作業療法士として7年間、医療現場で患者さんと向き合ってきた鈴木実菜歩さん。彼女にとって、Mediiは初めての「企業」でした。メールも名刺交換も未経験、ExcelやWordもよく知らない状態からスタートし、入社から1年余りで社内表彰(MVPとカスタマーハピネス賞)をW受賞。現在はAIを駆使してチームの業務効率化を牽引しています。
ビジネス未経験の壁をどう越え、医療従事者としての経験をどう活かしているのか、そしてMediiの医師コンシェルジュとして何を大切にしているのかを聞きました。
患者さんに良いことが、病院の利益にならない葛藤
ー まず、医療の道に進んだきっかけを教えてください。
私には3歳上に発達障がいを持った姉がいます。幼い頃から、姉の通院に同行したり、特別支援学校の姉の友達と一緒に遊んだりする環境で育ちました。
障がいがあるからこそ日常生活で困る場面も多かったのですが、その課題が解決した時の喜びはとても大きかったです。例えば、手先が不器用な姉が一人で傘を開けられるようになったときなど、できないながらも楽しいことを見つけ、できることが増えてステップアップしていく姿を間近で見ていて、本当に嬉しかったんですよね。そこから自然と「人の暮らしを支援する仕事に就きたい」と思い、作業療法士の道を選びました。
ー 実際に作業療法士として7年間働くなかで、転職を意識したのはなぜですか?
一番しんどかったのは、「患者さんにとって良いことが、必ずしも病院の利益にならない」という医療構造上の問題でした。
高齢の患者さんを診ることが多かったのですが、皆さん「一日でも早く家に帰りたい」と心から願っていました。あと何年住み慣れた家で暮らせるかわからないからこそ、その一日一日がかけがえのない時間なんです。なので、私も「早く退院させてあげたい」と思ってリハビリに励んでいました。
でも、病院経営の視点に立つと、常にベットを埋めて満床を維持しないと収益が厳しいという現実があります。質の高いリハビリで早期退院を実現しても、それが病院の収益につながるとは限らないし、個人の評価やお給料に反映されるわけでもない。患者さんの人生にとって良いことと、病院にとっての良いことが、必ずしも一致するわけではないんです。
国が決めた制度の枠組みの中にいる以上、病院の中からこの構造を変えるのはすごく難しい。割り切って働いている人も多いと思うんですけど、私はどうしても納得感を持てず、折り合いをつけられませんでした。
このままでは、一生同じ葛藤を抱えたまま働くことになると思い、医療現場の外に出て、医療課題を解決しようとしている企業へ転職を考え始めた頃にMediiと出会いました。制度の枠内では解決できないことを、どうにか解決して患者さんに還元しようとしている姿勢に深く共感しました。
「ビジネス未経験」からのスタート。支えになった“同じ境遇の先輩”
ー ビジネス未経験でMediiに飛び込むことに、不安はなかったですか?
未知の世界すぎて、当時は企業の職種と言ったら、事務職・営業職・エンジニアくらいの大雑把なイメージしかありませんでした(笑)。自分がどこで力を発揮できるかも全くイメージがつかなかったです。
カジュアル面談で「医療系の出身者でも活躍できるポジションはありますか」と聞いたら、紹介されたのが「コンシェルジュ室(ドクターリレーションズ担当)」でした。
不安を飛び超えて挑戦したいと思えた一番の決め手は、上長である種田さんの存在です。種田さんも元理学療法士で、ビジネス未経験からスタートし、Mediiで大活躍されていました。「同じバックグラウンドの人が活躍できている」という事実が、何よりの心強さでした。
種田さんとの面談で、ビジネス経験がないことの不安を打ち明けた時に、「全然大丈夫、1からサポートします。自分も何もかもわからないところから身に付けていったから。医療を良くしたいという『気持ち』さえあれば問題ない。経験やスキルよりも、その想いを重視しています」と言ってくださって。
この言葉を聞いて、自分にも貢献できることがあるかもしれないと一歩を踏み出す覚悟が決まりました。
アナログな世界からAIを使いこなすまでに進化
ー 実際に入社してみて、特に戸惑ったことは何ですか?
まずは働き方の自由さですね(笑)。病院では全員の出退勤時間も、一日に診る患者さんのスケジュールもすべて決まっています。しかしMediiでは、いつ出社して何時に帰るかも、自分の裁量に委ねられ、「自分で決めていいんですか!?」と最初は混乱しました。
業務で使うツールも知らないものばかりでした。触ったことのあるデジタルツールといえば電子カルテくらいで、Excelの関数なんて見たこともない。社外へのビジネスメールすら打ったことがなかったんです。コンシェルジュはほぼ毎日、先生方とメールでやり取りするんですけど、病院という特殊な環境にいたので、「自分の感覚は、一般社会から見たら非常識なんじゃないか」と思ってしまって、最初はドキドキしながらメールを書いていました。
ー どうやって乗り越えていったのでしょうか?
調べて解決できることは調べつつ、実務に関しては同じチームの先輩たちがパソコンの横にぴったりついて、マンツーマンで教えてくれたおかげです。「このボタンを押してもデータは消えませんか?」と確認するような状態の私を、温かく支えてくれました。
ー 実菜歩さんといえば、コンシェルジュ室のAI担当というイメージがあります。アナログな世界にいたのに、今ではAIを使いこなしているのがすごいギャップです。
そのイメージは、コンシェルジュ室の中で「業務効率化」を中心となって進めていたことがきっかけかなと思います。サービスや事業が成長するにつれて業務量や幅もどんどん広がっていったので、クオリティを落とさずにスピード感を持って対応するためにどうにか効率化をしなければと考えていく中で、必然的にAIを活用しました。
私みたいなビジネス未経験でも、AIを使うことで素敵な資料が作れたり、データ分析ができるようになったりして、結果的に先生たちに良いものを提供できるようになりました。できることの幅がぐっと広がるのがすごく面白いし楽しいです。
ー医療現場での環境と大きく違いました?
新しいものを取り入れる時のスピード感に、大きなギャップを感じました。病院だと新しい仕組みやツールの導入は難色を示されがちですが、Mediiにはどんどん試してみようという雰囲気があります。
実際に世の中で話題になったAIも、すぐに社内で導入されました。最初は使い方がよくわからなかったのですが、Mediiは基本的なことからお互いにシェアし合って、みんなで一緒に勉強していこうというカルチャーがありました。医療現場出身の自分だからついていけてないのではなく、新しいものだからみんな手探りでわからなくて当然なんだと気づけたのは安心しました。
これはAIに限った話ではなく、Mediiは会社全体で常に新しいことに挑戦しているので、普段の業務でも「みんなで一緒に未知の領域を開拓していく」という感覚があるんです。
何か新しいものをやってみようとすることに対して、建設的な意見はあっても、それを歓迎して後押ししてくれる空気感があるからこそ、ビジネス未経験の私でも安心して色々チャレンジできています。
作業療法士の経験が生きる「攻めと守りのバランス」
ーそうした挑戦の結果、2026年上半期のMVPとカスタマーハピネス賞のW受賞ですね!「攻めと守りのバランスが素晴らしい」という受賞理由がありましたが、具体的に何を意識しているか聞きたいです。
コンシェルジュの仕事は、すごくたくさんの立場の方が関わります。サービスを利用される医師の先生、ご協力いただくエキスパート専門医の先生、製薬企業との協業プロジェクトに関わる社内メンバーやプロダクト開発チームなど。
全員にとって最適な対応を考えなければ信頼関係が崩れてしまいます。かといって、リスクを恐れて「守り」に入りすぎると新しい価値は生まれないですし、逆に「攻め」すぎてハレーションを起こすわけにもいかない。そのバランスを取るのが一番難しい部分なんです。
でもふと振り返ってみると、この「攻めと守りのバランス」は作業療法士の時にずっと現場で考えていたことと一緒だなと気づきました。
ー前職の作業療法士の経験が、今に繋がっているんですね。具体的にはどういうことでしょうか?
作業療法のゴールは、単に病気や障がいを治すことではなくて「その患者さんにとって意味のある生活行動ができる状態」を作ることなんです。
例えば、転倒リスクがある高齢の患者さんが自宅に退院する場合。ケガの予防だけを最優先する極端な守りでいくと、危ないからベットの周りだけで生活してくださいになってしまう。でも、それだと患者さん本人は幸せじゃないですよね。
なので、手すりをつけて最低限トイレまでは自力で行けるようにするとか、家族がいる時間はリビングで過ごすといった、リスクを抑えつつ幸福度を最大化する手段を考えます。
「リスクがあるから何もかも避ける」のではなく、「最低限守るべきリスクは何か」「何が達成されれば関わる人全員(家族も患者さんも)が幸せか」を考える。この思考が、今の仕事にに活きています。
サービスを通じて飛び交う専門的なやり取りや、その背景にある「先生方の真の困りごと」まで正しく理解し、推察できる知識と視点があるからこそ、関わる人全員にとっての最適を導き出せる。それは、医療現場を知っている元医療従事者だからこその強みだなと感じています。
臨床で闘う医療従事者が報われる仕組みをつくりたい
ー 最後にこれから挑戦したいこと、目標を教えてください。
Mediiの素晴らしいところは、「医療のためになることが、しっかりとビジネスの成長につながる循環」ができている点です。
先生方が助かることが医療の質向上に繋がり、それがMediiの事業成長へと直結していく。に繋がる。そして事業が大きくなればなるほど、さらに大きな価値や仕組みを医療現場へと還元していける。そんな、どこまでも医療現場のためになり続ける循環を、もっと強固に、そして大きく回していきたいです。
そして私の究極の目標はやっぱり、「最前線で闘う医療従事者が、やりがいを持って気持ちよく働ける仕組み」を作ることです。
自分自身、医療現場で報われないなと感じることがたくさんありましたし、医療に対する想いはあるのに不合理さにくじけてしまう同僚も見てきました。私は一度現場を離れてしまいましたが、やはり最前線に立ち、その手で患者さんを救っている先生や看護師や検査技師やリハビリ職の方々など、医療従事者の皆さんが何より尊いと思っています。医療現場の外から、良い医療を提供している人たちが正当に報われる仕組みを作って支えていきたいんです。
まずはこのMediiで、コンシェルジュとして目の前の先生方に「役に立った」「使ってよかった」と感じていただける瞬間を一つずつ作っていくこと。それが、私の目指す大きな未来へ繋がっていると信じています。