I&CO Tokyoは2020年7月に1周年を迎えました。アジア初のビジネス・インベンション・ファームとして、世の中の「NEXT」を創るべく日本に拠点を構えてから1年。共同代表の高宮と間澤へのインタビューを通して、ビジネスの成長や組織づくりのこれまでを振り返ります。
(前編はこちら)
▼他者への尊敬を忘れない
- 異なる専門領域の掛け合わせは、組織づくりだけでなく、I&COのビジネス全体でも大切にしていることですね。
高宮:スタートから顧客基盤があったことは恵まれていましたが、せっかく日本に拠点を構えて、ニューヨークのやり方をそのままもってくるだけでは、もったいない。そのため今は、ニューヨークの実績と間澤・高宮の領域という3つの矢を合わせようと模索しているところです。
ニューヨークにはデザイン、データ、テクノロジーの3つの柱がありますが、日本はそこに事業戦略やファイナンス、サービスデザインなどの領域を掛け合わせて、ニューヨークチームにもない特徴を形作ることができているのかな、と。僕たちの代表としての役割の一つは、これらの強みを日本や他の国にフィットさせること。それができれば、グローバルに通用するビジネス・インベンション・ファームになれると思っています。
間澤:ただ組織づくりとは違って、プロジェクトについては「こうすればうまくいくよ」というフルパッケージのフレームワークは作りすぎない方がいいと考えています。すでにこの1年で多くのクライアント企業とプロジェクトをご一緒してきましたが、それぞれに最適な方法を検証して提供できることも、我々の強みだと考えています。
I&CO Tokyoには、多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まっています。コンサル、事業会社、メディア、クリエイティブブティック、デザインファームなどなど、それぞれの専門領域を掛け合わせることで、他にはない価値を発明していけるチームになっています。
- 他のI&CO Tokyoメンバーに求めることは何でしょうか。
高宮:設立当初の目標のひとつが、レイさんへの依存率を下げること。知名度や実績があるレイさんに依頼が集中するのはある意味で当然のことですが、そこをいかに下げられるかというチャレンジは、この1年で達成できたと思います。今、I&CO Tokyoで進めている案件の半分以上は東京発の案件です。この先はさらに、他のメンバーにもレベルアップしてもらって、間澤さんと僕が入らない案件がどんどん出てきてほしいですね。
間澤:I&CO Tokyoの名刺にはそれぞれ ストラテジー やデザインなどの職域だけを記載していて、リードやマネージャーといった職位の記載がありません。そして、個々人の名前を会社名よりも大きくしています。これも一人ひとりが個の力で信頼を得て、全員が同じようにチームの力になり、自走できる組織にしたいという思いからです。
高宮:I&COはビジネスそのものが「人」で成り立っているので、個のレベルアップがそのまま会社としての品質向上につながります。今のレベルが低いという話ではなく、一人ひとりが常にレベルアップをしていく必要があるんです。僕たちが志向するのは、掛け合わせによる相乗効果。ある領域を極めた方がいるなら、その周辺のスキルや知識を獲得して、さらなる高みを目指してもらう。その過程を通じて、他領域への理解や、知らないことへのリスペクトが生まれ、新たな掛け合わせの土壌ができると思っています。
間澤:そうですね、それぞれの新たなチャレンジによって、領域拡大していけるのが理想だと思います。社内では「ダブルメジャー」と呼んでいるのですが、複数の専門性を持つことで、その人の可能性は何倍にもなるので、常に新たなチャレンジを続ける意識は忘れないでいて欲しいですね。
▼考えやアウトプットの解像度を高める
- I&CO Tokyoの1年目はおおむね順調という印象ですが、成功要因を一言でいうとしたら何でしょうか。
高宮:難しいですね、何だろうな。ひとつ思い浮かんだこととしては、ビジョナリーであったということかもしれません。最初に「間澤さんも僕も、I&COが掲げるビジョンを日本やアジアに最適化して実現したいという思いが一緒だった」と話しましたが、逆にいうと当初2人で共有しているのはそれだけでした。それぞれがすでに持っている「答え」をすり合わせるのではなく、あのへんに何かあるんじゃない?ということだけを共有して、「社会によい影響を与える少数精鋭チームとは何か」「持続可能性の高い組織とはどんなものか」「発明の可能性を高めるチーム構成とは」みたいな、禅問答のようなところから始まったのが良かったんだと思います。あまりにも正解が見えないから2人で揉める必要もなくて。当初は、お互い「それは違うよね」すら言えず、「ですかねー?」を繰り返すしかありませんでした(笑)
間澤:正解が分からないからこそ、今あるオプションを吟味して意思決定を繰り返し、積み上げていくことができたという感じですかね。目標は常に意識しつつ、最適解を探り続けたというか。
高宮:たしかに。そのときに「今決めること」と「今は判断しないこと」の違いは意識していました。例えば、事業のポートフォリオについて「ゆくゆくはこの領域の比率を下げないといけないね」という話をする場合、まず比率を下げる必要性や根拠は明確に定めておく。その上で、「じゃあ下げた分、他の何で補うのか」の判断はあえて置いておこう、そしてその判断をしない理由についても言語化はしておこう、みたいな感じです。どうしてもその時に判断できないことはたくさんありますが、その保留状況も、ちゃんと言語化して共通認識を持てる状態にしておきたいという、僕自身の性格もあったと思います。ぼんやりしているのが気持ち悪いので「なんで今は決めないのか」とか「なんでダメなのか」とか、そこまで全部言葉にして共有していきました。
曖昧なものを形にするのは、I&COの使命でもあります。まさにI&CO Tokyoを立ち上げる過程で、掲げたビジョンの解像度を上げてきたという思いです。
間澤:解像度でいうと、採用活動を通してクリアになっていくこともたくさんありました。面接なのでこちらから質問することも多いですが、それと同じくらい応募者の方からI&COについて質問されるんですよね。正直当初は探り探りで答えることも多かったのですが、それを繰り返すことによって、I&COとはどんな会社かを説明する言葉がブラッシュアップされていきました。こういうことを積み重ねて、かつ創業時からノリさんと私が1on1で話す時間を確保し続けていることも、小さいですが大事なことなのかなと思います。
高宮:1年目を終えて社員は11人になりました。今いるメンバーが入ってくれたことによって、2人で模索してきたものが形になり始めています。間澤さんも僕も正解が分からない中でここまで来ましたが、世の中に新しい「NEXT」を生み出すチームとして、分からないことやできないことに対して何の躊躇ももたず、2年目も進んでいきたいです。
間澤:もしかすると、ここからが本当のスタートかもしれません。I&COはビジネスインベンションを通じて、社会に大きなインパクトを与えていくことが使命です。まだまだ小さな会社ですが、日本はもちろん、アジアや欧米といった異なる文化圏においても、私たちの価値を認めてもらえるようにしていきたいですし、一緒に実現する仲間もどんどん増やしたいですね。