採用マネージャー(Sさん)
2023年にサイバー・バズに入社し、中途採用責任者として従事。現在は採用業務のみならず総務マネージャーも兼務し、採用だけでなく全社的な取り組みや改革も担当。
AI事業本部(Kさん)
AI事業本部に所属し、社内のAI活用推進とツール開発を担当。元々は画像生成AIや自然言語処理を中心とした研究・開発を行っており、現在はそれに加えて、各部署の業務効率化支援や、AIを活用した新規事業の立ち上げにも従事。
Q. 今回のAI活用の取り組みを始めた背景やきっかけについて教えてください。
Sさん:これまで1名で担当してきた採用業務でしたが、中途採用チームの人員拡大に伴い、各担当とリレーションを必要にする機会も増えてきました。これまでも常に業務の効率化や仕組化は進めて来ていましたが、形にしていない採用活動の「感覚や暗黙知」の引継ぎには苦労することも多かったです。そのためKさんに声をかけてこのプロジェクトが始動しました。実際の制作にはサイバー・バズの子会社の人材紹介事業をしているBuzzJobのメンバーも携わりながら、開発を進めました。グループ間連携を即座にしながら形にしていけるサイバー・バズのカルチャーの強さを感じましたね。
Q. 最初にSさんから声を掛けられた時どのような印象を持ちましたか?
Kさん:正直、かなりワクワクしました。採用って感覚的な要素が強く、AI化の難易度が高い領域だと思っていたので、「ここにAIを活かすのか!」という挑戦の面白さを感じました。それと同時に、「本当に業務に耐えうるプロダクトにできるか?」というプレッシャーもありました。でも、Sさんの中に明確な課題とビジョンがあったので、すぐに「一緒にやりたい」と思いました。
Q. AI導入前、採用活動ではどんな課題やボトルネックがありましたか?
Sさん:前述のとおり、これまでの組織体制で行くと一人が休んだ時の影響はかなりありました。採用活動はスピードが命です。他の企業が選考を進める間、一日でもレスが遅くなることによって起きる機会損失は担当として意識しなければなりません。したがって「誰がしても」「いつしても」できる体制や必要最低限の人数でしなければいけないということは特に意識をしていたポイントです。
Q. Kさんはどのように課題を感じていましたか?
Kさん:採用のような“人を扱う領域”は、単純な数値だけで判断できないことが多く、属人化しやすいですよね。そこに共通の判断軸をつくれれば、チーム全体のパフォーマンスが上がるはずという仮説がありました。また、情報の“重なり”や“抜け漏れ”が起きがちな採用フローの中で、AIがリマインドや要約のようなサポートをすることで、ヒューマンエラーを最小化できると考えていました。
Q. その課題を解決するために、どのようにAI活用を検討し始めましたか?
Sさん:今回Kさんに頼んだのは「書類選考の自動化」です。ただ全て自動化するのではなく、現時点では担当も見て評価をするので人間とAIのハーフ&ハーフのようなイメージです。優秀な候補者の方を見落とさないように人の目を入れながらで、まだ磨いている部分もありますが、こういうAIに関するチャレンジは継続的にしてきたいと思っています。今回の取り組みは、サイバー・バズでは年間6000名以上が中途採用の選考に訪れる中で、採用効率化は一旦目的として置かず、これまで私の中にあった感覚や経験を誰でも得ながら、判断できるようにすることは将来的な組織強化にも繋がるという判断をし、検討がスタートしました。
Q. 今回導入したAIツールはどのような機能を持っていますか?
Sさん:ある特定の職種において、これまでの傾向をもとに書類選考の合格率判定をしてくれます。それ以外にも転職エージェントにこの機能を活用してもらうことによりエージェント側も工数を削減しながら、本当に可能性のある候補者に注力することができるという利点もあります。
Kさん:書類のアップロードから判定までを完全自動化できる点が最大の特徴です。特定の採用基準に沿って、候補者情報を要約しながらスコアリングし、合否判定を即座に提示します。また、過去の合格者・不合格者の特徴データを学習しているため、判定精度を継続的に向上させることが可能です。さらに、評価理由や補足コメントも自動生成するため、次の選考やエージェントへのフィードバック資料としてそのまま活用できます。
Q. 特に「採用担当視点」で便利だと感じる機能は何ですか?
Sさん:やはり誰でも同じ基準で評価できるようになった点ですね。個人のムラをなくし、その人の個性を必要とする業務とそうでない業務を切り分けることが出来るようになりました。特定業務を自動化することで採用担当のアイデンティティの出しどころや本当に注力すべき業務へのアサインを可能にすることができています。
Q. 「開発者視点」でこだわったポイントや工夫についても教えてください。
Kさん:最も重視したのは「精度」と「説明責任」です。単にスコアを出すだけでなく、その裏付けとなる書類内の具体的な記載やキーワードを必ず引用するようにしました。また、Sさんの採用基準を反映するだけでなく、アップロードされた実際の履歴書・職務経歴書の傾向をもとに合格基準を随時アップデートできる構造にしています。これにより、基準が変化しやすいベンチャー採用でも常に現場にフィットした判定が可能です。
Q. 導入してみて、まだ改善が必要だと感じる部分はありますか?
Sさん:特に問題点は露呈していませんが、組織は生き物なので常に人事課題に基づいて採用の評価基準は変わり続けます。ベンチャーでは尚更、1回設定した内容が1か月後には変わっていることもあると想定しながら創っていくことが必要だと思っています。「言語化できない何か」を継承していくこともマネージャーとしての役割だと思いますし、常にアップデートしていきたいですね。
Q.開発者視点からするといかがですか?
Kさん:実務で使ってもらうと、思っていた以上に「例外ケース」が多いことを痛感します。例えば、SNSプランナーの募集要項でいえば、無形商材の営業経験がなくても、SNSやPR企画で大きな成果を出している候補者は本来拾うべき人材です。こうした例外を人間の感覚ではなく、条件として言語化・実装できるようにするのが、開発者としての腕の見せ所だと感じています。
Q. 今後さらに実現したいAI活用の形や、追加したい機能はありますか?
Sさん:すでに採用チームでは、「候補者の面接フィードバック」「次選考の面接官への申し送り」「採用競合分析」にAIを活用しています。人間では成しえなかったスピードとクオリティで改善し続ける採用チームでありたいですし、AI事業部の設立によりそれが可能になっています。Kさんのようなスペシャリスト人材を採用できるように、どこは任せ、どこは我々のウエイト掛けるのか。今後もより一層我々の力が試されますね(笑)
Q.Kさん視点ではいかがですか?
Kさん:この仕組みを社外にも提供し、エージェントや企業が自社基準を簡単にAI化できる「採用判定エンジン」として拡張していきたいです。そうすれば、社内だけでなく業界全体の採用効率化・ミスマッチ削減に貢献できます。
Q. 採用活動全体の未来像として、AIはどう関わっていくと思いますか?
Sさん:世の中で常日頃から議論されていますので、周知の事実ではありますが、やはり「共創」という考え方は重要ですね。人事は「対人間」の仕事だからこそ主観や「聞いた話によると、、」みたいになってしまうリスクと日々隣り合わせです。しかし人をデータ化するとなるとそれはそれで葛藤や難しさにも常に直面しています。ただ情報整理をAIにしてもらい、そのアウトプットされた情報は自分の感覚値としても合っているのか。という判断が出来ない人材は採用や人事担当として質が高いとは言えません。だからこそ、市場の生の情報や声を知るための会食や交流にはどんどん時間を割いていき、僕らもAIのよきパートナーになれるようにしなければいけませんね。
Q.最後にサイバー・バズのAI事業部としての現状の取り組みや実績など、これから起こりうる未来について教えてください。
Kさん:これからの未来、AIは単なる業務効率化のツールではなく、「組織の意思決定の質」や「個人の思考の拡張」に深く関わっていくと考えています。特に人事・採用領域では、定型業務を自動化するだけでなく、これまで暗黙知だった“人の良さ”や“チームとの相性”といった曖昧な価値観も、定量化・共有できるようになる可能性があります。
AI事業部では現在、各部門の業務に入り込みながら、ツール開発だけではなく「AIをどう活かすか」の戦略設計も伴走しています。目指しているのは“誰もがAIを自分の相棒として使いこなせる組織文化”をつくること。いずれは「この会社に入ればAIが自然に身につく」と言われるような、教育機能も備えた組織をつくっていきたいですね。
そして将来的には、サイバー・バズ全体で蓄積されていく「人とAIの共創データ」を資産化し、他社の組織改革や人材育成支援にも展開できるような、次世代のBtoB AIサービスへと広げていきたいと考えています。採用業務の一部にとどまらず、「人に関わるすべての意思決定を、よりよくするAI」――それが、我々AI事業部が描く未来です。