ゼロスペック株式会社は、灯油タンクの残量を可視化するIoT残量センサー「GoNOW」で、暮らしを支える灯油配送の現場を持続可能なものに変えようとしている、札幌発のスタートアップです。センサーは全国で10万台以上が稼働しています。
今回話を聞いたのは、2022年に入社し、カスタマーサクセスの責任者を務める伊藤佑太さん。お客様に向き合うときに大事にしていることを尋ねると、少し意外な答えが返ってきました。
「答えは現場にあると思っています。ただ、現場の言葉をそのまま受け取るわけではないんです」
「率直に話しますシリーズ #1」でプロダクトの課題を語ってくれた伊藤さんに、今回はビジネスサイドの仕事そのものを聞きました。
プロフィール
伊藤 佑太(いとう・ゆうた)
カスタマーサクセスの責任者。北海道札幌市出身。埼玉大学卒業後、東京のIT系ベンチャーで中古車の広告媒体の営業を4〜5年経験。北海道にUターンし、潤滑油メーカーで有形商材の営業に携わる。2022年1月、ゼロスペックに入社。営業とカスタマーサクセスを一体で担うチームを率い、お客様への提案から導入後の伴走までの「型」づくりを担う。
Q1. これまでのキャリアについて教えてください。
新卒で入ったのは、東京のIT系のベンチャー企業です。中古車の広告媒体を扱っている会社で、僕は広告サイトの営業を4〜5年やっていました。
次に選んだのが、潤滑油のメーカーです。1社目が無形商材だったので、次は有形商材をやってみたい。メーカーであること、自分が本当にやりたいことは何か、というところを軸に決めました。大学は埼玉、1社目は東京勤務で、ここでUターンして北海道で就職活動をしています。
ゼロスペックは、転職サイトで見つけました。決め手は2つあって、ひとつは、これまでやってきた無形と有形が融合している感覚があったこと。自動車業界やエンジンオイル、整備工場まわりの知識が活かせそうだなというのは、率直に思いました。
もうひとつは、前職で農家さんや農業機械屋さん向けの仕事をしていたことです。人手がいなくなって、自分でやっていた作業を大手に任せる、というのが主流になってきたタイミングでした。人が減っても規模は保ちたい。そのための省人化やDX、IoTにちょうど興味が向いていたので、入社してみたいなと思ったんです。
Q2. 入社してみて「思っていたのと違ったな」と感じたことはありましたか? そこから現在まで、役割はどう変わってきましたか?
入社が1月4日で、その3日後に「新聞の広告記事を作れ」という指示が出ました(笑)。
それまで営業しかやってきていないので、新聞の広告って何なんだ、という状態です。コマの取り方も知らないし、サービスの理解も全然ない。そんな中で「こういう内容ならお客様に刺さるんじゃないか」を考えるところからやらせてもらいました。目の前に課題が降ってきたら、とりあえず解消する。それくらい、なんでもやっていました。
当時の事務所は、マンションの一室に3〜4名。いまはフルタイムのメンバーだけで14名になりました。
正直に言うと、当時は仕組みが何もないので、自分で仕事を探しに行かないといけないんです。前の2社はどちらも、仕組みも役割の定義もできあがった会社でした。カオスな状況は僕にとって初めてで、そこに徐々に馴染んでいった感じですね。
役割の話をすると、入社当初は営業をメインにしつつ、社内で必要なことはすべてやるスタイルでした。そこから人が増えて、領域や役割が分かれてくる。そうなると、そこに仕組みが必要になるんですよね。いまは、その仕組みをつくる係に回ってきた感覚です。具体的には、目の前のお客様にどういうステップで提案をすべきか、そのためにどんなアクションが必要かを落とし込んでいく。ただ、僕ひとりで作っているわけではなく、みんなで作っているものです。
いまは事業本部の石塚さんの下に、神さんと僕がいて、それぞれのチームを見ています。僕が担当しているのは、主に北海道のエンタープライズのお客様です。
カスタマーサクセス・サポート全体をまとめ、仕組み化する役割がありますが、実態としては「営業であり、カスタマーサクセスでもある」という建付けです。お客様の成功体験づくりをお手伝いしつつ、成功体験ができたのだから追加で導入してください、と提案していく。その両方を、同じチームで担っています。チームは、サポートのメンバー4名と僕です。
Q3. お客様に向き合う中で、伊藤さんが大事にしていることは何ですか?
僕らが頭で考えることの答えは、現場にあると思っています。ただ、現場の言葉をそのまま受け取るわけではないんです。
そのまま受け取ってしまうと、それが本当に全体にとって必要なことなのか、判断がつかなくなるんですよね。だから一番大事にしているのは、相手の業務を、相手以上に具体的に理解しようとすることです。データで見る、現場で体験させていただく、ヒアリングさせていただく。手段は何でもいいのですが、まず相手より業務を理解して、その上でどうするべきかを提案に落とし込む。
たとえば、お客様からはよく「自分のところはうまくやれている」と言われます。でも、数字で可視化してみると、実体は違っていたりするんです。感覚的にざっくり把握されているだけなので、僕らは数字や実データを根拠に、ロジカルにお話しします。
現場の言う「うまくやれている」は、灯油切れを起こしていない、という意味なんですよね。効率的な配送ができている、ということとは違う。そこがずれたまま話しても、提案は届きません。
特別なことをしているわけではなくて、どのお客様に対しても、課題の可視化、現状の把握、エラーの解消提案、というサイクルを繰り返しているだけです。ただ、顕在ニーズにこだわると潜在ニーズを見落としてしまうので、潜在ニーズはないかを常に考えています。
この心がけは、1社目の経験が大きいと思います。お客様は、言いたいことを思うままにおっしゃる。でも、それがどれくらいのコストがかかることなのかまでは、お客様側からは見えない。それを判断して、サービスとして成り立つ形に消化するのは、こちらの仕事なんですよね。
かといって、現場を信用していないという話ではありません。答えは必ずどこかに眠っている。ただ、それを探すには現場に行かないといけない。そういうものだと思っています。
Q4. 入社から5年近く、灯油配送のお客様と向き合ってきて、業界の空気は変わりましたか?
入社した当初は、ちょうどコロナ禍と呼ばれる時期でした。灯油配送を担ってくださっているのは60歳前後の方が多く、人がいなくなってしまう、というのは皆さんの肌感としてすでにあったんです。ただ、その代替としてIoTが成り立つのかについては、前向きな反応をあまりいただけなかった印象があります。一部のお客様からは、かなり強くいただけましたけれど。
いま振り返ると、「大事なのは分かる。でも、アクションに移すほどの後押しがなかった」ということなんだと思います。それが、人手不足や賃金の上昇、2024年問題がニュースで繰り返し流れるようになって、ここ最近ようやく実感値に変わってきた。そういう状況になってきたのかなと思っています。
Q5. レガシーと呼ばれる領域に向き合う中で、いま一番の「壁」はどこにありますか? 逆に、この領域だからこその面白さは?
いまの灯油配送の仕組みは、お客様が30年以上やってきたやり方が染みついています。配送の管理システムが出てきたのが30年ほど前で、そこから大きな変化が起こってこなかった業界なんです。
染みついた慣習を新しいものに切り替えましょう、というのは、人間としてハードルが高い。長年培ってきたやり方を変えていただくお願いをしているわけですから、当然だと思います。だから「こうすれば、こうなりませんか」と一つずつお伝えして、少しずつ変えていっていただく。ご理解いただくのにも時間がかかります。
理屈としては正しいよね、というのは僕らの武器になります。でも、それだけでは伝わらない。実際に試して「本当だ」と体感していただくところまでが必要になるんです。
WEB会議も、最初は抵抗があった人が何人もいたはずですよね。それが当たり前になったから、いまは誰もが受け入れられる。僕らがやっていることも、その過渡期なのかなと思っています。
面白さの話をすると、僕らのサービス自体が、確実に正しいものだと思えていることですね。これは僕自身が心の底から思っています。
タンクの中身が見えないまま、配送に行かなければいけない。その状態自体がおかしいと思っているんです。だから、サービスの理想形については、あるべきもの、絶対そうならなきゃいけないものだと信じている。まだ理想形ではありませんが、そこは疑っていません。
そうなると、あとはお客様にどう伝えたら動いてくださるかを日々考えることになります。資料なのか、言葉選びなのか、誰に言えば進むのか。ソリューションとしての価値があると自分で信じられるからこそ、「あとはそこを乗り越えるのは自分のパワーだ」と言い切れるのかなと思っています。
Q6. この仕組みは、灯油配送の先にも広がりそうですか?
ざっくり言うと、現場からデータをもらって、それを分析結果としてお返しして、お客様がその結果をもとに判断できる。この状態をスムーズにするためのサービスだと思っています。
だから、現場からのデータの収集手段は、いまはセンサーという形をとっていますが、どんなものでもいいと思っているんです。たとえば営業の電話や、議事録を取ってくれるAIサービス。あれもいわゆるデータですし、それをもとに営業の行動を変えることも考えられる。
ニーズも徐々に広がっています。いまは「このセンサーはこう使えるんじゃないか」という程度ですが、液体を測れているという事実があるので、内容物を変えれば測れるんじゃないか、というお問い合わせが多いですね。
Q7. これから3〜5年で、ゼロスペックでやっていきたいことは何ですか?
サービスの面で言うと、データを出すところまではできているんです。センサーのデータ、残量のデータ。それを分析した結果もお返しできている。ただ、それがお客様にとって本当に使えるものになっているかは、まだちゃんと考えたいところです。
いまのAIを使えば、もっと自動で配送の計画が立てられるはずです。そこにどうしても人の手が介在している状態なので、その必要がないサービスにするべきだなと。どうすればお客様が迷わず判断できるのか、現場に聞きながら、ちょっとずつ変えていく感じですね。
率直に言うと、整いきっていないところは基本ぜんぶです。うちの会社がどうという話ではなくて、前職でも「もっとこうあったらいいのに」という不満は現場にありました。あって当然のもので、僕も「もう少しいけるだろう」と思っています。
いま足りていないのは、人の手でやらなければいけないことと、やる必要がないことの棲み分けです。ここをはっきりさせて、「この人に聞かないと分からない」という状態をなくしたい。僕が考えている構想を実現するには2年くらいかかると思っています。
その構想を固めて、土台をしっかりさせたい。土台がしっかりしていないと、上で遊べなくなるんですよね。そのベースは、やっぱり作る必要があると思っています。
Q8. これから迎えたい仲間について、そして、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
ビジネスサイドは、整っていないというか、正解と名指しできるようなものが存在するのかどうかも分からない、という状態になるんですよね。
それを解決するには、現場をよく見ること。そして、現場から吸い取ってきた情報を、社内のコミュニケーションとしてちゃんと落とし込むこと。だから、現場の方からも、社内からも愛されるような人だと嬉しいなと思います。
コミュニケーションありきで成り立つ話なんです。理想を振りかざしたところで、その形に賛同してくれる人を作らない限り、理想は価値あるものにならない。だから、形のないものを形あるものとして作り上げられる方と一緒に働けたら嬉しいですね。仕組みを作れる面白さもありますし、自分が考えたものがアウトプットとして出てきて「いいね、それ」となったらそれで決まったりする。そういう楽しみもあります。
読んでくださっている方へは、あるべきだと心の底から思えるサービスを売れるのは、営業としてもCSとしても、けっこう幸せなことだと思っています。サービス自体はすごくいいものだと思っているので、それを一緒に広げていこうというところに賛同してくれると嬉しいですね。
あと、僕の理念としては、楽しくないと仕事じゃないので。
どうせやるなら、楽しんだ方が真剣になれるんですよね。楽しくないと、事前準備もしなくなってしまう。人生短いので、どうやったら楽しく働けるかを考えましょうよと。それを楽しめる形に自分で整えていく力も、もしかしたら必要になるかもしれないですね。
──相手の業務を、相手以上に理解する。だから、30年変わらなかった現場が少しずつ動きはじめる。サービスの理解もないまま新聞広告を任された1年目から、伊藤さんの5年近くは、その積み重ねでした。
ゼロスペックでは、カスタマーサクセス・営業・事業開発など、ビジネスサイドの仲間を探しています。現場に足を運び、そこで見つけたことを提案の形に変えていく。その一歩目から一緒にやってくださる方をお待ちしています。働き方はコアタイムありのフレックス制・リモート併用勤務。選考はカジュアル面談から始まります。少しでも興味を持っていただけたら、まずは気軽にお話ししませんか。
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