なぜイチゴか
廃菌床でいちごを作ります、と最初に聞いたとき、頭に浮かんだのはケーキの上に乗ってる小さな赤い粒でした。それと同時になんでイチゴ?という困惑も。
椎茸のハウスと、それがどうしても結びつかなかった。
採用担当としてこの事業を人に説明する前に、まず自分で市場を調べてみることにしました。
椎茸ハウスの隣にいちごのハウスを建てて、廃菌床を土台にして育てる。
話を聞いた時はシンプルな計画に見えましたが、調べていくと、思っていたより複雑な構造が見えてきました。
調べていくうちにわかった、そして驚いたのが、日本のいちごはほとんど輸入されていないという事実。
生のいちごの輸入量は年間およそ2,300トン、国内の収穫量のたった1.5%ほどしかありません。
しかもその大半はアメリカから来ていて、用途はケーキなどの洋菓子用がメイン。
日本は生で食べるいちごの消費量が世界一だと言われてきた国でもあって、輸入に頼らなくても国内需要をまかなえてしまう土壌が、もともとあったんだと思います。
輸入されるタイミングにも理由があって、国産の生産が少なくなる夏から秋にかけて、業務用の穴を埋めるために入ってきます。
逆に言えば、それ以外の季節は国産いちごでほぼ完結している市場だということです。
加えて冷凍いちごは年間3万トンほど輸入されていて、こちらは中国やエジプトが中心。ジャムや加工用として、生食用とは別の需要を支えています。
品種の数も調べていて驚いたんですが、国に登録されているいちごの品種は300近くあって、世界にあるいちごの半分以上を日本の品種が占めているとも言われています。
栃木のとちおとめ、福岡のあまおう、静岡の紅ほっぺ
産地ごとに個性を競い合ってきた歴史が、この数字に表れているんだと思います。
育種にかけてきた年月を考えると、後発でここに勝負を挑むのはかなり無謀な話です。
とにかく競合がめちゃくちゃ多く、超レッドオーシャン。
輸出にも動きがあって、香港や台湾を中心に、金額はここ数年で急激に伸びており、輸入額に迫るほどの伸び方だそうで、品質の高さが評価されている証拠でもあります。
海外の富裕層向けに、贈答用の高級いちごとして扱われるケースも増えているそうです。
つまり、いちごという市場は、すでに国内で高いレベルの競争が終わっている場所。
品種も味も、簡単には差がつけられないでしょうし、新規参入するにはそれくらい厳しい市場だと思います。
レンチナスの方向性
ただ、その中でレンチナスが挑もうとしているのは、味や品種の勝負ではありません。廃菌床という椎茸農家にしかない資源を使って、栽培コストの構造そのものを変える挑戦です。
廃菌床がいちごの培地としてどこまで安定するのか、収量や品質にどう影響するのか。
ここはまだ社内でも手探りが続いていて、具体的にどう進めていくかは検討中です。
他の産地の実証結果はあっても、そのまま真似すれば同じ結果が出るとは限らない。
気候も水も違う八峰町では、結局自分たちの目で確かめるしかありません。
この事業に関わる人には、たぶんいちごの栽培経験は求められません。
むしろ、品種や糖度の勝負にはならない場所で、コストの構造から市場を見直せる人の方が向いていると思っています。
栽培のプロである必要はなく、コストや仕組みを考えるのが好きな人の方が、案外このポジションに合っているんじゃないかと思っています。
すでに激戦区になっている市場に、椎茸農家という畑違いの立場から入っていく。
無謀に見えるかもしれませんが、その分だけ、これまでのいちご農家が考えなかった発想を持ち込める余地もあると思っています。
もしこの手探りの過程を面白がれる人がいたら、一度話を聞かせてもらえたら嬉しいです。
ぜひ、私たちと一緒に事業を進めましょう!