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産官学が連携した発電所をきっかけに、広島から地域循環型社会を実現する。【会員企業紹介/太平電業株式会社】

中四国地域最大規模の“次世代型DXオープンイノベーションプラットフォーム”である『ひろしま好きじゃけんコンソーシアム』。デジタルコミュニケーションツール「Slack」を通して産学官金が連携し、簡単・迅速にお互いの課題を解決できるエコシステムです。2021年10月の発足から1周年を迎え、​会員企業数は70社以上、会員数は200名を突破。これまでは難しかったようなイノベーションの創出と地域経済の活性化が日々進められています。

今回は『ひろしま好きじゃけんコンソーシアム』のゴールド会員である太平電業株式会社にインタビューを行いました。これまでに広島県で産官学連携で手がけられてきたことや、今後コンソーシアムで実現したいことについてお聞きしています。

太平電業株式会社

1947年の設立以来、発電プラントを中心に、国内外の火力・原子力発電所をはじめとする各種プラント・環境設備などの建設工事、運転・メンテナンス、解体工事を手がけています。EPC(Engineering, Procurement and Construction)という、 1つのプラントの設計、 調達、 建設工事のすべてを一括で手がけることにも注力しており、さらに運転・保守から、補修工事、解体工事までプラントのライフサイクルを1社で請け負うことが可能です。

2019年には自社初となる「西風新都バイオマス発電所」が竣工。2022年にCO₂回収装置と農業ハウスを追設し、社会課題の解決にも注力しています。地域循環型社会の実現を目指すグリーンプロジェクトも発足し、今後はより一層全国の市区町村と連携することで、さまざまな取り組みを展開していきます。

<会社概要>
HP:https://www.taihei-dengyo.co.jp/
本社:東京都千代田区神田神保町2-4
設立:1947年3月 資本金:40億80万円
従業員数:1,605名(2022年3月末現在)

技術本部
風力エナジープロジェクト
金子 泰之(かねこ やすゆき)

2008年10月に入社。技術部機械設計課に所属し、配管設計を手がける。2011年から香港の発電所に約1年半赴任し、循環水管関係の配管工事、ボイラーの給水加熱器の交換工事などの施工管理業務を担う。帰国後は機械設計課に戻り、配管設計を行いながら、建設工事や補修工事の現場での施工管理業務を担う。2016年8月からは技術部技術開発課で、太平ジャッキシステムを用いた発電所の解体計画や、原子力発電所の炉規法に対応した溶接事業者検査を行うための要領書作成などに携わる。2020年3月から技術本部 風力エナジープロジェクトに異動し、風力発電所の建設工事における新工法の検討を担当。現在はグリーンプロジェクトに携わっている。

電力事業本部 電力推進部
メンテナンス推進二課
赤木 誠(あかぎ まこと)

2011年4月に新卒入社。技術部検査サービス課にて、定修工事の検査工事計画や施工管理業務を担当し、2013年から補修部メンテナンス推進課にて定修工事の施工管理業務を担う。2015年から電力推進部で運転・メンテナンスの現場異動前準備業務、設備審査を経験し、2017年から九州のバイオマス発電所にて運転・メンテナンス、ユーティリティ調達計画業務、産廃処理計画業務、性能管理業務、保全業務、一般補修業務などを担当する。2022年2月から、グリーンプロジェクトに携わっている。


全社一丸で、エネルギー自給率の向上や農業の活性化などを目指す。

ーー現在貴社が進められている「グリーンプロジェクト」について、教えてください。

金子さん:

太平電業では、バイオマス発電所を中心に農業・林業等の地域資源を生かし、新たな産業と雇用を創出する地域循環型社会の実現を目指す「グリーンプロジェクト」に注力しています。社内の部署間の垣根を超えたメンバーが集結し、プロジェクトチームが発足しました。次世代エネルギーの活用が期待される世の中に対して、当社は「どのように貢献できるか?」を日々追求し、行動に移していくプロジェクトです。

再生可能エネルギーが次世代エネルギーとして注目される中、木質を燃料とするバイオマス発電は、化石燃料での発電に比べCO₂の排出を抑制し、地球温暖化の防止に貢献できる発電方式です。

当社も2019年10月に広島県広島市安佐南区に「西風新都バイオマス発電所」の運転を開始しました。会社設立から70年以上の中で培ったプラント建設・補修工事における高い技術と知識を活かし、地球に優しい再生可能エネルギー発電で低炭素社会の実現を目指し、地域の発展と活性化に貢献していきたい考えです。

ーーお二人は「グリーンプロジェクト」でどのようなことに携わっていますか?

赤木さん:

私は、社外との折衝を担っています。グリーンプロジェクトは一緒に協力していただける自治体と共同で行なっていくプロジェクトであり、候補となる自治体にお伺いして、プロジェクトをプレゼンし自治体の意向を踏まえ、将来的な事業化の見込みなどの検討を進めています。

金子さん:

私は、技術本部に所属していますので、技術的な側面を担っています。たとえば、バイオマス発電所で必要とされるエネルギーを有効的に使うためのシミュレーションを行い、それに伴う施設の仕様設計などを進めています。今、広島大学と共同研究を進めており、そこで得られた研究データをプロジェクトにどう活かしていくかも検討しています。

ーー広島大学と共同研究をされているのですね。「ひろしま好きじゃけんコンソーシアム」に参画するきっかけも、そこからですか?

赤木さん:

はい、そうなんです。2022年4月から広島大学の冨永助教、島田准教授と共同研究を進めていて、それがきっかけで2022年12月に参加しました。冨永助教とは「中山間地域のバイオマス発電を起点とする省エネ型施設園芸及び有機農法」の研究、島田准教授とは「光合成活性促進技術」の研究を進めています。どちらもグリーンプロジェクトをさらに活性化させていくために必要な研究になります。


産官学が連携した「西風新都バイオマス発電所」のデータを全国へ。

ーー「西風新都バイオマス発電所」が建設されてから、どんな変化がありましたか?

金子さん:

2019年10月の営業運転開始から、2022年6月には「CO₂回収装置・農業ハウス」を追設しました。発電所で生じる排ガスからCO₂を分離・回収して、農業ハウスに高純度のCO₂を送気し、イチゴ・トマトなどの農作物に吸収させることで、生育促進や甘味増加に活用するシステムの実証実験を開始しています。

西風新都バイオマス発電所の施設運営を担当している現地のスタッフに話を伺ったのですが、運転開始から約3年が経ち、2つの観点で大きな成果があがったと聞いています。

1つ目が、発電所という観点。

当社初の自社保有バイオマス発電所の運開から3年を経て、従来の建設事業やメンテナンス事業では得られなかった、発電事業者の事業性確保の考え方や燃料調達をはじめとした安定運転のための知見、高稼働率を実現する技術力の蓄積ができるようになりました。また、本発電所の運転経験を通して、施設の運転員の人材育成が以前よりも進められるようになり、当社の1つの事業である発電所の運転・メンテナンス業務の技術力向上にも繋がりました。

2つ目が、社会貢献の観点。

産官学連携で建設された意味が大きく、特に地域との関係性が年々深まっています。2022年6月に「CO₂回収装置・農業ハウス」を設置したことで、地元NPO法人への農作業委託が始まり、地域住民がイチゴとトマトの栽培に携わることで、当発電所への理解も深まり、カーボンネガティブやバイオマス発電への理解が高まっていると感じています。

2022年8月に「CO₂回収装置」の設置に伴うメディア披露会を行い、それ以来、広島市長をはじめ行政各所の見学や行政主催イベントへの協力依頼、報道関係の取材を受けその結果、発電所の目標や取り組みに対する外部への影響力が非常に大きくなっています。

ーー貴社にとって「西風新都バイオマス発電所」は大きな転機になりそうですね。

赤木さん:

今後はここでの研究結果をグリーンプロジェクトに活かしていきたい考えです。本発電所を「CO₂回収から農業利用のモデルケース」として、全国に普及させていくためにも、CO₂利用による農作物の成長への影響(成長速度、収量の増加、風味の向上など)や、事業性を評価するためにも収穫量やコスト、広島大でのCO₂施肥の有無による成長比較データを日々蓄積しています。蓄積データを分析・評価して、応用させていくことが今後の課題です。

金子さん:

燃料という観点でも、この発電所が持つ役割は非常に大きいです。バイオマス発電所で使用される燃料は間伐材などから作られる木質チップが主流です。しかし今、全国各地でバイオマス発電が普及したことにより、燃料不足の問題や不適切な伐採問題が起こっています。

現在当社では、早生樹の植林による短期間での燃料材の確保や、森林伐採に関する新工法開発にも力を入れており、荒廃した山林の伐採・植林活動による健全化を促し、山崩れ、崖崩れ、水害などの防止も目指しています。これもグリーンプロジェクトが進める活動の1つであり、地域循環型社会を実現するためにも、この発電所の持つ役割は非常に大きくなります。


コンソーシアムを活用することで、広島との連携を更に深めたい。

ーー今後コンソーシアムをどのように活用していきたいですか?

赤木さん:

まだ参画したばかりですし、本格的な活用はこれから検討していきたいと考えていますが、グリーンプロジェクトの活動や当社が目指している地域循環型社会について、より大勢の方に知ってもらえるような機会が増えればと思っています。

たとえば、西風新都バイオマス発電所では見学ツアーが随時開催されており、誰でも見学できるようになっています。ひろしま好きじゃけんコンソーシアムを通して、大学生の皆さんに当社の取り組みや「カーボンニュートラルからカーボンネガティブ」への流れを実際に見学してもらうことで理解していただき、地球環境に対しての興味を持ってもらうきっかけになってくれたら嬉しいですね。

木質チップから、どのように電気がつくられるのか。その過程で生まれるCO₂から、どのようにしてイチゴやトマトが作られるのか。この一連を見学できる機会はそうそうないと思いますので、ぜひ体験してもらいたいです。そして、それがきっかけとなって当社へ興味を持ってもらえて、将来グリーンプロジェクトで一緒に活動ができたら、こんなに嬉しいことはないですね。

金子さん:

コンソーシアムに参画している企業の皆さまにも、グリーンプロジェクトを知ってもらうことで、広島をもっと盛り上げるための協業機会が生まれればと思っています。

西風新都バイオマス発電所は地域に根付き、すべての人に開かれた施設です。発電所の建設時も地元住民の方から「昔はここでホタルがよく飛んでいた。最近は見なくなった…」という声を聞き、発電所の裏にビオトープを作り、自然の生態系を感じられるようにしました。ビオトープでホタルの孵化が確認されてから、今年で4世代目のホタルが育っており、地域の皆さまから愛される場所となっています。

これからも「私たちには何ができるのか?」の観点で考え続け、グリーンプロジェクトを推進していきたいです。コンソーシアムに参画される企業の皆さまと連携することで、これまでなら不可能だったことが可能になり、さらに広島の地域社会に貢献できるようになるかもしれない。私たちの今後のさらなる活動に期待してください。

『ひろしま好きじゃけんコンソーシアム』では、一緒に盛り上げてくれる会員企業を募集しています!!

産学官金が連携した、中四国地域最大規模の"次世代型DXオープンイノベーションプラットフォーム”で、貴社が抱える課題の解決や、新たな事業を創出してみませんか。

詳細は、こちらをご覧ください!

▼お問合せ先
広島大学 ひろしま好きじゃけんコンソーシアム事務局
HP:https://www.sukijyaken.jp/contact
Mail:sukijyaken@ml.hiroshima-u.ac.jp
TEL:070-1542-7123

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