トヨタ、ファンドマネージャーを経てVCへ。「自分の解釈」で、世界に付加価値を出す。15th Rock GP 源健司の投資哲学
トヨタ自動車、上場株のファンドマネージャー、そしてベンチャーキャピタリストへ。
一見すると華麗な転身に見える15th RockのGP(General Partner:ファンド運営者)・源健司のキャリア。しかしその根底にあるのは、「自分の解釈で付加価値を出したい」という、職人のような純粋な渇望がありました。
なぜ彼は、誰もが羨む大企業の安定を捨て、上場株の世界、そして未公開株(VC)の世界へと足を進めたのか。15th Rock設立の背景と、彼が見据える「Human Augmentation(人間拡張)」が作る未来について、じっくりとお話を伺いました。
─── キャリアのスタートはトヨタでしたね。当時はどのような未来をを描いていたのでしょうか?
学生時代、エンジニアとして海外駐在をしていた父の影響もあり、沢木耕太郎さんの『深夜特急』に憧れてバックパッカーをしていたんです。漠然と「海外に関わる仕事がしたい」という想いがあり、海外展開に強いトヨタ自動車をファーストキャリアに選びました。
1年目からベネズエラ、ブラジル、アルゼンチンなど南米を担当させてもらい、年上の外国人相手に英語でタフな交渉を行うなど、かなり厳しく鍛えられました。この時の経験が今のキャリアの基礎になっています。
─── そこから、なぜ「投資」という全く異なる世界へ?
トヨタでの仕事は刺激的で充実していましたが、大企業はどうしても「すでに決められたゴールにいかに効率よく、早くたどり着くか」が重視されます。そうした環境のなかで力を磨くうちに、どこか窮屈さを感じるようになったんです。
そんな時、個人で始めていた株式投資が転機になりました。「同じ情報を持っていても、解釈によって全く違う答えが出る」。情報の解釈によって自分なりの付加価値を出し、結果が変わる面白さに強く惹かれていきました。
─── トヨタからさわかみ投信へ。異業種への挑戦で、苦労されたことも多かったのでは?
転職当初は、まさに存在意義を問われる毎日でした。自分で課題を見つけ、付加価値を証明しなければ居場所がない。
この壁を突破したのは、「教わる姿勢」を捨てたことです。職人のように、先輩の技術を「見て盗む」自律心を持つ。「人間は環境に適応できる」と信じ、自ら仮説を立てて戦略を練るという「個」の戦い方にシフトしてしていきました。
─── さわかみ投信で最年少ファンドマネージャーを経験した後、ニッセイ・キャピタルでVCへと転身されました。上場株から未公開株へ移った決め手は何だったのですか?
上場株の世界は、どうしても画面上の数字との対話が中心になります。私はトヨタという事業会社の出身。金融のロジックを持ちつつも、もっと経営の「手触り感」が欲しかったんです。
VCならニューマネー(成長資金)が直接企業に渡り、事業成長に深く関与できます 。事業会社と金融の中間のような立ち位置で、起業家と共に成長を作っていく。その立ち位置こそが、自分の居場所だと確信しました。
─── VCとしての成功体験で、特に印象に残っているものはありますか?
「ココナラ」への投資ですね。当時の私は、企業のファンダメンタルズ(本質的価値)を重視するバリュースタイルが中心でした。しかし、ココナラに関しては「将来、人々が2つ目、3つ目の仕事を持つ世界が来る」というビジョンに強く共感してしまったんです。
社内からは慎重な意見もありましたが、この投資を通じて、私自身のスタイルもビジョンやコンセプトを重視する「グロース投資」へとアップデートされました。投資家として一皮剥けた大きな経験でした。
─── その後、15th Rockを設立されました。「独立」という道を選んだ理由は?
投資という「答えのない世界」で経験を積むうちに、組織の判断に左右されず「自分が純粋に良いと信じる投資をやりたい」という目的が明確になりました。「絶対に独立したい」という強い欲求があったわけではありませんが、目的を達成するための最善の手段が独立でした。
─── 15th Rockが掲げる「Human Augmentation(人間拡張)」というテーマ。ここには、どのような想いがあるのでしょうか。
私たちはVCを「産業を創る仕事」だと定義しています。だからこそ、社会をどう変えたいかという明確なテーマが必要でした。
「人間拡張」が面白いのは、テクノロジーで人間の能力を底上げすることで、社会課題の「前提」そのものを変えられる点です。例えば、もし人間が自力で時速100kmで走れるようになれば、車は不要になり、渋滞や事故という課題そのものが消滅しますよね。
最終的にはすべてのプラットフォームが「人間」に集約されるような世界。そんなワクワクする未来を、投資を通じて実現したいと考えています。
─── 源さんが投資家として、最も大切にしていることは?
私のモチベーションの源泉は、ほぼ100%「知的好奇心」です。お金や名声よりも、純粋に「投資がうまくなりたい」という職人気質が強い。情報をどう解釈し、どんな仮説を立て、検証するか。その精度を極限まで高め続けること自体が、私にとっての目的です。
─── 最後に、VC業界を目指す若手の方々へメッセージをお願いします。
投資で勝つための原則は、シンプルに2つだけです。
- 情報の非対称性
- 情報の解釈力
これからVCを目指すなら、最初から「将来はGPとしてファンドを持つ」くらいの野心を持ってほしい。自分の商売に責任を持つ「個人商店」としての覚悟が必要です。
泥臭い世界ですが、強いメンタルと、誰の懐にも飛び込める「明朗さ」を持った方と一緒に、新しい産業を創っていけるのを楽しみにしています。