夜空に数百機のドローンが描き出すショー。本番までには、飛行の設計から通信環境のテスト、リハーサル、当日の監視まで、「一発本番」に備えた地道な準備が積み重なっています。株式会社協和産業でドローンショーのパイロットと営業を兼務する森本英嗣さん(ドローン事業部 部長 ドローンショーパイロット)は、この仕事のどこに難しさと面白さを感じているのでしょうか。森本さんにお話を伺いました。
氏名:森本 英嗣
所属部署:ドローン事業部 部長 ドローンショーパイロット
経歴:映像関係の専門学校を卒業後、国立文楽劇場の楽屋事務所で事務を担当。映像に関わる仕事を求めて約15年前に株式会社協和産業へ入社。業務用カメラのレンタルなどを経て、ドローンショー事業の立ち上げからパイロットとして参画している。
飛ばすのは最後の工程、仕事の大半は本番前の準備が占める
──森本さんのこれまでの経歴を教えてください。
森本:映像関係の専門学校を卒業後、貸しギャラリーに所属していました。そのギャラリーから業務委託という形で、国立文楽劇場の楽屋事務所に入って事務の仕事をしていたんです。その後、転職を考えたときに映像に関わる仕事ができる会社を探して、約15年前に協和産業に入社しました。
──現在の業務内容を教えてください。
森本:現在は、ドローンショーのパイロットと営業を兼務しています。ドローンを飛ばす際に使うのは、実はパソコン1台のみです。しかし、実際に飛ばすのは最後の工程であり、それまでの「準備」が仕事の大半を占めます。契約した段階から、どの場所でどのように飛ばすのかを細かく詰めていくんです。
具体的な手順としては、まず現場の状況をもとに機体や基地の配置、通信環境を確認します。そのうえで、何機をどこに上げるかという飛行の設計を行っていきます。この際、安全を第一に考えた設計にしなければなりません。現場の通信環境が厳しそうであれば、大阪にある飛行テスト場で事前確認を実施して、本番と同じ配置で問題なく飛べるかをテストします。
──その他に、本番前に欠かせない準備や確認はありますか?
森本:テイクオフ(離陸)のタイミングの決定権は、お客様ではなく我々が持っています。例えばプロ野球の球場での案件だと、試合が終わる正確な時間は事前には分かりません。そのため、「試合終了から何分後に上げる」とあらかじめ決めておくんです。そこから逆算して、待機する時間やバッテリーを入れるタイミングを組み立てていきます。
そういった入念な準備を重ねたうえで、まずはリハーサル前に全機での低空飛行テストを行います。そしてショーの前日に、10機前後を飛ばしてのリハーサルを実施します。なぜ10機前後なのかと言うと、ネタバレを防ぐためです。また、ショーの撮影が入る案件では、カメラをどの位置に置けばショー全体が収まるのかもチェックします。
──本番中は、パイロットはどのような動きをしているのですか?
森本:本番中は、機体の監視に近い役割ですね。モニターを見ながら、電波や通信の状況に問題がないかを確認し続けます。機体に異常が発生していないかどうかも、常にチェックするんです。
そのため、実はドローンをテイクオフしてしまうと、自分はショーをほとんど見られないんですよ。
──安全を担保するために、最も意識していることを教えてください。
森本:さまざまな状況を想定して本番に臨むことですね。ドローンショーはいわば「一発本番」のイベントになります。そのため、綿密なシミュレーションやテストは欠かせないんです。
リハーサルでは特に重点的にチェックし、本番でも同じように確認を徹底します。例えば、通信状態が良くない機体があれば、リストから外して別の機体と入れ替えます。建物の近くでは、機体が衛星の電波を読み取りにくくなることがあるんですよ。会場の高低差や機体との距離の条件に問題がないかどうかも、しっかりと確認が必要です。こうした不安要素を取り除くことが、ショーの成功へと繋がります。
また、日常の準備も、安全確保のために徹底しているポイントの一つです。ドローンショーがない日は、会社の屋上で機体のチェックを実施しています。そのおかげか、飛ばした後のトラブルは、今のところほとんどありません。現場で飛ばせなかったということも、これまで一度もないですね。
──悪天候にはどのように対応されるのですか?
森本:悪天候になった場合は、スケジュールを組み直す可能性も発生します。そのため、前日のリハーサルが終わった段階から当日の天気予報を細かくチェックして、「この時間は雨が降る可能性があるから、準備を遅らせても間に合うか」と確認していきます。
スケジュールはあらかじめ組んでありますが、その通りに進められるとは限りません。状況に合わせて柔軟に対応できるよう、直前までしっかりと見極めておく必要があるんです。
飛ばせない場所でも代替案を出せるのは、パイロットと営業を経験しているから
──森本さんは営業も兼務されているとのことですが、パイロットの経験が営業に生きたと感じる場面はありますか?
森本:これはかなりありますね。「日本にはドローンショーをやる場所は無限にある」と思われがちです。しかし実際には、法律の関係でドローンを飛ばせる場所はかなり限定されているんです。
そこで「ここでは飛ばせません」と断る必要がありますが、ただ断ってしまってはドローンショーをやりたいお客様の気持ちを削いでしまいます。だからこそ、「このようなやり方であれば可能です」という代替案を出すことが重要になるんです。その際、的確な案を提示できるのは、営業とパイロットの双方を経験しているからこそだと思います。
──具体的にはどのように提案されるのでしょうか?
森本:機体を安全に上げるには一定の広さを持ったエリアが必要ですが、高度を下げれば必要なエリアは狭くなります。そのため、「なかなか見ることのない低空のドローンショーはいかがでしょうか?」とご提案することもあるんです。そのエリアなら何機で見応えが出るのか、ご予算との兼ね合いも含めて柔軟に検討していくわけです。
──営業の業務で印象に残っていることはありますか?
森本:最近進めている自社企画のプロジェクトですね。これまでは、お客様からのご要望ありきで進む案件が中心でした。しかし今年に入ってからは、自社企画でドローンショーも開催しているんですよ。6月から毎週金曜日に大阪の新世界で開催しているショーが、まさに自社企画の一つです。周辺の施設や町会、警察にも事前にご挨拶に回り、毎週の開催にこぎつけました。
──新世界のドローンショーは、他のドローンショーとはまた違った面白さがあるんですね。
森本:はい。新世界でのドローンショーのように周りを巻き込んで動く仕事は、通常のドローンショーよりも、いろいろな方とお話しできる機会に恵まれます。実際に地域の方から「こんなショーをやったら面白いんじゃない?」と自主的にアイデアをいただくこともあり、みんなで一緒に作ってくれている感じがあるんですよ。
特に、新世界は多くの人が訪れる観光名所でもあります。そのため、観客だけでなく現地で事業を営む方々にも喜ばれるコンテンツにしたいと考えています。「金曜日にドローンが上がるなら新世界で飲もうや」くらいになってくれたら嬉しいですね。
未経験でも多くの現場を経験でき、一人立ちを目指せる
──未経験で入社した場合、どのように仕事を覚えていくのでしょうか?
森本:実際に機体を触ってもらいながら、メンテナンスや取り扱い方を教えていきます。ドローンのオペレーションは、会社の屋上でも練習できます。新世界での定期ショーに加え、週末のイベント案件や本番前のテスト飛行も継続的にあるため、実践の機会は豊富です。先輩が常にそばについて、「ここはこうしましょう」と手取り足取り伝えられる環境です。
もちろん、10回程度の経験ですぐに任せられる仕事ではありません。ただ、飛行経験を重ねれば、一人でオペレーションを任せられる水準が見えてきます。毎週新世界でのショーやイベント案件があり、事前のテスト飛行も複数回行うため、継続的に経験を積むことが可能です。習熟度には個人差がありますが、頑張り次第で半年ほどで一人立ちを目指せると思いますよ。
──どのような方が、ドローンショーのパイロットや営業に向いていますか?
森本:事前にさまざまな状況を想定し、入念な準備ができる慎重なタイプの方でしょうか。それに加えて、疑問に感じたことを放置せず、その都度解決していける方ですね。イベント関係や映像制作の現場を経験された方は、本番に向けて慎重に準備を重ねた経験があるはずです。そうしたバックグラウンドをお持ちであれば、非常に適性があると思います。
ドローンショーはこれからもっと増えていくはずです。機体の側でできることも広がっていくので、ただ機械を動かすだけの単純な業務ではありません。お客様を驚かせるために、常に向上心を持って業務へ挑める方に来ていただきたいです。そのようなマインドをお持ちの方であれば、きっとこの仕事を楽しめると思いますよ。