1
/
5

0からのリブランディングプロセス【社名変更 提案 〜 アウトプットまでの全て】

【※お知らせ】

記事公開時のサイトはクローズされています。
また、退職済みですので、現在のサイト及び他クリエイティブは、記事公開時と全く異なり、自身と一切関与していません。
ビジュアルのアウトプットではなく、本記事内のプロセスのみを参考にしていただけると幸いです。




はじめまして!デザイナーの須藤です。
identifyでは、プロダクトデザインからコーポレート、コミュニケーションデザインなどクリエイティブ全般を担当してます。

実は去年、社名を「マキヤマブラザーズ株式会社」→「identify株式会社」にアップデートしたのですが​、今回は私がオーナーとして行った「社名変更提案 〜 リブランディングに伴うデザインのアウトプット」までの過程を紹介します。
堅苦しそうですが、要は「リブランディングの0 → 100までを公開」みたいな感じです!笑

VMVのアップデートに関しては、良ければこちらを御覧ください。

【社名変更の背景をお知らせ!】マキヤマブラザーズ株式会社は、identify株式会社に社名を変更しました! | identify株式会社
みなさま、こんにちは!identify株式会社、人事のいくすです!この度、Visionのアップデートに伴い、社名をマキヤマブラザーズ株式会社からidentify(アイデンティファイ)株式会社へと...
https://www.wantedly.com/companies/company_666372/post_articles/539317

仕事の流れとして、上から突然「リブランディングするぞ!」「新サービスできるからロゴ作りたい!」と知らされる → ヒアリング〜ビジュアルのアウトプットをすることは、事業会社や受託でも多いケースかもしれないですが、社名変更の提案〜決定、ビジュアルのアウトプットまでトータルでデザイナーが関わる事は稀かと思うので、少しでも参考になれば幸いです。

ちなみに本記事はビジュアルデザインのテクニックではなく、それまでのプロセスやデザインの言語化に絞って紹介しているので、ロゴの作り方などは敢えて省略しています。

そもそもなぜ社名変更をしたのか?

一言でまとめると「目指す未来・組織と、社名の乖離が大きくなったから」です。

合宿を経て、ビジョンを「すべてがアイデンティティになる時代をつくろう」にアップデートしました。 このビジョンは究極的には『「いい」「わるい」という概念すら存在しない』という言わばフラットな状態も意味しています。

一方、当時の社名である「マキヤマブラザーズ」に対しては、「トップダウンなんですか?」(代表の名前が鬼山 真記:キヤマ マサキ)と言われたことが実際にあったり(鬼山はむしろ柔軟かつ逆のタイプです笑)、「ブラザーズ」が男ぽさを感じさせたりと、新ビジョンと社名も実際の社内の雰囲気に統一性や一貫性も無いバラバラ状態になっていました。。

実は私自身、合宿中にも新ビジョンと旧社名の乖離を感じていたのですが、ビジョン・ミッション・バリュー(以下、VMVとする)についての議論が白熱したことと、 社名変更は気軽に出来ることではないと想像はできたので、すぐ切り出せずにモヤモヤしていた状態でした。

ただこの状況を放置することで、ビジョンとの乖離が大きくなり、会社が成長すればするほど負債が大きくなってしまう、早いタイミングで言わねばと思い、声を上げることにしました。

VMVのアップデートに関しては、良ければこちらを御覧ください。

「MVVは、企業のフェーズに応じて運用せよ」──上場企業トリドリとスタートアップidentifyに学ぶ、競合優位性を高める戦略的ビジョン経営 | FastGrow
MVVが浸透している組織とは、どんな組織なのだろうか?また、MVVを組織全体に浸透させていくためには、何をすべきなのだろうか?創業期のスタートアップにおいては、メンバーが少ないため、MVVを明文化せずとも共通の夢や目標に向かって進むことができるかもしれない。しかし、組織が拡大して新しいメンバーが増えるにつれ、そうした夢や目標に対する熱量や解像度にはギャップが生まれ、組織が一枚岩となって進んで...
https://www.fastgrow.jp/articles/identify-kiyama-toridori-kaneko
社員合宿でベトナム(ダナン)に行って、Vision、Mission、Valueのアップデートと30人の壁を乗り越える方法を議論してきた話! | identify株式会社
マキヤマブラザーズで、採用や組織づくりを担当している、いくすです。事業成長にともなって、これからさらに組織が拡大するための準備として、組織に一体感を生み出すための求心力となるVision、MIs...
https://www.wantedly.com/companies/company_666372/post_articles/526895

実際の社名変更のプロセス

「社名を変えたい」という意思は、全社定例中に鬼山に伝えました。当然「合宿中に言ってよ〜笑」とツッコミはしてくれたのですが、後日の経営会議で、しっかりと社名変更の背景を聞いてくれ、その上で「須藤さんに全部任せる」と背中を押してくれました。数値化が難しい今回のようなブランディングは、経営陣の姿勢で大きく方向が変わると思っていますし、現メンバーも含めてこのようなフラットな環境が組織にあることは、identifyの特徴だと思っています。

ここからは実際に行った、社名変更〜ブランド刷新のアウトプットまでの過程を詳しく紹介していきます。


1.創業者(鬼山)の社名に対する思い・由来を確認

いくら社名を変えるべき理由があると言っても、創業者の大切な想いはあるはず。
原点から今やこれからの未来へ繋がるエッセンスが見つかるかもしれません。
実際に創業者である鬼山に聞くと、旧社名にはグローバルへの挑戦の意志が込められていることが分かりました。

鬼山コメント
グローバルで見た時に各業界で⚪︎⚪︎ブラザーズという会社は地位を確立していて、一方で日本国内では、⚪︎⚪︎ブラザーズという社名で大きく成長できた会社を知らない。 だから日本初世界で、⚪︎⚪︎ブラザーズを作れたらクールだなという挑戦の思いを込めた。個人的にもGO globalはいつかやってみたいと思っている。 そこで頭にどんな文字を付けたら良さそうか色々考えた結果、未来永続的に最もコミットメントが高いと想定される自分の名前を入れた。


2.会社・サービス(DeLMO/エビトル)の関係性を整理(現状と理想型)

弊社のブランドのタイプ = マルチブランド型(独立ブランド型)

ブランド体系には上下と左右の関係性があります。この関係性を整理することで、ブランドをどう見せていくかの方向性が定まり、 社名が決まりやすくなります。そのため、最初にムードボードなどの手を動かす作業はせずに、 関係性を整理してアウトラインを描く作業を行いました。

ちなみにブランドタイプは大きくは以下の3つと言われているらしいのですが

①マスターブランド型(結ぶつき強めブランド型)
②マルチブランド型(独立ブランド型)
③サブ・ブランド型(マスターとマルチの融合型)

自分たちの会社とサービスの事を考慮し、以下の点を踏まえ「②マルチブランド型=独立・個別ブランド型」を採用することにしました。

  • サービス毎にターゲット範囲を明確に分けている
  • 社名変更のきっかけであるビジョンと社名を近づける

また、判断材料としてそれぞれのメリデメをまとめ、経営会議で、経営メンバーに説明も行っています。


3.実際の社名変更に関するタスク(開発や手続き)を洗い出し

タスクの洗い出しは、実質アウトラインを描く作業なので、前述した関係性の整理と同時並行で修正を繰り返しながら行っていました。さすがに社名変更は初めての経験だったので、ここは正直全く未知の領域でした笑ですが、自分以外の経営メンバーは、それぞれ会社の立ち上げ経験があるのでアドバイスをもらったり、 開発に関する影響範囲をCTOの岩崎、採用やPRに関しては谷本がスピーディに出してくれました。自分はそれらを踏まえながらChatGPTでタスクを洗い出し、ガントチャートでリリースまでのロードマップを作成し、想定されるタスクの洗い出しをしていきました。

幸いにもまだ20人未満の規模で、大掛かりな開発が少なく負荷を最小限に抑えられたこと、1番の核であるビジョンが変わる可能性は今後も少ないことを踏まえると、早い段階のタイミングでリブランディングするのはメリットの一つかもしれません。
(それでも関係者には各所で多大な協力をして頂きました。本当にありがとうございました!)


4.社名とビジュアルの方向性(骨格)の決定

次は実際にビジョンを表現する社名と、ビジュアルの方向性の決定という具体度を高めるプロセスを進めていきます。

ここで大切な社名変更のポイントを整理しておきます。

----------------------
社名変更のポイント
「ビジョン( = 目指す未来)」を表現できる社名であること。
さらに言えば、自分と社員、あらゆる関係者、採用候補者が「どんな未来に向かうのか」「どういう集団なのか」かを理解しやすく、伝えやすく、伝わりやすい社名にすること。
----------------------

このポイントを頭に置いて、合宿でのディスカッションをまとめたFigJamをベースに以下のプロセスを行いました。ざっくりまとめると、「人の感情や事業課題 = 抽象度の高い状態 を発散→ビジュアルデザインの具体表現に収束」というプロセスです。

ひとつずつ解説していきます。

4-1. 理想と現実の間の課題を把握し、その解決策を言語化
まずは、関係者(採用候補者、クライアント、クリエイター、社内)それぞれに対し「どう思われたいか・どう在りたいか」という理想と、理想を妨げている課題を文章でまとめ、課題の解決策を記載しました。

4-2. 重要なキーワードの抽出、メインテーマ決定
そして、それらの解決策から「どんな表現にすることで、課題を解決し、見られたい・在るべき姿に近づけるか」を定義するため、重要キーワードを抽出。
さらに重要キーワードに優先度をつけ、メインテーマを決めることで、抽象度が高い状態から、具体レベルを上げていきました。

ちなみに重要キーワードの抽出や言語化の作業は「 ◯ GOOD(こう思われたい、こう在りたい)」と「 ✕ BAD(こう思われたくない、こう在りたくない)」のように、逆もセットで考えると、よりアウトプットの精度が高まるのでオススメです。

4-3.感情の言語化
導き出したメインテーマには、どのような人の感情や行動が結びつけられるのかを言語化していきます。例えば、「前向き」であれば、「明るい」「楽しい」「新しい」などの形容詞を挙げていきます。ここは人の感情の部分なので、 あまり厳密にルールは設けず、直感で思い浮かぶ言葉を出すことがむしろ良いと思っています。

4-4.視覚の言語化
次に、発散した感情に対して、表現できる見た目の特徴を書き出していきます。
この作業を行うことで、直感的に発散していた「見られたい姿・在りたい姿」が少しずつイメージできるようになってきます。

デザインの構成の分解
最後に、言語化した視覚を表現できる、デザイン構成やエレメント、タイポグラフィ表現、色などの手法をマッピングしていきます。

ここまでで言語化の作業は一区切りです。
言葉にできたことで、社名もビジュアル表現もスムーズに進められそうな気がしてきます。


その他の作業

比較による立ち位置の確認
また比較を行うことでより精度が高まったり、立ち位置がより鮮明に認識できるので、他社との比較自社内でのBefore / Afterでの比較など、いわゆるポジショニングマップや5段階の対極軸で表現してみることもオススメします。

以上で社名とビジュアルの方針(骨格)は整いました。

社名とビジュアルの方向性(骨格)の言語化の作業は中々重さはありますが

  • 関係者の共通認識を揃えられること
  • 言語化することで納得感が得られること
  • ブランドの核が出来ることにより今後使える資産となること
  • 外部に協力や委託する際や新入社員に対してのコミュニケーションコストが下がる

これらを踏まえると、リターンも大きく、マストでやるべき作業かもしれません。

社名候補発表〜決定まで

ここからは整えた骨格に則って社名とロゴを決めていきました。

ただ、社名とロゴの決定に関しては、経営メンバーだけで決めるのではなく、社員の意見も集約して、決めることにしました。背景としては、合宿を通じて皆でVMVをアップデートしましたし、共にビジョンを達成したいという思いがあったため、 できるだけ皆の声を反映させたいという思いからでした。案の定人数が多くなった分、意見は広がり割れてしまい、意思決定は難しくなりましたが、少しでも多くの社員が自分ごと化し、共に進められたので、大変ではありましたが、意義はあったと感じています。

具体的には、社名候補とロゴに関するコメント回収とアンケートを行いました。

以上のプロセスを経て、社名はidentify、ロゴは以下のデザインに決定しました。

社名になったidentifyは、アイデンティティの他動詞であり、共感の意味を持つ言葉です。
すべてのアイデンティティに共感の気持ちを持ち、その上で、すべてがアイデンティティになる時代をつくっていきたいという思いを込めて、新しい社名に選びました。
ちなみにSpotifyやShopifyなどのグローバル企業の影響も受けて、identifyにしたというのもあります(記事冒頭のに記載した創業時のグローバルへの挑戦の意志はここでしっかり受け継いでいます)

ロゴのデザインに関しては、簡単な丸や四角と三角を置いただけと思われるかもですが、むしろそう思われることがベストだと思っています。
identifyのビジョンを表現するのに、着飾ったり、難しいビジュアル表現はマッチしません。
ここでもう一度、社名変更のポイントに立ち返ります。

社名変更のポイント
「ビジョン( = 目指す未来)」を表現できる社名であること。
さらに言えば、自分と社員、あらゆる関係者、採用候補者が「どんな未来に向かうのか」「どういう集団なのか」かを理解しやすく、伝えやすく、伝わりやすい社名にすること。

達成できてる気がします!笑

ちなみにその後完成したコーポレートサイトはこちらです。
前述した言語化した資料を振り返っても、その大事な方針(骨格)をしっかりと固めたことがアウトプットの一貫性にも繋げられたと思っています。


【※お知らせ】

記事公開時のサイトはクローズされています。
また、退職済みですので、現在のサイト及び他クリエイティブは、記事公開時と全く異なり、自身と一切関与していません。
ビジュアルのアウトプットではなく、本記事内のプロセスのみを参考にしていただけると幸いです。

これからの展開

これで終わりにせず、社内社外を絡めてバリューを浸透させ、必要であればミッションやバリュー刷新なども含めたリブランディングも随時行っていきたいと思っています。

実は既に採用とPR、組織開発も担当している谷本を中心に、バリュー推進プロジェクトも行っているのですが、上手くいくことも苦戦することもありながらPDCAは回して前に進めているので、引き続きチャレンジしていきます。

まとめ

今回のリブランディングや自身の経験を通じて学んだ事をまとめます。

リブランディングには環境やタイミングが大切
社名変更やリブランディングはあらゆるコストもかかる上に、数値化が難しいとされているので、一人で進めるのはハッキリ言って不可能です。
とは言え、私が感じたような体験の一貫性に対する違和感や、負債になる未来が見えたなら、まず勇気を振り絞って提案することをおすすめします。経営メンバーに理解があるなら進みますし、すでに理解はあるがタイミングを逃していて進んでいないだけかもしれません。
今回はVMVという会社の核のアップデートのタイミングだったので、進められたというのもあるかもしれません。
そして次回大幅なアップデートをする必要があるのは、会社・組織が成長し、フェーズが変わり、中も外も目指す方角がバラバラになってしまいそうな時かなと思っています。そこでインナーから整えることが、あらゆる外の施策(採用やマーケ)にも効いてくるのかもしれませんし、単なるプロダクトのデザインシステムから全社のガイドラインへの発展も考えられます。
もちろんリブランディングは目的ではなく手段ですが、会社の事業フェーズに応じて提案する心構えは常に持っておくことは大切にしたいです。

言語化の作業はやはり大切
記事内にも記載しましたが、言語化はしんどくてもその分のリターンがあるのでオススメです。

・関係者の共通認識を揃えられること
・言語化することで納得感が得られること
・ブランドの核が出来ることにより今後使える資産となること
・外部に協力や委託する際や新入社員に対してのコミュニケーションコストが下がる

最初にイメージから見せる方法も全然賛成なのですが、入り口が違うだけで最終的なアウトプットは似た着地になると思っています。
外注する際にも、言語化したドキュメントと、ムードボードなどのビジュアルが併せてあると、コミュニケーションがスムーズになり、アウトプットの精度が高まることを実感しています。

最後に

ビジョン達成にはまだ道半ばですが、まずは副(複)業からサポートしてくれるデザイナーさんを募集しています。Webデザインや代理店での経験があり、プロダクトデザインや他のデザインの経験・興味がある方は特にマッチしそうだと思っています!まずは気軽にお話しましょう!
読んで頂きありがとうございました!





identify株式会社's job postings
4 Likes
4 Likes

Weekly ranking

Show other rankings
Like Ryota Sudo's Story
Let Ryota Sudo's company know you're interested in their content