今の採用市場で、現場のIT職種としてはプログラミングやシステムを設計する「アプリケーション開発」と、サーバーやネットワークの構築から維持管理をする「インフラエンジニア」という2つ大別されることが多いと思います。
私のITキャリアのスタートは銀行システムのサーバー室に詰めてモニターを監視し、手順書通りの作業を行う「運用オペレータ」というもので、今でこそインフラエンジニアという部類に括られるのだろうけど、エンジニアリングはしていないためインフラエンジニアでもロースキルな仕事です。昔はエンジニアなんて名乗るのはおこがましいと思ってました。
まあ、いきなり難易度の高いエンジニア業務にアサインされていたらついて行けず、切り捨てられたであろうから、低く緩いところからしっかり理解して(体で覚えて)次に進むと言うのが自身にあっていたと思います。昨今、未経験を高難度の現場に入れて精神疾患を出すような現場(会社)もあるので、メンタルの強さにもよるけど、身の程知っての行動は大切なのかと思います。
そんな運用オペレータの現場も、今はかなり整備されていて裁量がない環境がほとんどだと思いますが、以前はオペレータにも結構な権限が解放されており、夜勤の時は翌日のオンライン開局をいかに早く行うかを意識して、バッチの実行タイミング調整したり、人によってはメモリやDiskサイズを調整したり、実行プライオリティの変更なんかをやっていました。今では判断誤って事故を引き起こすリスクを考えると、そんなオペレーションは出来ないと思いますが、昔の環境は裁量がありシステムを操縦してる感覚がありました。また、銀行システムはお金の出入りを時間通りに行う必要があり、自分も必要な時にお金をおろせないと、数少ない合コンに行く機会を逃したり、それどころか生活資金が尽きると命に関わるなと思ったりして、上司からは「資金繰り厳しい企業なんかは入金遅れると最悪倒産する可能性もある」と教わり、そんな影響あるシステムを運用してるのかと考えるようになると、とても緊張感を持って仕事にあたるようになったと思います。
この影響力ある銀行システムでトラブルが発生すると、迅速に対処する必要があり、トラブル時の現場は普段見かけない凄い人や偉い人が現場に集まり、より一層緊張感を高めました。少し不謹慎ですが当時はトラブル対応はオペレータの腕の見せ所と思ってた所があり、エンジニアにエスカレーション(報告)を行ったあと、一緒に現場に詰めて、コマンドやジョブの実行順、オンラインの経路、過去トラブルのナレッジなんかを頭に入れておいて横から助言したり、助言した情報が一部取り入れられて手続きが進むと、解決したのは自分じゃないのに何かやった気になって、トラブル対応の後に技術部門や開発部門の人に名前覚えてもらうことが嬉しかった記憶があります。ただ、今思うとトラブルを待って手柄を上げるなんて武将気取りも甚だしく、今は如何にトラブルを起こさないように日々点検をする人や、設計をする人こそ賢者であり優秀であると心の底から思ってます。
キャリアの開始を運用オペレータとして過ごして実績を積み、その後のキャリアとしてメインフレームを保守する「インフラエンジニア」に力技でアサインしてもらい、やっとエンジニアになれたなと思いました。それからインターネット系に携わりたいとオープン系(Linux、Windows)にキャリアチェンジさせてもらい、管理職になってからは小規模ながら自動化システム開発受託、請負サーバ構築、代理店開拓など色んな仕事をしましたが、キャリアの中で最初の銀行システムの運用オペレータこそ、難易度は低いけれども大規模システムを操縦してる感覚、社会に重要な影響を与える銀行システムのトラブル対応時の緊張感は、今までの仕事の中で一番遣り甲斐があったなと感じております。