偏差値35から二浪の末に逆転合格を果たした西岡壱誠。講師をする上で一番大切にしていることや、自身の受験生時代についてもインタビューしました!
目次
「このままだと高校に上げられない」。“成績ビリ”が東大受験を決意した恩師の言葉とは──
「三度」の受験で知った、勉強の本質と「東大受験」の恐ろしさ
「カルペ・ディエム」の原点といえる「東大」と、西岡壱誠のこれから
「このままだと高校に上げられない」。“成績ビリ”が東大受験を決意した恩師の言葉とは──
──はじめに、東大を受験した理由を教えていただけますか?
昔から「いじられキャラ」といいますか、要するにいじめられっ子だったんですね。結局、小・中学校とあまりいい人間関係を築けないまま高校に入ったんですが、そこでも周りの環境は同じだったんです。サッカー部も3日でやめてしまったり、勉強もできずに学年ビリの成績を連発してしまったり……。そのせいか、自己肯定感も低い人間だったんです(笑)。
一応、平均的な偏差値の中高一貫校に通っていたんですが、中学2年生の時の三者面談で「このままだと高校には上げられない」と言われました。僕自身は机に向かって何時間も勉強をしているつもりだったのですが、先生から「その時間勉強してこの成績なら尚のこと問題だ」と言われ、3時間近く面談で怒られました。
そんなとき、とある先生から「西岡、お前何か1つでいいから決めたことを、最後までやり切ってみろよ」と言われました。一度自分は何もできないと決めつけてしまうと、本当に何もやらなくなってしまう、と先生は案じてくれたんだと思います。「何をやればいいですかね?」と尋ねたところ、先生は「東大に行くんだ」と言いました。
「東大」というワードにビビっていた僕に対して、先生は「音楽やスポーツは、センスや才能によって差が出ることがあるが、勉強だけは必ず誰しも努力しなければ成し遂げられない。その点でとても平等なんだ」と教えてくれたんです。そのときから東大を目指そうと思いました。
「三度」の受験で知った、勉強の本質と「東大受験」の恐ろしさ
──恩師ともいえる先生の言葉が東大を目指すきっかけだったんですね。ちなみに、東大受験のために行った勉強の工夫などはありますか。
一言ではとても言い表せないのですが、一番重要なのは「アウトプットを大事にする」ことです。すごく当たり前なのにみなさん忘れがちなのが、授業ってただ聞いていたり、教科書を眺めたりするだけでは頭に入らないですよね。
たとえば、「授業を受ける」って英語では何と言うでしょうか。「授業を“聞く”」から“listen to the class”や「授業を“受ける”」で“accept the class”など思いがちですが、正しくは“take a class”と言うんです。“take”はもちろん「取る」という意味の動詞ですよね。つまり、授業というのは本来、先生や教科書に向かって自ら「取りに行く」ものなんです。それに対して先生もきちんと応えるという、双方向で進めていくものだと思います。
私が実際に行ったのは、まず1枚の白い紙を用意して、その日勉強した中で覚えたことを思いつく限り書きます。そのあとに教科書を読み、書いたことの答え合わせをしていました。このように、インプットだけでなくアウトプットもきちんと行うことで、成績が上がるようになっていきました。
──実際に東大受験をしたときの思い出などはありますか?
3回受験したんですけどね(笑)。最後の3回目の受験のとき、緊張のあまり受験会場で吐いてしまったんです。ちなみに東大受験は2日間の日程があるんですが、2日間とも吐きました。それが思い出の一つです(笑)。なぜかというと、東大って50音順で受験する座席が決まるんですよね。ということは前年と同じ学部を志望すると、当然ほぼ同じ座席になるんです。すると「去年ここでコテンパンにされたな」という悪夢の記憶がフラッシュバックしまして、それで吐いてしまったという経緯があります(笑)。
あとは印象に残っているのは、試験が始まってから数学の問題が置かれたときに、頭の中で試験中の立ち回りや時間の使い方をシミュレーションできたんです。これができたのは、自分にはつくづく才能がないので、とにかく数をこなすしかないと思って、数学の過去問を50年分解いて臨んだからだと思っています。それこそ大問ごとにどう対処していけばいいかを分析できたので、試験が始まっても慌てることなく「あとはやるだけじゃん」と思って、そのとおりに試験を終えることができました。
——受験勉強をした中でご自身の得意な科目は何でしょうか。
もしかしたらみなさんにはあまりなじみが無いかもしれませんが、私は地理という科目が好きですね。地理は特に、日本や世界のさまざまなことが分かる科目なんですが、個人的には地理が一番「東大入試」を象徴する問題を多く出題していると思いました。
その理由としては、私たちの身の回りの出来事などから入試問題が組み立てられていることが多いからなんですね。たとえば、私の受験年に出題された問題ですが、「野菜のカボチャは国内生産もしているが、ニュージーランドやメキシコからも輸入している。その理由はなぜか」というものです。これは普段スーパーなどの生鮮コーナーでかぼちゃを見たときに「ニュージーランド産のカボチャが多いな」と観察していれば簡単に答えられる問題なんですよね。
答えとしては、「国内では北海道などで比較的寒い時期に生産されるが、季節が逆転する南半球のニュージーランドや赤道直下のメキシコから輸入することで、国内で年間を通じて安定してカボチャを供給できるから」ということになります。こんなふうに、地理は身の回りの事象や出来事からも学ぶ姿勢を得られる科目なんですね。東大は、こうした学びの姿勢がきちんとできているかを問う問題を多く扱っていました。だからこそ、勉強は机の上だけで行うものではなく、世の中をよく見て、よく知るために行うものなんだと気づきました。
「カルペ・ディエム」の原点といえる「東大」と、西岡壱誠のこれから
──勉強を超えて東大受験のプロになったんですね! 実際に東大に入学してからはどんな勉強をされているんですか。
東大はいろいろな勉強ができる場所なんですが、私が所属している経済学部での勉強でいえば、地域経済についての研究を主にしています。例えば、地方創生はどのようにしていけばいいのか、地方自治体の財政や補助金の関係について、どのような形がベストなのかを考えています。
そうした中で、やはり都市圏も地方も関係なく、この国の根幹には教育というものが必要で、なおかつこれからもっと強くしていかなければならないと実感しました。そして「カルペ・ディエム」という会社を立ち上げました。
──最後になりますが、講師をする上で気をつけていることはありますか。
私自身もそうだったのですが、初めのうちから完璧にできるなんてことはないんです。そもそも「できないこと」を「できるようにする」ことが勉強なんですから。
余談ですが、私の友人にテストで満点を取ると落ち込む人がいました。彼曰く「満点を取るということは、何が分からないのか分からないということ。伸ばすべきところが分からないなら、テストの意味がない」と言うんです。これは極端な話でしたが、最初から満点取ることなんてあり得なくて、誰しも間違えながら成長していくんだ、ということはちゃんと伝えたいと思っています。
また、大切なのは間違えた後のことです。その間違えてしまった問題を次から間違えないように、どう対処していくかを考えるかということは、講師としてしっかりと伝えられるように意識しています。
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