍の2020年に閉店しましたが、「ミライスト」から生まれた札幌のシメパフェ文化は今も続いていて嬉しく思っています。
服部:当社が運営している北海道の「今」を届けるメディア「Domingo(ドミンゴ)」では、シメパフェに関する記事も掲載しています。札幌市でシメパフェ巡りをしたい時はぜひ参考にして欲しいです。(>>「Domingo」シメパフェ関連コンテンツ)
―その「Domingo」のサービス提供開始は2017年ですね。
服部:はい。少し前に「関係人口」の話が出ましたが、当社では“北海道に何らかの愛着や縁を持っていつつも北海道外に住んでいる方”を「バーチャル道民」と捉え、その「バーチャル道民」を増やしていこうと「Domingo」を始めました。2017年の時点で北海道とタイアップ協定を締結して、北海道内の各市町村にもプロジェクトへの参加を呼びかけ、約3年がかりで北海道の全179市町村から公認をいただいています。
Domingoでは北海道内外から見たときに、北海道各地域のさまざまな魅力が伝わるようにと運営していますが、近年では当社ならではのノウハウを活かして、各市町村の地域活性の企画や開催をお手伝いすることもあります。今月末(2025年9月)まで北海道の三笠市で開催されている「三笠市×雪ミク まちめぐりキャンペーン」も、「Domingo」が三笠市の情報を発信しているご縁から生まれた企画です。
―そう言えば、緊急事態宣言等で北海道から出ることも難しかったコロナ禍では、実は結構色々と北海道のために動いていたように思います。伊藤社長、林さん、服部さんを前にすると、「リスク通知システム」を開発した時のことを昨日のことのように思い出します。
伊藤:懐かしいですね。もう5年も前のことになりますか。「リスク通知システム」を開発した当時は、まだ国内の各自治体がそれぞれ対策に奔走している時で・・・リアルイベントは中止、飲食店は閑古鳥、といった状況の中で何かできることはないだろうかと思っていたら、どこかの自治体がニュースで濃厚接触者への通知について話していたんですよね。でも、それはLINEを必須とするもので、高齢の方などのことを考えると少し使い辛いようにも思えました。それで、そうか、だったら自分たちでもっと簡単に濃厚接触者に通知できるシステムを開発すればいいんだ、と思って林くんに連絡しました。
林:はい、突然連絡がきました(笑)そこからすぐ開発にとりかかり、数日で開発しましたね。開発から情報出しまで、一週間足らずだったかと。そして開発したシステムはオープンソースとして公開しました。これもある意味、伊藤社長がよく仰られている“収穫モデル”の考え方ですよね。システムを有償にして目先の利益を得ることではなく、オープンソースとして公開することで、イベントの開催や飲食店の運営などを支援し、コロナに負けないまちづくりへの一歩になれる方を選んだわけですから。
伊藤:シメパフェの時と同じで、孤軍奮闘でコロナ禍でのカフェの運営方法を考えるよりも、もっと広い視野で考えるべきだと思ったんですよね。まずはコロナ禍でも機能するまちづくりが先なのでは、と考えました。多くの人が安心して外出できる環境が整えば、まちに人が戻り、客足も戻るかもしれない。林くんの言う通り、『創作のミライ』の第5章でもお話している“収穫モデル”の考え方です。結果は予測できないけれど、まずは丁寧な環境作りから。農業と同じですね。
―「リスク通知システム」は実際に北海道で採用されて、「北海道コロナ通知システム」として導入されましたよね。
服部:その通りです。先ほども少しお話しましたが、当社はDomingoを通じた関係人口・交流人口拡大に取り組むことを目的としたタイアップ協定を北海道と結んでいたので、北海道庁の方とやりとりする機会も多く・・・当時も開発段階からどういうものを作っているのかをお伝えしていたので、すぐに北海道で活用されることが決まりました。当社が5月28日に「リスク通知システム」をGitHubで無料公開した翌日にすぐ「北海道コロナ通知システム」として北海道で活用されることになったのには、実はそういう裏話があったりします。
林:採用されたところは、北海道以外にもあります。「リスク通知システム」自体はオープンソースなので、北海道以外の様々な自治体でも活用していただけました。ただ、「リスク通知システム」の使用条件に報告義務はないので、採用実績として把握しているものは善意で報告してくださった自治体や、導入にあたって相談を受けた自治体のシステムのみで、あとはわかりません。似たようなシステムが運用されているのを見て「おそらくうちのシステムかな・・・?」と思うことはあっても、確かめはしていないので実績として言うこともできないです。それでも、自分たちが開発したシステムが世の中の役に立っているところをみると、メタクリエイターとして誇らしかったです。こういうのって、メタクリエイターの醍醐味だと思います!
―あと、コロナ禍の当社の取り組みと言えば「北海道どこでも盆踊り」も思い出深いです。
伊藤:通称「どこ盆」ですね。あれはコロナ禍で北海道内各地の盆踊りが中止になる中、何か楽しいコンテンツを提供できればと思いついた案でした。北海道の夏と言えば「シャンコシャンコ」(※ご当地音頭「子供盆おどり唄」の一節)が聞こえないと寂しいですからね。
林:「どこ盆」の面白いところは、国立研究開発法人 産業技術総合研究所が開発した「Songle Sync(ソングルシンク)」という大規模音楽連動制御技術を活用していることですよね。どういう仕組みかと言うと、参加者各々のスマートフォンに盆踊りの音楽と映像を全く同じタイミングで配信して共有することで、離れた場所にいる家族や友人と全く同じタイミングで踊ることが可能なんです。ソーシャルディスタンスを保ったまま独りで参加するとただの動画視聴と見た目が変わらないので、残念ながら技術のすごさが参加者に伝わりにくいコンテンツではありましたが・・・実は技術的に結構すごいコンテンツでした。スマホ10台を並べて同時に参加すると、その音と映像が完璧に同期される技術のすごさがよくわかるんですけどね。
服部:スマホ10台持っている人はなかなかいないでしょうね(笑)「どこ盆」も「リスク通知システム」と同じで、足りないものがあるなら自分たちで創ればよい、という考え方から生まれたコンテンツだと思っています。北海道の夏に盆踊りが足りなかったから、みんなが盆踊りを楽しめるコンテンツを創った。それが当社らしい発想だなと、今振り返っても思います。
ちなみに「どこ盆」を通して初めて北海道のご当地音頭を知ったという北海道外の方の声もSNS等でちらほら見受けられ、Domingo担当としては普段は北海道でしか楽しめない盆踊りを“バーチャル道民”のみなさんにお楽しみいただけた、という点でも思い出深いコンテンツでした。
―ところで北海道というと大自然や酪農を思い浮かべる方も多いと思うのですが、実はITが盛んですよね。
伊藤:北海道は確かに酪農のイメージが強いかもしれませんが、酪農でもテクノロジーは活用されています。牛の健康管理をAIで解析するシステムとかもあるんですよ。それに『創作のミライ』の第6章でも話していますが、かつての札幌はIT企業の活動が盛んで、アメリカのシリコンバレーにちなんで“サッポロバレー”と呼ばれていた時代もありました。
北海道にはものすごい可能性があるんです。農業、酪農畜産、漁業、林業のような一次産業の生産地としては日本一と言っても過言ではありませんし、テクノロジーを活用しながら様々なものを創造してきた土壌もある。だから、北海道は新しいテクノロジーやコンテンツを開拓する実証実験の場として最適だと思っていますし、クリエイティブな発想や技術の発展が、北海道のミライに良い形で繋がると信じています。
―先日、札幌市内で開催された都市型フェスティバル「NoMaps2025」は、まさにその新しいテクノロジーやコンテンツを開拓する実証実験のようなイベントですよね?
伊藤:そうですね。「NoMaps」は北海道を舞台に新しい価値を生み出すことを目的とした交流の場であり、未来に向けて切磋琢磨する人たちが集い、アイデアを広げ、気づきを共有できるような場を目指しています。
当社が主催というわけではないのですが、2016年に「NoMaps」を立ち上げた時から私が実行委員会の委員長を務めていて、当社のローカルチームが企画・運営に携わっています。
林:「NoMaps」自体が大きな実験場のようなものなので、当社でも開発中のシステムの実証実験を兼ねたイベントを「NoMaps」の取り組みの一環として行うことがあります。たとえば、当社では「COUGEN(こうげん)」というクリエイターのための照明コントロールシステムを開発しているのですが、まだ「COUGEN」という名前をつける前の開発段階で「NoMaps2020」のプログラムとして実証実験を行ったことがありました。
「SYNCHRONICITY 2020」という名のイベントで、ユーザーのスマホから流れる音楽と街中に仕込まれた光の演出を同期させることで、コロナ禍における新しいコンテンツ体験を提供する試みでした。当時の実験の様子はドキュメンタリー映像にして公開しているので、この対談記事を読んでくださる方にもぜひ見てもらいたいです。(>>「COUGEN」公式WEBサイト)
服部:「NoMaps」の魅力は「ワクワクする未来をみんなでつくっていこう!」とポジティブな空気に溢れていることです。会期中はビジネス、食、教育、社会課題解決、ウェルネスなど様々なカテゴリーのプログラムが札幌中で展開されていて、見て、聞いて、体験して・・・と色々な楽しみ方ができます。能動的に参加すると「面白そう」「面白い!」の連鎖が生まれるので、そのモチベーションがクリエイティブな活動のエネルギーとなって、その結果としてその人の周りや地域が生き生きとしてくるとうれしいですね。
―「面白い」の連鎖と言うと、子どもたちにプログラミングの楽しさと価値を伝えるイベントとして開催している「ジュニア・プログラミング・ワールド」にも通じるものがありますね。
服部:そもそも「ジュニア・プログラミング・ワールド」自体が「NoMaps」の一企画として始まったものなので、確かにその考え方は共通していると思います。2018年に「NoMaps」から独立して以降は「ジュニア・プログラミング・ワールド」の方にも別途実行委員会が立ち上がっていて、そちらの実行委員長は2025年から私が務めています。
「ジュニア・プログラミング・ワールド」に出展される体験は多種多様で、中には保護者の方も一緒に参加できるワークショップもあります。小学校では2020年度からプログラミング教育が必修化されましたが、保護者の世代にはなかった科目ですからね。保護者の方もお子様と一緒に「面白い」と感じていただける場の創出は、大切なことだと考えています。これからもテクノロジーが紡ぐこれからの未来を見据えて、大人と子どもが一緒になって学び・考え・作り・分かち合うことができる経験の提供を目指していく所存です!
林:確か「ジュニア・プログラミング・ワールド」の最大来場者数は約6,000人ですよね?保護者の方も含まれているのはもちろん理解していますが、北海道のエンジニアとしては、近い将来に同じフィールドにきてくれるかもしれない子どもたちが札幌だけでもこんなにいるんだという事実にわくわくしてしまいます。
伊藤:当社では未来の担うIT人材の育成も兼ねてこうした若い世代の技術力の発展に繋がる取り組みを行っていますが、「ジュニア・プログラミング・ワールド」の需要が年々高まっているところからも、北海道のクリエイティビティはまだまだ伸びしろがあると感じています。「ジュニア・プログラミング・ワールド」に参加した小学生が、数年後には「NoMaps」で何かの発表を行ったり、起業したりするかもしれない。そんなミライを考えると、それだけで楽しくなります。
私は北海道の出身で当社も札幌の民間企業なので、北海道に還元したい、北海道を盛り上げたいという思いを前面に出していますが、それは北海道にしか還元しないという意味ではありません。私たちの北海道での取り組みを見て、他の地方の方が奮起してくださったらそれはとても嬉しいことですし、協力できることがあれば北海道に限らず、まちおこしのお手伝いができればとも思っています。
―それでは最後に、Episode 5の伊藤社長の対談相手としてご協力いただいた林さん、服部さんにお聞きします。入社してから今までの中で一番印象に残っている「創る」にまつわるエピソードを教えてください!
服部:Domingoでは北海道のさまざまな地域でクリエイティブな活動をしている方々を「ローカルプレイヤー」としてご紹介しているのですが、そんなみなさんは日々身の回りの地域をよりよくしていきたいと考えつつ、それぞれに地域の未来を創っています。職種もさまざまで、ゲストハウスやコミュニティスペースを運営している方からデザイナー、映画監督、農家さんまで幅広いです。NoMapsもそうですが、ローカルチームではそういった方々がもっとこんなことをしたい、と思ったときの“場”を提供しています。
つい先日NoMapsのタイミングでローカルプレイヤーの方々も札幌にいらっしゃっていて、その時にお話をしたのですが、「あの時にあのような紹介をしてもらってすごく助かった」など声をかけていただきました。私たちが提供する“場”が、きちんと地域の未来を創っている方々のお役に立てているんだと実感して嬉しかったのと同時に、そんな方々と同じ覚悟をもって自分のポジションで出来ることを真摯にやっていかないとなと、改めて身の引き締まる思いでもあります。
林:入社以来、コンテンツ配信に関わるさまざまな技術を学び、サービスの「創る」に携わってきました。特に印象に残っているのは、伊藤社長と共に稚内北星学園大学(現・育英館大学)のサマースクールで経験した取り組みです。当時は全国から多くの社会人エンジニアが集まり、インターネット技術を本格的に学ぶ場となっていました。私自身もそこでUnixやネットワーク、Webプログラミングなどの基盤技術を徹底的に学び、インターネットサービスを実現するための力を培うことができました。
その後、当社で多くのサービスを開発し、「創る」を形にしてきたのですが、同時に大切にしてきたのは“人材を育てること”です。サービスを作るだけでなく、「創るをつくる」人材 - つまり、未来に新しい価値を生み出すクリエイティブなエンジニアを育てることに注力してきました。実際に大学の場では「クリエイティブなエンジニアはどう生まれるか」という講義も担当し、技術を伝えるだけでなく、発想や視点を広げることの大切さを共有してきました。振り返ると、自ら学んだことを次世代へつなげていくことこそが、自分にとっての「創る」の核心だったように思います。サービス開発も人材育成も、未来を形にしていくための“創造”の一部なんです。
―みなさん、ありがとうございました!
最終章となるEpisode 6 では、30周年企画にまつわるトークをお届け予定です。どうぞお楽しみに!