「サウナづくり、まずは“火”の選定から。」
伊豆大島でのホテルプロジェクトの一環として、“サウナをつくる”というミッションに取り組んでいます。
今回は、その第一歩として決まった「ストーブ選定」について、
そして意外と知られていない“サウナ設計の難しさ”について、少しだけお話ししてみようと思います。
「ととのい」の核心を担う、ストーブ選び
サウナという空間において、ストーブはまさに“心臓部”。
どんな熱を放ち、どんな湿度を生み、どう“蒸される”か。その違いで体験の質が大きく変わってきます。
今回、導入を検討し、ほぼ決定しているのがMetos(メトス)社のZIEL(ツィール)シリーズのストーブ。
シンプルな箱型ながら、遠赤外線と輻射熱のバランスがよく、ロウリュとの相性も抜群。
静かに、しかし確かに“ととのい”へと導いてくれる力強い熱源です。
設計は「好きなように」はできない
「どんなサウナにしたい?」と聞かれたら、そりゃもう、理想は山ほどあります。
薪でじっくり蒸すスタイル、水風呂は天然の井戸水、外気浴は潮風が抜けるように……。
でも実際には、それらすべてを自由に形にできるわけではありません。
というのも、サウナは“建築物”であると同時に、“火気使用施設”でもあるため、法的な基準が非常に多いのです。
特に注意が必要なのは、消防法・建築基準法・地域条例の3つ。
しかもこの基準、自治体によって微妙に解釈や求められる水準が違うんです。
伊豆大島のある東京都大島町にも、当然地域ごとの独自ルールがあり、確認・調整が欠かせません。
だからこそ、プロの力を借りることにした
「どうせなら、自分たちで全部やり切ろう」——そう思ったこともあります。
でも、実際に調べてみると、構造・断熱材・換気・消防対応……やることがあまりにも多い。
そこで僕たちは、あえて“つくりたい理想”を言語化し、信頼できるプロに託す選択をしました。
Metosさんには、
- 希望する収容人数(例:4人〜6人)
- 形状(天井高、ベンチ構成)
- ロウリュ可否
- 換気・導線の方向性
といった大まかな要件を伝え、
現在は、それをもとに設計図が届くのを待っている段階です。
“こうしたい”を形にするには、“こうしなきゃ”の積み重ねが必要。
そのバランスを、プロの知見を借りながら調整していく――サウナづくりは、そんな日々の連続です。
少しずつ、でも確かに。火が灯る準備は整ってきた
ZIELシリーズのストーブが入り、設計の方向性が定まり、少しずつ“現実味”が増してきた今、
心の中にふわっと“ととのいの炎”が灯り始めているのを感じます。
完成までは、まだまだ課題も多い。
でもそのひとつひとつをクリアするたびに、
この島の風景のなかに、確かにサウナの輪郭が浮かび上がってくる気がしています。
読んでくださった方へ
もし「こんなサウナがあったら入りたい」「それ、うちの地域でも大変だった!」など
ご感想や経験があれば、ぜひメッセージやシェアで教えてください。
「帯金のサウナ探訪記」は、これから定期的に更新していく予定です。
執筆・サウナづくり担当:帯金 豪(おびかね・ごう)
首都圏出身、現在は伊豆大島でホテルプロジェクトに参画中。サウナ担当。