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中四国から1人でも多くの起業家を輩出し、新しいイノベーションを。【運営メンバー紹介/小林 遼平】

2021年10月に発足した「ひろしま好きじゃけんコンソーシアム」。これまでは難しかった産学連携の課題を洗い出し、解決の仕組みを構築している“次世代型DXオープンイノベーションプラットフォーム”です。​会員企業数は70社以上、会員数は200名を突破しました。

目指しているのは、広島地域を中心とした新たなビジネスモデルや付加価値を創出し、地域経済をさらに活性化させること。では、コンソーシアム事務局で働くスタッフは日々どんなことに取り組んでいるのでしょうか。なかなか想像しにくい彼らの仕事内容や抱いている想いに触れてもらいたいと考え、運営メンバーにインタビューを行いました。

今回紹介するのは、コンソーシアムの運営事務局を支えるリーダーである小林さん。文部科学省から出向し、「ひろしま好きじゃけんコンソーシアム事務局」と「大学発新産業創出プログラム(START)スタートアップ・エコシステム形成支援」のプログラム共同代表を務めています。彼の熱い想いと実現したいビジョンを知ってもらえたら幸いです。

●インタビューイーの紹介

ひろしま好きじゃけんコンソーシアム事務局・大学発新産業創出プログラム(START)スタートアップ・エコシステム形成支援 プログラム共同代表
小林 遼平(こばやし りょうへい)

2009年に文部科学省へ入省。JAXAの研究開発の予算措置やロケット打ち上げの危機管理、原子力政策、大型学術研究推進(ハイパーカミオカンデ他)などに従事する一方、国立大学に対する出資事業(官民イノベーションプログラム)やビジョン主導型のチャレンジングな研究開発を支援するCOI事業、大学発ベンチャーの起業支援事業などにも貢献。大学10兆円ファンド支援事業の担当課長補佐を経て、2021年4月より広島大学に出向。学長特命補佐(研究力強化担当)・准教授として、現職を務める。


大学と企業がフランクにやり取りできる場を作りたかった。

──小林さんは、なぜ広島大学へ出向することになったのでしょうか?

これまでの私は、官民イノベーションプログラムやハイパーカミオカンデプロジェクトなどどちらかというと首都圏にある大学の支援策を手がけることが多かったんです。どのプロジェクトも限られた大学を外から政策的に支援する業務が多くて、地方大学の中に入り込んで研究者や学生達と一緒に政策を実行していく支援には携わったことがありませんでした。そのため「いつか大学の中に入り込んで現場目線の支援もしてみたい」「地方大学にとっての最適な政策とはどういうものだろう?」と、前々から興味を抱いていたところがありました。そんな私の思いと、広島大学の「研究力を強化したい」というニーズが合致したことで、今回の出向が決まったのだと思います。

──ひろしま好きじゃけんコンソーシアム発足の背景には何があるのでしょうか?

最初にあった課題は「産学連携のハードルの高さ」です。これまで広島大学との付き合いがなかった中小企業などにとって、大学とやり取りすることはとても敷居が高いものでした。また、たとえば企業が「理系の人材を採用するために広島大学と繋がりたい」と考えた際に、理系の部署に連絡すればいいのか、キャリアセンター課に連絡すべきなのか…と迷ってしまい、簡単に相談できないというような問題も起きていました。

そこで作られたのが、ひろしま好きじゃけんコンソーシアムです。越智学長を会長に、田原副学長・株式会社Rejouiの菅社長・株式会社アスカネットの功野CFO・株式会社キャンバスの加登住CFO・Beyond Next Venturesの伊藤社長らを副会長等とし、電話やメールでのかしこまったコミュニケーションではなく、「Slack」で簡単に産学が繋がれるエコシステムを作ろうと発足しました。これまでも自動車やゲノム編集、脳科学といった研究の社会実装を主な目的にしたコンソーシアムは存在していたのですが、学生インターンシップから研究の社会実装、地域の企業のお悩み相談まで、どんなニーズにも柔軟に対応できる誰でも入会することが出来るコンソーシアムはあまりなかったため、その役割を我々が担うことになったのです。“ひろしま好きじゃけん”という親しみのあるネーミングには、「どの企業も気軽にアクセスしてほしい」という想いが込められています。

──実際に発足してみて、企業からどんな反応がありましたか?

当初は「大学の卓越した研究力や情報を企業に伝授し、活用してもらう」といった産学連携が多くなるかなと想定していたのですが、今は「学生ならではの考え方やアイデアを企業に取り入れたい」というニーズがとても多いです。社会に染まっていない学生だからこその斬新な発想が、新しい気づきに繋がるんですよね。そこを価値として捉えていただけるのだなと、我々も驚いています。

──小林さんがプログラム共同代表を務めている「ひろしま好きじゃけんコンソーシアム」と「大学発新産業創出プログラム(START)スタートアップ・エコシステム形成支援」は、お互いに連携しているのでしょうか?

はい、かなり連携を取っています。「START」は中四国エリアのベンチャーや学生起業家を支援するための事業なのですが、これは広島大学だけでなく、岡山大学や島根大学、愛媛大学といった中四国の7つの大学が支援対象となっています。その際、各大学がそれぞれ支援金を受け取るのではなく、1つのコンソーシアムで一括で受け取って各大学に配分したほうが一体感が出るのでは?ということで、ひろしま好きじゃけんコンソーシアムが「START」の受け皿になっているのです。現在、ひろしま好きじゃけんコンソーシアムには主に7つの取り組みがあり、「START」の事業もその中の一部として組み込まれています。


中四国を大学発ベンチャーで盛り上がる地域に。

──小林さんは、普段どんな仕事をしているのですか?

ひろしま好きじゃけんコンソーシアムの取り組みをそれぞれ簡単にご紹介すると、【1】「Slack」を使った企業と大学の連携、【2】リスキング・リカレント教育として大学の講義をオンラインで提供すること、【3】学生の力を使って企業の課題を解決するインターンシッププログラム、【4】学生起業家支援、【5】起業を目指す研究者の創業支援を行うスタートアップファンド、【6】海外派遣といった海外エコシステムとの交流、【7】学生に向けた起業家教育…といったラインナップになっています。

私の仕事はこれら7つの運営管理や指揮・進行です。また、コンソーシアムの会員企業を増やすための法人営業も並行して行っています。

──小林さんが特に注力している取り組みや業務について、具体的に教えてください。

どれも注力していますが、今回紹介したいのは【5】起業を目指す研究者の創業支援を行うスタートアップファンドと、【7】学生に向けた起業家教育ですね。この2つは「START」のプログラムで、科学技術振興機構(JST)からの支援を受けています。

まず【5】の起業を目指す研究者の創業支援を行うスタートアップファンド(Gapファンド)では、1年かけて起業を考える研究者を募集し、審査委員会で厳正な審査をしました。結果的に応募は48件も集まり、そのうち19件を採択しています。採択されたのは医薬品や医療機器の開発を手がける研究者などで、今後3年の間に起業することになります。中四国を起点に、いつか日本中世界中で名を馳せるような企業に発展してくれたら…と期待しています。

そして【7】の起業家教育では、「START」の対象となっている中四国7大学のアントレプレナーの講義カリキュラムを相互開放したり、さまざまな企業から活躍される社員の皆様に講師で来ていただき実践学習を行ってもらったり…いろいろな取り組みを行っています。

そもそも中四国エリアの大学発ベンチャーの数は、全国的に見てもワーストクラスなんです。広島県は中四国の中では1番多く55社の大学発ベンチャーがあると言われていますが、広島と同規模の人口である宮城県・茨城県・京都府と比べると、2分の1ほどの数に留まっています。その理由の1つが、起業について学べる機会がとても少ないこと。アントレプレナーを専門とする教員が首都圏と比較して少なく、また、周りに起業家が身近な存在として接する機会がすくないため、どの大学も講義できる科目数が限られていたり、積極的に受講しない傾向があるんです。そこで、7大学それぞれのアントレプレナーの科目を相互開放し、足りない部分を補い合う仕組みを作りました。さらに座学で学んだことを実践に移す機会として、ウォンテッドリー株式会社やカルビー株式会社の方にキャリア教育やインターンシップを実施していただいています。

──この仕事の「やりがい」と「厳しさ」を、それぞれ教えてください。

この仕事で厳しさを感じたことは一度もないです。やりがいの方が勝ります。大変だなと思うことを挙げるならば、「調整先がとても多い」ということです。産業界、自治体、大学、金融機関や国際…と、産官学金のすべてを一気に相手にしなければならないため、調整の難しさを感じるかもしれません。とはいえ、私たちの意見や行動を批判的に捉える関係者は誰1人としていません。広島は被爆を経験していながら70年足らずで復興を遂げた県のため、新しいものにチャレンジする精神が根底に眠っているように感じます。これは、我々ならではの大きな力であり自信でもあります。

やりがいを感じるのは、学生の成長機会が増えているのを目の当たりにできたときです。事務局には多くの学生さんが出入りするためよく会話をするのですが、「アントレプレナーの実践教育を受けてキャリアの視野が広がった」なんて声もよくもらえるんです。これまでにないくらい学生さんとの接点が多くなり、毎日とても楽しいです。

もちろん学生だけでなく企業への影響も感じています。特に印象的だったのは、とある会員企業様が、アメリカの名門大学と広島の観光連盟を引き合わせるという“産産連携”が起きたこと。これは日本国内でもあまり例を見ない、新しい仕組みが生まれたんじゃないかと感じました。大学はよくあるビジネスマッチングサービスとは違って利益重視ではないため、非競争領域の段階で支援することができるんですね。ビジネスになる前の緩い繋がりを作るという役割は、民間企業だとなかなか入り込めない、このコンソーシアムならではの付加価値になるのではないかと考えました。


自らが考える社会課題に、自由にアプローチできる環境がある。

──現在の業務では、どんな目標やビジョンを掲げているのですか?

ひろしま好きじゃけんコンソーシアム全体としてのビジョンは、会員数をもっと増やし、さまざまな企業や人が出会う場を作ることです。おかげさまで今は70社ほどの​会員企業数になっていますが(2023年2月時点)、100社200社300社…とさらに規模を拡大したいです。

また大学発ベンチャーにおいては、令和8年までに中四国エリアの大学発ベンチャーを現在の3倍に増やすという目標を掲げています。起業する学生の数も増やしていきたいため、アントレプレナー教育の受講生を令和8年までに10倍にする目標も追いかけています。中四国から新しいイノベーションを創出する若手が、もっと増えてくれたらなと願っています。

──その他、小林さんが今後挑戦してみたいことはありますか?

欲張りだと言われそうですが、アントレプレナー教育を小中高生の段階から導入してみたいです。大学でいきなり学ぶのではなく、小さい頃から起業という選択肢があることを頭のどこかに入れておいてもらえると、さらに起業志望者は増えるはずですよね。たとえば、地元の起業家の方の話を聞く機会を設けたり、トランプやカードを使って株式投資について学んだり…なんてことが実現できるのであれば、ぜひお手伝いしたいです。

今、築100年の町家をDIYで改修してアントレプレナー教育の拠点を創出する「町家プロジェクト」というものが動いているのですが、これを小中高生にも手伝ってもらえば立派な起業家教育の一貫になりそうです。小学生が社会課題について議論する拠点を作れたら、とても面白いと思います。

他にも、このコンソーシアムをもっと世界に届けていきたいと思っています。「広島」という名前は世界でも認知度は高いですし、昨年もインドやフィンランド、アメリカなど多くの国の研究者や学生の方がこのコンソーシアムを訪れてくださいました。中四国地域特有のエコシステムモデルを海外の先進的なエコシステムの皆さんと相談しながら取り入れていきたいと思っています。

──お話を聞いて、とても自由に活動されているんだなと感じました。

ベンチャー政策の面白いところは、やること全てが「正解」になる点だと思います。私たち自身も何が正解か分からない時もあるのですが、地域のアントレプレナーの皆さんを見て、「失敗を恐れず挑戦しよう!」という行動原理を学びました。そのため我々は、やりたいことは何だって恐れずにやってみましょうというスタンスを取っています。これから運営メンバーに加わる方も、意欲や能力があれば独自にプランを立ち上げて取り組んでもらって構いません。私もよく行うのですが、文科省や経産省に自分で申請して資金を持ってくるんです。自分が考える社会課題に自由に取り組んで解決を目指せることが、この仕事の醍醐味ですね。

とても裁量が大きい環境ですので、「中四国のために自分の経験・能力を活かしたい」という意欲や主体性がある方は、ぜひ一緒に働きましょう!

『ひろしま好きじゃけんコンソーシアム』では、一緒に盛り上げてくれる会員企業を募集しています!!

産学官金が連携した、中四国地域最大規模の"次世代型DXオープンイノベーションプラットフォーム”で、貴社が抱える課題の解決や、新たな事業を創出してみませんか。

詳細は、こちらをご覧ください!

▼お問合せ先

広島大学 ひろしま好きじゃけんコンソーシアム事務局
HP:https://www.sukijyaken.jp/contact
Mail:sukijyaken@ml.hiroshima-u.ac.jp
TEL:070-1542-7123

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