求人の難しさ
新規事業のポジションを求人票に書くとき、いつも同じところで手が止まります。
「事業開発経験者」と書くべきか、「未経験でも可」と書くべきか。
書き直すたびに、この人材がどれだけ希少なのか、あらためて突きつけられます。
厚生労働省の統計を見ると、地方の有効求人倍率は都市部より高い傾向にあります。2024年12月の数字では、地方の平均が1.41倍、東京などの都市部は1.18倍。
求人の数だけで見れば、地方の方が人を探しやすいはずの構造です。
でも実際は逆で、中小企業基盤整備機構の調査では、全国の中小企業の73%が人手不足を感じていると答えています。
求人はあるのに、人が来ない。
この矛盾が、地方の採用現場ではずっと続いています。
新規事業のポジションになると、この矛盾はさらに強くなります。
パソナのレポートによれば、企業が求める人材像は「実務経験の長さ」から「新規事業をスケールできるか」「戦略を描いて実装まで落とし込めるか」といった、より実践的な力に移ってきているそうです。
ただしその分、需要は一部の人材に集中していて、誰でもいいわけではありません。
求められる基準が上がった分、市場全体で見ても数が絞られている状態です。
しかもこの傾向は都市部の話であって、地方の中小企業がその一握りに選ばれる確率は、さらに低いと思っています。
地方の壁
地方への転職そのものにも壁があります。
マイナビの調査では、Uターン・Iターン転職を考え始めてから実際に勤務を開始するまで、平均で5ヶ月ほどかかるというデータがありました。
通常の転職の2倍以上の期間です。
求人を見つける段階、内定を得る段階、実際に移住して働き始める段階、それぞれに時間がかかる。
都会で新規事業の経験を積んだ人が、そこからさらに地方に移る決断をするまでには、いくつものハードルが重なっています。
ニッセイ基礎研究所の分析では、大卒者の多くが都市部に定着し、特に20代前半の若手が地方から流出する傾向が続いているとも指摘されています。
経験を積んだ人材ほど、都市部に留まりやすい構造がすでにできあがっているということです。
つまり、地方の中小企業が新規事業の人材を採ろうとするのは、条件のかなり悪いゲームに参加しているようなものだと思っています。
求人倍率だけ見れば人が来そうなのに、
実際には来ない。
経験者は都会に留まりやすい。
移住の意思決定にも時間がかかる。
三重で不利な条件を、そのまま背負っているのが実情です。
ましてや都会に比べると地方は都会に比べて最低賃金が違います。
私自身、もともとはこの会社の外にいた人間。
フリーランスとして関わり始めて、気づけば採用担当という立場になっている。
振り返ると、自分自身がこのデータの中で言う「動いた側」の一人だったんだと思います。
動いた理由は、条件の良さだけではなくて、まだ形になっていないものに関わる面白さの方が大きかった気がしています。
実際、営業や商品企画、SNSや人事・労務まで様々な業務を横断しています。
同じような動機で動く人が、他にもどこかにいるはずだと信じてこの記事を書きました。
だからこそ、レンチナスがこのポジションで求めているのは、必ずしも新規事業の経験そのものではありません。
都会でならもっと条件のいい会社に行けたはずの人が、あえて地方で0から作る側に回る。その決断ができる人を探しているんだと思います。
実務のスキルは、たぶん入ってから身につけられる部分の方が多いです。
採用の難易度は、率直に言ってかなり高いと自覚しています。
それでも、この矛盾だらけの市場の中で、一人でも興味を持ってくれる人がいたら、話を聞かせてもらえたら嬉しいです。