スーパーで椎茸を手に取るとき、季節を意識したことはありますか?
ほとんどの方は、特別食べたいものがあったり無意識のうちに手に取って買うと言ったところではないでしょうか。一年中どこにでも並んでいますから。
トマトやとうもろこしみたいに「そろそろ旬だな」と思わせる食材ではないですよね。
でも、実は椎茸にもちゃんと旬があります。しかも年に二回。
春に採れるものを春子、秋に採れるものを秋子と呼びます。
春子は肉厚で味が濃い。
秋子は身がぴんと張っていて、香りが際立つ。
同じ品種でも、育つ季節で別物になる。
呼び名が分かれているくらいですから、昔の人もその違いをはっきり感じていたんでしょう。
理由は気温
椎茸がよく育つのは10度から20度くらい。
真夏の暑さでも真冬の寒さでもなく、少し肌寒いくらいの温度帯がちょうどいい。
秋になると、この条件が自然に揃います。日中と夜の気温差が出て、成長がゆっくりになる。急いで大きくならない分、身が締まって、香りが逃げない。
ここで気になるのは、じゃあハウスで作っている椎茸はどうなのか、という話だと思います。
それでいうとうちは菌床栽培です。
ハウスの中で温度も湿度も管理しているので、季節に関係なく出荷しています。
残念ながら秋にしか採れない特別な椎茸がある、という話ではない。
ただ、以前の記事でもお伝えしたようにレンチナスの椎茸は旨味成分がすごいです。
手前味噌ではありますが、秋の味覚に拍車をかける食材と言っても過言ではないと思います。
とはいえ夏と秋では、やっている仕事の中身がまるで違います。
夏は、上がっていく温度をエアコンで押さえ込む作業。
放っておけば椎茸は伸びすぎて、傘が開き、薄く育ってしまう。味も香りも間延びする。だから機械の力で無理やり止めにいく。
育てているというより、走りすぎるのを抑えている感覚に近いですかね。
この作業は当然ながら電気を食います。結構食います。
外が暑ければ暑いほど、下げなければいけない幅が大きくなるので光熱費はそのまま経営に効いてきます。これが結構ボディーブロー。
恵みの秋
秋は、その必要がなくなります。
外の気温が勝手に適温に近づいてくるので、こちらが押さえ込まなくていい。
自然のほうが味方についてくれる状態です。
今年はすでにそれを感じてきています。
今の所涼しくなるのが早い感じなんですよね。
ようやく例年通りの季節感が戻ってきて、栽培もしやすくなった。
同じことを市場の人も言っていました。やっと例年の気温になった、と。
この「やっと」という言葉が、けっこう重い気がしています。
裏を返せば、ここ数年はそれが当たり前じゃなかったということですから、暑い時期が長引いて、秋らしい秋が短くなる。
椎茸の適温は昔から変わらないのに、外の環境だけが変わっていく。
その分を、機械と電気で埋め合わせることになる。
そのおかげで何度エアコンが悲鳴をあげていたか…
菌床栽培は天候に左右されにくい、とよく言われます。実際そうです。
雨が降ろうが台風が来ようが、ハウスの中の椎茸は育つ。
年間を通して同じ品質のものを、同じ量だけ出せる。それが菌床栽培の一番の強みです。
でも、完全に切り離せるわけじゃない。
外が暑ければ冷やすためのコストがかかるし、無理に押さえ込んだ椎茸と、自然に近い環境で育った椎茸では、どこか違いが出ます。
屋内で育てていても、外の季節はちゃんと入り込んでくる。
秋の椎茸を食べる機会があったら、少しだけ意識してみてください。
香りの立ち方が、夏のものと違うかもしれません。
分からなかったら、それでもいいと思います。
レンチナスの椎茸を食べた時には全然違う感情になれると思うので。