“属人化”を武器に。売上1億を越えて迎えるUIデザインコンサル、バイネーム4期目の挑戦
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バイネームは2025年8月に4期目を迎えます。3期にはデザインコンサルティングを軸にしながら、シーシャバー「mock」の開店など新たな挑戦にも取り組み、会社としての広がりを見せています。
この記事では、代表である井上に3期を振り返ってもらうとともに、4期に向けた経営方針や新規事業の構想、そして「指名されるデザイナー集団のさらなる拡大」を目指すバイネームが求める人材像について聞きました。
年間売上一億円達成!3期の取り組みと結果
──3期が終了しましたが、1年を振り返っていかがでしたか?
3期目で売上はついに年間1億円を突破しました。1期目は約4,000万円、2期目が5,500万円ほどだったので、3期目は2倍ほどの成長です。
1期目はインターンはいたものの、実質的には私ひとりで回していて、案件へのプロジェクトマネージャー的な関わり方も少なくありませんでした。2期目からは社員の原さんや内山さんが加わり、社員がクライアントにしっかりコミットする体制が整ったことで、継続的な案件を任せてもらえるようになりました。
3期目になると、会社としての信頼も高まり、上流から関わる案件が増えてきました。その結果、単価も上がり、依頼の質も変化しています。多くのお客さまは「何を作るか」という指示の手前で止まっていることが多い。そこに私たちが課題の整理から入り、最短距離でアウトプットの解像度を上げていくのがバイネームの強みです。逆に「作るものが具体的に決まっている」場合は、必ずしも私たちでなくても良い。むしろ課題の発掘や解像度を高めるプロセスにこそ価値を感じてもらえていると考えています。まさにそれを実感した一年でした。
── 3期目に新しく挑戦したことや達成したことについて教えてください。
3期目で大きかったのは、シーシャバー「mock」をオープンしたことです。これをきっかけに、さらに広く色々な人とつながれるようになり、会社としての広がりを実感しました。
面白いのは、その効果が事業にも波及したことです。既存のクライアントが足を運んでくれて発注につながったり、これまで会食などフォーマルな場でしかできなかった話をmockでフランクにできるようになりました。ちょっとした雑談の延長で仕事の相談を受けられる環境ができたのは、クライアントワークにとっても良い影響でした。
──できなかったことや、やり残したことはありましたか?
正直に言うと、やり残したことはたくさんあります。たとえば営業資料を整えてリリースすることを目標にしていましたが、中身の更新がなかなか追いつかず、3期のうちには完了できませんでした。
また、評価制度も3期中には導入できず、4期から本格的に始める予定です。私たちは平均的に人材を育成するスタイルではなく、各々のスキルを活かしてパラレルに動ける人を理想としていますが、一方で「品質を担保する仕組み」も必要です。そのためのワークフローをカスタマイズできるように整備をしていきます。
制作の現場ではどうしても「納期通りに作り終える」ことに意識が向きがちです。しかし、本来は「なぜ作るのか」に立ち戻って考えることが欠かせません。そういったデザインの本質と向き合うには、ミスが起きたときにどうリカバリーできるか、ヌケモレを極力減らす仕組みを整えることが、次のフェーズへの課題だと感じています。
4期は会社規模の拡大、そして専門領域をさらに深めることを目指す
──4期はどのような目標がありますか?
売上については、3期目を下回らないことを第一に考えています。倍にするなどといった無理な目標は立てていません。その理由は、売上を伸ばすだけでは会社が破綻してしまう可能性があるからです。制度や体制を整えながら、メンバーのスキルアップも含めて組織を強くしていくことが、今の私たちにとって大切だと思っています。
規模としては、3期目と同等の売上を維持しつつ、5〜10人ほどの体制に拡大していきたいと考えています。そして、3期でやり残したことを4期では実施する。これが一つの大きなテーマです。
また、「mock」に関しても、さらに売上を伸ばしていきたいと考えています。お店は収益の柱というよりも、人とつながりを生み出す場ですが、その価値を維持するためにもきちんと数字として結果を出すことに取り組んでいきたいです。
──会社として新しく取り組みたいことや、広げていきたい領域はありますか?
まずはAIの活用です。すでに検討や実証は進めていますが、ワークフローやルールの方針はまだ固まっていません。画像やプロトタイプなどのAI生成だけに限らず、リサーチやリスクの洗い出し、要件定義のたたきなど、人が頭を使ってベースを作る部分をAIで圧縮していきたい。そこを制度として高めていかないと、結局アウトプットの質も上がらないので、しっかり整備していこうと思っています。AIには投資を続け、1人月分を賄えるくらいの効率化を目指していますし、進化に適応できるよう備えていきたいです。その結果、稼働時間を減らしていけるのも大きなメリットだと考えています。
一方で、新しい技術を手広く広げるつもりはあまりなく、今でも取り組んでいる紙やWeb、システム、リサーチ業務などの領域を深めていく方針です。並行して、自社の認知を高めるためのコミュニケーションデザインもさらに発展させていきたい。現在著名イラストレーターの方とコーポレートで使えるイラストを制作していて、今後はそういったものもうまく活用しながら発信を強化したいと思っています。
── mockのアップデートは予定していますか?
アップデートのひとつとして、家庭ではなかなか味わえない高級なお茶や紅茶、ロイヤルブルーティーのようなプレミアムなノンアルコールドリンクを取り入れることは企画しています。珍しくて特別な体験を提供することで、mockならではの価値を高めていきたいと考えています。
あえて属人化し、「指名されるデザイナー」を育てる経営方針
──あらたに始まる4期には、短期的、また中長期的に社員にはどのように成長して欲しいですか?会社として提供したいキャリアステップのイメージを教えてください。
短期的には、まずプロジェクトに対する考え方を理解してもらいたいと思っています。多くの人は業務を効率化するために、既存の型にはめていく傾向があります。それ自体は効率的ですが、本質的にそれで正しいのか?伝えたいことが伝わるのか?という視点が欠けてしまうこともあります。効率を重視するあまり、見せ方の質が下がるのは本末転倒です。だからこそ、最初に「基準」や「思考の土台」をしっかり身につけてもらいたい。テンプレートベースで考えるのはAIでもできる時代です。デザイナーにはより魅力的なデザインを生み出すための思考を大切にしてほしいです。
そのうえで、自分の強みを見つけて伸ばしてほしい。コミュニケーション、実装、デザインシステム、グラフィック、どんな分野でもいいのですが、「自分の価値」として認知され、仕事を獲得できるくらいの力を持ってほしいと思います。自社で用意したスキルのマトリクスでまだ満たせていない領域にも挑戦しつつ、自分の武器を育てていってほしいです。
さらに長期的には、もっとビジネス領域に踏み込めるようになれればと思っています。社会や経済の動きを理解し、それをどうクリエイティブに結びつけるか。AIの進化によってデザイン業務への参入のハードルは下がっていますが、それゆえ「ビジネス×クリエイティブ」の能力を高めることが必要です。今いる社員もUI/UXの提案まではできるようになってきていますが、その先にある「事業を5〜10年のスパンでどう伸ばすか」「業界自体がどう変化するのか」を見据えられる人はまだ少ない。そこは焦らず、経験を積みながら成長していってほしいと思っています。
──社内のメンバーをあえて属人化させる、というユニークな方針はどのように思いついたのでしょうか?
実は発想の出発点は「諦め」でした。まず、人を育てられるだけのスキルや環境が、当時の自分にはなかった。さらに、評価制度についても悩みました。一般的には売上への貢献で評価すると思いますが、本当に評価が高い人が売上を上げているのか?クライアントへの本質的な支援ではなく、評価の指針に合わせて動いているだけなのでは?と疑問を感じていました。
そこで行き着いたのが「属人化」という考え方です。その人独自のスキルやパーソナリティから案件を得て、その人がどれだけ稼げるかが価値になる。スキルは単価を上げるための手段であり、個人がクライアントから指名される状態を目指す方針にしました。
効率化や分業も一理ありますが、分けすぎると情報伝達や責任の所在でトラブルが生まれやすい。そういったことに時間を費やすより、クライアントと向き合うことに注力したほうが価値があると考えています。私自身、すべてを一人でやっていた経験から単価が上がったこともあり、属人化をポジティブに捉えられるようになりました。
バイネームという社名には「指名される」という意味を込めています。代表だけが目立つのではなく、それぞれがクライアントに選ばれ、ヒーローになれる環境を作りたい。また、ディレクターとデザイナーで分業した場合、どちらの功績がより評価されているのかがわかりにくくなってしまうので、一人で完結できる人の実績がそのまま評価につながる方が健全だと思っています。
業界を発展させる、次なる展望とは
──今後の経営方針を教えてください。
まずは会社の経営状況として、キャッシュ1億円を保持している状態を目標にしています。を目標にしています。現状ではまだまだこれからですが、現金をその規模で持てたら、そこから自社事業への投資に切り替えていきたいと考えています。
その背景にあるのは、クライアントワークというビジネスモデルの限界です。クライアントワークは人のリソースに依存し、人件費に比例して売上が伸びていきます。規模を拡大すればコンサルティング会社のような形になりますが、少人数でで10億を稼ぐのは難しい。しかも、私たちはあえて属人化させているので、規模が30〜40人規模にならないとまとまらない部分も出てきます。純粋にクライアントワークだけで進んでいくことに、自分自身あまり面白さを感じられないのも正直なところです。
クライアントワークは基本的に「クライアントにしか還元できない」ことです。それだけで本当にいいのか? という思いもずっとありました。だからこそ、自社事業を立ち上げることで、もっと社会や業界へ還元できるようにしたい。そのために会社としての体力をつけていくことが直近の経営方針です。
──次にやりたいことは具体的に考えているのですか?
いま考え初めているのは、教育事業への挑戦です。
新規事業として飲食に取り組んだのは、デザイナー同士の交流を増やしたいという目的からでした。その過程で改めて感じたのが、新人デザイナーが“一人前”になるまでのハードルの高さです。人を育てるには1,000万〜2,000万円ほどの投資が必要で、回収する前に辞めてしまうケースも少なくない。いい人材が業界に定着せず、スクールを出て会社に入ってもレベルの差で心が折れてしまう。その結果、お客さまにも迷惑がかかり、誰も得をしない状況が生まれています。
そういった現状を見てきて私が作りたいのは、単に「デザインを教える」ではなく、「仕事の仕方」を教える予備校のような場所。基礎を学ぶ際には学費を払い、実際の案件の一部を担当した分は報酬を受け取る。バイネームのデザイン基盤を学びながら、自分のバリューを発揮できるようになる仕組みを作りたいんです。
デザインを仕事にしたい人にとっては限りなく実務に近い形でデザイン業務のベースをしっかり身につけられますし、実際働いた経験があることによってそれぞれの会社の良し悪しの判断がつけやすくなります。また、仕事として経験があれば、会社の中での立ち回り方もより具体的に理解できるようになります。企業にとっても、全くの未経験者を雇用するリスクや教育コストの軽減といったメリットに繋がりますので、就職前のステップとして、業界にポジティブな循環を生み出せると考えています。
もう一つ考えているのは、AIを活用した事業です。クライアントワークの中で要件定義に時間がかかったりうまくいかなかったりするケースは多く、特に経験が浅いデザイナーにとって苦労する要素のひとつです。そこをAIと仕組みで支援できると、デザイナーはさらに「作ること」に集中できる環境を整えられるはずです。
とはいえ、いまはまだ構想段階。まずはしっかりとキャッシュを蓄え、次の挑戦に備えるフェーズだと考えています。
──4期にはどのような人にジョインしてもらいたいですか?
率直に言うと「お金を稼ぎたいからなんでもやります」くらいのマインドを持っている人に来てほしいです。ここでいう“なんでも”とは、もちろんただ雑務をこなすという意味ではありません。デザインに限らず、お客さまにバリューを届けるためなら領域を問わずに動ける人。そういうスタンスを持った人が、バイネームにとっても、そして本人にとっても大きな成長につながると思います。
私たちはデザインを手段として扱っていますが、本質的には「課題解決」や「ビジネスの成長」にどう貢献できるかを考えています。領域を絞ってしまうと、それ以上の成長が止まってしまう。だからこそ、幅広い領域に踏み込みながら、クライアントに最適な解決策を一緒に探していける仲間を求めています。
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