株式会社シグマアイ
シグマアイは先進的な最適化技術である量子アニーリングをコアにした東北大学発スタートアップです。 量子コンピューティング技術から価値のあるサービスを生み出し、多くのお客様にお届けします。 この営みを通して持続的に人々に価値を届けることで、量子コンピューティング技術が当たり前に利用され、 役に立っている社会の実現を目指しています。
https://www.sigmailab.com/
先端技術の社会実装を手掛けるシグマアイ。社内でのシステム開発にも力を入れています。「クエスト掲示板」は、社内の仕事の依頼をクエスト形式で見える化して、アルバイトが自分の意志で選べる仕組みです。受けた仕事の難易度と緊急度に応じて「経験値」を得ることができ、時給がアップします。ゲーミフィケーションを採り入れたこの仕組みを、企画・設計して実装を進めた4名に話を聞きました。
小林 孝広(こばやし・たかひろ )
シグマアイ:事業開発・人事戦略・企画担当
吉岡 大輔(よしおか・だいすけ )
シグマアイ:事業開発担当
室 和希(むろ・かずき )
シグマアイ:研究・開発担当
小谷 蒼(こたに・あおい )
シグマアイ:開発担当
東北大学工学部 電気情報物理学科 在籍
ーまずは、プロジェクトでの皆さんの役割を教えてください。
○小林さん
私は人事責任者として、このプロジェクトに参加しました。これまでにメンバーのポテンシャルを最大限発揮してもらうために、「評価しない評価制度」もつくりましたが、今回はアルバイト向けの施策です。シグマアイのアルバイトは、正社員と同じレベルの仕事をこなしています。彼らの頑張りに報いたかったのです。自分自身の頑張りが評価や報酬、次の仕事のアサインにつながるようにしたい。そうなれば、本人としても、組織としてもハッピーになるはず、と考えてこのプロジェクトを立ち上げたのです。
○吉岡さん
小林さんに誘われて、ジョインしました。前職はゲーム会社で働いていたので、その経験を活かしてほしいと言われて、興味を持ったのです。仕事の難易度や緊急度に応じて、報酬やフィードバックを与えるのですが、その設計に「ゲーミフィケーション」を導入。アルバイトの皆さんが、ゲームのように楽しく働いてもらいたいと思っています。人事領域にゲームの概念を持ち込むのは初めての経験ですので、私自身もワクワクしながらプロジェクトに携わっています。
○室さん
私は新しいコンセプトやアイデアをこのプロジェクトに持ち込みました。「クエスト」というコンセプトや、「中世の社会のギルド」のような見せ方を考案。技術部に所属するスタッフとして、システム実装のディレクションも担当しています。
○小谷さん
私自身は、東北大学4年生のアルバイトスタッフです。技術部に所属していて、システムの実装をメインで担当しています。システム設計を担う小林さんや吉岡さんからの依頼を受けて、室さんと相談しながらプログラミングを進めるのが仕事です。
○小林さん
小谷君には、依頼書や指示書を渡していたわけではありません。こちらがやりたいことを伝えているだけなのですが(笑 )、小谷くんは上手に仕様に落として、実装してくれました。彼がいなければ、「クエスト」は間違いなく形になっていないと思います。感謝しています!
ー「クエスト」は、お願いしたい作業とアルバイトのマッチングを行うシステムです。作業完了後に依頼者からのフィードバックと「経験値」が得られて、時給アップにも反映されます。このようなシステムを構築するようになった経緯を教えてください。
○小林さん
シグマアイの組織は、事業開発部と技術部に分かれています。アルバイトの学生はエンジニアとして技術部に所属しており、技術部内では仕事の依頼が頻繁に行われていました。しかし、事業開発部からは直接コミュニケーションを取る機会が少ないので、技術部ほどは仕事を依頼できていませんでした。その橋渡しのシステムをつくろうと考えたのが、このプロジェクトの発端です。
○室さん
リモート勤務が前提で、全国各地の大学生がアルバイトとして勤務しています。リアルで会う機会も無いので、誰が何の仕事をやっているのか、把握がしづらかった。また、リソースが不足した際にアラートを上げる仕組みも、手の空いているアルバイトが「仕事を欲しい」とアピールする場も、当時はありませんでした。そこで、全員が見ることのできる「アルバイトが担当する仕事のプラットフォーム」をつくろうと考えたのです。クラウドワークスやランサーズなど、「クラウドソーシングの社内版」のようなイメージですね。
ー具体的にはどのような仕組みに仕上がったのでしょうか?
○小谷さん
こちらのSlackチャンネルに、社員から「仕事の依頼=クエスト」を投稿してもらう仕組みです。これらの中からアルバイトが挑戦したいものを選びます。その後は依頼者とアルバイトの間で細かいやり取りを行い、作業をスタート。作業が終わったら、依頼者がフィードバックを書き込むことで、クエストが完了になります。毎月末がフィードバックの期限で、依頼者に自動的にプッシュ通知が飛びます。
○小林さん
各クエストでは、依頼者が「難易度」と「重要度」が設定します。アルバイトが仕事を選ぶために参考にしてもらうためです。それぞれの数値が高ければ、学生がもらえる経験値が増える仕組みで、一定の経験値が貯まれば時給がアップします。挑戦を続けるアルバイトには、報酬をきちんとお返ししたいなと。
○小谷さん
クエストの種類としては、実案件におけるプログラミングやAWSによるインフラ構築、3Dスキャンなどの支援業務、そして社内の環境整備など、様々な業務が投稿されています。アルバイト自身の意志で仕事を選べるので、皆さんからは好評をいただいています。
ー単なる“お仕事掲示板”ではなく、ロールプレイングゲームの世界観で展開されています。この背景を教えてください。
○室さん
この世界観にはかなりこだわりました。社内デザイナーの山本あずささんにガッツリ入ってもらいました。この「ギルドマスター」のイラストは、生成AIによって作成したいと聞いています。また、セリフにものキャラクターを反映しています。「今ある依頼だぜ!どうするんだ!」みたいな(笑 )。
○吉岡さん
まさに表現やデザインの部分にもゲーミフィケーションの概念を採り入れています。アルバイトの皆さんに、楽しんで仕事を選んでほしいなと。あるスタッフは、仕事を請けまくっていて1ヶ月で時給がアップしそうな勢いです(笑 )。頑張っている学生には「指名」での依頼も増えています。
ー「クエスト掲示板」は10月からオープンして、約2ヶ月が経ちました。社内にはどのような変化をもたらしましたか?
○小林さん
普通では起こらないような仕事のマッチングが増えて、社内が活気づいています。従来は、依頼者とのつながりが深いアルバイトに仕事が集中していました。選択肢が拡がることで、お互いが新たなマッチングの可能性に気づくように。依頼者は「この学生にはこんな得意技があるんだ」と発見し、アルバイトは「シグマアイにはこんな面白い仕事があったんだ」と気づくことができる。それぞれの世界が拡がったと感じています。
○吉岡さん
設計フェーズでは、小林さんと綿密に打ち合わせを重ねました。そのときによく話していたのが、学生アルバイトとシグマアイとの関係性を、より長期的なものにしたいということ。最近では、高専の学生もジョインしてもらっています。そこから大学に編入し、大学院まで在籍するとなると、5年くらいの付き合いになります。モチベーションを持続させながら、スキルアップしてもらうためにも、一つひとつの仕事に毎月のフィードバックを行い、頑張りが報酬に反映される、フェアな仕組みをつくりたかったのです。少しずつですが、良いサイクルが回り始めていると思います。
ー最後に、「クエスト掲示板」の今後の展開について教えてください。
○小林さん
今後、シグマアイの成長において、アルバイトスタッフの増員は必要不可欠です。現在の2倍〜3倍の規模になっても、現場がきっちりと回るために「クエスト掲示板」は大きな役割を担うことになるでしょう。学生アルバイトからは、「この1ヶ月だけ働いてみたい」「この曜日だけ働きたい」という要望を多く寄せられています。それぞれのライフスタイルに合わせた形で、シグマアイで働いてもらうためにも、この掲示板の改善を重ねていきます。
○吉岡さん
ゲーミフィケーションにより磨きを掛けていきたいですね。一人ひとりの仕事へのモチベーションを向上させるだけでなく、アルバイト同士のコミュニケーションのツールになればいいな、と思っています。私自身も、このツールを設計・構築する中で、多くのアルバイトスタッフとやり取りを行いました。そこでは、この会社をより良くするための多くのヒントをいただきました。
○室さん
吉岡さんがおっしゃるように、仕事の見える化が進むことで、様々なコミュニケーションが生まれています。この路線を進めていきたいのと同時に、プログラミングを担当してくれた小谷君の成長を見守りたいと思います(笑 )。
○小谷さん
ここまで専門性の高い仕事を任せてもらえるとは、考えていませんでした。皆に使ってもらえるシステムをつくることができて、感慨深いです。ただ、まだまだシステムとして磨いていくべき部分が多いです。先輩社員やアルバイトに意見をもらいながら、改修を進めることで、自分自身のスキルアップにもつなげたいですね。