「とりあえず動いて、出てきた結果でいろいろやっていけばいいかな」
穏やかな口調でそう語るのは、ドヴァ(DOVA)でRPA「アシロボ」のセールスエンジニアを担当する阿部さんだ。会計事務所での経理代行業務から、まったくの未経験でIT業界の営業職へと転身。入社3年目となった今では、製品説明からクロージング、アフターフォローまでを一人でこなすまでに成長した。いくつものハードルを乗り越えてきた阿部さんの歩みを追った。
サッカー漬けの少年時代
茨城県ひたちなか市出身の阿部さんは、5歳からサッカーを始めた。幼稚園にサッカークラブがあり、周りの友達が入っていたから自分も流れで入ったのがきっかけだった。以来、高校3年生まで約13年間サッカーを続けることになる。
同じ茨城出身では、後に日本代表となる有名選手が1学年上にいた。「そのほかにも周りにすごい選手がたくさんいたので、プロは無理だろうなと中学生ぐらいの段階でわかっていました。 でも、楽しいからサッカーは続けようって」と阿部さんは話す。
現在もその情熱は変わらず、社会人チームでフットサルを続けている。土日は練習に参加することが多いという。体を動かすことはストレス発散にもなっている。
高校卒業後、阿部さんは栃木県の大学へ進学した。医療福祉関連の学校だったが、選んだのは経営系の学部だった。
「当時は本当にやりたいことがなくて。サッカー部の先輩たちがその大学に行く人が多かったので、自分も行こうかなという軽い気持ちでした。先輩たちは理学療法士やトレーナーを目指す人が多かったんですけど、私はそういう専門職ではなくて、経営や経済を学べる学部に入りました」
授業を受けているうちに、会計学に興味を持つようになった。「数字が好きでしたね、当時は」と振り返る阿部さん。日商簿記などの資格取得に励み、電卓を叩く日々を過ごした。
その延長線上で、新卒では会計事務所に就職。企業の経理代行や給与計算などの業務に携わった。代表の打ち合わせに同行する機会も多く、さまざまな会社の社長と話す経験を積んだ。電話対応も多く、先輩のやり方を見ながら自分なりに仕事を吸収していった。
しかし、非常に多忙な環境であり、朝早くから夜遅くまで働く日も少なくなかった。「土日は休むことで精一杯。趣味を楽しむ時間もなかなか取れない状態でした」。自身の将来を考え、約1年で転職を決意する。
思わぬ職種での採用を提案される
転職活動では、前職の経験を生かして経理職を探していたところ、たまたま求人サイトで見つけたのがドヴァだった。
「横浜・みなとみらいのランドマークに会社があるという点に惹かれました」と阿部さんは素直に明かす。神奈川に住んでいた阿部さんだったが、前職のオフィスが銀座にあり、通勤に時間がかかっていたため、近くで働きたいという思いもあった。他にも数社受けていたが、歴史ある感じの建物の会社が多かった中で、ドヴァのオフィス環境に惹かれたという。
経理職で応募したものの、経験年数が足りないという結果に。しかし、思わぬ提案を受ける。
「セールスエンジニアというポジションがあるんだけど、やってみない?」
サッカーを長く続けてきたことや、同じアルバイトを4年間続けたことなどを面接で話したら、その「継続力」が評価されたようだった。営業職は未経験。不安がなかったわけではない。「でも、なるようになればいいかなって。とりあえずチャレンジしてみようと思いました」と阿部さんは回想する。
この「とりあえずやってみる」という姿勢は、阿部さんの根幹にある考え方だ。高校時代のサッカー部で培われたという。
「指導者から『まずはやってみろ』と言われていました。言うこと聞かなくて失敗した経験が多かったので、とりあえずやってみた方がいい結果が出ると学んだのです」
入社1週間で展示会デビュー
2023年6月、ドヴァに入社した阿部さん。アシロボ専属のセールスエンジニアとして配属された。
「まずはアシロボを触るところからスタートしました。課題をこなしながら、どういう操作をするのか、どういう使い方をしているのかを習得していきました。セールスエンジニアということで、技術的な部分も理解をしなければいけなくて。でもRPAを全く知らない自分でも、パッと見でわかりやすいツールだったので、覚えやすかったですね」
同時に、先輩と一緒に商談の現場にも同行。どのような説明をしているのか、いかなる提案をしているのかを間近でコツコツと学んだ。
しかし、業務そのものは悠長には待ってくれなかった。入社からわずか1週間後、IT業界の大型展示会「Interop Tokyo」の出展ブースに立つことになったのだ。会場内でチラシを配り、来場者をブースに案内する。そして自分でもアシロボを紹介した。当然、入社1週間でうまく説明できるわけがない。それでも「どう伝えようかと自分なりに考えながらやっていました」。まさに現場で学ぶ実践主義だった。
その後も、1年目はとにかく展示会を回る日々だった。Interop Tokyoを皮切りに、「Japan IT Week」や「EdgeTech」といった大規模イベントのほか、コンソーシアムのMIJSなどにも参加した。
「展示会だけではなくて、コンソーシアムの活動でも人前に立たせてもらう機会が多かったですね。アシロボの紹介をしたり、乾杯の音頭を取ったり。営業っぽいことをどんどんやらされました(笑)」
まだ独り立ちはしていなかったが、先輩のサポートを受けながら、少しずつ契約を取っていけるようになっていった。
プレゼン力を磨く日々
「話すのが得意ではなかった」という阿部さん。セールスエンジニアという仕事に対して、説明力への不安があった。克服のために取り組んだのは、先輩や同期を相手にしたプレゼン練習だった。
「自分なりに資料を作って、こういう文言の方が伝わりやすいかなって考えながら、実際にアシロボの機能を一つ一つ説明して、意見をもらいました」
他の社員にプレゼンを聞いてもらうというのは、指示されたことではない。自分で考えて行動した結果だった。先輩からは喋り方の指導も受け、少しずつ伝わりやすい説明ができるようになっていった。
商談相手の企業についても事前に調べるようになった。
「最初は先輩頼りでしたけど、自分なりに企業のホームページを見て、どういうことをやっている会社なのかを調べるようになりました。そして、『この企業だったらこういうアシロボの使い方ができるかな』といったイメージを持ってから打ち合わせに臨んでいます。ドヴァは飛び込み営業というスタイルを取っていないので、相手のことをじっくり考えて商談に挑めるのも良いところだと思います」
システム仕様の壁——初めての大きな失敗
これまでのキャリアを振り返り、苦労したことは何だったのか。阿部さんによると、入社2年目、あるシナリオ作成支援で大きな壁にぶつかった。
顧客の要望は、基幹システムから出力されたデータをGoogleドライブのフォルダに格納するというシナリオ。しかし、Googleドライブの仕様上「XPath」※と呼ばれる要素が頻繁に変わるという問題があった。
※XPath…Webページ上の特定の場所を正確に指定する記述のこと。
「エラー対策をいろいろとやったのですが、毎日のように仕様がコロコロ変わるため、いったん完成させても、翌日には動かないという状態でした。お客さまに期限を延長してもらっても、どうしてもできなくて……。最終的にはお客さまと協議の上、対応済みの工数分のみご精算いただき、直接お詫びに行きました」
完成しているのにシステムの仕様でうまくいかない悔しさ——。しかし、この経験が阿部さんを成長させた。
「今だったらGoogleドライブではなくて共有ファイルサーバを使ってもらうとか、お客さまに運用を変えてもらうとか、別の提案ができます。一つに固執せずに回り道を考える。そういう引き出しが増えました」
なお、この顧客とは今も取引が続いている。別の案件でアシロボを活用してもらっており、失敗を乗り越えた先に信頼関係が築かれている。
「ダメなやつの3カ条」を肝に銘じる
入社から約3年。今ではアシロボの詳細説明からクロージングまで一人でこなせるようになった。
「シナリオを作ってと言われたら、割とすっと作れるようになりましたし、お客さまの要求にも応えられるようになってきたと思います。最近は『これは無理だな』というケースも少なくなってきました」
打ち合わせは基本的に自分がメインで進行する。司会的な役割も増え、場をつなげる力も求められるようになった。「まだまだトークのスキルは磨きたいですけど、以前よりは格段に成長できていると思います」
意外にも、阿部さんは社内で「怖いイメージがある」と指摘されていたという。
「一人で集中している時間が多いので、無言になっちゃうんです。それで怖いと言われて。でも、話さないと誤解されたままですよね」
この指摘をきっかけに、意識的にコミュニケーションを取るようになった。すると思わぬ副産物があった。
「他の人と積極的に対話してみるといろいろなヒントがありました。この人のここ良いなって部分を学べたりとか、自分の視点では見えないところを教えてもらえたりもします。特に社長との会話は気付きが多いですね。『こんな考え方や見方があるんだ』って」
そんな社長の言葉で特に印象に残っているものがある。
「『ダメなやつの3カ条』として、『手抜き・不義理・不誠実』とよくおっしゃっています。これを常に頭の片隅に置いています。お客さまに対してもっとできるのに手を抜いてないか、誠実に対応できているか。仕事でもプライベートでもできるだけ立ち返るようにしています」
それ以外にも、社長からもらった言葉は専用ノートにメモを取り、折に触れて見返しているそうだ。
5年後は俯瞰してマネジメントできる存在に
今後の目標を聞くと、「アシロボをもっと広めたい」と即答する。
「関東の展示会ではだいぶ名前が知られてきて、『アシロボだ』と言っていただく機会も増えました。でも、地方にはまだまだ浸透していません。大阪や福岡だけでなく、東北、北海道などさまざまな地域の展示会に出ていきたいです。ゆくゆくはCMを作れるといいですね」
大企業への導入も視野に入れている。「知名度のある会社に入ると、製品のブランド価値が上がります。他社製品と比較されたときに、ネームで負けることもあるので。少しずつ積み上げていきたいです」
数年後の自分自身のキャリアについて聞くと、「後輩や部下がほしいです」と阿部さん。
「今は最前線に立ち、自分一人でやっていますけど、5年後は一歩引いて俯瞰的な目で事業をマネジメントできる人になりたいです。全体を見ながら指示したり、仕事を振ったり。司令塔的な役割ですね」
人に教えることへの抵抗はないという。サッカーのコーチとして、かつて自分がお世話になったチームの子どもたちに教えたこともある。
「全部答えを与えるのではなく、本人に気付かせることを意識していました。こうするとミスするのだというのを感じてもらう。自分の肌で経験することが大切なのです」
この教え方は、まさにドヴァの文化と重なる。自ら動いて、自ら学ぶ。阿部さん自身がそうして成長してきたように、次の世代にもそのスタイルを伝えていくのだろう。
自分のことを「人見知り」「引っ込み思案」だと思っていた阿部さん。しかしセールスエンジニアの仕事を通じて、意外な発見があった。
「人と話したり、関わったりするのは嫌いじゃないなと気付きました。食わず嫌いだったんですね」
今では商談も緊張することなく、ごく自然にこなせるようになった。
会計事務所から飛び込んだ未知の世界。数々のハードルを目の前に、「なるようになる」と信じて一歩を踏み出した阿部さんは、今も着実に成長を続けている。