Illustrator、Photoshopなど……デザイナーや写真家を始めとするクリエイティブに携わる職の人々をはじめ、アドビといえば「Adobe Creative Cloud」を思い浮かべる人が多いかもしれません。
ただ、アドビのビジネスは、実はひとつの柱で成り立っているわけではありません。「Creative Cloud」のほかにも、PDFの閲覧など文書データや電子サインなどを扱う「Document Cloud」、マーケティングソリューションなどに特化した「Experience Cloud」と、3つの柱があるのです。
今回、話を聞いたのは、その中でも「Experience Cloud」のコンサルティングに関わるプロフェッショナル サービス事業本部 部長の鵜瀬とテクニカルコンサルタントの永島。
コンサルタントを取りまとめる、エンジニアをポジションから見るアドビの魅力とはいったいどのようなところにあるのでしょうか。2名に詳しく話を聞いてみました。
西海岸の外資系企業で、上流工程から関わりたい
現在、コンサルタントを統括をするマネージャーの鵜瀬。ウェブディレクターやマーケターとして経験を積み、5年前にアドビに入社しました。
【鵜瀬総一郎】
ーアドビ カスタマー ソリューション統括本部 プロフェッショナル サービス事業本部 AEM・プロジェクト マネジメント部 部長
鵜瀬:「僕は学生時代から、HTMLやCSSなどのプログラミングに関わる基礎知識を学んでいました。アメリカの大学に留学して、その後Webディレクターとして2年ほど経験を積みました。ただ、Web以外の業界も知りたいと思うようになって、外資の保険会社に転職しました。足掛け9年ほど勤めて、マーケティングを担当していました」
裁量の大きな職場で働くことに憧れて外資保険企業へ。デジタルマーケティングを担当し、管理職として部門を統括するまでに。ところが、その後35歳でアドビに転職します。
鵜瀬:「外資企業の管理職ではあったのですが、スピード感として難しい場面が多々あって。ひとつの稟議を通すために、リスクのある部分や懸念事項を全て潰す必要があって、平気で1〜2年の時間を要するんです。もう少し作ったものが世に出ていく様子を見たいという思いを抱いて、転職しました。前職でも『Experience Cloud』を利用していたので、真っ先に転職先としてアドビが思いついたんです」
アメリカ・西海岸で生まれたアドビの文化に魅力を感じた鵜瀬。加えて、製品ベンダーであることも企業としての強みだと鵜瀬は考えました。
鵜瀬:「前職も含めてコンサルタントの仕事を見つめる機会が多かったのですが、戦略コンサルと呼ばれる仕事では、アウトプットがパワーポイントの資料に完結してしまうんです。要は、実体がなくてわかりにくい。それに対して、アドビなら製品とコンサルティングを一括でソリューションとして提供できますよね。一体となったサービスにこそ価値があると感じていました」
鵜瀬とともに働くテクニカルコンサルタントの永島の転職理由は、鵜瀬とは少し違います。前職はERPパッケージを提供する企業に新卒で入社していますが、自身の成長に限界を感じてアドビへの転職を希望します。
【永島充】
ーアドビ カスタマー ソリューション統括本部 プロフェッショナル サービス事業本部 AEMコンサルティング部 シニアコンサルタント
永島:「僕は新卒でERPパッケージを制作する企業に入社して、QA(品質保証)業務に携わっていました。周囲にはソースコードを読める人がいない環境でしたが、僕は昔から効率化が得意な性格だったので、手っ取り早くQA業務を進められるようソースコードを勉強するようになったんです。そのまま、エンジニアの仕事に興味が湧いて、本業として開発に打ち込めるEC部門に移りました」
フロントエンドエンジニア寄りの業務の一環で、パッケージの開発や保守を行うようになりました。ところが、働く中ではだんだんとキャリアを考えるように。
永島:「パッケージの開発保守の仕事って、マイナスをゼロにする仕事なんです。ユーザーが感じる不便さを解消することでしかないですから。だんだんと、ゼロをプラスにする仕事に関わりたいと思うようになっていきました。また、子どもの頃にアメリカ在住だった経験があるので、英語力を活かすために外資系企業に移りたいとも思うようになりました」
そうして選んだのが、アドビでした。エマージングな企業であり、上流工程からプラスを生み出すために関われる。そして、なによりアドビは西海岸発の外資系企業です。永島の抱える課題を解消するためには、ぴったりの企業でした。
日本企業の課題は、レガシーな仕組みにある
実際にアドビで働いてみると、さまざまな気づきがあります。鵜瀬にとっての気づきは、日本の顧客はデジタルリテラシーが想像以上に低いことでした。
鵜瀬:「入社してみて感じていることは、大きく分けてふたつあります。ひとつ目は、仕事内容はあまり変わらないこと。製品のビジネスケースを作る仕事なので、前職の知識がそのまま活きています。ふたつ目は、僕らのクライアントとなる日本企業のデジタルリテラシーに大きな課題があること。アジャイルの考え方を持たない企業もまだ多いですから『とりあえずやってみよう』がなかなか通じませんでした」
日本企業の多くは、ウォーターフォールでプロジェクトを進めています。どうしたら、この「当たり前」を変化させられるのか。意識改革を必要としていました。
鵜瀬:「失敗を許せる人がいて、失敗を許せる環境がないと風土として染み付いた意識はなかなか変わっていきません。たとえば、海外の事例を実際に現地までお連れして見て頂くなど、ロジカルではなく、エモーショナルに訴えることがもっとも重要です」
永島:「良い意味ですが、危機感を煽ることが必要と思っています。日本は遅れ気味であるということを認識してもらうことが大切です。日本企業の多くは、結果に投資をするけれど、過程の活動には投資をためらう。そうではなく、あるべき方向に進むための投資を受け入れる姿勢が必要だと思うんです。また、完成したら終わるのではなく、長期的なスパンで併走する姿勢も必要です」
日本企業の多くが遅れを取ってしまうようになったのは、製品ベンダーが直接企業のコンサルティングに入らなかったことが原因と、ふたりは捉えています。
鵜瀬:「これまでは代理店やSIerなどの仲介業者に、製品のコンサルタントをまるっとお願いしていたのがソフトウェアパッケージの業界です。製品ベンダーがコンサルに入るからこそ伝えられることがあるのだと、アドビで働いてわかるようになりました。また、アドビには一定のブランド力があるからこそ、企業も話に耳を傾けてくれるんです。そういった意味で、バランスの取れたポジションにいられるのがアドビの強さなのかなと」
永島:「スタンスとしての違いもありますよね。キャリアとしてのマーケターって少ないじゃないですか。ほとんどの場合はジョブとしてアサインされていらっしゃるので、自身の評価のためになんとなくコミットしているような気がします。そうではなく、キャリアの通過点にマーケターやコンサルタントがあると考えると、動き方も少しは変わるように思っています」
「グローバルカンパニー×製品ベンダー」の力を発揮するとき
グローバル企業としての独特の信頼と、製品ベンダーとしての確固たる信念。これらが合わさったからこそ、アドビのブランド力を持ったまま高いレベルのソリューションが提供できるのです。技術力を強みとするエンジニアの目線でみると、成長できる環境が整っていることが、働く上では最大の魅力です。
永島:「エンジニアって、もともと気質として成長意欲の強い人が多いんですよね。新しい技術を取り入れたり、知らない世界を知りたいと感じたり。僕の場合も、アドビに入社したばかりの頃に、大きなプロジェクトにアサインされたことが大きな経験でした。プロセスを自分たちで作って、進めて、価値にするまでを担当するのですから。すごくチャレンジングだったと感じています」
鵜瀬:「西海岸のいわゆるスタートアップの人たちって、そもそも複数社での就業経験があったりで、プロセスが頭の中にあるので言葉を発さずともうまく業務が回るんですよね。ただ、日本人はそのバックグラウンドを持たないことが多い。あらゆる環境が違うからこそ、個別最適しながら組織を作っていく必要があります」
また、グローバル企業だからこその面白さとしては、世界中に仲間がいることが挙げられます。英語を活かしたいと考えて転職した永島は、思わぬ巡り合わせでアドビのグローバルな環境を目の当たりにしました
永島:「以前、ドイツのミュンヘンでワークショップが開催されることになっていたので、参加申し込みをしたんです。ところが、実はそのワークショップは開催が中止になってしまっていて。なにも知らない僕はそのままドイツのオフィスに到着していたんですね。
そうしたら、せっかく来たからということで、グローバルの開発拠点であるスイスのバーゼルに、ドイツのメンバーが連れて行ってくれて。100人いるスイスの開発メンバー全員が握手をして歓迎してくれたんですよ。それまでは日本でのみ働いていたからグローバルらしさをなかなか感じられなかったんですけれど、この出来事をきっかけに世界との距離がグッと縮まりました。自分から手を伸ばせば、グローバルにはこんなにも親身になって助けてくれる人がいる、というのは目の覚めるような発見でした。
エンジニアのレベルの高さはもちろんのこと、世界中のメンバーとやりとりができることもアドビで働く面白さです。世界中のメンバーが加わったメーリングリストも設置され、日々あらゆる情報が飛び交っています」
「グローバルカンパニー×製品ベンダー」としての実力。日本では、まだまだ未知の領域の中、来たるデジタルファーストな時代に向けて私たちの挑戦はまだまだ続きます。恵まれた環境の中で強みを活かして市場に出向く。そうすることで、従来のレガシーな当たり前を打破して、新しいソリューションを提供できるのだと、私たちは信じているのです。