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登龍門

鯉のぼり

5月5日子供の日。
青く澄んだ大空を勇壮に泳ぐ鯉のぼり。
この度の青工逢山の作品は、鯉のぼりの由来となった伝説「登龍門」をモティーフとしている。
「登龍門」が、出世や成功につながる関門を指す言葉であることは言うまでもない。
では、その言葉の由来を知るものはどのくらいいるだろうか。
以下にその由来を紐解いていく。


登龍門


 膺は声明をもって自らを高しとす
 士有り、その容接を被る者は、名付けて登龍門となす

この諺は『後漢書』李膺伝に語られた故事である。
それによると、李膺という公明正大な官僚があり、彼に才能を認められた者があったならば、それ則ち将来の出世が約束されたということであった。
このため彼に選ばれた人のことを、黄河上流の流れの急な龍門(陕西省と山西省の境界付近)を登り切り、霊力が宿った鯉が龍になるという言い伝えになぞらえて、「龍門に登った」と形容したという。
これが「登龍門」伝説の由来である。
鯉のぼりは登龍門にあやかり、男児が様々な困難に打ち勝って大成する立身出世の象徴として飾られる。
更には、鯉は丈夫な生き物であるゆえ、子供の健やかな成長を願う想いも込められている。

青工逢山の本華道作品は、まさに急峻な龍門を遡上し登り切って龍へと姿を変えた鯉を華で表した。
鯉を翻弄するように囂々と音を立てる水流、それに負けじと全力を傾けて昇る鯉、やがて登り切った鯉が龍へと変貌する瞬間を切り取って投影した。
力強い生命の煌めき、大自然の雄大さと過酷さ、それら天地万物を感じ取ってほしい。


祭り

縁起の良い登龍門伝説は、日本の文化に深く根差している。
その一端を紹介しよう。

「登龍門祭り」は、岩手県一関市、日本百景「猊鼻渓」の奥、龍が住まうと云われる「潜龍潭」で行われる。
普段は観光名所として知られるこの渓谷では、客を乗せて川を遡る方向に船が出発する。
龍門に例えるに相応しい場所と云えるだろう。
そして毎年ゴールデンウィークに行われる「登龍門祭り」では、 潜龍潭で子供達が快活に将来の夢を叫ぶのである。

「京都祇園祭」の後祭りで山鉾巡行を行う33基の山鉾のうち、「鯉山」は登龍門を表している。
山鉾巡行とは、荒ぶる神々を鎮め、病気平癒と開運除災を祈る行事。
神の依り代となる山鉾には、神をもてなす為に吉兆様々な装飾が施され、天皇家の庭園であった神泉苑まで人々が身命を賭して曳いてゆく。
山鉾「鯉山」はその一つなのである。


おわりに

以上、「登龍門」にまつわる由縁、文化祭りを述べてきた。
登龍門をモティーフとした本作品を通じ、子供の日の新たな楽しみ方を見出したならば心嬉しい。

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