「“まちの時間”を借りる旅。——新田が歩いた秩父のまち宿」
伊豆大島でのホテル開業に向けて、運営や企画のヒントを探すために秩父を訪れました。
リゾート地のような特別な場所ではなく、日常の延長にある“まち宿”を体験してみたくて。
東京23区内の自宅から電車で約2時間。ふらりと出かけるには、ちょうどいい距離です。
まちに着いて、歩きはじめる
池袋から特急ラビューで1時間20分。
30分もすると窓の外には田舎の街並みが広がり、やがて緑の多い風景に変わっていきます。
西武秩父駅に到着したのは午前11時。歩いて5分ほどの場所にある荷物預け所(シェアオフィスも兼ねた建物)に立ち寄りました。
荷物と引き換えに渡されたのは、「町歩きパスポート」という冊子。町の飲食店や商店、観光スポットが載っていて、訪れるとちょっとした特典がついているそうです。
せっかくなので、そのまま散策に。くるみそばの大盛りサービス、商店でのちちぶ餅やみそポテトの振る舞いなど、まちの人たちとの小さな交流が楽しい。
途中、歴史ある神社で御朱印もいただきました。知らない土地なのに、不思議と居心地がいい。
古民家に泊まるということ
町歩きを終え、15時過ぎにチェックイン。
チェックイン場所は荷物預け所とは別で、車で10分ほど離れたエリアにある古民家群の一つが今夜の宿でした。
送迎車で到着した建物は、古民家を改装したもの。古さよりも“趣”を感じる佇まいで、畳の部屋、吹き抜け、梁の残る構造が印象的です。
多層的な間取りで、どの角度にも光が入り、過去と現在が自然に混ざり合っていました。
食と時間の流れ
夜は秩父名物のホルモン焼き。
17時の時点で3軒連続満席という人気ぶりでしたが、4軒目でようやく入店。
新鮮でコリコリとした食感に、どこか懐かしいタレの香り。地元の人たちに混じって食べる時間は、まるで日常の一部に入り込んだようでした。
食後は町歩きパスポートに載っていた古民家を再生したバーへ。
秩父の名産ウイスキー「イチローズモルト」をゆっくりと味わいながら、静かな夜に溶けていくような感覚。
翌朝は地元食材を使った重箱スタイルの朝食。自分の家ではないのに、どこか“おうち感”がある不思議な心地よさがありました。
まちと共に過ごすということ
特別な計画がなくても、パスポート片手に歩くだけで一日が満ちていく。
半日もあれば回りきれる町の広さ、人のあたたかさ。
昼を過ぎる頃から少しずつ人が増えるものの、混雑とは無縁のゆるやかな空気が流れていました。
観光地化しすぎていない分、心も体も疲れない。
外国人観光客は思ったより少なく、大正や昭和の建物が今も残る通りを歩いていると、時間が少しだけ巻き戻ったような感覚になります。
ふらりと行く旅のかたち
この町宿は、まさに“ふらりと行く旅”にぴったりでした。
「観光に行こう!」と気合を入れるでもなく、気づけば穏やかな時間の中に身を置いている。
そんな肩の力が抜けた旅先に、暮らすような滞在の原点を見た気がします。
結び
旅をすることは、“まちの時間を借りること”。
その体験の中に、Flaritoが目指す“滞在の本質”がありました。