「地域おこし協力隊に興味はあるけれど、実際に地域へ移住して働くって、どんな感じなんだろう?」
そんな疑問を持つ方に、釧路で活動する一人の地域おこし協力隊のリアルをご紹介します。
今回お話を聞いたのは、釧路市役所 農林課で「地域農産物振興推進員」として活動する是川佑介さん。
釧路市で高校時代までを過ごした後、神奈川や東京で働き、2024年に地域おこし協力隊として釧路へ戻ってきました。
現在は市役所に活動拠点を置きながら、生産者や事業者のもとへ足を運び、釧路の農業や農産物の魅力を発信しています。
今回は前編として、なぜ東京から釧路へ戻ることを決めたのか。移住前のキャリアや応募時の不安、着任直後のことを聞きました。
東京で身につけた「魅力を伝える仕事」
——釧路へ戻る前は、どんな仕事をしていたのでしょうか?
釧路市出身で、高校までは釧路で暮らしていました。
その後、神奈川県や東京都を中心に生活し、最初は重機メーカーで、機械の保守・保全に関する仕事をしていました。
その後は広告・プロモーションに関わる会社へ移り、企業や商品の魅力をどう伝えるかという仕事を経験しました。会社員として働きながら、写真制作を中心としたカメラマンの仕事も副業で続けていました。
当時から大切にしていたのは、表面的な情報だけを発信するのではなく、その背景にある想いやストーリーを理解して、本当に価値のある部分を届けることでした。
外に出たからこそ気づいた、地元の価値
——そこから、なぜ釧路へ戻ろうと思ったのでしょう?
東京で暮らしながら、お正月などに釧路へ帰省する機会がありました。
外から地元を見るようになったことで、自然や食、人の温かさ、漁業や農業といった地域の産業など、釧路にはまだ十分に知られていない魅力がたくさんあると感じるようになりました。
大きなきっかけの一つが、釧路地域で長く活動されているネイチャーフォトグラファーの方との出会いです。
釧路で撮影できる写真には、世界のフォトコンテストでも評価されるほどの魅力がある、という話を聞きました。
自分自身も写真の仕事をしていたので、その言葉がすごく印象に残ったんです。
自分にとって当たり前だった地元の自然や風景も、外から見れば大きな価値になる。
それなら、これまで培ってきた写真や発信の経験を、今度は自分が育った地域のために使えないだろうか。
そう考えるようになりました。
単に「地元へ帰る」のではなく、これまでの経験を持ち帰って地域で活かす。
それが、地域おこし協力隊を選んだ理由です。
「本当に自分の経験が地域で役に立つのか」
——応募するとき、不安はありませんでしたか?
もちろんありました。
釧路出身とはいっても、生活していたのは高校生までです。社会人になってから釧路で働いた経験はありませんでした。
自分が東京で身につけた経験を、本当に地域のために活かせるのか。
新しい人間関係を一から築いていけるのか。
そういった不安はありました。
ただ、実際に活動を始めてみると、生産者の方や地域の方、市役所の職員など、たくさんの方に温かく迎えていただきました。
現場へ出れば出るほど新しい出会いがあり、そこからまた別の人へつながっていく。
今では、仕事だけではなく、釧路のことやプライベートのことまで、この地域の未来について一緒に話せる人たちにも出会うことができました。
最初の1か月。「成果」よりも大切にしたこと
——着任して最初は、どのように活動したのでしょう?
最初の1か月は、とにかく地域の方に会うことを大切にしました。
担当業務や地域農産物について説明を受けながら、関係機関の方々との顔合わせをし、時間を見つけては生産者や地域の事業者のところへ足を運びました。
最初から「自分にはこんなことができます」と伝えるより、
まず相手を知ること。そして、自分がどんな人間なのかを知ってもらうこと。
それを意識していました。
地域で活動していくためには、まず信頼関係が必要だと思ったからです。
市役所の職員から地域の方を紹介していただき、その方からまた別の方につないでもらう。
そうやって、一つひとつ関係をつくっていきました。
最初の1か月は、大きな成果を出すための期間ではなく、これから活動していくための土台をつくる期間だったと思います。
「迷っているなら、まず一歩踏み出してみてほしい」
——応募を迷っていた当時の自分に、今なら何と伝えますか?
「迷っているなら、まず一歩踏み出してみてほしい」ですね。
仕事を変えることや、これまで築いてきた環境を離れることには、当然不安があります。
でも、これまでの経験を全部捨てて、新しいことをゼロから始めるわけではありません。
これまで積み重ねてきたものを持って、新しい場所でどう活かしていくかだと思います。
実際に釧路へ戻ってみて、自分が持っていた経験が地域で必要とされる場面もたくさんありました。
不安がなくなってから挑戦するのではなく、一歩踏み出したからこそ見えたものがあったと思っています。
今回は、是川さんが釧路へ戻るまでの背景を聞きました。
では実際に地域おこし協力隊として活動を始めると、どんな毎日が待っているのでしょうか。
市役所で働く時間と地域へ出る時間はどのくらい?
自分のアイデアはどこまで形にできる?
そして、移住後の釧路での暮らしは?
後編では、是川さんの「市役所を拠点にしながら、地域の現場へ出る働き方」に迫ります。
→【後編】市役所で考え、地域で動く。地域おこし協力隊の仕事と釧路での暮らし(8月26日公開予定)