株式会社Wangetが次なるステップとして目指しているのは、AIによる自然言語処理技術を活用した自社プロダクトの開発・提供です。構成や絵コンテといった動画の下地部分をDX化した今までにない動画制作サービスの開発に向けて、エンジニアを募集します。今回はCEOの吉澤壮弥とCOOの松本裕司に、創業の経緯や動画制作市場の現況についてインタビューしました。
まっさらな状態で創業。動画制作領域に参入し世界中のクリエイターとつながる
――Wanget創業までの経緯を教えてください。
吉澤:高校生の頃から起業することは決めていました。新卒では不動産系のベンチャーに入社し、新規事業も任されつつ4年勤めました。このまま同じ仕事をしていいのかと迷い、まず会社を辞めて、事業ドメインも何も決めずに起業しました。当時は3名で、「何をやるか」より「誰とやりたいか」を考えていましたね。
――動画制作を始めたきっかけは?
吉澤:2019年4月に本格始動し、その翌月に知人の伝手で、あるエンタメ系企業から「CG映像制作はできないか」と相談されたんです。とにかく売上を作らなければという思いで、経験は無かったのですが二つ返事で引き受けました。ノウハウ構築やチームアップに全力を注ぎ、最終的にセルビアのCG制作チームと取り組むことになりました。
――そこで初めて動画を制作してみて、いかがでしたか?
吉澤:実際にその成果物が使われたイベント会場へ行って、映像が観客に与える感動を僕自身も強く実感しました。「これはいい仕事だな」と思ったのが、この事業を始めたきっかけです。あとは、動画の供給側のリソース不足に気づけたのも大きかったです。動画領域市場も伸びていたので、ここに事業ドメインを絞ろうと決めました。
――松本さんがWangetにジョインしたのは、その約半年後とのことですね。
松本:はい。前職では広告メディアやD2Cブランドを担当し、新規事業をゼロから立ち上げて30億円規模に成長させるという経験もしました。次は会社自体の立ち上げに挑戦したいと思っていたところに、吉澤さんの人柄と、ゼロイチで会社を立ち上げる面白さに惹かれて、2019年11月にジョインしました。
――松本さんは吉澤さんのどんな部分に共感し、魅力を感じましたか?
松本:僕や他のメンバーが絶対に思い付かないことを目指す、彼の器の大きさですね。描いているものが大きい分、大変なことも多いですが、チーム一丸となって乗り越えていく。そういう器の大きさに魅力を感じました。
――事業ドメインの方向性が見え、新たなメンバーも加わったなかで、どのようなステップで事業を進めてきたのでしょうか?
吉澤:僕には動画制作の経験がなかったので、まずはビデオグラファーや動画制作者の友人・知人たちとつながりました。「個の時代」といわれる今、フリーランスのクリエイターの存在感はますます高まっていくと感じています。まずは彼らを集め、クリエイターと企業をマッチングさせることを始めました。
――2022年1月にリリースされた「video plant」は、海外の動画クリエイターたちとの分業体制によりサービスを展開していますね。
吉澤:大手企業であれば、動画の価値や意義、動画がもたらす効果を腹落ちしたうえでしっかりと予算を組むケースが多いです。一方、動画の価値自体が腑に落ちていない企業では、価格帯が合わないこともありました。中小企業にも提案しやすい価格帯にすることで潜在的な動画のマーケットをより拡大できるのではないかと気づき、コストを抑える方法を模索しました。その結果、今はフィリピン人クリエイターと日本の企業をマッチングし、日本人ディレクターがオペレーションして動画制作をしています。
――海外の中でも、なぜフィリピンだったのでしょうか?
吉澤:僕の幼馴染に、フィリピン在住の元グラフィックデザイナーがいまして。当時、彼はオンライン英会話スクールのフィリピン人講師500人をマネジメントする営業部長をしていました。動画制作の外注について相談したところ、翌日にかなりクオリティの高い動画が上がってきたので、「これはいける」と思いました。彼に「今度はビデオクリエイターのマネジメントをしてくれ」と頼み、弊社にジョインしてもらって今に至ります。
――質の高い動画に仕上げるためにはコミュニケーションやマネジメントが重要ですが、フィリピンのクリエイターたちと取り組む上で工夫していることはありますか?
吉澤:クリエイティブな指示やトンマナなどは、日本人側のリソースを割いてしっかりとマネジメントしています。今後は表現に関する教育をしっかりと行うことで、クオリティの高い動画をフィリピンで完結できるようになると期待しています。
動画制作の下地部分をDX化するAIパワード動画制作サポートシステムの開発に向けて
――Wangetの動画制作事業は今、どのようなフェーズにありますか?
吉澤:今は事業拡大フェーズにあり、これからさらに指数関数的に拡大していきたいです。そこで開発を進めているのが、日本人ならではのクリエイティビティを実現できるようなAIパワード動画制作サポートシステムです。動画プロセス全体の中で一番コストがかかるのは、クリエイターが実制作に移るまでの企画や構成、絵コンテ・Vコンテ(ビデオコンテ)などの「動画制作の下地部分」です。この工程をDX化できれば、僕らは無限に動画を作れます。
松本:下地の工程を自動化し、たたき台を自動生成するイメージです。情報をアップロードして自動生成された初稿をベースに、ブラッシュアップしていくことができます。
――その新しい動画制作サービスによって、何が実現するのでしょうか?
吉澤:動画制作のリソースを無限にするのが僕らの次のミッションです。リソースが十分であればマス広告も打てるようになります。そうすると、「印刷ならラクスル」「ECなら楽天やAmazon」みたいに、僕らは「動画制作といえばWanget」という感じで純粋想起される企業になれると考えています。
――Web広告や店頭プロモーション用、YouTube用の動画などさまざまな用途がありそうですが、動画制作市場はこの先も右肩上がりに伸びると見込んでいますか?
吉澤:2020年から2021年も年間で200億円、数値にして10%くらい市場は伸びています。現在多くを占めるのは、YouTubeや動画広告、新人研修用の動画やサービス紹介動画などです。ただ、今後は営業支援ツールとしての商品説明や見込み顧客のスクリーニングに使える動画、インタビュー動画のメディア発信などの市場の拡大も見込んでいます。動画の活用方法は無数にあり、潜在的な市場もまだあるはずです。
松本:動画の用途は、大きく3つにセグメントされます。1つ目は、いわゆる動画広告やサービス紹介動画などのブランディングマーケティング領域です。2つ目は、社内でノウハウを説明し工数を削減したり、社長のインタビュー動画を社内に共有したりといったインナーコミュニケーション領域ですね。3つ目は、採用活動や広報などで活用する採用領域です。なかでも、ブランディングマーケティング領域におけるニーズの多さは顕著です。
――AI技術を活用し自動化された動画制作サービスは他にもありますが、競合との差別化ポイントはどこでしょうか?
吉澤:AIのサポートのもと自分たちで簡単に動画が作れるようなサービスもありますね。僕らは技術の進化具合に合わせて、AIができるのはまだ下地部分までだと位置づけています。そこが差別化ポイントだと思っています。
松本:技術面でいうと、我々が作るツールの中で一番重要なのは「AIによる自然言語処理技術」です。これまではAIが自動で文字起こししてテキストを作成することはできましたが、さらに要約し、要点を切り出して動画にするというサマリー化の工程は難しかったんです。しかし、GPT-3という技術が海外でも実装され始め、ようやくサービスレベルに落とし込めるようになってきました。この要素技術を動画制作に使う例は、まだないかもしれないですね。
――世界的に見ても、類似するサービスはまだないということですね。
吉澤:はい。僕らが考えているのは、素材を融合させるような生成の技術です。写真を融合する技術はありますが、まだまだデータ量が足りておらず、世界的にもまだ開発されていません。今後、僕らはアリババやGoogle、Adobeといった会社と提携し、AIの技術開発に必要なデータ量を補完するとともに、世界初の技術を磨いて世界中の動画市場をジャックしたいと考えています。
経営脳と技術力を兼ね備えたPM経験のあるエンジニアを募集
――開発にあたって、どんなエンジニアの方に応募していただきたいですか?
吉澤:開発のプロジェクトマネジメントができて、かつ自身もコードを書ける方を想定しています。あとは、開発チームにはベトナムをはじめとする世界中のクリエイターやエンジニアとの提携を予定しているので、多少英語が話せるといいですね。ただ、今いるエンジニア2人はどちらも英語が話せるので、絶対条件ではありません。
松本:僕がイメージしているのは、ゼロからサービスを作り上げた経験がある方、経営脳と技術力を両方持っている方ですね。
吉澤:事業としても技術としても、かなりの難題にチャレンジしようとしているので、壁を一緒に乗り越えてくれるようなパッションのある方だとありがたいです。
――応募してくださった方にWangetの魅力を伝えるとしたら、何を一番プッシュしますか?
吉澤:2つあります。1つ目は世界中の市場を開拓していくグローバルカンパニーであること。世界中のあらゆる技術に触れ、世界中の優秀なエンジニアとコミュニケーションを取る機会があります。動画制作市場は世界で見ると20兆円に上る、非常に大きなマーケットです。2つ目は働きやすさです。僕はエンジニアやクリエイターへの何かクリエイトしていく人たちに対し、リスペクトをしているので、彼らのために働きやすい環境を提供したいと思っています。
――1つ目のグローバルカンパニーという点で、これから開発するサービスの自然言語処理においてはどの言語をベースとするのでしょうか?
吉澤:ベースメントにあるデータは英語で構築します。裏に翻訳ソフトを導入し、日本語を入力したものを一度英語に変換してから素材を探すという形を想定しています。将来的には、英語や日本語以外にも何か国語でも対応できるものにしていきたいです。
――2つ目の働きやすさについて、具体的にどういった勤務体系を想定していますか?
吉澤:フレキシブルな働きやすさを重視するエンジニアのために、週3勤務を会社の理想として目指すつもりです。深夜働くもよし、朝方働くもよし、昼寝して夕方から働き始めるもよし。具体的な整備はこれからですが、エンジニアの皆さんが働きやすいよう余白のあるスタイルを確立していきたいです。
――時間のフレキシブルさに加えて、場所はいかがですか? 例えば東京以外に住む方が応募してくださった場合は。
吉澤:ベネズエラにいてもいいし、イギリスにいてもいいです。そういう世界観を目指したいですね。
松本:実際、今もフィリピン在住のディレクターと100%遠隔で仕事をしているという実績もあります。
吉澤:フィリピンにオフィスがあるので、例えばセブ島にもオフィスを作ってリゾート気分で働ける環境を整備するのもいいですね。向こうで家を借りる時も、ある程度サポートします。場所も時間もあらゆるものがフレキシブルな状態を理想として、目指したいと強く思っています。
NASDAQ上場を見据え、動画制作や3D制作を含むクリエイティブ領域に拡大
――まっさらな状態で起業し、ここまで駆け抜けてきて、今後はどのようなビジョンを描いていますか?
吉澤:2026年のNASDAQ上場を目指しています。高校生の頃から「世界で活躍する日本人になって、かぎりなく多くの人を幸せにする。大事な人たちを大事にできる人間になりたい」というビジョンを持っているのですが、NASDAQ上場も僕の人生のビジョンとしては一つの過程です。
松本:吉澤さんのように、「NASDAQ上場」を口に出して言う人はなかなかいないですよね。ベンチャーキャピタルさんと話をしていても、「そういう日本企業を増やしていかなければ」という思いはあるものの、本気で目指している起業家は少ないと聞きます。
吉澤:あとは、今回開発する技術は3D制作にも応用できるので、今後は事業ドメインをクリエイティブ領域全般に広げることも考えています。あらゆる方々が自分の脳内にあるイメージを具現化できる状態にすることで、多くの企業の成長に貢献したいです。
――ありがとうございます。最後に、「Wangetをこれからこんな組織にしていきたい」という意気込みを教えてください。
吉澤:たとえ社員が1,000人や2,000人に増えても、家族みたいな組織がいいですね。全員がやりがいを持って、組織に所属していること自体が人生を豊かにしているという状態を目指したいです。一番大事にしたいのは、企業カルチャーと価値観です。価値観さえ合っていれば、僕ららしい文化が醸成されてくると思います。そのためにもしっかりと会社を成長させていきたいです。
松本:それぞれが掲げる夢を叶える一つの箱としての組織にしたいです。僕らとしては、社員全員にできる限りの自由を与えたいし、その分、責任を持って行動してもらいたいですね。社員それぞれが夢を持ち、夢を目指して自律的に動いた結果、会社のビジョンが実現する。そういうカラフルな組織にしていきたいです。