元・兵庫県川西市役所の職員として活躍し、特に “広報” 分野においてその名を轟かせてきた池田次郎さん。15年務めた川西市役所を退職し、この春からLOCUS BRiDGEのCTOに就任しました。
長年、自治体の内側で奮闘しながらも、「もっと公共のためにできることがあるのでは」と想い、抱き踏み切ったLOCUS BRiDGEでの新たな挑戦。
悩み、迷い、それでも一歩踏み出した理由とは。そして、LOCUS BRiDGEという組織で挑戦する意義とは――。公務員出身者としての葛藤と覚悟、そのすべてをお届けします。
池田 次郎(合同会社LOCUS BRiDGE CTO/パブリシンク株式会社取締役)元兵庫県川西市役所。2009年、川西市役所入庁と同時に広報課へ配属。7年間の在任中に兵庫県広報コンクールで6年連続広報紙部門特選、写真部門では3年連続特選を受賞。また、全国広報コンクールでは、広報紙、組写真、企画、映像部門で、読売新聞社賞などを受賞している。異動後は、広報スキル全般のナレッジシェアを図るため奔走。NOMAや日本広報協会、地方自治体などのセミナーに登壇しているほか、SNSで発信を続けている。2024年地方公務員アワード受賞。2025年4月、合同会社LOCUS BRiDGE CTO・パブリシンク株式会社取締役就任。
外から自治体を支えることで、公共のためにできることを広げたかった
約15年間を公務員として歩んできた道に一区切りをつけ、民間企業への転職を決めた池田さん。その理由はなんだったのでしょうか。
「元々は兵庫県川西市役所の職員で、この春(2025年)まで勤めていました。経歴としては広報課が一番長くて、他に子育てや教育の仕事にも携わりましたね。ずっと “中から自治体を支える” 立場でしたが、“外から自治体を支える”LOCUS BRiDGEでこそ、自分の能力を生かしつつ、公共の力になれると思ったんです」
「実は、転職を決断するまでに1年近くかかった」と話す池田さん。組織の中ではプレイヤーからマネジメント側になり、“社会で果たすべき自分の役割”を改めて問い直したそうです。
「これまで、市役所職員という身分で働きつつ、ライフワークとして、広報担当時代に培ってきたスキルやノウハウをシェアするという取り組みを続けてきました。担当を離れて10年近くになりますが、技術をアップデートするため、今も撮影やデザイン、編集と向き合い続けています。マネージャーに求められるのは、ゼネラリストの能力にもかかわらず、僕自身、どちらかというとスペシャリストのプレーヤーなんですよね。公共にとって自分の能力が役にたつ場所を、知らず知らずのうちに、市役所外に求めていたのかもしれません」
一方で、“自治体という組織の課題”も感じていた池田さん。自分の役割を見つめなおす中で「自治体への理解がある人間が外に出ることが重要なのでは」と考えはじめます。
「自治体は、公正な仕事をするためにルールを積み上げてきた組織なんです。それは本当に大切なこと。でもその反面、動きが遅くなったり、できないことが増えていったりもします。例えば、サブスクリプションサービスやクレジットカードを使った取り組みを進めたいと思ったとき、民間企業ならすぐに登録できるじゃないですか。でも自治体によってはクレジットカードを持つこと自体ができない。
組織を適正に運営するルールが、当たり前を阻害することもあるんです。状況が目まぐるしく変化するこの時代、社会についていくことはとても大切です。『外からなら変えられるのに』という意識が、転職のきっかけになったのかもしれません」
不安を払拭したのは、切磋琢磨してきた元公務員メンバーの存在
前向きな気持ちで転職を決めた池田さんですが、とはいえ、新卒から15年間勤めた職場を辞め、心機一転、民間企業で働くことに不安はなかったのでしょうか。
「めちゃくちゃ不安でしたよ。正直、今でも不安はあります。だって、市役所にいれば身分は保証されますから。でも10年以上の付き合いで、公務員時代に切磋琢磨していたメンバーがLOCUS BRiDGEにはたくさんいて。踏み切れたのは、彼らとなら自分も挑戦したいと思えたからです」
特に池田さんにとって大きかったのは、元埼玉県北本市役所の職員でLOCUS BRiDGEの共同代表を務める林博司さん(*1)と、池田さんより少し前にLOCUS BRiDGEへ入社した元静岡県島田市役所の職員である鈴木克典さん(*2)の存在でした。
「林さんも鈴木さんも所属していた自治体は違いますが、同じ志を持って仕事をしてきたかけがえのない仲間です。市役所の業務の多くは、国や県から示されるものがあって動いていますが、広報はそうではない。ガイドラインが何もないからこそ、自治体同士の横のつながりが大事なんです。
周りの自治体と情報交換をしながら、お互いに新しいスキルを身につけて高め合っていく。林さんも鈴木さんも尊敬すべき仲間でしたから、2人とチャレンジするならーーという気持ちになりましたね」
シティプロモーション分野に精通した林さんと、紙媒体を中心とした広報誌を得意とする鈴木さん。そして、映像、企画、写真、デザインなどを含めたオールラウンダーである池田さん。3人が揃ったことで、LOCUS BRiDGEは自治体広報を “外から支える” 強いチームに成長しています。
真摯に仕事と向き合い、チャレンジし続ける「LOCUS BRiDGE」
転職の大きな後押しになったのは、林さん・鈴木さんの存在でしたが、仕事に妥協なく向き合う池田さんの姿勢は、LOCUS BRiDGEメンバー全員としっかりフィットもしているそう。
「自治体の仕事って、“頑張らない” という選択肢もあるのかもしれません。でも一人の住民という立場で見た時には、 “ちゃんとやれよ” と思いますよね。
僕は “まあこれでいいか” が苦手で。ただそれは、納得するまで取り組みたい性格というだけなのかもしれません(笑)」
「LOCUS BRiDGEは入社してまだ半月ですが、それでも組織の動きがとても機敏だと感じています。“個性” を出せる雰囲気もある。例えば自治体で窓口に出るとマニュアル通りに動くことが求められていて、個人が考えた対応は必要ない。だからどうしても “個性” は抑えられるんですよね。
でもLOCUS BRiDGEは全然違う。個人が意見を出せるから、若手でもどんどん発言していて。より良い仕事をするために、年齢も経験も関係なく、対等に会話し、改善をかけていく姿勢を感じます」
元公務員出身者も多いLOCUS BRiDGEですが、一般的に想像する公務員像とは少し違ったチャレンジングな人たちが多い職場だと池田さんは続けます。
「組織の風土として、“新しいことをやっていこう” “前例のないことにも挑戦しよう” という空気があります。だからこそ、“公務員が多いから安心” みたいな理由で転職してくると、たぶんしんどいと思います。
チャレンジしていくことに前向きな人、仕事に真剣に向き合う人であれば、とても向いているんじゃないかな」
LOCUS BRiDGEは、ただ “元公務員が集まっている会社” ではない。「公共のために、もっとできることがある」と本気で思い、行動を起こした人たちが集まる場所です。
組織の壁を越え、個性を発揮しながら挑戦したい――。そんなあなたの一歩を、私たちは待っています。
(*1) 林博司さん合同会社LOCUS BRiDGE COO 最高執行責任者/共同代表慶應大学在籍時に元総務大臣片山善博氏の研究会1期生として地方自治を専攻。2010年埼玉県北本市役所に入庁。情報・広報・財政を経て、シティプロモーション・ふるさと納税担当へ。シティプロモーションでは、まちへの3つの意欲(推奨・参加・感謝)を高める取組み「&green」で、全国広報コンクール内閣総理大臣賞を受賞。ふるさと納税では、市民提案型ふるさと納税クラウドファンディングの創設、寄附の使い道にシティプロモーションを設定するなど、寄附を地域に活かす仕組みづくりを実施。その他、2022年パブリシンク株式会社設立。
(*2) 鈴木克典さん合同会社LOCUS BRiDGE CDO 最高デザイン責任者元静岡県島田市役所。民間会社勤務を経て、2004年に島田市に入庁。2006年から連続18年間、広報発行業務を担当。2016年と2020年に全国広報コンクールで内閣総理大臣賞を受賞。これまで特選3回を含めて入選10回、読売新聞社賞2回受賞。「子どもの貧困」「終末期医療」「難病」「里親制度」「きょうだい児」など、取材対象者との深い信頼関係がなければできない特集を手がけている。広報紙だけでなく、職員採用試験などのビジュアルデザインも担当し、手がけたポスターは第10回マニフェスト大賞コミュニケーション・ネット選挙戦略賞優秀賞を受賞。また、近隣自治体広報担当者とつくる広報研究会をけん引し、会員からも数多くの入選者を輩出している。