不安・同情・権威。人の“心の隙”に入り込む仕掛けとは
「気づいたときには、もう舞台の上だった」
これは、被害に遭われた方からよく聞く言葉です。
複数の人間が登場し、時間をかけて信頼関係を作り上げていく。
まるで脚本のある演劇のように進行するのが、劇場型詐欺です。
ファーマ法律事務所には、こうした被害の相談が毎日のように届きます。
電話口の向こうには、「まさか自分が」「慎重なつもりだったのに」という声が並びます。
でも、私たちはそのたびに感じます。
詐欺は“判断の弱さ”ではなく、“人を信じようとする心”を利用した犯罪なのだと。
信じてしまうのは、弱さではなく「設計された自然さ」
劇場型詐欺の台本は、最初からターゲットの心に合わせて書かれています。
そしてそのシナリオは、信じることが自然に思えるように設計されているのです。
たとえば——
- 子を想う親の心理を突く「子ども装い型」
- 老後の不安につけ込む「未公開株」「老人ホーム入居権」
- 被害者の同情心を逆手にとる「被害回復型」
- 権威を装う「警察・役所・金融庁型」
どれも、人の“善意”と“責任感”を巧みに利用する構造になっています。
「冷静になれば分かる話」なのに、冷静さを奪う脚本がすでに仕組まれている——。
そこに、劇場型詐欺の恐ろしさがあります。
“複数の声”が、真実をつくり出す
劇場型詐欺の特徴は、一人の詐欺師では完結しないことです。
勧誘する人、保証する人、買取を申し出る人——。
役割を分けて登場し、あたかも別の組織や立場から話しているように見せる。
複数の人間が同じ内容を口にすることで、偶然の一致が「確信」へと変わるのです。
「違う人が同じことを言っているから本当かもしれない」
そう思う瞬間、疑いの気持ちは消え、物語は完成します。
それは、人間が本来持つ“社会的証明”という心理を、悪用した構造です。
劇場型詐欺は、まさに人の信頼メカニズムそのものを逆手に取った犯罪なのです。
操作されるのは「お金」ではなく「感情」
詐欺師が狙うのは、お金そのものではなく、感情の揺れです。
「焦り」「同情」「安心」「信頼」——この4つの感情を自在に操ることで、冷静さを奪います。
- 「今日中に」「今すぐ」など、時間のプレッシャーで考える余地をなくす。
- 「警察」「銀行」「金融庁」など、権威の名を使って疑いを封じる。
- 「前にも話しましたよね?」という一貫性のトリックで、断れなくする。
詐欺は、情報を偽る犯罪ではなく、感情を動かす犯罪。
そして、その構造を理解することが、“防ぐ力”の第一歩になります。
デジタル時代に広がる“見えない舞台”
最近では、AI音声で家族の声を模倣したり、実在する会社を完全にコピーしたWebサイトを使ったりと、
詐欺の「脚本」はデジタル技術によって急速に進化しています。
SNSやメッセージアプリを介した接触も増え、
本物と偽物の境界はますます曖昧になりました。
もはや「怪しい見た目」や「変な言葉遣い」だけでは見抜けません。
詐欺は、私たちの“反応速度”を狙うものに変わっています。
だからこそ、必要なのは「疑う力」よりも、「確認する環境」。
誰もが、一度立ち止まって相談できる場所が必要なのです。
現場で感じる、被害者の「本当の痛み」
ファーマ法律事務所が受ける相談の多くは、「お金を失った」話で終わりません。
そこには、
「家族に言えない」「信頼していた自分が恥ずかしい」「もう誰も信じられない」
といった深い心の傷が残っています。
被害の回復とは、金銭的な取り戻しだけでなく、心の再生です。
そして、私たちが日々向き合っているのは、
「どうすれば、もう一度“人を信じる力”を取り戻せるか」という課題です。
詐欺の相談は、法的手続きの前に、まず「心を支えること」から始まります。
その第一声を受け止めるのが、私たちの役目です。
社会全体で「だまされにくい構造」をつくるために
劇場型詐欺の根絶は、法律だけでは実現できません。
必要なのは、“だまされない人”を増やすのではなく、“だまされにくい社会”をつくること。
被害者を責めず、情報を共有し、仕組みで守る。
私たちは、警察・行政・メディア・金融機関などと連携しながら、
詐欺防止の啓発活動や再発防止の支援を行っています。
一人ひとりが気づき、声をかけ合える社会へ。
そのために、法の専門家だけでなく、“人の気持ちに寄り添う人”の力が必要です。
一緒に“安心を取り戻す仕事”をしませんか
劇場型詐欺のような犯罪をなくすために、
私たちが向き合っているのは、法律よりも「人の想い」です。
誰かの不安を和らげ、落ち着きを取り戻す。
誰かが「もう一度信じてみよう」と思えるように支える。
それが、ファーマ法律事務所の仕事です。
現在、私たちは次のような仲間を募集しています。
- ご相談窓口チーム
最初に被害の声を受け止め、冷静に状況を整理していくポジション。
営業ではなく、“人の話を聴く力”が中心の仕事です。 - カスタマーサポートチーム
被害後の実務サポートや再発防止を担うポジション。
安心を形に変えていく、チームの中核を担います。
このような被害をなくすために、私たちがいます。
被害に苦しむ人のそばに立ち、解決へ伴走する。
そして、同じ想いで“誰かを守る仕事”をしたい人たちと、共に歩む。
あなたもこの物語の続きを、「解決する側」として一緒に書いていきませんか。