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【支援先登壇イベント vol.2】1stRound採択ベンチャーの軌跡【後編】ハイライトレポート

東大IPCのオンラインキャリアイベント「DEEP TECH DIVE LIVE!」第6回を2021年10月28日(木)に開催しました。このイベントは、キャリアコミュニティサービスDEEP TECH DIVEについて知っていただくために、東大IPCの支援するスタートアップ企業にご登壇いただき、業界の動向、起業エピソード、直近の募集職種などについてカジュアルにお話しいただくというものです。

今回は「1stRound採択スタートアップ、躍進の軌跡(後編)」をテーマに、<鉄スクラップ×画像認識>の株式会社EVERSTEEL、<AI×見える化>の株式会社Citadel AIの経営者として活躍されている御二方にご登場いただきました。本記事では、特に盛り上がったトークセッションの内容についてハイライトでお伝えします。

▼登壇者プロフィール(順不同)

株式会社EVERSTEEL 代表取締役社長 田島圭二郎氏

東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻修了。2019年スイス連邦工科大学での研究開発を起点に、鉄スクラップに特化した画像認識システムを構築。大分の林業家系に生まれ、環境課題解決の従事へ。趣味として、砂漠マラソンを行う。グランドキャニオンマラソン273km、世界最年少完走。

株式会社Citadel AI CEO 小林裕宜氏

東京大学電子工学科卒業後、三菱商事株式会社に入社。株式会社ロイヤリティマーケティング社長、北米三菱商事会社SVP、米国インディアナパッカーズコーポレーションCEOなどを経て、2020年株式会社Citadel AIを共同創業し、代表取締役社長に就任。卓越した経営手腕と、ITから医療、小売、食品に至る幅広い業界知見を持つ。

電炉法の活用でCO2排出量の削減を目指すべきだが、市場シェアが低い

ーーまずは田島さんから、現在の事業について教えてください。

田島:EVERSTEELは鉄鋼業界をターゲットにする会社です。鉄鋼業界の現状を簡単に説明すると、鉄は世界で最も使われている金属であり、鉄鋼業界由来の二酸化炭素排出量は25億トン(世界の産業由来排出量の25%程度)と、非常に多くの割合を占めています。

もともと鉄の製造法には「高炉法」と鉄スクラップを用いる「電炉法(リサイクル法)」の2通りがありますが、前者では後者と比べてCO2排出量が4倍近く多いです。なので、後者を積極的に採用し、CO2排出量の75%削減を目指すべきなのですが、世界シェアを見ると3割にも満たないのが現状です。

目視による鉄スクラップの検知が、リサイクルの促進を阻む要因に

田島:そこでEVERSTEELでは、鉄スクラップに特化した画像認識のサービスを展開しています。実は、鉄スクラップには全20種類以上の細かな分類があり、それぞれ異なる値段で取引されています。

また、鉄スクラップの中には、銅や爆発性のある物質など不適合品が含まれており、スクラップ処理業者がこれらを検知・選別したうえで取引を行っています。しかし、ここでの作業は目視で行われており、不純物が混ざる原因となってリサイクルの促進が阻まれている状況です。

AI解析システムにより、鉄スクラップの等級と不適合品を自動で判断

田島:こうした状況から浮かび上がる、「スクラップの選別コスト削減」「目利きできる人材の不足」「成分ハズレ時の損失」といった課題に対して、EVERSTEELは画像認識のサービスを用いて解決を目指しています。

具体的には、鉄スクラップを上部からカメラで撮影し、AI解析システム「ES Engine」に取り込むと、鉄スクラップの等級と不適合品を自動で判断します。その結果を検収員の目前に表示させることで、ヒューマンエラーを防止し正確に検収を行えるようになるという仕組みです。

ーー田島さんが鉄リサイクルに興味を持ったきっかけは何だったのですか?

田島:もともと鉄に関する研究に携わっていて、鉄リサイクルに関する課題は研究者の間で何十年も前から浮き彫りになっているほど周知のものでした。これまで多くの研究室がさまざまな手法で解決を試みてきましたが、商業的に成り立った技術は確立されていなかったのです。

ただ、「画像認識で鉄を溶かす前に検知できればいいのではないか?」というアプローチには誰も手を付けていなかったので、試してみたら事業化できた、という経緯です。

AIは、時々刻々と品質が劣化してしまう

ーーありがとうございます。では、次に小林さん、お願いします。

小林:Citadel AIの社名には、「AIを守る砦」という意味合いを込めています。そもそもAIには従来のソフトウェアと違って、時々刻々と品質が劣化してしまうというリスクがあります。実際の運用に入ると、ノイズの影響を受けて、間違った判断を下してしまうおそれがあります。例えば、人為的なミスやデータ収集ソフトのバグ、コロナ禍による経済環境の変化に伴うデータ偏移などは、AIからすれば大きなダメージとなってしまうのです。

実際に運用に入った後、通常どの会社さんでもAIに対して目視による精度確認を行いますが、それには通常数日から数週間の時間を要します。AIは瞬時に出力を行うため、その間も間違った答えを出し続けてしまう可能性があります。例えば、需給予測用のAIであれば誤発注により不良在庫を抱えてしまったり、与信審査用のAIであれば誤診断でデフォルトを増加させてしまったりといった、ビジネス上の問題につながりかねません。

AIを外部からモニタリングし、異常を検知・ブロックして可視化するツールの開発

小林:Citadel AIでは、「Citadel Radar」というツールにより、人間による精度確認の前段階でAIそのものを外部から常時自動モニタリングし、異常を検知・ブロックして可視化します。また、異常があればAIに再学習を行わせますが、再投入の前には「Citadel Lens」により品質を自動検証するのです。これら2つのツールを用いて、AIの品質保守の自動化と、AIの思考過程の可視化の実現を目指しています。

アプリや社会インフラへのAIの実装が増えれば、市場はさらに拡大する

小林:Citadel AIでは、「Citadel Radar」というツールにより、人間による精度確認の前段階でAIそのものを外部から常時自動モニタリングし、異常を検知・ブロックして可視化します。また、異常があればAIに再学習を行わせますが、再投入の前には「Citadel Lens」により品質を自動検証するのです。これら2つのツールを用いて、AIの品質保守の自動化と、AIの思考過程の可視化の実現を目指しています。

アプリや社会インフラへのAIの実装が増えれば、市場はさらに拡大する

小林:「Citadel Radar」には、自動モニタリング機能、ファイアウォール機能、可視化機能の3つが備わっています。AIに学習時と異なるデータが入力されると予測診断を誤るリスクがありますが、外部からのデータを「Citadel Radar」に試し食いさせることで、従来の統計データと異なるものについてはブロックして吐き出し、吐き出した理由を可視化するというイメージを持っていただくと理解しやすいと思います。

我々の当面狙える市場として、直近で少なく見積もっても500~600億円。これからAIがさまざまなアプリケーションや社会インフラに実装されるようになれば、Global市場でScalableな展開が可能です。

ーー小林さんと共同創業者のKennyさんとの出会いのきっかけは何だったのでしょうか?

小林:決してマッチングアプリなどではなく(笑)、共通の知人から紹介してもらいました。知り合ったのが2020年の初め頃、会社を設立したのがその年の12月頃です。知り合ってから、顧客との接触や分野の絞り込み、プロトタイプの製作などをスタートし、目処が立ったタイミングで会社の設立に至りました。

あえてリスクに飛び込んだ方が、他人任せにならず、結果的にリスクは低い

ーー視聴者の中にはベンチャーへの就職に対して不安を感じている方が多いと思いますが、お二方はベンチャーに飛び込む際にどのような不安を感じていましたか?また、その不安は、起業後に変化しましたか?

田島:大学卒業後、一般企業で社会人としての経験を十分に積んでいない中で、ベンチャーの世界に飛び込んだのですごく不安を感じましたね。もしも途中でベンチャーに頓挫したら、他に行き先がなくなるのではないかと思って2ヶ月くらいは悩みました。ただ、共同創業者の佐伯くんが励ましてくれたおかげで助かりましたが。

裏を返せば、ベンチャーを始めて良かったこともあって、それは「働かないと生きていけない状況」に身を置けたことです。また、最近では、自分以上に鉄スクラップの分野に詳しい人はいないのではないかという気になってきて、もし今の事業がダメになっても、いくらでもつぶしが利くのではないかと考えています。

小林:私も「ベンチャーに飛び込む」ことについて、大企業への就職に比べたら確かにリスクはあると感じます。しかし、その一方で、これから終身雇用制度が変化する中で、安定を頼ることの方がリスクは大きいのでは?と感じています。あえてリスクに飛び込んだ方が、他人任せにならず、結果的にリスクは低いのではないでしょうか。

1分くらい話してみれば、相手の本質は直観的にわかる

ーー共同創業者を選んだ要因と口説き文句はどんなものだったのでしょうか?

田島:「ぜひ、あなたと!」というような感じではなく、漠然とスイスでの研究後に帰国したタイミングで他の人を事業に誘いたいと考えていました。加えて、帰国時にロストバゲージして服を失ったときに、一緒に服を買いに行ってもらいたいなと思った人が、オシャレな佐伯くんでした。そして、一緒に服を買いに行って事業の話をしているうちに、気が付いたら「一緒にやろう!」と意気投合していましたね(笑)。

小林:Kennyとは、お互い起業してみたいと思っていたタイミングで知り合えたこと、昨年たまたま同じタイミングで日本に来たことなどが要因として大きいです。実際に会ってみて1分くらい話せば、相手の本質は直観的にわかるものです。Kennyの優秀さ、爽やかさ、隠し事をしないオープンで誠実な性格に魅力を感じていましたが、お互いがお互いを認め合って選んだという感じでしたね。決して「愛しているよ!」というような口説き文句ではありませんでした(笑)。

東京大学のブランド・信用力、ニュートラルな支援に魅力を感じた

ーー1stRoundの支援の中でメリットに感じたものはありましたでしょうか?

田島:まず、貯金のない中で起業したので、生きていけるお金をもらえたのは非常にありがたかったですね。そのほか、毎月打ち合わせしていただくたびに、「補助金はいくら取ったら良いのか」「鉄鋼メーカーから開発費としてどれほど貰ったら良いのか」など、それまで研究しかやってきていなかった私からすると、間違った方向に進まずに済んで助かったなと感じています。

小林:東京大学がバックアップしているというブランド・信用力や、大学であるが故にニュートラルな支援を提供していただけることに強いメリットを感じています。東大IPCの場合は、「投資が決まる直前まで、どのように投資家と交渉したら良いのか」など、ともすると東大IPC自身にとってデメリットになりかねないことまで支援してくれる珍しい存在だと思います。いろんな見地から公平に支援していただけるので、採択いただけるならば利用しない手はないと思いますね。

ちょっとした失敗でもインパクトが大きく、下らないことでも喜びが大きい

ーー起業を目指す中で、最も大変だったことは何でしたか?

田島:昨年、現場であるスクラップ屋での半年間の肉体労働が非常に大変でしたね。身体も壊しました。毎日500kgくらいの鉄スクラップを1個1個運んで、AIに教えるために撮影していました。

小林:想定どおりにうまくいかないことの方が多いと肝に命じる必要があります。サラリーマンのときは、営業成績が振るわなかったり失敗したりしても、上司に怒られる程度のことで済むことが多いですよね。しかし、起業すると、ちょっとした失敗でもインパクトが大きい一方で、些細なことでも喜びが大きいと感じています。

ーー最後に、人材の採用について、宣伝などあれば、ひとことお願いいたします!

田島:脱炭素に本気で取り組んでいる会社はほとんどないように感じていますが、僕たちの会社では本気で脱炭素に取り組んでいるので、この思いに共感できる方をお待ちしております。

小林:私達のシステムは、「信頼できるAIを世の中に提供する」ことを目指しており、今後の社会にとって必要不可欠なものです。日本発で世界と戦える会社を目指しています。「本気で世界に出て挑戦してみたい」と考えている人からのご応募を心からお待ちしています。

ーー本日はどうもありがとうございました。

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