Medii Guest Talk vol.1 「今、参画する意義は大きい」 ーーグロービス高宮氏が語る、Mediiが迎える急拡大フェーズと求める”将軍”
「Medii Guest Talk」は、MediiとMediiを応援してくださる方との対談シリーズです。今回は、グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナーの高宮慎一さんと、Medii 代表取締役医師の山田による対談をお届けします。
Mediiは2024年3月に、グロービス・キャピタル・パートナーズをリードとした資金調達を実施したことを発表(https://medii.jp/news/20240314)、同年5月には、高宮さんの社外取締役就任を発表しました(https://medii.jp/news/20240508)。
しかし、過去に一度Mediiへの投資を見送っていた高宮さんーーー。
その理由と現在に至るまでの経緯、そして今後への期待をお伺いしました。
目次
スタートアップの成長を加速させる3要素と、理想的な経営メンバーの布陣
「スタートアップの旨み」が凝縮されたMediiの事業フェーズ
起業家精神の源泉は、社会の負を見過ごせない性格と商売人の家族から受け継いだ「カスタマーハピネス」
今後のMediiの成長に欠かせないのは、事業をドライブさせる”将軍”クラスのメンバー
<対談者プロフィール>
グロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社
代表パートナー 高宮慎一氏
「Forbes日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング」2018年1位、2015年7位、2020年10位。コンサルティング・ファーム アーサー・D・リトル(ジャパン)を経て、GCPに参画。東京大学経済学部卒(卒業論文特選論文受賞)、ハーバード経営大学院MBA(2年次優秀賞)。投資実績として、IPOはアイスタイル、オークファン、カヤック、ピクスタ、メルカリ、ランサーズ。近年は、Medii、ジョーシス、newmoにも投資を行う。
株式会社Medii
代表取締役医師 山田 裕揮
和歌山県立医科大学医学部、慶應義塾大学医学部医学研究科卒。自身も指定難病患者かつ日本リウマチ学会専門医・指導医。全ての専門領域で信頼できる専門医に無料で症例相談できる、医師向け専門医相談サービス「Medii Eコンサル」を提供するMediiの創業者。
スタートアップの成長を加速させる3要素と、理想的な経営メンバーの布陣
高宮さん(以下、敬称略):山田さんとは創業間もない2020年に初めて出会って、もう5年以上になりますね。シード期だった当時、チームができていなかったことで投資をお断りしてしまったこともありました。その時に、ビジネス側をリードしてくれるコンサル出身者や経営経験者など必要ですね、という話をしたら、山田さんはその通りの理想的なボードメンバーを実際に揃えてきました。COOはアクセンチュアの戦略部門でシニアマネージャーをしていた筒井さん、CFOはローランド・ベルガー出身で、上場したスタートアップの経営企画の責任者もしていた冨田さん。なかなかシード期に採用するのが難しいような方々ですが、どうやって入社してもらえたのですか?
山田:高宮さんとお話しした後、背中を預けられるようなメンバーをなんとかして探さなければと思い、ひたすらスタートアップ、ビジネス界隈の人に聞いて回りました。優秀だと思う人を3人ずつ挙げていただいたのですが、数十、数百人からお名前を伺っていると、同じお名前が挙がってくることがあるんですよね。そういった方にご紹介をお願いして、当時コロナ禍でしたが15人くらい直接会いにいきました。その内の一人で、バリューを共にし、ベクトルを揃えて事業を大きくしていけると強く感じたのが、現COOの筒井さんでした。
現CFOの冨田さんは、株主からの紹介でした。2021年の資金調達の際、ICCで出会った各領域のトップエキスパートの方に個人で株主になっていただいていたのですが、財務エキスパートとして入っていただいた上場企業CFO経験者の株主にお繋ぎいただいたのがご縁の始まりでした。初期においては特に、人と人との繋がりから仲間一人ひとりとのご縁につながっていて、各々が全く異なる経歴を持ちながらも、奇跡的とも言える素晴らしいご縁に多く恵まれたのは本当に幸運だったと思います。
高宮:冨田さんはスタートアップで上場を経験していることもあり、今後の事業のスケールを見据えて、今のMediiがすべきことを戦略的に進めてくれていますよね。スタートアップのカオスな状況に対して、仕組み化と大胆に進める部分のバランスが取れる人だと思います。それもあって、トラディショナルな大企業のようなところからくる人に対しても、共通の言語でちゃんとオンボーディングできていて、それは実は結構珍しいことであり、Mediiの強みかなと思ってます。
山田:おっしゃる通り、大手企業や外資コンサルから来ているメンバーもいますし、メガベンチャーやスタートアップ出身のメンバーもいます。そういう意味ではダイバーシティな土壌になってきているのかなと思いますね。
高宮:本当に理想的なメンバーが揃ったなと思いました。医療系スタートアップに投資する時、アントレプレナーリアルな人と、医療のドメイン知識に長けた人、そして普遍的な経営ができる人の3要素が揃っているのが大事だと思っているのですが、全部揃えるのはすごく難しくて、稀なことだと感じています。Mediiは全て兼ね揃えていることから、大企業から転職してくるメンバーも違和感なく入れてしまう、珍しいタイプの医療系スタートアップだと感じています。
「スタートアップの旨み」が凝縮されたMediiの事業フェーズ
高宮:アーリーやプレシリーズAくらいのタイミングだと、経営メンバーが足りないまま、というのは珍しくないですよね。一方で、Mediiはステージに対して経営メンバーがしっかり、早いタイミングで固まっています。それもあって、先を見据えた秩序立った仕組み作りも進んでいますが、事業フェーズとしてはまだアーリーフェーズで、これからどんどん伸ばしていく段階にあります。 事業の成長性が高いからこそ、今ジョインして一緒に事業を作っていこうという人にとっては、事業とともに自分も成長を体感できる、めちゃめちゃ美味しいタイミングだと思うんですよね。そして、自分が作った事業で、経営陣の一角も占めることができる。すごくチャンスにあふれています。
山田:自分のチームながら、私もそう思っています。数年後になってしまうと、良くも悪くも組織が成長し出来上がってしまってかなり違った体験になってしまうでしょうね。
高宮:そうですね。人材が増え、組織が整っていくと、割と仕組みでちゃんと回っていく感覚になってしまい、良くも悪くも大企業っぽくなってしまう。そうすると、スタートアップならではの権限や裁量が大きい中で、自律的に動いて結果を出していくみたいなところが、少しやりにくいタイミングになってしまうこともあるので、大きな裁量を持って自分で結果出したいみたいな人にはすごくいいタイミングなんじゃないかって思います。
起業家精神の源泉は、社会の負を見過ごせない性格と商売人の家族から受け継いだ「カスタマーハピネス」
高宮:本人を目の前にして言うのはなかなか恥ずかしいですが、山田さんはそのシュッとした外見や経歴からは想像できないような起業家魂の持ち主ですよね。Mediiの社会性と事業性を両立することへの思いの強さ、パッションがあり、泥臭さも、暑苦しいぐらいの(笑)推進力も感じます。そのアントレプレナーたり得る部分はどこから来ているんでしょうか。
山田:2つあるかなと思うんですが、1つ目は恐らく社会や身の回りのおかしい仕組みや慣習を許せない元来の性格ですね。「負」に感じられてしまう非効率なこと、おかしいと感じることに対して、これが普通だから、当たり前だからとすんなり受け入れることが難しいんです。例えば、中学校の時のブラック校則とか、医学生の時に知った医学教育の国際乖離において、もっと良い仕組みがあるんじゃないかと考え、実際に変えられるならばそのあるべき世界を実現しようよ、と仲間を募って動き回っていたので、中学校の時とか先生方には面倒な生徒だと思われていたと思います(笑)。
高宮:アントレプレナーリアルな気質って先天的か後天的かみたいな議論によくなるんですけど、間違いなく先天的に持ってる人っていますからね。自分が変えてやるんだというパッションが、自然と社会に向けた外向きのベクトルになっているのは起業家としての武器になるんじゃないですかね。
山田さんにはもうひとつ、なんというか「闇落ちしてないコンプレックス」みたいなものがありますよね。コンプレックスって、闇落ちしてしまうとすぐ皮肉を言ったりとか、妬んだりとかするんですが、山田さんの場合は、コンプレックスにドライブされて、成長してないとダメだ、という思いが強いですよね。
山田:確かに、辛いことばっかりでも考え方をプラスに変えたら人生好転したと思っているところがあります。過去に、家族や自分の健康、住む場所など、大切なものをいくつか失った経験があり、その都度心と共に自分の中の大きな樹が根本からバキバキと折れたような経験をしてきました。でも、時間を経てそれをプラスに変えなければ、勿体無い!と思うようになって。その折れて横たわっている大樹を自分の中で昇華させて乾かした後、”薪”として焚べられるようになると、それを活かして心を燃やしてエネルギーにできるようになっていきました。
それは段々些細な事象も反映されていて、どんなに小さな失敗でも、次に活かすことをまず考える癖があるかもしれないです。日々お会いする方、起こる事象、全てに学びがあると信じています。
あと2つの内もう1つが、生まれ育った環境にあると思っています。僕は母子家庭なのですが、自分を育ててくれた母方の祖父母が二人で小さい酒屋をやっていて、その商売人としての背中をずっと見てきました。90歳を超えても、100段を超える階段がある神社に重たいビールの配達をしているようなパワフルな人でして、どんな苦しい時も顧客の笑顔のために何ができるのか?という姿勢がすごい。顧客への寄り添い方がもう、なんでここまでできるのか、というほど徹底されていました。
Mediiのバリューの最上位に挙げている「カスタマーハピネス」もそうなんですが、成果の追求を前提として、それ以上に相手の最も心の奥底で願っているハピネスってなんだろう、と自然と追求してしまう部分は、祖父母の姿が原点になっていると思います。
高宮:そうやって、相手のことを慮れる、ハイタッチで密着度が高い医師起業家が生まれたんですね。相手のニーズを察するのが上手いというかサービス精神旺盛で、本当に求められれば歌って踊れるようなイメージが山田さんにはあります(笑)。
真面目に言うと、Mediiには、ファウンダーの山田さんのリーダーシップによって、スタートアップらしい、スピード感や自律性などのアントレプレナーリアルな部分ももしっかりありました。一方で、脇を固める筒井さんや冨田さんが仕組化も推進していて、スタートアップに飛び込みたくても、いきなりスーパーカオスな所にジョインするのは心配、という人にとってもすごくいいんじゃないかなと思いますね。開示できない情報が多いタイミングではありますが、ファイナンス的な視点で見ても今のMediiはとても魅力的なタイミングですよ。
今後のMediiの成長に欠かせないのは、事業をドライブさせる”将軍”クラスのメンバー
高宮:改めてまとめてみると、Mediiは強靭な経営陣が揃い、事業が成長軌道に乗り始め、順調に進んでいると言えます。あえて今の課題をあげるとすれば、今後の成長をブーストさせる”将軍”クラスの採用だと思います。キングダムでいうところの6大将軍のイメージです。すでに半分くらいは揃ってきたと思っていますが、今後の急拡大に向けてはあと数名、こういったクラスの方々が必要になるでしょう。
山田:ありがとうございます。仰る通り私たちのミッションを実現していくには、まだ見ぬ強力な仲間たちが必要です。夢に向かって走っていく船の中で、まだ席が残っているというチャンスと捉えられるかもしれません。
高宮:Mediiの根幹にあるのは、山田さんを始めとする皆さんの「誰も取り残さない医療を」を実現することへの執着にも近い想いなんだと思います。革新的な新薬を、必要としている患者さんのもとに適切に早く届ける。その大きな価値は社会に広がっていき、その結果として提供できた価値の一部を分け前として還元してもらえる。このサイクルができていることは、私が投資家として評価する重要なポイントでもあります。最近のトレンドとしての、ソーシャルアントレプレナーシップとスタートアップが重なり合う部分、しかもそのベン図の真ん中を取れてる会社なんじゃないかなって思うので、これからもそこをしっかり両立していってほしいですね。
山田:ありがとうございます。高宮さんは、日本を代表するベンチャーキャピタルのトップとして、上場も通じて社会に大きなインパクトを残すスタートアップやその起業家を多く深く把握しているからこそ、その言葉の意味や大切さを日々実感しています。
特に、チームを作れるか、という問いに対して、あの日からずっと考えて行動しています。単に仲間として企業が採用するという話だけではなく、どのようにその人のキャリアを含めた人生、家族にも責任を持って、いい影響力を持って共に伴走できるのか。それは社員にとっては人生の一部を投資いただくに等しいと考えています。同時に企業も限られたリソース、資金をどの人にどれくらい投資するか?という互いにフェアな関係性であるべきとも思っています。
Mediiに入ってもらえて、一緒に社会に大きなインパクトを残して、いつか歳を取って最期の時を迎えた時に「誇りを持って共に目指したいと思う未来を実現するために志事を全うし、これからの社会にも家族の未来にも大きな影響力を残せたな」と納得して目を瞑れるか。
5年前、高宮さんがMediiが今以上に何ものでもなかった創業初期の時からMediiの可能性を見抜いてかご連絡をくださった時から、こんなに多くの、最高の仲間と共に「誰も取り残さない医療を」目指せていること自体が尊いです。Mediiの挑戦はまだまだ始まったばかりでちょうどこれからのフェーズ。お仲間として、パートナーとして引き続きよろしくお願いいたします。