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M5Stackの成功とスイッチサイエンスの役割

こんにちは、スイッチサイエンスの採用広報担当、平山です。

スイッチサイエンスはM5Stackの総代理店として、日本でのセールス活動を全力でサポートしています。M5Stackは中国・深圳のスタートアップが生み出した開発ボードで、日本の開発者たちから熱烈な支持を受けています。今回、スイッチサイエンスのハードウェアエンジニア大木さんと仕入担当の安井さんにインタビューを行い、M5Stackとの出会いや販売への経緯について詳しく聞いてみました。

大木 真一

1970年神奈川県生まれ。大手ゲーム会社で業務用ゲーム機の設計を15年ほど携わった後、半導体代理店、開発ツールのスタートアップなどを経て2012年にスイッチサイエンスに入社。スイッチサイエンスではオリジナル基板の設計を主に担当する。他に電波法や外為法などの法律に関わる技術面の対応も行っている。スイッチサイエンスは次々出てくる興味深い技術に触れることができるので楽しく働けている。


安井 良允

1987年東京都生まれ。理系付属⾼校から⽂系受験、大学にて情報学を専攻。コンテンツデザインを学びつつ、プロトタイピングをしているうちに電⼦⼯作に出会う。スイッチサイエンスには在学時からアルバイトとして⼊社、そのまま正社員へ。仕入れ担当として、数千種類ものアイテムを扱うスイッチサイエンスで目利きの役割を担う。

M5Stackを知ったきっかけは?

大木: 2017年11月に開催されたMaker Faire Shenzhen(深セン)で見つけました。事前の情報などはなく、その日初めて知ったんです。当時スイッチサイエンスも同イベントに出展していたので私も現地にいて、ブースを色々見て回っていたんです。M5Stackのブースに立ち寄った時、彼らが展示している興味深い製品に引き込まれました。「これは売っているんですか?」と思わず声をかけてしまったくらい。具体的な記憶があいまいですが、その日に用意されていた在庫がすでに売り切れていたか何かで買えなくて。諦めきれずに翌日再びブースを訪れ、ようやく手に入れることができました。その時に対応してくれた人がおそらくJimmy(M5StackのCEO)だったと思います。

M5Stackはすでに完成度の高い製品として存在感を放っていました。深センのMaker Faireは少しビジネスショーのような雰囲気があり、個人のメイカーが趣味で開発するような「ちょっと面白いものを作ってみました!」といったDIYカルチャーがベースの作品をあまり見かけません。そんな中で、M5Stackは私の目を引きました。彼らが展示していたのは、現在ではM5Stack Facesという名前で販売されている製品で、コントローラーやキーボードが組み込まれているものでした。パッと見ゲーム機ですよ。これは日本のメイカーには刺さる人が多そうだなと思いました。実際、現地参加した日本のメイカーの中では話題になっていました。

         Maker Faire Shenzhen 2017で実際に展示されていたM5Stack


日本で販売するにあたってサポートしたことについて教えてください

安井: まずは認証についてアドバイスをしました。日本市場で売るためには、無線通信や電源(電池)などさまざまな要素に注意する必要があります。当社はこれらの確認作業を行いましたが、M5Stackは驚くべき速さで進めてくれました。Maker Faire Shenzhenで初めて連絡をとり、わずか3か月後に日本での発売を実現したんです。本当に驚きましたよ。なぜなら、その間に工事設計認証を取得し、技適マークの表示も完了させたからです。通常、より大規模なプロジェクトではこの作業に1年以上かかることもあります。彼らはスタートアップ企業であり、製造ロットもそれほど大きくなかったため、これを実現することができました。

もうひとつは製品の品質ですね。届く製品が毎回何かしら違っていたり、本来は別の製品なのに同じラベルが貼られていたりすることがありました。取引を開始してから1~2年の間は、ロット不良も多く発生していましたし、発注数と納品数が一致することさえも時間がかかりました(笑)。でも、技適取得の過程でも同じことが言えますが、私たちが指摘した問題点に対して、M5のチームは真摯に受け止め、改善に取り組んできてくれました。その姿勢が信頼を築く上で重要な要素になったと思います。特にJimmyは、私たちに対して非常に協力的であり、大きな助けとなりました。


M5Stack成功のカギとは?

大木: Jimmyたちの開発力と情熱は本当にすごいんですよ。そして、そのすごさは深センという場所によって一層引き立てられているんです。深センっていう街には、製造と開発が密接に結びついた特別な環境が整っているんですよ。世界中の工場や技術が集まる場所で、彼らのような才能ある開発者たちにとってはまさに理想的な場所ですよね。深センには、イノベーティブなアイデアや製品を素早く形にするためのインフラが整っているんです。近くにはたくさんの工場やサプライヤーがあり、プロトタイピングや製品製造もスピーディに行うことができます。

さらに、激しい競争が繰り広げられる環境でもあり、常に刺激を受けながら成長できる場所です。深センがなかったら、彼らのすごい開発力や情熱を十分に発揮するのは難しかったかもしれません。Jimmyには作りたいものがたくさんあり、製品開発に対する情熱も半端じゃありません。その情熱を受け入れ、サポートしてくれる深センの世界が、彼らの成功に繋がっているんだと思います。

安井: M5Stackは、日本のユーザーにとってArduino環境が広まっているという土壌の上に存在しています。2008年以来、スイッチサイエンスがArduinoの普及に積極的に取り組んできたことにより、Arduinoを利用して何かを作るという共通の言語が形成されました。この背景の中で、M5Stackは「Arduino的に遊ぼう」というアプローチで受け入れられました。言い換えれば、M5Stackは単独で人気を集めたわけではなく、Arduinoの普及やESPの無線モジュールの流行があり、同じプラットフォームで開発できるM5Stackが自然な形で受け入れられたのです。M5Stackは、この流れにうまく乗ることができたと言えます。

もちろん、だからといって売れるわけではありません。当然ながらM5Stack自身の努力ですよね。M5Stackは、日本のユーザーの反応やTwitter上の投稿を注意深く観察し、問題点の指摘あるいは面白いと思った投稿を紙にプリントアウトして社内に掲示していたそうです。このような意識の高さやユーザーの声に対する敏感さをJimmy自身が持っていることも、成功した理由のひとつですね。


日本でも爆発的な人気を博していますね

大木: 日本はエンジニアリングの国で、たくさんのメイカーが活躍しています。だからM5Stackの製品は日本の人々ととても相性がいいんですよ。これはよく言われていることです。

一番大きな理由は、M5Stackが箱に入っているということです。基板がむき出しになっていないので、見た目がスッキリしていてカッコいい。人は見た目が9割とか言うじゃないですか(笑)さらに、Wi-Fiや画面、スイッチ、スピーカー、バッテリーなどが一体化されていて、オールインワンの形態をとっています。最近は3Dプリンターの普及により、箱の設計もそれほど難しくなくなってきましたが、それでも基板との調和を考えると手間がかかるものです。エンジニアリングに興味を持つ人々にとって、外見や使いやすさは非常に重要な要素です。

また、M5Stackは価格面でも魅力的です。特に当時は、Raspberry Piなどと比較しても手頃な価格で提供されていました。自分で製作する手間を省くことができ、さまざまなモジュールが利用できる柔軟性も魅力の一つです。初心者から上級者まで、幅広い層が手軽にプロジェクトに取り組むことができるよう、M5Stackはその点をしっかりと満たしており、広く受け入れられているのかなと思いますね。


最近Jimmyが来日していましたね

大木: そうですね。Maker Faire Kyoto 2023の視察と日本各地でのユーザーミートアップのために来日していました。MFKでは2日間かけてほぼ全てのブースを巡っていましたが、特にM5Stackの製品を活用したプロジェクトを展示しているブースには興味津々で立ち止まり、熱心に話を聞いていました。

Jimmyは子供の頃から日本の文化や製品に触れて育ったからか、日本へのリスペクトがすごいんです。アニメを見たり、日本のカメラを使ったり、プラモデルを作ったりしてきたんだそう。今回もタミヤの直営店でプラモデルを買ったって言っていました(笑)。以前も、秋葉原に行きたいって言われたことがあって、中国最大の電気街である華強北(ファチャンベイ)があるじゃないかって伝えたら、「あそこは偽物ばかりだから(笑)本物がある秋葉原の方がいいよ~!」って笑っていましたね。

彼は日本のメイカーたちとの交流を非常に重要視しています。ユーザーとの対話を通じて常に製品の改善に努めることがM5の企業価値であると常々言っていますから。


個人的にM5Stackを触っていますか?

大木: それはもちろん!私もM5Stackのファンの一人ですから。M5Unified(M5Stackシリーズ共通ライブラリ)とM5Paperの電子ペーパーディスプレイを使用して日付や予定を表示することができる卓上カレンダーを作っています。まだ動作させる段階には至っていませんが、枠や日付を表示する部分を作っている段階です。

              M5Paperを使って開発中の卓上カレンダー


国内外のMaker Faireはじめ、普段から頻繁に様々なイベントに出向かれている印象があります

大木: 市場調査がメインの理由ですけど、開発者として、個人的にも新しい物に触れて刺激を得たいという気持ちがあります。それに、コロナの状況もようやく収束に向かい、国外への旅行も再びしやすくなってきました。次は我々の方が深センに行ってM5を訪問したいなと思っています。現地で彼らと交流して、彼らの技術やビジョンに触れ、知識を深めたいです。

それに深センに行けばまた新たな発見もあるかもしれないですしね。第2のM5Stackじゃないですが(笑)、何か面白いものを見つけることができたらいいなと思っています。とにかく、イベントや交流の場で積極的に活動し、最新のトレンドや市場の最新動向をキャッチアップしていくことは大切ですね。自分自身の成長とともに、新たなチャレンジや出会いを求めて、前に進んでいきたいと思っています。

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スイッチサイエンスは、電子部品を小型のプリント基板に搭載したモジュールを開発、製造、または国内外から調達し、ECサイトで販売する事業を行っています。 2008年、創業者であり現社長である金本が、Arduinoという当時まだ日本で流通していなかったマイコンボードを個人的に輸入した所から始まりました。単に1個だけ買ってくるのでは、送料がもったいないので、少し多めに買って欲しい人に分けようと考えたのです。創業当時のスイッチサイエンスは、なんと金本宅のクローゼットの中の「アマゾン箱」。そこから年々規模を大きくし、今では何千種類もの商品を取り扱うショップへと成長しました。 2021年4月には、親会社からSTEM教材事業、IoT開発協力事業を取得したことにより、これまで行ってきた電子回路モジュールの領域に加え、その入口としてのSTEM教材とその発展型のひとつとしてのIoT製品の領域へと事業分野を大きく広げました。 【電子回路モジュール事業】 https://www.switch-science.com/ 電子回路モジュールを開発、製造、輸入、販売しています。設計情報が公開された「オープンソースハードウェア」の分野では、国内の業界をリードしています。 【STEM教材事業】 https://switch-education.com/ 小中学生を中心とした子供とその教育者に向けて、STEM教材を開発、製造、輸入、販売しています。BBC micro:bitの正規代理店のひとつとして、国内でのローンチと普及を支援しています。この事業は100%子会社である株式会社スイッチエデュケーションで行っています。 【IoT開発協力事業】 https://iot.switch-science.com/ 電子工作、オープンソースハードウェア業界をリードする知見を活かし、ハードウェア製品をキーとする事業を行う企業さまに向けて、ハードウェア、ファームウェア、アプリ、サーバソフトウェアの開発、試作、製造のお手伝いをしています。
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